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ワールズダスト  作者: Hekuto


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第八十七話 兎神来襲!

 お久しぶりのHekutoです。


 時間がかかりましたが無事修正作業等終わりましたのでお送りさせていただきます。それでは、ワールズダスト八十七話始まります。



『兎神来襲!』


 日を追うごとに冷たくなってきた風とは違い、晴れ渡った空の暖かな日差しの下、とある岩の上ではユウヒが画面越しにアミールと会話を続けていた。


「とりあえず、これで感想とか聞いてくれるとありがたい」


「わかりました。それにしてもこんな短時間でお酒を造れるなんて・・・」

 イロイロと一悶着はあったものの、無事お酒を渡すことが出来たユウヒの顔をホッとしたもので、未だ驚きが抜けきって無いアミールに、依頼者からの感想を聞いててほしいとお願いをしている。この会話から分かるように、ユウヒはまだまだお酒の試行錯誤を止めるつもりが無い様だ。


「神様は作れないのか? お酒の神様とかいそうなのに?」


「いますよ? でもみなさんこだわりがあるみたいで」

 管理神には、アミールの様に管理神として生まれた者の他に、各世界ごとに存在する神から管理神へと転化する者もいる。また各世界の神々の中には個人的に管理神と付き合いのある者も大勢居り、その中にはお酒の神の一柱や二柱くらい当然存在している。


「ふむ、まぁ確かに神様になるぐらいだもんな、拘りもあるよなぁ」

 しかしそれらの神々は酒の神となるだけに譲る事の出来ない拘りがあり、そんな神々からすればユウヒのお酒は邪道などと言われるかもしれない。


 アミールの話で、お酒を造る者の拘りと言うものに気が付いたユウヒは、少し困ったような表情で考え込む。


「・・・(あわ!? ユウヒさんが落ち込んでます!?)あ! でも水をワインに変えてしまう方が居ますよ? それでも熟成させないと若いからあまり美味しくないとか言ってらっしゃいましたけど・・・」


「お、おう・・・そりゃすごいな」

 そんなユウヒの表情を見て気落ちしたと思い、心の中で慌てはじめたアミールは、高速回転する思考である神の存在を思い出しユウヒをフォローする。しかしユウヒは、その内容に思わず引き攣りそうになる顔に力を入れると、返事を吃らせてしまう。


「どう考えてもあの人ですねわかります」

「十字架の人でござるな、ちゃんと今も居るんでござるな」

「なんだろ、神秘がすごく身近になった気分だな」


 それはユウヒの世界でも馴染のある神の逸話である。その者は水をワインに、石をパンに変えたと言う。その神を信仰していない者でも、オタクなら多少は耳にしたことのある内容に、ユウヒだけでは無く三人の忍者達も驚きを隠せないのであった。


「そうです神様で思い出しました!」

 忍者達と視線を交わしたユウヒ、互いにまさかの内容で妙な表情をしている。そんな四人を不思議そうに見つめていたアミールは、ある事を思い出したようで大きな声をあげる。


『?』


「あのユウヒさん・・・そろそろラビーナさんと会って頂けませんか?」


「らびーな・・・・・・おお! そんな神様の話しもあったな、すっかり忘れてたよ」

 アミールが思い出した内容とは、だいぶ前に話をしていた。と言うより、途中まで話して詳細な話を忘れていたラビーナについての事であった。ユウヒも忘れていたのか、腕を組んで首を傾げる事十数秒後、沈んで行く頭を勢いよく持ち上げるとスッキリした表情で忘れていたと零す。


「あ、ははは・・・ユウヒさんに会いたくてしょうがないらしく、昨日も・・・」

 アミールも半分忘れていたらしく、何も言えず渇いた笑いを漏らしてしまう。そんな彼女がその話を思い出したのには理由がある。実は昨日の事なのだが、珍しくラビーナ以外の神族から通信があったのだった。





 時はユウヒがスニールコンパニオンズと手合せをしていた頃、場所はアミールの仕事部屋。


 アミールは先輩であるステラから頼まれた仕事を終わらせ、嫌がらせとばかりに大量のデータを送った後、ユウヒ謹製ハーブティーを飲み休憩をとっていたのだが、そこにとある通信が届いたのだ。


「あーこれはきついね・・・あ、あんたがアミール様かい?」


「ええ、あなたは確かメディーナさんですね? お母さんから話は伺ってます」

 この世界でアミールに連絡してくる相手は、色々な理由から非常に少ない。その中でも珍しく今回は初めての相手で、某豊穣の女神の娘にしてラビーナの姉にあたる、女神メディーナであった。


「う、ちょっとその話は聞きたくないね・・・それより家のラビーナがちょっとね」

 そんな相手は、ニコニコとしたアミールの返答を聞くと、通信による急激な魔力消費で顰めていた表情を少し嫌そうに引きつらせ、手早く要件を話し始める。どうやらラビーナと違い、彼女にとってこの通信は無駄話を挟めるほど簡単に熟せるものでは無いようだ。


「な、なにかありましたか!?」

 メディーナの引き攣った辛そうな表情も合いまり、何か緊急事態かと声を慌てさせるアミール。


「え? 何だって? はいはい・・・えっと、ユウヒ君禁断症状だからそろそろ会わせてほしいだってさ」


「へ? ・・・えっと、いつでも会いに来ていいと言うのはお教えしたと思うのですが」

 しかし画面の向こうのメディーナの表情には辛さの他に呆れも含まれており、後ろを振り向き誰かと話した後の表情は呆れに疲れがプラスされていた。


 そんな彼女の話しから、どうもラビーナがユウヒに会えない寂しさで弱っていると言う事らしく、その話しを聞いたアミールはきょとんとした表情で以前の通信を思い出しながら聞き返す。


「それがねぇ本契約してるわけじゃないから場所が分からないらしんだよ・・・転送とかしてもらえないかね?」


「そう言う事ですか・・・ふふ、それでは近々連絡を入れるつもりですから、その時了承がとれれば転送しますね?」

 申し訳なさそうなメディーナのお願いに、くすりと微笑んだアミールは快く承諾する。


 この世界の神は気に入った人間によく加護を与えるのだが、その中でも本契約と言うのは大きな加護の力を与えると共に、ある程度お互いの位置を知ることが出来る。


 いくら神だからと言っても、何の準備も無しに誰がどこにいるかなど把握できるわけでは無く、また本契約を成したとしても、相手側の意志を無視して位置を割り出すことは出来ないなど、中々万能とは言えないのである。


 その為メディーナは仲介役としてアミールを頼ったわけなのだが、本来このような事はレアケースであり、これは偏にアミールとユウヒと言うさらに珍しい関係性があったからこそ出来た手段であろう。


「そうかありがと、なるべく早くその時が来ることを願ってるよ・・・わり、これ以上の通信は無理そうだ」

 喜んだのも束の間、急激に顔色を悪くするメディーナ。どうやらこれ以上の通信は彼女の力では無理な様で、メディーナの無理と言う言葉と共に画面も不安定になって行く。


「わわ!? 無理しないでください! 連絡が付きましたらすぐに転送しますので!」

 その状況に早口で返事を告げるアミール、これがこの世界での管理神との通信における常識であり、何度もアミールと話せるラビーナや某豊穣の女神が異常なのである。


「わか―――たの――うわこら!? らび―――アッー!?・・・―――」


「ええ!? 何がどうなったんですか!?」

 そして次第に消えて行く通信画面は、心配そうに見つめるアミールの目の前で、何やら妙な叫び声を残し途切れるのであった。





 と言った事があったと言う説明がされている岩の上。


「と言う事がありまして・・・」


「・・・そのメディーナって人・・・神様が心配だな」

 困ったような表情のアミールに、ユウヒは顎に手を添え顰める様な表情を浮かべる。その表情は本気でメディーナの心配をしているようで、頬には一筋の汗が流れている。


「そうですよね・・・それで今転送してもいいでしょうか?」


「そうだな、早い方が良いだろ」

 ユウヒ同様、あの後何があったのか気になっているアミールは表情を引き攣らせるも、すぐに本題に戻りユウヒに尋ねる。ユウヒもその提案に賛成の様で、頷き快く了承した。


「これは生神様が拝めるチャンス!」

「カメラが無いのが悔やまれるでござる」

「しかも女神様ですよ! ハァハァ!」


 そんなやり取りをしている後ろでは、話しを聞いていた三忍者が興奮した様に声を上げていた。目を輝かせるジライダや本気で悔しそうに地面に手を付いて落ち込んでいるゴエンモはまだいいが、荒い息を漏らすヒゾウは既に通報されるレベルである。


「それじゃちょっと待っててください。連絡入れますから」


「あいよー・・・しかし詳しく聞いてないけどどんな神様何だろ?」

 ユウヒが遮蔽物になり三忍者の惨状が見えて無いアミールは、了承もとれたことで少し嬉しそうにユウヒとの通信を中断し画面から消える。その際返事をしながら手を振るユウヒに向かって、アミールは嬉しそうに手を振っており、ユウヒの動悸をすこし上げたりしていたがこれはユウヒだけの秘密である。


 ユウヒは、通信画面の『しばらくお待ちください』と言う文字と共に三頭身のミニアミールが頭を下げている映像に和みながらも、腕を組み今から来るらしいラビーナと言う女神について考え始める。


「聞いてないのでござるか?」


「そうなんだよなー俺がこの世界の人間であるっていう設定上、俺の信仰神的ポジションらしいけど」

 ユウヒのその様子に、復活したらしいゴエンモが不思議そうに尋ねる。そう、ユウヒはラビーナについて概要は聞いているものの、そのほか詳しい外見や特徴、性格などの情報は一切聞いていないのである。


 ユウヒはゴエンモの問いかけに、最低限聞いていた分の内容を教えると、胸の前で腕を組んで首を傾げた。


「ほう、設定・・・か、それはまた厨二がざわつくな」

「俺等にもいるのかその設定上の信仰神?」

「忍者が信仰する神でござるかぁ見当もつかないでござるな」


 この世界の生物は、自ら拒否し続けない限り何かしらの加護を受け、それは突然現れた存在でもこの世界で過ごすうちに加護を受ける事になる。ならば何故ユウヒは予め決めていたのか、それは加護を与える側が善良と限らないからである。


 ユウヒの様に強力な力を持った存在は様々な存在から気に入られ、その中には邪な者も多く存在する。そんな異世界らしい危険性を考慮したアミールが、善良かつ力ある神を探し選んだ結果、目出度く? 兎神ラビーナになったのである。


「ユウヒさん! そ、それじゃそちらに転送させますので、ってああこんな時にまた先輩から・・・すいません用事が出来たので通信切りますね」


「おう、またなアミール」

 そんな背景のあるユウヒと違って三人に加護を与える存在は不確定要素が多い、異常な性能を誇る三人なだけあり予想は難しく、その結果彼らにどのようなふこ・・・未来が待っているのか楽しみでならない。


「はい! 必ずまたお話ししましょうね! 近いうちに!」


「おーう・・・なんだかテンション高かったなアミール(やっぱ一人仕事は鬱憤溜まるのかな)」

 そんな未来など気にもしていないアミールは、気合の籠った言葉を残すと通信用の画面と共に姿を消す。最後まで映っていたアミールに手を振り続けたユウヒは、通信が終わると首を傾げ不思議そうにそう呟くのであった。


「・・・報われんな」

「・・・ここは末永く爆発してくださいと言えばいいでござろうか?」


 目の前で繰り広げられた天然と鈍感の会話に生暖かい視線を送りながらも、どこかうんざりした表情のジライダと難しい表情で首を傾げるゴエンモ。


「・・・ん? 何か魔法陣が出て来たぞ」


「おー俺がここに来たときっぽい光だな」

 二人に倣ってヒゾウも何か言葉を贈ろうと考えていると、突然目の前の地面に白く輝く円形の図形が浮かび上がる。その光はあの日、ユウヒがこの世界にやって来た時と同じ光であった。


 四人がその光を見詰める事数秒後、


『おおおお!? なんという美女神!』


 光の中から現れた二つのシルエットに、立ち上がった三人の忍者は心の叫びをそのまま口から吐き出した。


 彼らの視線の先には、長くすらりと伸びた足と体の線が際立つ服装を纏った美しい長身女性と、大きなウサギ耳に真っ白で体の線が分かり難い服装の、綺麗より可愛いと言う言葉が似合う女性が立っていた。


 しかし彼らが見詰めるのも束の間、


「・・・流石は管理神だね、タイムラグ無しとは、ん? あんたがゆ「ユウヒきゅん!」」

 背の高い女性、メディーナがユウヒに声をかけようとした瞬間、隣に立っていた女性は目を怪しく光らせると、目にも止まらぬ速さで跳びかかり。


「うわ!? なむぐぅ!? むー! むー! むぅうー!?」 


「あちゃー・・・」

 ユウヒをその大きな大きな双子山に沈めたのである。


「・・・な、なんという巨峰!? 勇者ユウヒの顔が完全に埋もれただと!?」

「これは見事のスイカップ!? いやそれ以上でござるか!?」

「異世界の白ウサギは化物か!?」


 あまりにも急な展開、そして衝撃的な映像に驚き固まる三人の忍者達だったが、流石鍛えられた新人類ヘンタイである三忍、即座に現実へ復帰すると雄叫びにも似た歓喜の声を上げる。


「むーー!? むーむー!」

 その歓喜の声を上げ続ける三モブの目の前では、現在進行形で見事な山々の谷間に埋もれ、呼吸困難に陥っているユウヒ。男なら誰もが歓喜する展開だがやられてる側としてはたまったものでは無い。


 ここで良く考えてほしいのだが、ユウヒは用心深いところがあり起きている時は常に身体強化の魔法などを使っていて、その力は槍の一振りを音速に出来るほどである。いくら相手が敵意の無い女性だからと言っても、命の危機ちっそくしが迫れば振りほどきもすると言うもの。


「はぁはぁ、ハァハァ、これですぅこの感じ! 信仰の力をお腹の下辺りにキュンキュン感じます!」


「はぁ・・・」

 しかしユウヒはもがくだけで一向に振り解こうとしない・・・否、振りほどけないのだ。ユウヒの使う魔法を凌駕するほどの力を持つ兎神ラビーナ、これがアミールの選んだユウヒの信仰神が持つ真の実力? である。


「ユウヒきゅん! 私がどんな害からも絶対守ってあげます! 火だろうと女狐だろうと貞操の危機であだ!?」


「はいはいはい! それ以上やったら死んじゃうから! ・・・てか死なない君もすごいねぇ?」

 笑みでだらしなく歪められた表情のラビーナ、こんな状態だが神の中でもそれなりに強い力を持っている。加減を間違えれば人の命など風前の灯の様なもので、その事を分かっているメディーナは若干怪しい空気を出している兎耳頭を躊躇無く叩くと、そのまま兎耳とユウヒのポンチョの襟部分を掴み引き剥す。


「はぁはぁ、身体強化の、魔法、使って、て、よかった・・・」


「・・・大丈夫かい?」


「え、えぇありがとうございます。少しピンク色の川と、川向こうで手を振る虎柄で角の生えたバニーガールが見えましたけど、生きてるみたいです」

 引き剥されたユウヒは、フラフラしながらも腰を屈め下から顔を覗き込んでくるメディーナに頭を下げる。しかしその表情は優れず、意識が逝ってはいけない所まで行っていたようだ。


「・・・ふぅん? 思ってたのと違って随分骨がありそうだね」

 ユウヒの救世主であるメディーナは、その様子を驚いた様に見詰めると面白そうに目を細める。何故なら、彼女の予想だと今頃両腕の関節は1箇所づつ増え、さらに背骨も砕けている可能性が合ったのだ。それが疲弊はしているものの、しっかり自立し受け答えも出来ており、その予想外な状況に彼女は驚きとうれしさを感じてしまったのだった。


「だだだ、大丈夫ですかユウヒ君!? 誰にやられたんですか!? あの黒いのですか!?」


『おまえだよ!?』


「ぴぃ!?」


 そして加害者である兎はと言うと。強かに叩かれた頭の痛みから復帰し視線を上げ、メディーナの隣でふらつき顔色を悪くしているユウヒを確認すると、驚いた表情で跳び上がりユウヒを心配する。


 どうやら先ほどまでユウヒ禁断症状(ラビーナ命名)でおかしくなっていた彼女は、自分が何をやったかを忘れており、隣で驚愕の表情を浮かべる黒い三つの何かに気が付くと、自然な流れで罪を押し付けるも、即座に飛んでくるトリプルツッコミに涙目で飛び上がり驚く。


「・・・・・・ぐふ」

 そんな、いつもなら何かしらリアクションを取るであろうぐだぐだな状況に、流石のユウヒも今は無理な様で、4人で騒ぐウサギと黒いナニカを呆れた目で見詰めるメディーナの隣で、静かに地面に崩れるのであった。


「あ、おいしっかりしな!?」


「ユウヒきゅん!?」


『ユウヒ殿!?』



 いかがでしたでしょうか?


 今回はようやくユウヒに会えた兎神でした。何故か最近メディさんが苦労人タイプになっている気がしますがキノセイデスヨネ?


 そんなわけでユウヒの無事を祈りつつ、次回もまたここでお会いしましょう。さようならー

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― 新着の感想 ―
[一言] チョロイン、ヤンデレ、させ子、ツンデレ これでもか! って感じで作者の妄想が詰め込まれてるよな.... 掲示板のあるタイプが読みたくて 検索したら、前提となる今作があったんで読み始めたが..…
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