表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

逆トリップ狙いでしたが予想の斜め上を超えていました

作者: 桜坂 花音

「来た……来た来た来た来た来たァアアアア!!!!」



 待ち望んでいました、この展開!!

 家の庭で喜びのあまり大声を出しちゃったけれど、誰も居ない。ましてや近所迷惑にもならない。

 何故なら私は"お嬢様"で、ここはお父様やお母様が用意してくれた私専用の"別荘"だもの!!

 え? 叫ぶのはお嬢様としてはしたない?

 良いじゃないの、ちょっとくらい。

 だって、今まで我慢してきたのよ? ずっとずーっと叫びたかったのを、私は我慢してきたのよ?

 きっとお母様だって許してくれるわ。

 お父様は悲しむかもしれないけれど……まあ、この際どうでもいいの。



「だってこれは全て、たっきゅんに逢うためだもの!!!!」



 丘にそびえ立つ大きな白いお屋敷。庭に咲き誇る大きな桜の樹。

 お父様もお母様も使用人も今日から一週間ほど、海外で新しく展開する事業の打合せへ行っている。私も本来ならば同行しなくてはならない。

 けれど、断りました。



「私、少しでも早くお父様とお母様のお力になりたくてっ……一週間、私は自立するために一人で生活したいと思いましたの!!!!」



 私の言葉に感激のあまり涙を流し、笑顔で許可をくださりました。


 ……ごめんなさい、実際は違います。

 だけれど、そう言わなきゃ使用人はここに残ってしまうでしょう?

 それじゃあ駄目なの。絶対に駄目。



「ふふっ……ふふふふふっ!!!!」



 私――《百々海(トドミ) (リツ)》は、長年の夢を実現させる事が出来そうです!! そして私の夢とは"たっきゅんと逢う事"!!!!それだけですわ!!


 たっきゅんとは、《月島(ツキジマ) 拓十(タクト)》様の事。

 細身の筋肉質、真っ白な髪だけど毛先はほんのり桜色、瞳はスカイブルー色、性格はちょっぴり不愛想なクール系、好物は月明かりと木苺のタルト、嫌いな物は日光と新鮮野菜、身長や体重や年齢等はトップシークレット、そして〈月世界の王子様〉!!!!

 そう、たっきゅんは私が生きているこの世界の住人ではないの!!ゲームの世界に存在する世界の住人よ!!

 ――「それじゃ逢えないだろう」なんて声が聞こえたけれど、なんと私は高確率でたっきゅんと逢えるの!!!!


 【Season(シーズン) Alice(アリス)】、それがたっきゅんの出ているゲームのタイトル。ファンの間では【SA(エスエー)】って略されているわ。

 SAは、別荘で一人暮らしをしている一人のお嬢様の元へ、別世界から五人の男性が逆トリップしてきて一年間を共に過ごす恋愛シミュレーションゲーム。

 逆トリップしてくる男性は"太陽世界の熱血な王子様"、"月世界のクールな王子様"、"海底世界のヘタレ神子(ミコ)"、"大地の守り人で計算高い兄と甘えん坊な弟"。

 どれも魅力的なキャラクターだけれど、やっぱり一番はたっきゅん。

 お母様や使用人にバレない様、たっきゅん専用の特大倉庫を作って私以外、立ち入り禁止にしながらたっきゅんのグッズだって買い揃えた。

 だから公式グッズは勿論、非公式なグッズだって一つの漏れなく回収済み。


 さて、たっきゅんに逢える理由の話からズレたから戻すわね。

 まずSAの主人公は、別荘で一人暮らしをしているお嬢様。

 別荘は丘にそびえ立つ大きな白いお屋敷で、庭には桜の樹があるの。

 ――――ほら、分かるでしょう?

 私の状況と合致しているの!!!!

 というより、合致させるように努力してきた結果が今日実ったのよ!!

 つまり、いつキャラクターが逆トリップしてきてもおかしくない状況って事!!!!!!

 お金の心配は一切無いし、たっきゅんさえ居れば何人でも逆トリップして構わないわ!!



「さあ来なさい!!たっきゅんっ!!!!」



 両手を広げれば、ほらたっきゅんが桜の樹の下に――――――



「……なんて、来るわけないかぁ……」



 来ない。

 三時間ほど待っても、やっぱりたっきゅんは来ない。

 腕を下ろして、雲が一つも無い空を見つめる。

 あのね、たっきゅん……日差しが眩しいの。

 そういえばたっきゅんは日光を嫌っているわよね。だからあんなに白い肌なんだわ、凄く素敵。

 もしかして日差しがあるから、たっきゅんは来ないのかしら。

 たっきゅんを呼び寄せない日差しなんて、どこかへ無くなっちゃえばいいのに。


 ――そんな事を考えていると、ふと太陽が緑色(....) に光った気がした。

 え、フラグ? これってフラグかしら?

 まさか太陽消滅? 私ってそういう特殊能力所持者なの?

 どうせなら二次元へ行ける扉を召喚できる能力が欲し……あら、あれは何?

 何かが空から落ちてきているような……



「っ!?」



 大きな音を立て、何かが私の前へ落ちてきた。

 ――――人だ。それも二人。

 真っ赤な髪で奇妙な服を着ている男性と、真っ青な髪で同じく奇妙な服を着ている男性。

 二人とも落ちた衝撃で気絶しているみたい。

 ……空から降ってきた、いかにもこの世界の人間じゃない恰好。



 あれ、これってもしかして逆トリップなの?




***********



 

 そのままにしておくのは非常識だと思い、私は一人ずつ"引きずって"玄関まで運びました。

 え、その方が失礼だろうって感じた方が居るでしょう?

 小さな子なら可能だけれど、青年クラスの男性を抱えて運ぶなんて無理に決まっているじゃない。

 そういえばゲームだと、主人公がキャラクターを運んだ経緯(イキサツ)は殆ど描写されないわよね。きっと私のように引きずって運んでいるのが現実のはずよ。

 それか、肩を貸すか……まあ意識の無い相手には厳しいかもしれないけれど。



「――――――っ……ここ、は……?」

「あら、目を覚ましたのね」

「……お前……」



 あらイケメン。

 先に目を覚ましたのは、真っ青ヘアーの方。

 身体を起こして立ち上がり、私を睨む。

 ……そんなに警戒しないで頂戴。別にたっきゅん以外の異世界人(ヒト)に手を出さないわよ、私。



「どこの回し者だ? 余をどうやってこの奇妙な場所へ連れてきたのだ?」

「それ、貴方より私の方が質問したい事よ」

「ならぬ。お前に余の質問へ答える以外の発言権を認めたつもりは無い」



 フンッと鼻を鳴らす、真っ青ヘアーな冷血漢。

 最初は俺様かと思ったけれど、俺様にしてはちょっと違う気がする。



「まず、名を述べよ」

「そこだけはレディーファーストなのね。

 ――私は律。貴方は?」

「まさか、回し者の分際で余の名を知らないと申すのか?」

「回し者じゃないもの、私」

「…………《セネロ》。

 余は月神(ツキガミ)だぞ、本当に分からぬのか?」



 セネロ? 月神?

 やっぱり、逆トリップしてきたのね。

 ……どこのゲームからかしら。少なくともSAじゃなさそう。

 あーあ、どうしてたっきゅんじゃないのかしら。

 神様、送る人間(?)間違ってますよー。



「だから、私は貴方の事なんて知りません」

「では、何故だ? ここは余の城ではないだろう」

「そうですわ。ここは私の家の別荘です。

 庭に落ちてきた貴方達を運んだのは、私ですけれど?」

「……嘘を……ついて、いなさそうだな。

 しかし、信じがたい…………ここは、どこなのだ? ミスヴェリア王国じゃな――――」

「ミ、ミスヴェリアですって!!!??」

「っ!?」


 

 朝と夜が逆転する、月世界ミスヴェリア王国。

 つまり……逆トリップ前にたっきゅんの住んでいた、あの王国の事よね!?

 どうしてセネロさんが知っているの!? まさかSAのキャラクター……で、でも、月世界から来たのはたっきゅんだけで、ましてや《セネロ》だなんていかにもな異世界人ネームは聞いた事無い!!!!



「お前、ミスヴェリアを知っているのか?

 やはりお前は……」

「それより、たっきゅんは!?」

「……たっ……たっきゅん? 誰だ、そいつは」

「月世界の王子様!!月島!!拓十!!!!

 どうしてミスヴェリアから逆トリップしているのにたっきゅんじゃないの!?」

「逆、とりっぷう……何だ、その言葉は。

 それより、何故お前が拓十様の名を……」


「うおおおおおおおッ!!!!

 来た来た来た来た来たァアアアア!!」


「っ!?」



 突然、今まで倒れていた真っ赤な人が勢いよく起き上がり、叫び出した。

 あらあら、こっちもイケメン。

 でも叫んじゃ駄目。セネロさんだって、眉間に皺を寄せて凄く不機嫌そうよ。

 ……あれ、何か……デジャブね。



「その叫ぶ癖を直ちに止めろ、《アポロ》。

 余は今、この女の尋問をだな……」

「セネロ、その必要は無いッッ!!

 何故ならば彼女は、"創造神の被害者"だからだ!!!!」

「……創造神の、被害者?

 お前、それは本当か? 本当に被害者なのか?」



 いや、初めて聞きました。

 何ですか、創造神って。

 そんな人に逢った事なんて一度も……



「うむッ!!彼女は立派な被害者!!!!たった今、創造神が我にお告げをくださったからな!!!!」

「…………何と、お告げをしたんだ?」

「〈目が覚めた時に傍に居た子が、僕の選んだ子だよ!!はあと〉だそうだぞッ!!」



 何ですの、その神様は。

 軽いって言うか、イタいって言うか……聞いていて呆れてしまいますわね。

 それに、選んだってどういう事でしょう。


 私が小さく溜め息をつくと、真っ赤な人――アポロさんがハッとした表情で私に土下座をし、頭を何度も床に叩きつけて……って、えええ……!?



「我はアポロ!!熱き!!太陽神ッ!!!!

 事情も知らされぬまま、我々の問題に巻き込まれてしまった事を!!!!深く!!詫びるッ!!!!!」

「いや、詫びる気持ちは充分理解しましたので、そんなに頭を……」

「ならぬッ!!それでは我の気持ちが納まら――――」

「アポロ、もう止めよ」

「セネロ……む、むう……分かった」



 セネロさんがアポロさんを一喝し、渋々だけれど頭を叩きつけるのを止めました。

 ありがとうございますセネロさん。

 貴方のお蔭で、床はヒビが入るだけで済みましたわ。



「ところで、家主殿の名は律殿でよろしいだろうか?」

「えぇ、合っているわ」

「やはりお告げ通りッ!!

 我、創造神から(フミ)を授かりましたッッ!!!!」

「文?」

「うむッ!!」



 アポロさんから、四つ折りにたたまれた紙を受け取り、早速広げてみる。

 何て書いてあるのでしょうね。あまり期待せずに読みましょう。

 えっと……


 〈Dear,律ちゃん〉

  Hello, I am God!

  When you read this letter, is there around two God there now?

  They are characters of the games that you love.

  The title of the game 【Season AliceⅡ】. In other words it is a sequel.

  There are circumstances and must keep them away from the world.

  Anyway, will you take charge of them for a while?

  Oh, do you understand English? I'm sorry if not readable☆

 〈From,創造神〉



「……余が今まで見た事も無い文字だな……」

「我も初めて見たぞッ!!律殿、文に何と書かれているんだ?」

「…………暫く、貴方達を預かってほしいって書いてあるわよ」



 あら、"読めなかったらごめんなさい☆"?

 私がお嬢様って事を知らないのかしらね、この神様は。

 小さい頃から外国語は習っていますし、英語くらい余裕で読めますわよっと。


 ――つまり、彼等はSAのキャラクター。

 しかも、まだ発表もされていない待望の続編、【Season AliceⅡ】。

 後で説明するって書いてあるけれど、いつなのかしら。

 私としては、別に何人だろうと構わない。


 でも、どうしてたっきゅんじゃなくて、彼等なの!?

 私は、たっきゅんのために色々と用意をしたのよ!!!!

 たしかにSAは大好きだし続編って凄く魅力的…………で、でも、たっきゅんが居ないんじゃ意味が無い!!

 

 今すぐにでも紙を破り捨てたい衝動に駆られたけれど、こんな経験はきっと二度とないと思う。

 それに、セネロさんはたっきゅんの事を知っていそうな気がしますわ。



「そうジロジロと見つめるな。

 ――お前を疑って悪かった。事実を知らなかったとは言え、反省はしているぞ」



 たっきゅんの事を考えながら、私はずっとセネロさんを見つめていたらしい。

 別にさっきの事を怒っているわけじゃないのよ。

 私はたっきゅんが逆トリップしなかった事実に起こっているのよ、えぇそうですとも。

 それにしても、この神様――――創造神は何がしたいのかしら。

 逆トリップの王道として、〈世界の修理〉や〈未熟神様の昇級試験〉や〈気まぐれ〉が基本だけれど……

 私がプレイしたSAではバグだったわね。



「ねえ、アポロさ」

「アポロと呼び捨てにしてくださいッ!!!!

 我はお世話になる身、敬語は要らぬッッ!!」

「アポロ、さっき"創造神の被害者"って言っていたけれど、どういう事なの?」

「じ、実は我々の世界に、ぱぐと言う支障が出ているのだが」

「ぱぐ? バグじゃなくて?」

「……おぉ、そうだ!!ばぐだったッ!!!!

 そして、そのばぐを直すために創造神が我々を一か所に集め、会合を開いたのだぞ」

「会合……そう」



 あら、この逆トリップもバグから始まるのね。

 てっきり、Ⅱってだけに違う感じかと思いましたわ。



「さらに酷いのはここからであるッッ!!

 創造神は昇級試験中の身であり、今回の試験は我々の世界のばぐを直す事だったのだ!!!!」

「……え?」

「しかし、まだ創造神は幼子(オサナゴ)。我々が居てしまうと、うまく力が発揮できないらしいッ。

 だから、我々を預かってくれそうな人を……だ……だあつ? ……で、決めたらしいぞッッ!!!!」

「ダーツね」

「つまり、選ばれてしまった律殿は、創造神の被害者と言う事であるッ!!」



 ――――つまり、昇級試験中の創造神がバグった世界を修理するため、ダーツで預かり主を決めたら私だったと。

 全部じゃないですか、それって。



「そういう事なら、暫くの間……預かりますわ。

 私が追い出した事によりホームレスになってしまったら、心が痛みますし」

「ほうむれす?

 律殿、それは食べ物だろうかッ!?」

「違います」



 さっきから、ダーツやホームレスなどの単語に苦戦しているアポロさ……アポロ。

 そういえばセネロさんも、逆トリップって単語に首を傾げていたような。



「セネロさん、貴方達の世界ではトリップとかホームレスとか……そんな言葉を使わないの?」

「とりっぷやほうむれす……使った事は無い。

 ……それより……」

「それより、何ですか?」

「…………余も、呼び捨てで構わぬ……」



 耳まで真っ赤にしながら言うだなんて、セネロは随分と可愛いですわね。

 最初は、ただの冷血系だと思ったけれど違うのかしら。

 ツンデレ? それともクーデレ?

 どちらでもイケメンなら……ましてや二次元キャラクターなら素敵ですよ。

 とりあえず、セネロの発言に対し「ツンデレですね」と笑顔で返す。

 するとセネロは首を傾げた。

 多分、「つんでれ?」と疑問に感じているのでしょう。


 私がクスッと笑うと同時に、玄関に飾られている古時計が鳴りだした。

 あら、もう昼食の時間なのね。



「そろそろ昼食の時間ですが、お二人はもう食べ…………何を、していますの?」

「な、ななな、無いッッ!!!??

 我の……我の愛刀が……」

「……余の羅針盤も無い……余はアポロとは違い、常に持ち歩いていたはずだぞ……!!!!」



 アポロが私の前に立ち、セネロが私の後ろに立つ。

 そう、まるで何かから守るように。

 ――そこまでは良いのですが、何故そんなにも手で服のあちこちを叩いているのでしょう。

 というか、愛刀? 羅針盤?

 全然理解出来ません。

 いや……一つだけ、心辺りはありますけど……



「アポロ、セネロ。

 武器の場所は知らないけど……この音は、敵が来た合図じゃないわよ」

「なんとッ!? 違うのか!!?」

「……では、何の合図だ? 会合か?」

「あの古時計、朝と昼と夕方と夜の四回鳴るの。

 そして、今のは昼食の時間って事です」

「ご飯ッッ!!!!??」



 そんなに目をキラキラ輝かせて見つめないでください、アポロさん。

 貴方は犬ですか? ご主人様からエサをねだる犬ですの?

 ……一瞬、アポロさんの頭に犬の耳の幻影が見えましたわ。

 彼は熱血系ワンコ。決まりです。



「はい、まだ食べていないのなら私と食べますか?」

「良いのですかッ!?

 ……はっ……し、しかし、その……我は人並み以上に食糧を消費してしまうかもしれないが…………」

「大丈夫ですよ、人並み以上に裕福ですから。

 それにお屋敷中の食糧を平らげてしまっても、また買いに行けば良い事ですわ」

「――――食糧を買う? この世界は便利なのだな」



 感心したようにセネロが呟く。

 ……確か、SAは空から自分の分の食糧が降ってくるんだっけ。

 どんなに空腹でも、逆にどんなに満腹でも、毎日決まった時間に決まった量が支給される世界。

 たっきゅんもそんな世界が「窮屈」って言ってましたわね。



「そうです。自由に食べれますわ。

 ……セネロも食べますよね?」

「あぁ、余も頂こう」

「でしたら、私は食糧庫へ材料を取りに行きますので、そこに居てくださいね」

「我も行くッッ!!!!」

「あら、着いてきてくれますの?」

「余も行こう。

 世話になる身だ、それくらい手伝わせろ」



 結局、三人で食糧庫へ向かう事になりました。

 

 ――――昼食を食べた後、どうしましょうか。

 とりあえず、彼等の服や日用品が必要だし、買い物へ行こうかしら。

 問題は買い物にも着いてくるか……お父様の服はあるけれど、入るか分からないわ。

 最悪、コートを羽織れば何とかなるかもしれないわね。

 その場合、真っ先に服屋へ向かわせましょう。

 たっきゅんが居ないのは残念だけど、今を楽しまなきゃ。

 

 玄関を出て右へ曲がって少し歩けば、ほらすぐそこに食糧庫が見えるわ。

 冷房も常備された完璧ハイテクノロジーな倉庫は、厳重に鍵をかけて――――開いてるわね。

 あら、どういう事? まさか、泥棒?



「むう……セネロ、この気配は……ッ!!!!」

「あぁ、"奴等"が居るな……」

「えっ!?」



 目で合図をした後、食糧庫へ向かって走る二人。

 奴等って……複数?

 一体、誰が居るのかしら。

 

 二人の後に続き、私も走る。

 そして食糧庫から中を覗くと、そこには――――――



「…………誰?」



 空っぽの食糧庫。

 その中心には仰向けで寝そべる、二人の子供が居た。

 入口からなので性別は判断できないけれど、黒髪の……え、本当に誰なの?

 この子達も続編のキャラクター? っていうか、食糧はどこ?

 セネロは食糧庫へ入り、子供の元へ行っているので、私はアポロへ質問をした。



「アポロ、この子達は誰?」

「あれは楽園の守護者(エデン・ガーディアン)の《アダム》と《イヴ》兄弟だッ」

「……アダムとイヴ……兄弟?」

「うむッ!! アダムが兄で、イヴが弟だぞッッ!!!!」



 ……誰か、もっと詳しく説明をしてください。




【逆トリップ狙いでしたが予想の斜め上を超えていました】


 ――望んでいたキャラ以外が逆トリップしてきた挙句、アダムとイヴが兄弟ってどういう事ですか?――



【英語の訳】

〈親愛なる律ちゃん〉

 こんにちは、ボクは神様だよ!

 この手紙を読む頃には、そっちに二人くらい神様が居るよね?

 彼等はキミが好きなゲームのキャラクターだよ。

 ゲームのタイトルは【Season AliceⅡ】。つまり続編だね。

 実は事情があって、彼等を暫くこの世界から遠ざけなきゃならないんだ。

 後で説明するけど、暫く彼等を預かってくれないかな?

 あ、キミって英語分かる? 読めなかったらごめんね☆

〈創造神より〉



翻訳サイトと辞書を見ながら作成しましたが……間違っていたらごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ