表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールズダスト  作者: Hekuto


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/155

第八十四話 襲来者?

 Hekutoです。最近投稿速度が不安定に遅いですが生きてます。


 そんなわけで八十四話の修正作業完了しましたのでお送りいたします。是非楽しいでいただければ幸いです。




『襲来者?』


 ユウヒに欲望を満たしてもらい、恩返しと半分は自分達のためにと、ユウヒに着いて行くことにした3モブ忍者達。しかしそんな話しで盛り上がっていた彼らの前に、黒い影が現れる。


「お、おじょう!?」

「なぜここにでござる!」

「僕まだ何も悪い事してないよ!?」


 三忍は、その冷たい光を宿す瞳に見つめられると慌てふためき、ヒゾウに至っては何故か聞かれても居ない弁明を始める。どうやらこの三人にとって、この行動はすでに条件反射の様だ。


「ふむ、知り合いか? 少し前からこちらを窺っていたようだけど」


「む! ・・・気が付いて居られましたか」

 宿の窓枠に片膝で立ちで座る、黒一色の軽鎧に顔を隠す忍者の様な覆面の女性と、慌てふためく三人の姿にユウヒは首を傾げ尋ねる。そんなユウヒの言葉に、女性は驚いた様に布越しの少しくぐもった声を漏らす。


「常に索敵の魔法は使ってるからな、ただ敵意じゃない視線だったので何かと思ったけど」


「流石ですね」

 ユウヒの言葉に感心する御嬢、しかしユウヒは内心、某女子寮で感じた様な視線を感じて困惑していたりするのだが、そんなこと知らない人間からは驚くべき気配察知能力としか映らないようである。


「御嬢何かあったのか?」


 ユウヒに感心しながら部屋の中にひらりと降りた御嬢、そんな彼女にジライダが何があったのかと問いかける。


「・・・(えらく怖がってるけどそんなに怖い人なのか? それとも・・・)」

 声こそ平時と変わらないジライダだが、その腰は若干引けており、その姿にユウヒは御嬢と呼ばれた人物の性格を色々想像してしまう。


「お頭が様子を見てこいと言うのでな、何やら不穏な事でもしてないかと思ったが・・・」


『な、何もしてませんよ!?』

 

「いや、そこでその反応は明らかに怪しいだろ」


『ええ!?』

 想像を膨らませたい他ユウヒは、目の前で行われるやり取りに思わずツッコミを入れてしまう。そんな思いもよらない方向からの口撃により驚きの声を上げた三人は、姿勢よく振り返り表情一つ変えない御嬢の前でオーバーリアクションを披露することになるのだった。


「・・・お前達は、あの森がどういう所か分かっているのだろうな?」

 そんな目の前で展開される、まるでコントのようなやり取りにユウヒが笑いを堪えていると、御嬢が一歩近づき三人に真剣な表情で問い掛ける。


「ひぃ!? 冷たい視線! でもこの胸の高鳴りはいったい・・・」

「落ち着くでござる御嬢!? 拙者等は別に悪い事をするわけじゃないでござる!よ?」


「・・・」

 しかし御嬢的には普通の問い掛けであっても、その感情の読み辛い目が放つ雰囲気と三人の反応から、ユウヒには『問い掛け』では無く『問い詰め』にしか見えない。


「わ、我等は同朋である勇者ユウヒが請け負った依頼の、手伝いをするだけだ!!・・・よ?」


「依頼? あの森に行くような依頼をか?」

 いや、実際三忍者からしてみても問い詰められている様な物なのだが、そんな三人の様子を見て訝しげに眼を顰める御嬢の視線で、さらにその誤解は拍車をかける。


「ゆ、ユウヒ殿助けてほしいでござる」

「御嬢は何かと固い女子おなごなのだ、ちゃんとした説明がないと引いてくれぬ」

「ど、どうしよう俺責められるのもありかも・・・」


 怒られると勘違いした三人は、目にも止まらぬ速さでユウヒの背後に隠れると三者三様の言葉で助けを求める。若干一名新しい扉が開きかけてはいるが・・・。


「ふむ」

 

「ユウヒ様は誰からどのような依頼を受けたのですか? 話せない様な依頼元なのですか?」


『あわわわ』

 この世界の人間である御嬢としては、単純に森の危険性と彼等に対する心配からの問い掛けなのだが、その感情の解り辛い性格や行動と、照れ隠しなどで度々物理的オハナシをしてきたことにより、完全に三忍に対して誤解を生んでいた。


「んー信じる信じないはそっちの勝手なんだが、拡散はあまりしないで貰えるかな?」


「秘密の厳守は冒険者としては当然だ、ただし御頭には報告することになるが・・・」

 周りの状況が良く分からないユウヒは、とりあえず聞かれたことについて答える事にした様である。


「まぁそのくらいならいいか、どんな依頼かは、この世界の安全を脅かす可能性のある危険物の回収かな」

 ユウヒ的にはあまり大々的に流布されても困るものの、多少知られたからと言って特に何か障害があるとも思えず。またこちら側の人間である3人の知り合いであるならば、そのうちの事情も知られる事になるかもしれないので、遅いか早いかの問題というのがユウヒの考えであった。


「それは・・・事実そんな物があると?」


「んー彼女が言うには結構あるみたいなこと言っていたけど、それを探すのも仕事だしね」

 ここでユウヒの目的について簡単におさらいしておくと、この世界へ別の世界から違法に混入したと思われる記録に無い危険物の、捜索と回収がアミールからのお願いである。既に一部は女神ラフィールの手でアミールに渡されているが、アミールの推定ではその何倍、下手すると何十倍も存在するとの事である。


「彼女・・・ですか。それは何者ですか?」

 正直、そんな数もどんな物かも分からない物を探すと言うのも随分お人よしな話であるが、たぶんユウヒの後ろに隠れる三人も、アミールに頼まれれば二つ返事で引き受けるだろう。


 悲しきは男の性なのである。


「じ、実際どの位美人でござるか?」

「ど、どんな系だ?」

「S? M?」


「いや三人は知ってるだろが・・・」


『へ?』


 しかしそんな三人は、実際にアミール・トラペットがどんな女神様か知らない、正確には遠くから見ているのだが、固定概念のせいかそれとも単に勘違いからかユウヒが話した女神様と、あの時ユウヒと共に消えた女性が同一人物であると理解していないのである。


「ほら、俺が魔窟に消えた時の綺麗な金色ロングヘアーの女神様だよ」


「おお! 勇者ユウヒと共に魔窟の奥へと消えた!」

「遠くからでござったが、綺麗な御方でござったなぁ」

「あの圧力・・・俺達では近寄る事すらできなかったな」


 その事に気が付いたユウヒが三人だけに分かる言い方で伝えると、彼らの脳内でも全てがつながったようで何故か嬉しそうに、そして懐かしむようにテンションを上げた。


「金色、長い髪の女神(そんな女神はラフィール教の主神しか・・・まさか導かれ選ばれし者だと!?)」

 しかしそんな騒がしい四人の話しを聞いていた御嬢、彼女は脳内で断片的な情報を繋ぎ合わせある結論を導き出す。


「うん、まぁその女神様の依頼ってわけでな、色々探し物をしてるわけだ・・・あまり拡散しないでくれよ? 変な噂がこれ以上たつとめんどくさそうだ」

 グノー及び、グノー周辺国家の人間にとって金髪の女神と言えば、多数存在する宗教の中でも最大勢力であるラフィール教主神の女神ラフィールだけである。


 実際には金髪の女神は結構いるのだが、大体同一視されたり別の姿だったりと知名度の差があり知られていない。その為このような勘違いになっても仕方ないとも言える。


「・・・わかりました。その話、信じる事にします。お前達」


『は、はい!』

 さらにユウヒは直接会って話しをしたと言い、三人の仲間もそれを遠くから見ていたと言うのだ。純粋で仲間と認めた者を信じると決めている御嬢にとってそれは真実であり、それが真実であるならばユウヒと言う人物は神話に出て来る英雄達と同じような存在と言う事になるようだ。


「この件に関してはそちらに任せる。御頭にも私から伝えておく・・・ただし!」


『た、ただし?』


「・・・必ず帰って来る事、いいな!」

 その為いくら危険な場所とは言え、そんな重要な使命を背負うユウヒと共にあると言う三人の意志を無下にすることなど御嬢には到底出来ず。出来る事は無事を願い送り出す事だけであった。


「御嬢が・・・」

「あの御嬢が・・・」

「これは・・・」


 そんな壮絶な勘違いの末の激励だなどと理解できるわけもない三人は、真剣な表情で告げる御嬢の言葉に驚愕の表情を浮かべ、


『御嬢がデレたー!』

 そのまま顔を満面の笑みに変えるとまったく同じ言葉を叫ぶのであった。


「ふん! ・・・!?」


 怯えから復活した三忍の反応のせいか、それとも自分で言ってて恥ずかしくなったのか、顔の見える部分を真っ赤に染めた御嬢は照れ隠しの声を漏らすと、窓から跳びだし逃げる様にその場を後にするのであった。


 この去り際、チラリと微笑みかけるユウヒを見た御嬢の顔に、赤みが増したのは彼女だけの秘密である。


「・・・すごく早いなー騎士団って言うより忍者だよな」

 目の前で起った一瞬の出来事に暖かい表情を浮かべていたユウヒは、その視界の端にあるレーダー上を高速で離れていく光点を見て心底感心している。それだけ彼女のスピードは人間離れしているようだ。


「元はそっちが源流みたいでござるよ?」

「昔初代がどっかからこっちにやって来て騎士団と名乗る様になったらしいな」

「リアル忍者かーロマンだよなー」


 こちらはユウヒの呟きにのほほんと答える3モブ忍者達。その顔は素晴らしいものが見れたからか興奮で血行が良くなっているようだ。しかしこの三人、


「いや、おまいらもリアル忍者だろ」

 まさにそのとおりである。正確には忍者と言う新人類らしいのでちょっとした人外と言う認識で良いのかもしれない。


『確かにそうだけど、扱いがぞんざい!?』


「ん?」


 こっちにつっこむのは止めてほしいのだが・・・。





 それから小一時間後・・・。


「さて何か色々と時間を喰ってしまったが、サクッと慣らしをやるかな」

 ユウヒは冒険者ギルドを訪れ、訓練ができそうなところ紹介してもらい、学園内の冒険者科訓練施設と、騎士科訓練施設の間にある一般訓練場にやってきていた。


「おいで【スニールコンパニオンズ】」

 到着早々人気が無いのを確認すると、旧相棒の一部を混ぜた新しい相棒を手に取ったユウヒは、何時もより魔力を多めに消費すると、氷の娘達を呼び出す。


「くすくす・・・マスターお呼びですか?」

「何なりと」

「下のせわであた!?」


「女の子何だからもう少し発言に気を付けような」

 呼び出された娘達は何時もと大きさが違い、普通の人間と変わらない大きさで現れ、その手には簡素な盾と武器ショートランスを持っていた。


 しかし姿は変われど中身は何時もと変わらないようで、若干一名その発言内容の問題から、出現早々にユウヒから軽いチョップを頭に受けている。


「はい・・・」


「今日はちょっと訓練に付き合ってもらおうと思ってね、武器の慣らしだけど」

 ユウヒは何故か少し嬉しそうに頭を押さえる少女に困ったような笑みを向けるも、気を取り直し今日呼び出した理由を告げる。


 クロモリでも新しい武器や防具、アップデートによる新実装装備などを作る度に、スニールコンパニオンと訓練システムを使い慣らしをしていたのだ。


「了解ですマスター。また新しい武器が出来たのですね? いつも通りお相手いたします」


「・・・そんな記憶もあるのか?」

 クロモリ内で慣らしをするのには色々理由があるのだが、それは今割愛させていただこう。何故なら、ユウヒが告げた内容に対して返って来た氷の乙女の反応に、ユウヒが驚きの表情と声を漏らしたからである。


「我々はマスターの心から生まれた存在ですから、マスターの心に残っている私たちの記憶は確かにここに在ります」


 本来この世界で生まれた彼女達と、ゲームの中のスニールコンパニオンは別物である。しかし彼女達はユウヒの心と魔力から生まれた存在であり、それは即ち彼女達の記憶を構成する元がユウヒの記憶であると言う事である。


「そうか・・・」

 その事実を再認識したユウヒの表情は引きつり、大事そうに自らの胸元を左手で押さえる氷の乙女の姿に、お世辞にも優れたとは言えない笑みを向けるのであった。


 何故ならユウヒの記憶を元にしていると言う事は、ユウヒが封印して忘れたと思っている黒歴史も知っていると言う事になり、さらに以前彼女達の口から出た黒歴史の片鱗を思い出してしまったからである。


「ま、いいか・・・うん、準備を」


『はい!』

 しばしその事実に思い悩むも、目の前で嬉しそうな表情をこちらに向けてくる少女達に、ユウヒは肩から力を抜くと溜息の様な声を漏らし新たな相棒を構え直す。そんな葛藤がユウヒの中であった事など知らない彼女達は、元気に無邪気な返事をすると、バックラーとショートランスを構える。


「いつも通り基本武装でお相手いたします」


「【範囲指定】【ウェポンカバー】・・・よろしく」

 ユウヒがバックステップで少し距離を開け両手で相棒を構えると、少女達も軽いステップで互いに間を開け再度構える。ユウヒの唱えた魔法により武器に非殺傷の力が宿り、すべての準備は整うと先頭の少女とユウヒの会話を合図に空気が変わり、


『いきます!』


「おう!」

 槍による乱舞が始まった。





 ユウヒがスニールコンパニオン達と相棒を慣らす為の訓練をしている頃、少し離れた騎士科訓練場では騎士科の生徒が自主訓練を行っていた。その中の数名は休憩中なのか柵の向こうで行われている戦闘に興味深げな視線を向けている。


「ん? あれはユウヒさん?」


「・・・早い」

 そんな騎士科生徒の中には偶然か必然かユウヒと面識のある生徒が二人、ヴァナディス・ナブリッシュとクラリッサ・カハーリヤも休憩の合間に戦闘に目を向けていた。柵からユウヒまでは離れてはいるものの、面識のある二人にとっては十分判別できる程度の距離だったようだ。


「これは・・・ユウヒさんがまともに打ち合っている所は初めて見たけど、魔法士の動きじゃないですわね」

 ナディが感心した声を漏らす視線の先では、身体強化と昔鍛えた様々な格闘技でスニールコンパニオン達による連携攻撃を捌き続けるユウヒの姿があった。槍捌きにはまだまだ余裕を感じることが出来、その動きは騎士科の人間達を唸らせると同時に、彼が優秀な魔法士と言っても信じるのに苦労するレベルである。


「早いだけじゃない、動きが上手い」

 騎士科の生徒が観戦する先では乱舞が次第にその速さを上げて行き、流れる様に攻撃を逸らし続けるユウヒを評価する者も増え始める。クラリッサもそんな一人であり、ユウヒに向けるその瞳の中に熱いものを灯らせている


「むぅ・・・」

 その隣ではナディがユウヒとの更なる距離を感じたようで、複数の感情の混ざった表情で思わず唸り声を上げるのであった。


 この時ユウヒの姿は騎士科だけでは無く多数の人間達に見られており、ユウヒが去った後も学園都市ではユウヒの噂が流れ続け、絶妙なタイミングで居なくなったユウヒに対する想像による噂話を増やす切っ掛けとなるのだが・・・。


 当然そんな事になるなど、当のユウヒは思いもしていないのであった。



 いかがでしたでしょうか?


 黒い三忍の弱点が襲来しましたがきっと彼らはそれを喜んでいることでしょう。ユウヒもまた平常運転でやらかしているようなのでこれから先が楽しみです。


 それでは今回もこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ