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プロローグ(高橋貴の数奇な日常)

文章が拙すぎて赤面ですが酷い所にも目を瞑りつつ瞑りすぎて何も見えなくなるくらいに読んでいただけると幸いです。

「きゃあ!ちょ、どこ見てんのよ!」

街角で食パンをくわえた縞パン少女。


「ちょっと、遅いわよっ!罰金、ばっきいん!」

どこかで見た事あるような高飛車ツンデレ少女。


「…………おはよう。」

クールで無口な眼鏡っこ。


「おはよお。今日もいい天気だねぇ。」

頭から花を飛ばしている天然少女。


「もう、うんざりだ…。」


そして、これがたくさんの女の子に囲まれた平凡ではない俺。

なぜ、こんな事になったのか。神に問いたい。何故なのだ!神よ!!




→逆行←


小さな頃、近所によく俺の世話を焼いてくれる幼なじみがいた。

毎朝毎朝俺の部屋に忍び込んではおっきろー!なんてはつらつな言葉をかけてくれていた。俺はそれに困った振りをしながらも内心すごく嬉しくて実は楽しみだったのだ。

俺が5歳になる頃、隣にフェロモンを漂わせた20代半ばのお姉さんが引っ越してきた。胸元が大きく開いたフリルつきのYシャツを着てにこやかに手を振ってくれたっけ。

小学校に入ると三つ編み髪の委員長がよく俺を注意した。こらー、高橋!って。今でも懐かしいや。

それから、保健室の先生。いつも妙にずり落ちた丸メガネをかけていてメガネを外すと超美人だった。

それから大阪弁のお金にがめつい女の子。妙に俺を誘惑してくる後輩。熱血な先輩。


たくさんの女子に囲まれていつしか俺の周りには意図せずにハーレムができあがっていた。

小さい俺は皆こうなのだと信じて疑わなかった。今、思えば幸せな時代である。

誤解を招きそうなので言っておくが俺は自慢などをしたい訳ではない。むしろ、俺の不幸はここから始まるのだ。


中学生に入ってますますハーレムは加速していった。

天の邪鬼少女に一日中引きずり回されたと思ったら、妙な部活の部長に捕まり延々と戦車の是非について語られた。と思ったら年増の先生に放課後無駄な事で呼び出され、さらにドジッ子が起こしたハプニングを押し付けられ、電波少女に川へ簀巻きで投げ飛ばされた。ヘトヘトになって家に帰ってもブラコンの姉に捕まりくだらないやり取りをさせられる。

羨ましいのならこんな、ラブコメ体質、なぞ誰にでもくれてやる。

しかし現実は無情。

助けてくれる者など誰もいない。そもそも周りの男共はひがみからなのか俺に近寄ろうとさえしない。

そんな生活が続いて俺の精神はどんどんと捻くれていき誰にも心を開くまいと固く誓った。


そういう訳で俺は毎日誰かに囲まれているぼっち生活を確立させていったのだ。



→今←


ふわあ、とあくびを一つした。

いけねぇいけねぇ、つい思い出したくもない過去を思い出してしまった。

現在、俺は部室にいる。部室と言っても無口な文芸部員から部室をぶんどって勝手に作り上げたなんちゃらとかいうよく分からない部活で件の高飛車少女が部長である。この設定どっかで絶対見た事あると何度突っ込もうかと思ったがそれに関しては閉口した。

その部長様は今妙に巨乳な天然先輩と我が部活を広めようとしているようである。

俺の貴重な時間をそれは強引に奪っときながら放置とは。今度あいつが居眠りでもしていたら口の中に大量にタバスコを入れてやる。どんな事になっても構うもんか。

などとくだらない事を考えながら俺は結局部活動完全終了時間まで律儀に残ってしまった。読み終えた本を無造作に鞄に詰め込むとがたりと音を鳴らして椅子をしまった。


と、それと同時にかちゃりとドアノブが回る音がして二つの音が混ぜ合わさってなんだかとてもシュールなハーモニーが奏でられた。

どうせあいつだろ、としばしドアを睨みつけるように眺めていた。しかしドアは一向に開く気配さえない。


自分でドアも開けたくないほどに我が儘になってしまったのかあいつは。非常にムカつくが仕方が無い。どうせ俺にはそれ以外の選択肢など一つも用意されていないのだから。

二、三歩大股で歩いてドアノブに手をかける。本当に涙が出てきそうだぜ。

大きく息を吸うと俺は大きくドアを開けた。


「あのなぁ!部活やるのはいいけど放置するくらいなら俺を誘うな!」


半ばやけくそにそう叫んだ。しかし言葉の応酬はなかった。

あれ、これじゃ俺ただの一人で騒いでるイタい奴じゃん。恥ずかしさを隠すように下を向くと。

ちょこんと丸まりながら震えているまるで小動物のような女子が佇んでいた。


「あ、あ、あの、す、すみません…。」


とんでもなくキョどりながらそいつはぺこぺこと頭を下げた。

下げる度に頭のてっぺんから生えている俗にいうアホ毛がぴょこぴょこと揺れていた。時折ちらりと見える顔は少し丸っこい顔に大きな瞳、さらさらとした髪を肩の辺りで切りそろえている俺史上でもまれに見る美少女だった。

しばし、その女を観察していた俺はハッと我に返り「いや、いいんだ。こっちが悪かったんだから。」と少しかすれた声で言うとまるで真似をしたように頭を下げた。

女は顔を真っ赤にして手を左右にふると控えめににこりと笑った。

うう、これは惚れてしまうな。俺レベルじゃなきゃな。俺はもう女というものにうんざりしている。いわば俺は女を見限っている。そんな俺が今更こんなどこかにいそうな美少女を好きになるものか。


「あの、それでですね、あの、えっと、あなたは高橋貴さん、ですよね?」


女は話しを戻す為にかゴホンと一つ咳払いをすると確認をしてきた。

ああ、こんなテンプレートな質問久しぶりに聞いた。

なので、俺も俺の中でテンプレートな返しをしてやる事にする。


「ああ、そうだよ。たかたかって続いててなんか変だろ。」


「いいえ!そんなこと、ありません。それで、あの、えっと。」


少女は言うのをためらっているようできょろきょろと辺りを見回している。

俺が笑いながらどうぞという意味をこめて手をやると女は信じてもらえないと思うんですけど、と前置きをしてうつむきがちに言った。




「実は私、ファンタジー体質で、昔から妙な事に巻き込まれているんです。多分、原因は高橋君と同じ物。私、知ってるんです。高橋君がラブコメ体質だって。」



時計の針が動いてカチリと音が響いた。



今、確かに、俺の時間は、時を刻んだのだ。

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