表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールズダスト  作者: Hekuto


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/155

第八十六話 錯乱女神と偉人ユウヒ?

 どうもお久しぶりです。

 修正とか書き直しが終わりましたので、短いですが八十六話をお楽しみください。




『錯乱女神と偉人ユウヒ?』


 とある平らな岩の上でそれは起こっていた。


「ゆ、ユウヒさんあれはその違うんです!? 決して私が露出好きとかそんなんじゃなくてお風呂にはいっててですね!? そ、それでユウヒさんからの通信に気が付いて慌てて出たんでそのままだっただけで決して――」


「うんだいじょうぶすべて理解したから、俺も急にかけて悪かった」

 ユウヒがアミールに連絡を入れてから十数分ほどが経過した岩の上では、顔を耳まで赤くし涙目になったアミールが、空中に浮かぶ画面の中で必死にユウヒへ釈明し、その姿に顔を赤くしたユウヒが頷き謝る姿があった。


「いえユウヒさんは何も悪くないです! それにユウヒさんだったら私・・・大丈夫ですから! ・・・はぅ!?」

 完全に悪意無く起きたハプニング、しかしこういう状況で悪くなるのは男性側と言うのが世間的に通例だろう。その通例にのっとりユウヒは頭を下げたのだが、その姿に慌てたアミールは羞恥と罪悪感で混乱したまま凄い事を言い始め、すぐにその意味を再認識するとまた顔を茹でダコの様に真っ赤に染める。


「おい、これはなんだ? 何が起きている・・・ゴフ!」

「せ、拙者今なら口から砂糖を3キロぐらい吐けそうでござる・・・うぷ」

「アマイ、空気がアマイよ・・・パ○ラッシュ僕なんだか吐きそうなんだ」


 お互いに赤い顔で謝り続ける二人の後方、何故か姿勢を正して岩に座る三忍者、その表情は目の前の二人とは対照的に蒼く今にも死にそうな顔である。


 プルプルと震え口から一筋の赤い液体を垂らすジライダ、今にも何かを吐きそうなゴエンモ、そしてどこから連れて来たのか、ふさふさのワンコを抱く瀕死のヒゾウはそのまま犬に逃げられている。


 それから忍者達に精神的苦行を与える事さらに十数分後、


「うん、俺の用事もあるんだけど今日はアミールにお願いがあってね、後ろの3人からなんだけど」

 やっと真面な会話が可能になったアミールに、ユウヒは本題を話し始める。


「お願いですか? えっと・・・ああ! クソ上司!・・・コホン、愚物共ぐぶつどもが迷惑を掛けた方々ですね?」

 ユウヒの紹介により、初めてユウヒの後ろにも人が居る事に気が付いたアミールは、見詰められ若干照れる三人の姿に驚いた様に声を上げると、自然と毒を漏らす。しかしそんな自分の姿が恥ずかしかったのか咳を一つ漏らすと、ニッコリと微笑みながら再度、毒を漏らすのであった。


『言い直してより毒がきつくなっているだと!?』


「あ、アミール疲れてるの? 何か疲れに良い物送ろうか?」

 思いもよらぬ毒に三人の忍者はショックを受けたのか叫び、ユウヒもそんなアミールを心配そうに気遣う。


「ち、違うんですよ!? ちょっと言い間違えただけで! それに私ユウヒさんとお話しできればそれで・・・」

 どうやら意識せずに自然と出た言葉だったようで、再度わたわたと慌て釈明を始めるアミール。その言葉尻に近づくにつれてアミールはモジモジと声を小さくしていく。 


「ああうんわかった、たまには話し相手になるよ。一人で頑張ると疲れるからね(仕事大変なんだな・・・)」

 これほど自然に毒が出るまで元上司に対して鬱憤が溜まっているとは、溜め続けたアミールが凄いのか、アミールに自然と毒が漏れるほどのストレスを与えた元上司のどちらが凄いのであろうか。


「は、はい! いつでも連絡ください!」

 そんな鬱憤もユウヒの気遣いのおかげかどこかに行ってしまい、先ほどまで陰のあったアミールの表情も明るく輝いている。


「(ユウヒ殿気が付いてー! アミール殿の心に気が付いてー!)」

「(ユウヒ殿の感ちゃんと働いてー! 今が働き時ですよー!)」

「(未来が視える! 気が付かないユウヒと報われないけど幸せそうなアミール氏の姿が!)」


 しかしその表情に含まれる感情がどう言うものか気が付いていないユウヒと、そんな事などどうでもいいアミールの二人に、三モブ忍者達はもどかしさからやきもきとし、心の中で叫び声を上げるのであった。


「ぅ・・・どしたの三人共? お願いしないのか?」

 画面の向こうの嬉しそうなアミールの姿を、直視することに耐えられなくなったユウヒが目を逸らすと、背けた視線の先に苦悶の表情で体をくねらせる三人の同朋を見つけ首を傾げる。


『とりあえず最初にアミール様、超頑張ってください!』


「へ? あ、はい? 頑張ります?」


 首を傾げるユウヒを押し退け画面に近づいた三人は、第一声でアミールを応援したのだが、当のアミールはその言葉の意味を理解することが出来ず。只々きょとんとした顔で頷き了解するだけであった。


『(だめだー! この人も鈍感天然だー!)』


「「んん?」」

 その返答に三人の男達は頭を抱えると、心の中で渦巻くのもどかしさと絶望感、それから嫉妬心にさいなまれ身をよじり悶える。その傍らでは彼らの奇行の原因である二人が仲良く首を傾げ、不思議そうに三人を見詰めるのだった。





 それから彼らが復帰し事の顛末を話し終えた小一時間後の岩の上、そこには現在もユウヒが張ったステルス結界が問題無く維持されていた。


「なるほど、そうですかお手伝いを・・・」

 その結界内では、この異世界に今しばし残りユウヒの手伝いをしたいと言う話が忍者達により語られ、その話しに画面の向こうのアミールは引き締められた真面目な顔で頷く。


 この時のアミールは特に駄目だとは思っておらず、ただ単に男同士の友情と言うものに感動していただけである。しかしその表情と視線に緊張していた三人のモブ忍者は、却下される恐怖に負けたのか慌てはじめる。


「そ、そうでござるお手伝いでござる! 決してこっちで可愛い女の子と知り合いになりたいとかそんな事だけじゃないでござる!」


「そ、そうだぞ? 我らはユウヒ殿の崇高な行いに感銘を受けたのである決しておにゃの娘とイチャイチャしたいとかだけでは無いのである」


「俺は八割女の子で残り二割は友情のためです! (百%善意と友情故の決断です!)」


「あー・・・もう突っ込みどころが多すぎてどうしようか」


 慌てた拍子か敢えてか知らないが三人の欲望は言葉と言う形でダダ漏れとなり、約一名に関しては本音と建前が逆になっている。そんな三人の様子を後ろに下がって見ていたユウヒは、片方の肩だけガクッと落とすと疲れた様な顔で苦笑いを浮かべるのであった。


「えっと? 良く分かりませんが・・・手伝って頂けるのでしたら帰還はユウヒさんと同じで大丈夫です。こちらとしても助かりますから」

 普通なら欲望ダダ漏れの交渉など上手くいくわけがないのだが、彼らの運が良かったのか、アミールの天然が予想以上だったからか、彼らの要望は困惑した表情のアミールによって許可される。


『キター! 美女の困惑気味の微笑み頂きましたー!』


「え? え?」

 その瞬間三人の忍者はその目を光らせると喜色に染まった声を上げ、アミールを更なる困惑の渦へと突き落すのであった。しかしこの三人、許可を貰った事よりアミールの表情に歓喜しているのだが、主目的を忘れていないか不安である。


「・・・うん、アミールそう言う事でしばらくは一緒に行動すると言う事になったから」


「あ、はいわかりました。許可はとっておきますね」

 萌えーと叫び踊り出す三人の妙な行動に頭がついて行かないアミール、そんな彼女にユウヒは困ったように微笑むと助け舟を出す。そのおかげかアミールの思考は正常に戻ってきた様で、ユウヒに微笑みながら返事を返した。


「それとこの間のお酒の件だけど」


「お酒・・・ああ! フェイト様の依頼ですね。特に急ぎでは無いのでいつでも大丈夫ですよ?」

 未だに踊り続けている三人の忍者を押しやったユウヒは自分の要件も済ませる為に話を進める。それは以前頼まれたお酒の話であり、昨日完成したお酒の届け先についての話でもある。


「ふむ? 依頼主はフェイト様と言うのか、とりあえず試作品が出来たので二つほどそちらに贈るよ」

 アミールに良くしてくれる上司からの製作依頼とは聞いていたが、その人物、神物の名前は聞いていなかったユウヒは依頼主の名前に一つ頷くと、後ろの樽群に目を向けながらそう告げる。


「・・・はい? えっともう出来たのですか? お酒ですよね?」

 その言葉にアミールは驚いた表情で固まると、恐る恐るユウヒに問いかける。


「そうだよ? おーいそっちの装飾の付いた小さい樽二つとってくれー」


 アミールの問い掛けに振り返ったユウヒは不思議そうに首を傾げながら肯定し、またすぐに樽の方に目を向けるとなにやら作戦会議中の三人に運搬を頼む。


「了解でござる! この妙に豪華な外装の樽でござるな」

「これって銀か? リアルならきっとお高いんでしょう?」


 小さいと言っても一抱えほど有る樽を片手で軽々と持ち運ぶ忍者達、他の大きな樽も一緒にここまで担ぎ走って来た彼らにとっては不可能な行為では無かった。さらに、片手で持ったその樽をいろんな方向から調べ、その見事な銀装飾をネタに漫才を始めるヒゾウ。


「ヒゾウ目を覚ませ? ここも現実だからな? それにしても銀かこれ? ちょっと違うような?」


「ん? それは精霊銀だよ、銀鉱石を製錬して魔法で捏ねてたら出来たから人工精霊銀ってとこかな?」


 ヒゾウのボケにしっかり対応するジライダであったが、その銀装飾に違和感を感じたのか首を傾げる。それもそのはず、その銀色の装飾はすべて精霊銀で出来ているのだから、しかも全てユウヒの御手製である。


「あれ? 精霊銀ってそんなに手軽な物なの? こう伝説的なとまでは行かずとも・・・ね?」

「実はこちらで言うアルミ的な立ち位置でござるか?」

「さ、流石異世界パネェ」


 そんなまさかの新事実に三人は、自分達にとっては伝説の金属でもこの世界にとっては現代日本で言う所のアルミ並みに身近な素材なのではと、戦々恐々とした表情でそっと樽をユウヒの前に置くと、樽の装飾を険しい表情で見詰め始める。


「そ、そんなわけありません! ユウヒさん、それはこの世界では既に失われた技術です!」


「え? マジで?」

 しかし彼らの予想は、アミールの多分に驚きを含んだ大きな声で否定される。ユウヒが驚き聞き返したアミールの説明通り、この世界において現在、人類が人工的に精霊銀を作る技術は存在しない。


 また水霊銀の様な類似金属も気ままな精霊達しか作ることが出来ず、精霊銀に関してはすべて天然資源に頼らざる得ないのが実情である。尚、精霊達が作る霊銀もこの世界では天然素材と言うカテゴリーに入れられている。


「マジです大マジです! 近代分の資料整理が終わってますが、その中でも人工精霊銀の作製に成功した人間は存在しません!」


「・・・流石マッドメイカーパネェでござる」

「魔王に不可能はないと言う事か・・・」

「そこに痺れる憧れるぅ」


 ぽかんとした表情で聞き返してくるユウヒに、アミールは興奮したように現実を突きつけ、その説明に三人の忍者は畏敬の念が籠った視線をユウヒに向け、思い思いに感嘆の声を漏らす。


「ええ!? あれぇ? 可笑しいなぁ・・・」

 この世界の人類史に名を連ねられるほどの偉業を成し遂げた張本人であるユウヒは、その事実を再認識すると驚愕に震える声を漏らす。


 それもそうだろう、ユウヒはその無限に等しい魔力を使い何となく作ってしまったのである。それがまさかそんな凄いことなどとは思いもしないわけで、しかしそんなどこかズレたユウヒだからこそこれまで様々な偉業を残してきたとも言えるのだった。


「流石ユウヒさんです!」


「う、うんまぁアレだよね人間ではって事だし、ほら? 神様印の力もあるわけだし・・・ね?」

 しかしそこは3モブ忍者隊と同じく一般人ハートの持ち主であるユウヒ、大きすぎる偉業(新たな黒歴史)をキラキラとした瞳で褒め称えてくるアミールと迫りくる現実から逃げる為に、精神的逃げ道を探して目を泳がせる。


「いえ、その力を使い熟しているのもユウヒさんだからなのですよ? もっと自信を持ってください」


「いや、その・・・ありがとう」

 しかしまお・・・女神からは逃げられないのか、純粋無垢な瞳でユウヒを褒め称えるアミールに元から無い退路を断たれると、観念したのかせざるを得なかったのか、ユウヒは疲れ引き攣った笑みで御礼を言うと力なく肩を落とすのであった。


「ヒソヒソヒソ(これはユウヒ殿を追い詰めるプレイでござろうか?)」

「ミソミソミソ(どう考えても天然だろ、追い詰めてる認識無しだろうなあれ)」

「モニョモニョ(というか認識無く歴史に名を残すような事を出来るとかマジパネェ)」


 そんな目の前の惨憺たる光景と、ユウヒを褒め続け精神的ダメージを与え続けるアミールの姿に、三人の理解あるモブ達は的確に現状を把握し恐怖している。


 しかし、まるで他人事のようなこいつら三人も知らぬところで伝説を作っているのだが、その事実を知った時彼らは果たして正常で居られるのであろうか、ましてや何十年も後に自分たちのやって来たことが物語に・・・いや、今は考えない事にしておこう。


 後の楽しみの為に。


『え!? 楽しみって何!?』


 いや、こっちに突っ込むなよ・・・。




 いかがでしたでしょうか?


 ユウヒとアミールのコンビは、某黒い彼らにとっては時に危険な何かを撒き散らす存在になるようですね。これは使えます・・・ふふふ。


 次回はもう少し早く仕上げたいところですが、次回も是非読みに来てください。それではさようならー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ