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ワールズダスト  作者: Hekuto


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第七十九話 廃鉱山の匠

 どうもお久しぶりのHekutoです。


 この時期はどうしても忙しいと言い訳をしつつ七十九話の修正作業が完了したのでお送りしたいと思います。どうぞ楽しんで行って下さい。




『廃鉱山の匠』


 グノー王国西部にある学園都市の周辺地域はその昔鉱山業で栄え、鉱山から産出する良質な鉱石や魔石、貴石類などで生計を立てる村々で賑わっていた。しかしそれも十年数年前頃から増え始めた魔物により少しずつ衰退して行き、今では鉱山のほぼすべてが魔物の巣窟となり見る影もなくなっている。 


「ふん、この位にしといてやるか」

 だからと言ってグノー王家がまったく手を打たなかったわけでは無く、当初は大規模な騎士団派遣などを行い討伐に出たのだが、鉱山と言う場所柄大部隊の運用には適さず坑道内の建築能力も高く無かった為、崩落事故などの被害も大きくなり断念。


「この位と言うよりすでに全滅でござる」

 次に少数精鋭による討伐を試みるもどこから湧いているのか倒しても倒してもキリが無く、安全が確保されたとしてもしばらくするとまたどこからか魔物が現れるのだ。そして最後に冒険者に狩ってもらうと言う案が出たがやはり焼け石に水。


「これだけ虫狩れば虫装備一式くらい作れそうだな」

 物量もさることながら鉱山に巣食う虫型の魔物は大半が固い甲殻に身を包んでいる為、ランクの低い冒険者では太刀打ちできず、倒せるような冒険者は数を確保できない。


 そんなグノー王国に苦汁を飲ませて来た廃鉱山の一つに巣食う魔物が、それなりに時間が掛かったと言ってもほんの数時間で全滅してしまったと言う事実は、この三人の残念忍者の能力がこの世界の基準から逸脱していることを表している。



「・・・え? 何それちょっとよくない?」

「どうでござろう? 確かに甲殻は固かったでござるが」

「とりあえずそれっぽいのいくつか持って帰ればきっと匠が何とかしてくれる」


 しかし、もう一つ忘れてはいけないのがユウヒの作ったつるはしである。まるで乙女心を標準装備する漢のような口調で頬を赤らめるヒゾウに、ゴエンモが素直に同調するほど固かった魔物を効率よく倒せたのは図らずもつるはしに搭載された衝撃魔法であろう。


 適当に殴った一撃でも、彼らの異常な筋力による撃ちこみに比例して強力になる衝撃波は、確実に固い甲殻の内側を破壊していったのだ。こんな事ユウヒも予想していなかっただろうが、廃鉱山の魔物全滅と言う一連の結果は、ある意味ユウヒがもたらしたものとも言えるのだ。


「またユウヒ殿頼みでござるか・・・頼みすぎではござらんか?」

「とか言いながら率先して剥ぎ取ってんじゃねーか」

「おまwwレア素材どこですか!」


 そんなユウヒの仕事が増えそうな会話をしながら、三人の忍者は某狩猟ゲームの如く討伐され山積みになっている巨大な虫型魔物から使えそうな部位を剥ぎ取り始めるのであった。




 そんな討伐後剥ぎ取りを開始してから数時間後、我に返った彼らの頭上には現代日本では中々目にする事の出来ない美しい星空の幕がかかり始めていた。


「そんなことやってるから日が暮れたんですが?」

「いやいやジライダも剥ぎ取ってたじゃないかでござる!?」

「しかしこれは何て狩りゲーですか? レアっぽい石とか虫の中から出てくるしチョー楽しい!」


 憮然とした態度で呟くジライダであるが、ゴエンモが言う様に嬉々として剥ぎ取り作業に参加しており、休憩なのか今は虫の体内から出てきた綺麗な光沢の黒っぽい石でお手玉をして遊んでいる。


「あれだぎょくだな、レア武器には必須素材の」

「鉱山の中で食べたのでござろうか? 他にもそれっぽい鉱石とか出てきたでござる」

「石とか食って栄養あるのか? ・・・ところで採掘はどうする?」


 正直気持ちは分かるがこれ以上は怒られそうなのでその話題は自重してもらいたい所である。


 ついでに彼らの倒した魔物は、ゴエンモの言う様にこの鉱山から産出する良質な鉱石を食べている。その理由はとてもわかりやすく、その固い甲殻をより固くするために体内に鉱石を取り込み生物の神秘を持って甲殻の構成物質にしていたのだ。


「そりゃま明日早朝からだろ」

「流石に今からじゃちょっと暗すぎるでござる」

「そうなるかぁとりあえず明日は分散して採掘かな」


 そんなことなど大して興味の無い三人は考えもほどほどに、本来の目的を思い出したのか話し合い始め、暗くなった空の下適当にスケジュールを決め始めるのであった。


「ふん、確かに時間をかけすぎても仕方がないな」

「拙者早く専用装備が欲しいでござる明日は本気出すでござる」

「よし俺も明日は坑道内をじゅうおうむ「まつでござる!」お?」


 どうやら明日は高性能忍者ボディを使い分散して効率よく採掘をする計画のようである。彼らのその瞳には普段はあまり感じられないやる気に満ちた炎が燃えていた。そんな一人であるヒゾウが明日の抱負を四文字熟語で表現しようとするも、その言葉は若干焦ったような表情のゴエンモに制止される。


「ヒゾウは露天掘り部分担当でござる」

「そうだな、坑道内で迷子になられては流石に命に係わる」

「お、おまえら・・・そんなに俺の事を」


 それもそうだろう、ただでさえ方向音痴なヒゾウがまるで迷宮のような坑道内を歩こうものならまともに出て来る事は叶わないかもしれないのだ。その事を心配した二人の言葉にヒゾウは感極まったように目尻を濡らし、



「「いや、めんどくさいだけだ(でござる)」」

「ですよねー・・・うん、俺もう寝るお」


 続く言葉でその表情をしょぼくれたものに変えるヒゾウ。その日の夜、ヒゾウの枕は何故かしょっぱい水で湿る事になるのであった。





「ん? 流れ星か・・・」

 誰かの涙がほろりと流れたのとまったく同じ時間、偶然流れた流れ星を目で追いかけたユウヒは何かを持った手を下ろすと星の軌跡に首を傾げていた。


「・・・うん、武器製作の準備は良し、お酒の構想もよし、樽も大中小と製作完了」

 そんなどこか寂しげな流れ星を見送ったユウヒは、合成魔法で作ったと思われる細かな部品を手の中で転がしながら、床に敷かれた風呂敷の上に並べられた物の確認を始める。


 風呂敷の上には、武器製作用の小さな部品、廃品や鉱石から精製した数種類の金属インゴット。その横には様々な大きさの表面に模様や装飾が施された木製の樽がいくつも積まれていた。


「新しい妄想魔法もそれを付与した樽も効果は上々、こっちは明日だな」

 どうやら今回のお酒造りの為にユウヒは新しい妄想魔法を作り、さらにその魔法を最近習得した付与魔法で樽に刻み込んだようで、その効果のほどもすでに確認され、後はお酒造りを始める段階まで用意ができているようだ。


「さて、あいつらは鉱山に泊まるのか帰ってこないし今日はもう寝るかな」

 一日合成魔法を行使し続けたユウヒは固まった体を解す様に伸びをすると、出掛けたまま帰らない鉄砲玉の様な三人の事を思い浮かべると、座っていた床から立ち上がりそのままベッドへ潜り込むのであった。


「鉱山は魔物の巣窟と言ってたけど、大丈夫だよね忍者だし」

 夢の世界に旅立つ瞬間ふとそんな事を思い出すが、彼らのスペックを右目の力で知っているユウヒはすぐにその心配が無用な物だと判断すると、居心地の良い体勢を求めてごそごそと動きながら夢の世界に旅立つのであった。





 少し時は遡りとある廃鉱山の近くにある村では、とある村民の男性が息を切らせて村に帰って来ると自警団の詰所に駆け込んだ。


「お、おら見ただ! 廃鉱山に等々鬼まで出ただよ!」


 そんなに慌てて何を見たって言うんだい?


「仕事の途中いつも以上に鉱山の虫どもが騒がしかっただからよ、気になって様子見に行ったらぁ・・・」


 そこにその鬼と言うのが居たと?


「んだ、巣食ってた虫どもを3体の黒い鬼がバラバラにしてただ! きっとあすこさ住むつもりにちげぇね!」


 バラバラにですか・・・俄かに信じがたい話しですね。もしそれが本当なら一大事かもしれません。


「虫だけでもおっそろしかっただに、今度は鬼だなんて・・・おらこっからギルドさ頼んでくるだ!」


 気を付けてくださいね? 私の方でも一応上司に話しておきますので。



 それから数日後、学園都市の冒険者ギルドにはとある依頼書が貼られることになるのであった。


 ~ 緊急依頼『学園都市南の廃鉱山にて生態調査』 Cランク以上推奨 ~





 そんな事態になるなど予知出来るわけがない3人は、朝起床すると早速行動を開始していた。


「それではヒゾウは外の採掘は頼んだぞ?」

「決して露天掘りから出るでないでござるぞ?」

「お、おう」


 昨日の打合せどおりジライダとゴエンモは別々に分かれ坑道内で採掘をし、ヒゾウは二人から念を押されている通りすり鉢状の露天部分の採掘と、分担して目的の素材を探すようだ。


「怪しい奴に出会っても付いて行っちゃだめだからな?」

「ハンカチとつるはしは持ったでござるか?」

「おまいらはおれのかーちゃんかよ!」


 心配そうに見つめてくる二人に対してヒゾウからツッコミが入り、サムズアップで良い笑顔を浮かべる二人にこちらも満足げな顔で親指を立てるヒゾウ。どうやらこいつらなりの朝の挨拶は無事終わったようである。


「それでは我は岩盤の固そうなあっちに行ってみる」

「拙者はこっちの坑道から見て周るでござるよ」

「んじゃ俺は適当に掘りつつ魔物の処理をしとくかな、なんか腐ってきそうだから適当に焼いとく」


 挨拶も済ませ満足したのか、軽やかな動きで行動を開始する二人。そんな坑道組の準備を見ながら、忍者になってグロ耐性が飛躍的に伸びたヒゾウが昨日倒した魔物の死骸の処分も請け負う。


 彼らは知らない事だが、この世界に存在する魔物の死骸は動物が食べて処理するか、ちゃんと供養するか焼くなりしないと時間経過と共に腐り淀んだ魔力でアンデットになる事がある。


「それなら護符のテストもたのんだぞヒゾウ」

「そうでござるなたのんだでござるよヒゾウ」

「は!? 嵌められた!」


 また腐敗した空気や魔力は病気の元でもあるのだがそんな事知らず、ただ単に汚物の消毒的なノリの三人にとっては、アンデットや魔物よりユウヒの作ったユニークな護符と言う物の方が驚異のようであった。


「大丈夫でござるユウヒ殿もちゃんと発動はすると言っていたでござる」

「そうだぞヒゾウ、折角勇者ユウヒが作ってくれた触媒なんだ・・・それを一番に使えるなんて名誉なことだぞ?」

「・・・火力の安定性に難ありって説明が無ければな!」


 どこか抑揚のない単調な声のゴエンモと言葉の途中で目を逸らすジライダ。なぜそれほどまでに脅威を感じるのか、それは昨日渡された忍者グッズ説明書に書かれた内容の中に、ヒゾウが言った火力の安定性に関する文言があったからである。



【火の触媒護符(試作)】

 火の属性を持つ素材を使い作られた招来の護符に、魔法ではなく魔力を直接注いだ物。

 魔力を開放することで内部の魔力分の火を出す。また忍術用の触媒としても機能し、外部への魔力出力の低い忍者でも強力な忍術が使える。


性能:潤沢な魔力 高品質魔力 不安定(強)


注意事項:護符に封入された魔力が何故か安定性を欠いている為、思ったものと多少違う事が起きる可能性があるので注意されたし・・・ユウヒより



「「・・・ガンバレ」」

「チクショー!」


 そんな事が書かれてあればいくら忍者と言えど元は一般人のこの三人、尻込みの一つや二つしてもしょうがないのである。そんな背景もありステレオの様な二人の片言な応援に、ヒゾウは色々な感情の混ざった叫びを上げずに居られないのであった。





 採掘作業、ゴエンモの場合・・・。



 二人と別れ一人坑道内を散策するゴエンモ、内部は十数年にわたり放置されていた為か彼方此方崩落の跡が見られ、安全志向のゴエンモは比較的風化の少ない安全な場所を探していた。


「この辺から掘ってみるでござる」

 そのまま十数分ほど歩いたところで、まだ木組みもしっかりとされた行き止まりを見つけると、寂しさからかなのか独り言を零しチートつるはしを振り始める。


「今更でござるが何で忍者の概念で採掘系補助が付いているでござろうか?」

 そんな採掘中に何気なく零したゴエンモ、彼の言う様に忍者の概念をもらい新人類に進化した彼等であったが、三人が三人まったく同じような能力と言うわけでは無かった。さらに言うなれば、忍者と全く関係なさそうなスキルまで身に付いており、当初彼らを困惑させたのだった。


「まぁ便利だからいいでござるか・・・」

 そんな中ゴエンモが手に入れた力は採掘補助スキルであった。これは何処を掘ったら鉱石が出そうかや掘り出した鉱石の成分含有率などが分かるもので、その道の人間からしたら喉から手が出るほど欲しい物であろう。


 ちなみに全員共通して持っていた力に【清掃作業】が入っていた事は、神の悪戯としか思えないのであった。


「鉄鉱、銀鉱、亜鉛鉱、瑪瑙、錫鉱、お!? っとなんだ黄鉄鉱かこっちは鉛? ・・・なんだか地質学に喧嘩売ってそうな鉱山でござる。これが異世界補正でござろうか?」

 そんな力を頼りに小一時間ほどかけて掘り出した鉱石を選別しているゴエンモ、一ヶ所から掘り出したにもかかわらずその中身があまりにバラエティーに富んでいたせいか思わずつっこんでしまうゴエンモ。異世界だからと済ませる辺りが彼らしいところである。


「鉄、お? ユウヒ殿が言っていた魔鉄鉱石でござるな。ん!? これはまさか! ボーキサイト! これで拙者にも正規空母がっ!?」

 そんなゴエンモは魔鉄の下にあった鉱石を拾い上げると目を大きく見開いて叫ぶ。


 ボーキサイト、所謂アルミの原料である。その鉱石に狂喜乱舞し何やらよからぬ発言をしようとしていたゴエンモは、頭上から振って来た妙に重い石にどつかれ30分ほど気絶するのであった。





 ジライダの場合・・・爆破採掘。


 一方その頃、ジライダの方はと言うと。


「よしこんなものか、しかし衝撃波便利すぎだぞ? ある程度こっちの意志を汲んでくれるあたり流石魔王ユウヒの作品だな」

 ゴエンモとは反対側の坑道を探索し、一番固そうな岩盤を探し当てると地面や壁をつるはしと衝撃波で削り空間を確保しつつ小さな穴を複数開けていた。


 ジライダは特に採掘に関するスキルを持ってはいない、なので大量に掘って後でゴエンモに見てもらうつもりである。その為効率を上げるにはゴエンモより早く多く掘って、外にまとめておく必要があった。


「さてどれを使うか・・・うむ、キミに決めた!」

 それを可能にする計画がこれである。まるでどこかの懐中魔物を呼びだす主人公の様な声を上げたジライダが手に持っているのはその名に恥じぬ物体、『BA・KU・DA・N』であった。これは彼が手に入れた能力と趣味のハイブリットな産物である。


「爆弾設置よし! 導火線よし! 経路異常なし!」

 そんな筒状の導火線付き危険物を慣れた手つきで壁に開けた穴へと入れて穴に詰め物をしていくジライダ、その楽しそうな表情と裏腹にやってる事は危険極まりない事であり、現代日本で素人がこんなことやってたら即逮捕は確実である。


「・・・よし、着火!」

 十分とかからず全ての設置を終えたジライダは離れた岩陰に隠れると、安全を確認し足元の導火線の末端に火をつけた。嬉しそうな顔で耳を押さえ伏せるジライダの横で、導火線に点いた火は特有の音を出しながら危険物へと近づいて行く・・・そして、


「・・・・・・ん? あれ? 不発ったー?」

 詰め物をした穴の中に入り数十秒、導火線が燃える音は消え坑道内を空気が流れる音だけが支配していた。そんな状況にジライダは耳を塞ぎうつ伏せになっていた体を起き上がらせると、危険物が設置してある壁までやって来て首を傾げる。


「うーん、ちゃんと設置したはずなのにおか―――」

 この手の設置に自信のあったジライダは納得のいかない表情で穴の一つに近づき、詰め物を取外し始めるが・・・。


 良い子の皆は、もし不発かなと思ったとしても無暗に設置してある危険物を取り出そうなんてしちゃだめだよ? なんでかって? こうなるからだよ・・・。




 丁度その頃燃やす魔物の周りを片付けていたヒゾウ、そんな彼を突如襲う大きな地鳴り。


「うお!? びっくりした・・・ジライダか?」

 驚き跳び上がるとつるはしを片手に装備し辺りを警戒する。しかしその後一つの坑道から立ち上る煙で地鳴りの正体に気が付くと、原因と思われる仲間の名前をつぶやくのであった。



 その爆心地では、



「やっぱ、導火線を・・・どうかせんとぶべら!?」

 目の前で爆発したにもかかわらず不思議と怪我の見当たらないジライダ、そんな彼の呟きかそれとも爆破のせいか、寒い口語魔法を唱えた瞬間直上より彼の頭目掛けて固い岩が落ちてくるのであった。奇しくもそれはゴエンモが気絶したのとまったく同時であったとか・・・。





 ヒゾウの場合・・・災苦痛?


 迷子の常習犯ヒゾウは、二人を見送ったあとすり鉢状の露天掘りの中を歩き回りながら魔物の死骸を一カ所に集める作業をしていた。


「ふー・・・やっぱ外にはあまり良い物無さそうだな」

 当然その間も使えそうな鉱石を探していたが、残念ながら目ぼしいものは見つからなかったようである。


「仕方ない魔物の解体と処理の方をやっとくか」

 採掘を早々に諦めたヒゾウは、魔物の死骸で出来た山の方を採掘することにしたようで、昨日手を出して無かった魔物を一匹引っ張り出すと剥ぎ取りを開始した。それから二時間後・・・。


「これだけあれば何か作ってもらえるだろ、と言うより採掘より剥ぎ取りの方で鉱石出るとかいやがらせか!」

 そこには虫の胃袋から出てきた良質な鉱石で小さな山が出来ていた。ヒゾウが叫ぶように、露天部分で採掘した鉱石と胃袋から出てきた鉱石とでは誰が見ても分かるほどの戦力差があった。その小山の中には魔石などの希少鉱石なども含まれていたのだが、この時のヒゾウは知る由も無い。


「さて燃やすのはこれだけか・・・すごい量だけど燃えるよね? 一番火力ある忍術がいいかな?」

 魔物を引きずって集めたり解体したりしていたヒゾウ、途中ジライダが起こしたものと思われる地響きにびくつきもしたが至って順調であった。しかし問題はここからである。


「・・・いやでもユウヒ印の触媒だし・・・いや! 石橋は叩く物では無く渡るもの!」

 そうユウヒ謹製の触媒を使った魔物の処分である。動物もよりつかない場所では火葬が一般的だが、その火葬に使う触媒を手に取ったヒゾウの手はじっとりと濡れていた。


「渡るのが怖ければ走り抜ければよし! 行くぞ! 死骸共我等が上級忍術の礎となれ!」

 緊張しながらも覚悟を決め声高く気合の声を上げると問題の触媒を掲げ構えをとるヒゾウ、そして唱えられる忍術。


「中級火遁! 【火災旋風】!」

 とか言いながら上級じゃなくて中級を使う辺りはやっぱりヘタレな彼らしい選択であった。しかしそれは正しい選択だったのかもしれない、いやもっと言うならもう少しヘタレていても問題無かったのかもしれない。


「おお! すごいちゃんと発ど・・・う・・・しすぎ!?」

 触媒を通して発現する中級忍術の【火災旋風】、本来なら最大時で3メートルほどの炎の竜巻が起るそれは、ヒゾウの目の前でどんどんと膨れ上がり最後には高層ビルも容易く飲み込みそうなほどの大きさに成長していた。


「みぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 人がそんな火災旋風の目の前に居ればどうなるか、それは火を見るより明らかであり響き渡る叫び声も必然である。


 しばらくの間、夕暮れの空を明るく照らし大地を焼き続けたそれは、幻だったかの様に一瞬で消えるとその足元に塵となった魔物の死骸だったものと、真っ黒度がさらに増した一人の忍者を残していた。ぴくぴくと動いている姿からまだ生きているようだが、どうして生きてられたのか不思議でならない有り様である。





 そんな夕暮れ時に立ち上った火柱に人々が恐怖している頃、ここは自由騎士団の本拠地内の一室。


「・・・」


「御嬢どうしました?」

 そこにはあの御嬢と呼ばれる女性が数人の部下と共に書類と格闘していた。しかし何か感じた様に視線を外に向ける御嬢、部下もそんな動きに気が付き顔を上げて問い掛ける。


「・・・あいつらが馬鹿をやっているような気がしてね」


「ん? あーあの三人ですか」


「いいよなーあいつら御嬢に愛されてて」


「なー」

 ユウヒのような超感覚なのか三人の気配を感じた御嬢、その言葉に部下達は次々に書類から顔を上げると話に参加し始める。どうやら丁度いい休憩の話題にする様である。


「・・・ふん、すこしお頭の所に行ってくる」

 しかし休憩の話題に使われた御嬢は少しだけ不機嫌そうに鼻を鳴らすと、椅子から立ち上がりその場を離れる用意を始める。


「あ、御嬢三人に会いに行くなら俺らもぶらん!?」

 その急な動きが一人の男性には三人のモーブ忍者の事が気になってしょうがない風に見えたようで、軽い言葉のジャブの心算で声をかけたのだが、それは痛烈な右ストレート(物理的)になって男性を地面に沈めた。


「・・・お頭に、会ってくるだけだ」


「「はい!」」

 完全にダウンしたなぜか仄かに嬉しそうな男性の頭を軽く踏んづけた御嬢は、底冷えするような視線を残る二人に向けるとそう言い残し静かにその場を後にするのであった。


「弄りすぎたな・・・」

「尊い犠牲だった・・・」

「かっれにこりょふな」

 残された者達は一人の尊い犠牲に感謝しつつやりすぎたことに後悔の言葉を吐くのだった。





 そんなこんなでここは御頭の部屋と書かれたドアの向こう。


「お頭失礼します」


「ん? どうした何かあったかい?」

 いつもドアは開けっぱなしなのでゴエンモが書いたその文字はいつも壁とキスをしている有様である。


「そろそろあいつらの様子を誰かに見に行かせた方が良いのではないかと思うんですが」

 そんな御頭の仕事部屋に入って来た御嬢は挨拶も早々に本題を切り出し始める。この御嬢と呼ばれる女性、気になりだすとしょうがない質のようである。


「んーそうだねーネズミの方も落ち着いて来たし、あんた行ってきなよ心配なんだろ?」


「い、いえ別にそう言うわけでは無いですが、あいつらがまた馬鹿やってそうな気がしたんで」

 しかしこの御頭の切り返しは想像していなかったのか若干狼狽え、そんな珍しい姿に御頭はすこし嬉しそうに頬を緩めている。


「まぁやってるだろうね・・・」


「なので何人か行かせようかと」

 しかしそんな表情も、三人の事を考えるだけで苦笑いに塗りつぶされてしまう。


「・・・ふむ、本当にそれでいいのかい?」


「はい?」

 御頭はこの時ふと面白い事を考えた、それはこの表情のあまり変わらない部下の表情を変えてみたいと言う信念の元思いついたことである。


「たぶんだけどユウヒとか言った彼もいるんじゃないのかい?」


「!? そ、それが何かあるのでしょうか?」

 この部下の女性がユウヒに対して憧れに似た感情を懐いている事は、既にあの三人からの嬉々とした報告で知っている。ならばそんな彼に近づければもっと多彩な表情を覚えてくるのではないかと、その為になら今から三人の元に向かわせても構わないと。


「動揺しすぎだね、いいから行ってきなこっちは大丈夫だからさ」


「・・・・・・わかりました。でもすぐ戻ってきますので」

 そんな悪戯心溢れる策略により送り出された御嬢は、若干背中を丸めながら退室していった。


「はいはい、ゆっくりしてきなー」

 後から3モブ忍者が嬉々として報告してくる内容が楽しみでならないと言った表情の御頭は、御嬢の背中にヒラヒラと手を振り微笑むのであった。その表情は先ほどまでの笑みとは違いどこか母の様な笑みなのだった。



 いかがでしたでしょうか?


 妙に人気のある彼等がメインの話でしたが、書いてる本人的にもネタを盛りやすかったです。

 そんなわけでまた次話か『彼思』の方でお会いしましょう。さようならー

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