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ワールズダスト  作者: Hekuto


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第八十五話 強欲な森目指して

 お久しぶりのHekutoです。


 修正作業完了いたしましたので、更新させていただきます。八十五話、どうぞお楽しみください。



『強欲な森目指して』



 ここは、三人の忍者が予期せぬ御嬢の登場に、戦々恐々とした次の日の学園都市冒険者ギルド。


「お、アリーネ来たね」

 そこではベテランギルド職員のリッテが、カウンターの中からギルドを訪れたアリーネに手を振り出迎えていた。


「呼びだすなんて珍しいですけど、どうしたんですか?」

 いつも通りの陽気なリッテに対して、呼び出されたらしいアリーネの方は不思議そうな表情である。普段は大抵直接アリーネの自宅に押しかけ話しに来るリッテが、今日はギルドを通じて呼び出して来た事が不思議でしょうがないようだ。


「実は、ユウヒ君からの伝言が有ってね?」


「ゆ、ユウヒさんから! ・・・!? まさかばらし「てないから」そ、そうですよね」

 その理由をリッテが簡単に説明すると、知力と想像力が豊かなアリーネは一瞬ユウヒの名前に喜ぶも、伝言と言う形に嫌な予感を感じ、それはそのまま最悪の状況を想像してしまう。その為表情を明るいものから一気に暗いものに変えてしまうも、リッテの言葉ですぐに照れたようなホッとしたような表情へと変える。


「まったく恋する乙女なんだから、やーねーもー」


「こ!? ちちち、ちがいますよ!?」

 そんな百面相をするアリーネに、リッテはわざとらしく嫌そうな表情をつくると、手で自分の顔を仰ぎながら照れるアリーネをからかい始める。


「・・・はぁ、そんなアリーネにはちょっと酷かもしれないんだけどね?」


 しばらくそのままからかい続けたリッテだったが、少し眉を顰めると困ったように溜息を吐き本題に入り始める。


「はい?」

 リッテのそんな表情の変化と言葉に不思議そうに首を傾げるアリーネだったが、


「ユウヒ君なんだけど、何か特別な依頼があるらしくて学園都市を出ちゃったのよ」


「へ? い、いつですか?」

 その表情も続くリッテの言葉で慌てた様な表情に変わる。


「今日の早朝よ、それと」


「へ? はい・・・」

 アリーネは、ユウヒが冒険者である以上急に居なくなるのもしょうがないと言う理解と同時に、どうしても抑えることの出来ない喪失感による空虚な感情が、心の中を支配して行く。その感情は直接その表情とリッテへの返事にも表れていた。


「次来た時はどこか美味しい飯屋を教えてほしいだってさ、良かったじゃない何時になるか知らないけどデートのお誘いよ?」


「ふえ?」

 しかし、続いてリッテの口から紡がれるユウヒからの伝言内容に、顔を上げたアリーネの瞳は大きく開かれ、大いにリッテを喜ばせることになる。がしかし、リッテは自らが持ち合わせる天性の悪戯心から、言わなくてもいい事まで話し始める。


「実は他の娘にも同じような伝言残してったんだけど、何も言わずに行っちゃうお詫びにおごるってさぁ」


「ほ、ほかの・・・娘!?」

 その魔法の言葉は加速度的にアリーネの感情を掻き乱し、過剰に反応させると再度百面相に陥らせるのだった。


「いやー冒険者にしとくには勿体無い気の利きようよね、私にも奢ってくれるって言うし!」

 そんな目の前の状況を見て楽しそうに笑うリッテは、ユウヒとの会話内容をさらに付け加える。その雰囲気から、リッテもまたそう満更では無い感情を懐いている様である。


「・・・」


「あれ? 聞いてない・・・これは重症ねぇ」

 しかしその言葉や表情、雰囲気も今のアリーネには聞こえていないようで、一人百面相を続けていた。ついでにユウヒが伝言を残したのは、冒険者科と魔法士科の教師や子供達、研究所関係にとある騎士科の女性達などである。


 一応付け加えるなら、この伝言内容にユウヒの特別な感情が加えてあるわけも無く、唯単に友人的な額面通りの意味でしかないのであった。





 冒険者ギルドでリッテがアリーネの百面相で癒されている頃、ここはユウヒが学園都市にやって来た日、大きな岩の上を休憩に使った場所である。


「さてと、この辺まで来れば人も居ないかな」

 そんな場所にやって来たのはユウヒと黒い三忍者の四人、その理由は森に行くと言うほかにもう一つあり、その為には人目につかないようにする必要があった。


「そうだな、この辺りは岩ばかりで人は見当たらないな」

 キョロキョロと辺りを見まわし人が居ない事を確認するジライダ、その動きは正直適当に見まわしているようにしか見えない。しかしその索敵能力は忍者と言う新人類らしく高性能で、簡単に見回しただけでも自分を中心に800メートルはカバーできる・・・らしい。


「しかし、ユウヒ殿の移動魔法は便利でござったな? あれなら空も飛べそうでござる」


「人が空を飛ぶとかwww「飛べるよ?」マジカ!?」

 そんな人の気配が無い岩場までの道のりはあっという間で、【飛翔】の魔法で地表擦れ擦れを滑るように移動するユウヒの姿には三人も驚いていたほどである。ユウヒが見せた魔法に感嘆の言葉を漏らすゴエンモに、笑い飛ばすヒゾウだったが、その言葉はユウヒの言葉に遮られ驚き振り返る。


「まぁ飛んだこと無いし理論上の話しだけどね、それにちゃんとした使い方してないからかレベルも上がらないしな」


「レベルでござるか?」

 飛べると言うユウヒだったが、実はまだ【飛翔】の力を十全に使用したことは無く、他の魔法の様に性能も上がった感じがしていなかった。


「そ、俺の魔法って使えば使うほど強化されて行くみたいなんだけど」


「ほう、それは中々ゲームチックだな、うらやましす」


「ただちゃんと使わないと駄目みたいで、元々空も飛べるように妄想して作った【飛翔】を長距離滑空みたいに使ってるもんだから」


「経験値が貯まらないと言う事ですねわかり・・・でもなんで飛ばないんだ?」

 以前も話したかもしれないが、ユウヒの魔法は様々な理由から使えば使うほど性能が上がる。しかしその性能も魔法を正しく使ってはじめて上がって行くわけで、正しく使ってない魔法はその限りでは無いのだ。


 ユウヒの魔法に関する説明に羨ましそうな表情を浮かべるジライダ、その隣ではヒゾウが頷きながらも不思議そうに首を傾げる。その疑問にはジライダとゴエンモも同意見だったようで、こちらも不思議そうに頷いている。


「そうだな・・・おまいら、目の前で人がピーターパン張りにアクロバティック飛行してたらどう思う?」

 そう、普通空を飛べるなら高所恐怖症でもないかぎり、好奇心に駆られ飛んでしまうのが男心である。しかしユウヒは、その空中散歩を実行する前にそんな自分の姿を客観的に考えてしまったらしく、三人にそんな事を問いかける。


「とりあえず、撃ち落とす?」

「とりあえず、捕まえるでござる?」

「とりあえず、通報しますたwwうぇ」


 その問いに対する答えはどれもツッコミどころが多い答えであった。撃ち落とすってまぁ気持ちは分からないでもないし捕まえるのもままある、しかし通報に関しては先にイラッとする表情をしたヒゾウの方が通報されそうなのだが。


「色々とツッコミどころが多いが・・・そう言うわけだ」

 そんな三人の多すぎるツッコミどころにめんどくさくなったユヅキは、表情を脱力させると適当に流す。


「むむぅ確かに不審者でござるな・・・」

「いやしかし、ここは異世界だろ? 空飛ぶ人とか居ないのか?」

「スーパーな野菜の人?」


「んー人が飛んでるのは見たことないな、てか色々不味いからこの話はここまでだ。そいじゃ【隠蔽結界】」

 だらだらと話しながら彼らがやって来たのは、座るのに丁度良さそうな平べったく大きな岩の前。そこまでやって来ると話を中断し、周りに人は居ないが念のためにと以前使ったステルス結界魔法を唱えるユウヒ。


 ついでにヒゾウはその言葉危険なのでやめましょう。


「おお!?」

「何という結か「それもダメでござるよ!?」し!」


 だからやめろと言うに・・・。


「んじゃちょっとアミールに連絡入れとくから、何をお願いするのか纏めておいてくれ」

 そしてここで彼らの目的が明らかになる。要は人目の無い所でアミールに連絡を入れる為であった。


 いろいろとぶっ飛んでる学園都市、そんな場所でいつものようにアミールへ連絡するのは危険かもと考えたユウヒなのだが、その考えはある意味正しい。何故なら学園都市には神様を研究する研究所も存在し、そこには神族が使う特有の力である神力しんりょくを測定する装置もあったりするのだ。


 ついでに大量にある研究所の中には、当然魔力の研究をする研究所と魔力を測定する装置もあり、ユウヒが大量の魔力をばら撒く度に、その魔力測定装置が爆発したりしなかったりして研究員たちを慌てさせていたりしたのだが、当然そんな事ユウヒが知るはずもない。


「了解であります!」

「先ずは帰還の延期延長と」

「電話番号!! 「「おまえあたまいいな!?」」」


「ははは、えーともしもーしユウヒだけどアミール聞こえるかぁ? 俺だよ俺お・・・れ・・・ぇ?」

 間接的にだが悪名高い魔力研究所のマッドな研究員達を懲らしめていたユウヒ、後ろで円陣を組んで騒いでいる忍者たちを後目に、女神様特製冒険者カードでアミールに通信を入れる。明るい調子でネタを織り込み面白おかしく通信を入れたユウヒだったが、その目の前に展開されたあまりに衝撃の強すぎる映像にその言葉を失った。


「―――ゆゆ!? ユウヒさん! アミールです! お久しぶりです!」


「あー・・・えっと、うん、すまんかった。かけ直すわ」


「え! な、なんでですか!?」


「なんだその・・・その姿はちょっと、刺激が強すぎて・・・」

 通信用の画面に慌てたように現れたアミール、しかしその姿をユウヒは直視する事が出来ず、顔を赤く染めると視線を頭ごと逸らし、またかけ直すと言う。


 そのユウヒが刺激的と言う姿とは、


「へ? すが・・・た?」


「その、すまん」


「キャ――――<ぷつん>」


「・・・・・・」

 アミールの悲鳴と共に消える空中に浮いていた画面、その画面は数瞬前までその90%を肌色が占めており、残りは金色と1%ほどの綺麗な桜色で構成されていたのであった。


 因みに、残念ながら私の視界からは最重要部分がユウヒの頭で見えなかったとだけ言っておこう。


「ユウヒ殿何かあったでござるか?」

「絹を切り裂くような美声が聞えたのだが?」

「美声とか悲鳴の間違いだろwwwでも綺麗な声でした。声優さんは誰ですか?」


 そんなサービスカットをまったく見れなかった三忍者は振り返ると、ユウヒにいつも通りの平常運転で問いかける。


「・・・うん、なんでもないので、もうしばらくお待ちください」


『ん?』

 しかし振り返った忍者達の視線の先には、顔を赤くしたユウヒが岩の上で正座しており、予想外の状況に忍者達を困惑させるのであった。どうやらその正座は、いろいろ見てしまったユウヒなりに自分へ罰を与えている様である。





 丁度その頃、とある女神の私室兼仕事部屋では、


「ど、どうしよう・・・どんな顔してこのあと通信を」

 顔と言わず、耳も首も全身赤くなっていそうなアミールと言う女神様が床にへたり込み、そのハイライトの消えた目に羞恥と絶望の色を渦巻かせていた。


 生まれて此の方、色恋などに縁の無かったアミール、羞恥を感じるための知識はあったとしても、その先の対処知識は乏しい様である。


「でもあまり時間をかけては待ってるユウヒさんに悪いです!?」

 それでも持ち前の強い自制心をフル稼働させフラフラと立ち上がるアミール、その思考のほとんどは様々なユウヒの事でいっぱいであり、ある意味それが心の支えのようになっていた。その思考形態はまさに恋する乙女のそれなのだろうが、本人はその事実に気が付いているのであろうか・・・。


「大丈夫、ユウヒさんはとても理解がある人です。・・・ふぅ、先ずは冷静にかけなおしてですね」

 ゆっくりと立ち上がったアミールはユウヒの名前を呟きその目に意思を取り戻すと、早鐘を打つ鼓動を深呼吸で整え、顔にかかった前髪を手で払うと徐に通信機へと手を伸ばし、流れるように操作を始める。


 その冷静に通信機を操作する姿は流石女神だからなのか、ただそれだけで神話の一頁を切り抜いたかのような美しさがあった。濡れそぼり光り輝く金糸のような美しく長い髪が、その豊かな丘陵を流れ行く様はまさに『ヴィーナスの誕生』と言っても過言ではないだろう。


 なぜならば、


「・・・ってまだ何も着てません!? ま、まだだめです! 服を! 服をくださぁい!」

 と言う状態だからである。


 どうやら冷静になったのは表面上だけであり、まだまだ中身は現在進行形で大混乱中のようであった。



 いかがでしたでしょうか?


 まったりパートから少しは展開のある話に移っていく・・・と思われますので、次回もお楽しみにしていただければ幸いです。


 それでは今回もこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー

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