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神々達の紡ぐ物語。

美少女ちゃんの知らない神々の不毛な争い。

作者: 池中織奈

『巻き込まれて~』、『私の妹は可愛い』の関連作品です。というか、『巻き込まれて~』の続きで、『私の妹~』と同じ時期ぐらいのお話ですかね。

 「やっぱり、此処は王子とくっつけるべきよ!」

 「何を言ってるのよ。モテ子の周りには沢山の男が居るじゃない。ドロドロよ、ドロドロを目指すべきなのよ!」

 目の前で繰り広げられる不毛な争いに、私――、知と探求の女神メイリンは思わず苦笑を浮かべてしまう。

 此処は、神界の一角である私の家である。私の部屋は2千年も空けていたのだが、アルスとキーナがきっちり掃除はしてたみたいで全然埃をかぶっているとかそんな事はなかった。ベッドや机などがただ置かれているだけの割と殺風景な部屋だ。

 今目の前で口論を続けているのは、愛の女神・エレロウスと花の女神・フロネアだ。ちなみにいうとユーキはキーナが構い倒している。あの子本当シスコンよね。アルスは私の傍に居たがってたけど、エレロウスとフロネアが女同士の会話だから邪魔! って追い出しちゃったのよね。

 そして二人の視線の先には、《遠見》という対象を見る魔法により、美少女ちゃん……私がこの世界に戻ってくるきっかけとなった勇者、皆本雅ミナモトミヤビが映っている。その周りにはパーティーメンバーである男達が存在している。

 どれもこれも美形だというのだから、恐るべき逆ハーである。まさに物語の”主人公”とも言える逆ハー美少女、件の美少女ちゃんである。

 「全く、二人とも変な言い争いいい加減やめないかしら」

 椅子に腰かけたまま思わずふぅとため息が口から洩れた。

 「もうメイリンももっと楽しんで人の恋愛見ましょうよ。やっぱり幸せな愛がいいと思わない? 私メイリンとアルス夫婦は見てて好きなのよねー。なんかラブラブって感じだもの」

 そんな事を言いながら私の方を向くのは愛の女神・エレロウスだ。

 金髪に碧眼の美しい女神で、その外見は何処か神秘的だ。エレロウスは幸せな恋愛というものが大好きだ。

 エレロウス自身も恋多き女で神々や人間やエルフなど様々な人と恋愛をしてきた人間だ。とはいっても別に複数相手ってわけではない。その時その時で付き合ってる人が違うって言うだけだ。神々の中ではエレロウスの元彼も結構いる。

 神々は私とアルスみたいに夫婦の契りを交わしているものもいるけれども、不老不死にも等しい私達だから一人相手にずっと思いを持ち続けてるっていうのは少ない。

 基本的に神々は自由だから、不倫的な展開や奪略愛とかももちろんある。一夫多妻になってる女好きも居るし、私とアルスみたいな夫婦の方が珍しい。

 「エレロウスってばわかってないわね。昼ドラ的な展開の方が絶対に面白いに決まってるじゃない!」

 エレロウスの言葉に、びしっと指をさしてそう言い放ったのは花の女神・フロネアだ。

 フロネアは新緑の瞳に赤茶の神を持つ女神で、その体からはいつも甘い花の香りが漂っている。フロネアはエレロウスとは違って何て言うかドロドロとした恋愛を見るのが好きだ。

 エレロウスとフロネアは対極の考え方を持ち合わせているからよくこんな風に口論している。それに二人とも下界(地上の事)に降りて好き勝手人の恋愛に手を出すという人間達からしたらちょっと迷惑な神々なのだ。

 エレロウスは恋愛を実らせようとして、フロネアはかき乱そうとする。

 ドロドロが好きなフロネアは私の零した”昼ドラ”って単語が気にいったらしく最近よく使っているが、テレビもないこの世界ではきっと理解していないんだろう。

 本当にこの二人は2千年前から全然変わっていなかった。

 「何よ、フロネアってば、この子は愛されてるのよ。だったら幸せな愛に満たされるのがぴったりじゃない。周りに愛される中でたった一人の存在に愛を感じて、周りの人間を傷つける葛藤とその存在を愛してるという気持ちを感じながらも、様々な事を乗り越えていくこそがラブロマンスよ」

 「それじゃ詰まんないでしょうが! やっぱり恋愛はドロドロがいいのよ。愛は時に、憎しみを生むの。愛してるけど憎いって、そういう思いから暴走して相手の思い人に手を出すの。そういう過程によって純粋さを失っていき、複雑に絡み合った思いと欲しいという欲望のままに真っ黒に染まった心で行動していくのよ! それこそ見ていて面白い愛じゃない!」

 そんな二人の会話を聞きながらも、私はのんびりと《遠見》によって見える美少女ちゃんをじっと凝視している。

 まず、美少女ちゃんのパーティーは女一人という逆ハー状態である。

 メンバーは騎士、王子、魔法使い、神官である。

 各スペックをご紹介しよう。

 まずは騎士。女受けのしそうな顔立ちで、フロネア達の話を聞く限り美少女ちゃんに出会うまでかなりの女好きだったらしい。実力はあるものの飄々としていて軽い印象を人に与える。

 目はグレーで、髪は茶色だ。騎士団の服に身を纏っている姿は様になっている。さりげなく美少女ちゃんを口説いているが鈍感スキルが発動し本気ととられていない。

 2人目は王子。王家は元々魔力が高いという特徴があるのに加え、剣の腕ももっている。この国の第二王子で、兄が即位した後は補佐として過ごす予定らしい。一目みたその時から美少女ちゃんにフォーリンラブって奴らしい。王太子や王の反対を押し切って旅についてきたと聞く。

 目は青で、髪は金色だ。何だか全体的にキラキラと輝いている。性格も悪くはないらしく、補佐としての仕事も優秀なのだという話だ。

 3人目は魔法使い。宮廷に勤めている魔法使いで、最年少で宮廷魔法使いになった天才らしい。まだ15歳で若い。美少女ちゃんの後ろを笑顔で付いて回る様子は飼い主にじゃれる子犬のようだ。美少女ちゃんに一番恋愛対象として認識されておらず、どちらかといえば弟として認識されているようだ。

 目はエメラルドで、髪は赤茶だ。ローブを身に纏っていつも笑顔を浮かべている姿はとてもじゃないが魔王討伐のメンバーの一人だとは思えない。ただし甘くみるのは禁物だ。最年少宮廷魔法使いの名は伊達ではない。

 そして最後の一人は神官。神聖魔法に長けている人間で、いつも穏やかな笑顔を浮かべている優男である。地球でいるケ○ルとか、ホイ○とかそっち系の魔法が使えるってわけ。

 目は黒で、髪は青だ。力強さはないが、穏やかな気質の人だ。神聖魔法の実力は国でも群を抜いていて、見た目では大人しそうに感じるが剣術も使えるというのだ。美少女ちゃんの優しさに胸をきゅんっと射ぬかれたようである。

 それでいて全員が全員美形。地球でいるイケメン。

 それが全員美少女ちゃんに向かって思いを向けているのだから本当になんていうか主人公体質よね。

 「ねぇ、メイリンはどう思う? やっぱり幸せになってほしいと思わない?」

 「いいえ、メイリンは昼ドラ的展開の方がいいわよね?」

 二人していきなり詰め寄ってきてそんな風に聞いてくるものだから返答に困る。正直な感想を言うとどうでもいいというのが正しい。

 「私は対して親しくもない人の恋愛なんてどうでもいいからどっちでもいいわ」

 この世界の神の一人として魔王討伐頑張ってとは応援したいけれども、恋愛関係にまで口を出そうなんては思わない。アルスは私を巻き込んでくれてありがとうって、それだけは感謝してたみたいだけど。

 「もうメイリンってば無関心なんだから。もっと他人の恋愛に興味持ちましょうよ。見てて幸せな気分になるわよ? 女の子は恋してこそ綺麗になれるものだしね!」

 エレロウスってなんか女子高生のようにキャピキャピと恋愛について話すのよね。恋愛を見るのもやるのも大好きって子だから。

 エレロウスですっかりなれてたから日本での女子高生特有のキャピキャピとした会話もすっかり聞き流せたのよね。ほらあの年頃の子達って恋愛事が好きだから私にも好きな人居ないのって聞いてきてたクラスメイト居たけど、流石に異世界に夫が居ますなんて正直な事言えないから軽く流してたの。

 「見てて幸せよりも面白い気分になる方がいいじゃない。だからやっぱりドロドロ万歳よ! 浮気や不倫で泥沼展開に突入してこそ見てて面白いじゃない」

 「もー、フロネアってばそれじゃあ私は嫌なの。いい? この子は愛されるべき存在としてそこにいるのよ。愛されて、満たされて生活してるの。絶対にドロドロな展開より幸せな方がいいわ!!」

 「エレロウスこそわかってないわね。本当に、満たされているからこそかき乱したら最高なんじゃない」

 「どっちでもいいけど、ちょっかいだすなら魔王退治終わってからにしなさいよ?」

 思わずふぅと息を吐いてそういってしまう。

 悪性魔粒子の塊である魔王を倒すべく呼ばれた勇者パーティーが神々のちょっかいにより恋愛沙汰でゴタゴタして魔王退治鈍行とかシャレにならないもの。

 帰還の魔法陣も今の時代にはきっちり使用可能らしいけれども、美少女ちゃんは帰るのかしら。それとも残ったままにするのかしら。どっちでもいいけど、残ったら思いっきりエレロウスとフロネアの観察対象で、ちょっかいだす相手になりそうよね。

 「そうね。今すぐ色々と関わりたいけど魔王退治中だものね」

 「ふふ、そうね。かき乱すのは終わってからにしてあげるわ」

 「って、フロネア! 私はそんな事させないわよ! 幸せな恋がいいに決まってるんだもの!」

 「いいえ、ドロドロ最高、昼ドラ展開最高。やっぱり殺傷沙汰起こってこそ面白いじゃない!」

 魔王退治中はちょっかいを出さないと言っているからいいものの、魔王退治が終わったら美少女ちゃんの周りはどうなるのだろうかと思わず会話を聞きながら思う。

 《遠見》で映っている美少女ちゃんの事を見ながらも私はただ思うのだ。

 エレロウスとフロネアが恋愛にちょっかい出すだろうけれど色々と頑張れ美少女ちゃんとただそれだけを。


 それからアルスが我慢できなくなって私の部屋に飛び込んでくるまで、ずっとエレロウスとフロネアは口論を続けていたのであった。



 ―――それは美少女ちゃんの知らない神々の不毛な争い。

 (私には頑張れとしか言いようがない)

『私の妹は可愛い』できらっとエレロウスとフロネアの話書いたのでそこらへんんでかきたくなってついかきました。


現在の観察+ちょっかいを出したい相手は美少女ちゃんです。


楽しんでもらえたらいいなぁと思います。

感想もらえたら喜びます。


この二人結構好き勝手にやる二人ですので、他人の恋愛にはよく口を出します。

地上の神々の記述では、この二人はよくいます。(よくちょっかいだしに地上に居るから)


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― 新着の感想 ―
[一言] ついでに美少女視点の 学校に通う→召喚される→冒険する(男どもをゲット) までの感じの話を少しみてみたいかもです。 (学園での生活をどう思ってたのかとか、召還されたばかりのころの自分の周りを…
[気になる点] 私の部屋は2千年も開けていたのだが 空けて [一言] ダイの大冒険のヒュンケル的な立場となんてどうでしょうw
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