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ワールズダスト  作者: Hekuto


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第六十九話 再会のあいつ等

 どうも、おひさしぶりのHekutoです。


 いろいろあって遅くなりましたが投稿することが出来ました。どうぞ、まったりパートのユウヒを楽しんで行って下さい。



『再会のあいつ等』


 学園区画から屋台街へと歩を進める人影、それはクラリッサの依頼により騎士科女子寮でキノコ料理を作り、その腕前で存分にヴァナディスを二重の意味(女性的な何かと質量的何か)で落ち込ませたユウヒである。


「さて依頼終了の報告も終わったし、どこか屋台で晩飯でも食べて宿に戻るかな」

 ユウヒの作った料理はその大半が褐色少女のお腹に納まり、ユウヒ自身は味見程度しか食べておらず、現在程々に空腹を感じている様である。


「程々にさっぱりした食べ物の屋台なんかないかな~」

 そんなユウヒは屋台街に到着すると、漂ってくる香りを頼りに希望に合う屋台を探し始める。


「・・・お、この店はいい感じかも」

 ブラブラとしばらく歩いたユウヒは、一軒の屋台の前で立ち止まると漂ってくる美味しそうな香りに表情を明るくすると、そのまま中へと入って行くのであった。


 ユウヒの入って行った屋台は、簡単な屋根に木の骨組みと布で仕切りがされ、軒先には少し長いまるで日本の居酒屋の様な暖簾がかかっていた。この時ユウヒは気にもしていなかったようだが、その屋台の暖簾にはこう書かれていた。ひらがなで三文字『うでん』と・・・。





 一方ユウヒが暖簾を潜るほんの少し前、その店の中には黒い衣装を着た三人組が、出てきた料理を前に議論をしていた。


「・・・いやどう考えてもこれは『おでん』だろ!」

「はぁ!? 馬鹿言うなこの白くて太くてにゅるっとした麺はどう考えても『うどん』だろ!」

「その表現もどうでござろうか・・・」


 その三人とは言わずもがな、3モブ残念忍者隊のジライダ、ヒゾウ、ゴエンモの三人である。どうやらこの店唯一のメイン料理である『うでん』に関してジライダとヒゾウの間で意見が割れている様である。


「何を言うか、見ろ! この串に刺さった具材と滴るだし汁を!」

「お前こそよく見ろ! この白い肢体を伝う少女の汗の如き澄んだ汁を!」

「・・・汁を飛ばすなでござる、と言うよりその表現はもう変態でござる」


 ジライダがどんぶりから持ち上げた串には大根とゆで卵コンニャクのような物が刺されており、それはまるで日本のおでんの様である。それに対してヒゾウは、【マイ・お箸☆】と彫られた箸でどんぶりの中から太めの白い麺を摘み高く持ち上げる。


 その際、二人の取り出した勢いで疲れた目のゴエンモに汁が降り注いでいたが二人は全く気付かないのであった。



「少女・・・汗・・・ハァハァ」

「ハァハァ・・・汗と汁ってよく似てるよな」

「あぁぁ・・・変態が増えたでござる」


 しかしそんな議論もヒゾウの先ほどの発言によってジライダが妄想の病にかかり、そんな息の荒くなったジライダに同調し、同じく息の荒くなるヒゾウの二人によって横道にそれる。そんな収拾のつかない状況にゴエンモは頭を抱えるのであった。


 しかし彼らの後ろからその混乱を治める救世主、


「・・・・・・何やってんだよおまいら、とりあえず3人分通報しまつた」


 ユウヒが、ネタを含んだ冷静な一言共に現れたのだった。


「拙者は無罪でござる!?」

「「自分は怪しくないですよおまわりさん!?」」


 そして素晴らしきか3人は、混乱状態にも係らず脊髄反射の如き速度で反応を示す。若干一名素で返してそうであるが・・・。


「ははは、あいかわらずネタ一直線だな」


 ユウヒは想定通りの反応に笑いながら近づいて来ると3人に話かける。


「おお! ユウヒ殿!」

「え? あ、ほんとだユウヒさんちーっす」

「なんだ勇者ユウヒか心臓に悪いぞ」


 慌てて振り返った三人はその視界と耳でユウヒを確認すると、三者三様の反応を示す。その表情は安心してたりチャラかったり妙に尊大だったりと、彼等らしかったとはユウヒの感想である。


「で? 何やってんのさ?」


「おお! 聞いてくれユウヒ殿! これはどう見てもおでんだろ?」


「だからジライダ! これはどう見ても少女「それはもういいでござる・・・」・・・うどんだろ」


 混乱は治まったものの彼らの疑問は未だ未解決のままであり、その解を求めどんぶりを持ちユウヒに迫るジライダとヒゾウ。


 二人の持つどんぶりの中には澄んだ琥珀色のスープに太めの白い麺が入っており、その上には大根に似た輪切りの根菜、少し茶色に染まった何かのゆで卵、それからコンニャクに似た弾力のある三角形の何かが串に刺され麺の上を占領していた。


「おでんか少女うどん?」


 さあ解をと迫られるユウヒだったが、騒がしい三人の所にやってきただけのユウヒは話の内容を知らず、キョトンとした顔でどんぶりと二人を見比べ疑問の言葉を零すのだった。


「「少女うどん!」」


「反応良過ぎでござる!?」

 しかしそんなユウヒの疑問の混じる言葉に過剰反応を示す二人、そしてすでにツッコミ役に徹してしまっているゴエンモは、その表情を心情そのまますごくがっかりしたものへと変える。しかし・・・。


「少女うどんやと!?」


「「「店主まで!?」」」

 何故か『うでん屋』の店主までその言葉に過剰反応し、カウンターから身を乗り出し大きな声を上げる。流石にこれにはジライダもヒゾウもびっくりしたのか、ゴエンモと一緒に驚愕の表情で店主の方を振り返るのであった。尚、そんな状況を把握する気も無いユウヒは終始キョトンとしているのであった。


 それからしばらく店内では少女うどん論争が巻き起こり、店主はインスピレーションが湧いたと言って新作を作るため暖簾を片付け客を帰すと店を閉めてしまう。


「ふむぅ・・・予期せずタダで晩御飯にありつけてしまった」


「流石勇者ユウヒ俺達に出来ない事を平気でやってのける!」


「この店はまた来ざるを得ないな」


「少女うどん・・・いったいどんなうどんが出来るのでござろうか」

 しかしユウヒ達には良いインスピレーションを与えてくれたお礼にと、ユウヒは大盛りうでんをタダで作ってもらい、今はカウンターの奥で何か凄い勢いで料理をする店主とうでんを見比べている。その隣ではいつでも平常運転の忍者達が疑問は晴れたとばかりに和気藹々と『うでん』を食べているのであった。


「何かこんなのコンビニにあったよな」


「そういえばそんなのもあったでござるな」


「おでんに麺と粉を入れるあれか」


「下手な店員に任せて酷い目に合った覚えがあるな」


 そんな三人の話の内容はこの世界の人々には理解の出来ない話である。尚ジライダの言う酷い目とは、麺を温めすぎた店員があまりの熱さに慌て、麺をジライダに投げてしまったと言う出来事だと言うのは、完全に蛇足である。さらに店員が可愛い子で怒れなかったと言うのは、ジライダだけの秘密である。


「それで? 3人は何をしに学園都市に?」

 そんな三人の話を聞きながら『うでん』を食べていたユウヒだったが、三人がどうしてここに居るのか気になっていた事を思い出すと問い掛ける。


「ふっアヴァロンに来る理由などただ一つ・・・」

「見目麗しきディーバに出会うため」

「けしからん! この世界はレベルが高すぎてけしからんでござる」


 そんな疑問の声に三人はユウヒの方にばっ! と音の出そうな勢いで顔を向けると淀みなく答え、ゴエンモの言葉にジライダとヒゾウは腕を胸の前で組むと目を瞑りうんうんと頷くのであった。


「あー確かに可愛い子多いよね、ふむ・・・しかし3人はナンパに来たのなら触媒はまだいいか」


「「「はい! それが本題であります! ユウヒ様!」」」


 そんな三人の姿に、今まで出会った女性を思い出しながら同意したユウヒは、依頼された件じゃないのかと安心しながら呟く。しかし三モブはその言葉を聞くと同時に、今まで座っていた椅子の上に綺麗な正座をすると声を揃える。


「お、おぅ・・・」


 流石のユウヒもその想定していない動きに苦笑いを浮かべてしまう。


「それで例の触媒は・・・」

「忍者らしい武器なんかも所望する!」

「拙者ドリルも良いと思うでござる!」


「あー・・・一応火の触媒の目途は立ちそうなんだがな、如何せん材料が足りないんだよ」


 正座をした三人はそのままの体勢で顔だけユウヒに近づけ話し出すも、ヒゾウ以外は願望である。そんな三人にユウヒは少し困ったような顔で現状を説明しだす。


「火でござるか、火遁でござるな」

「我は風か水が良いのだが」

「透視が風遁扱いで水遁で濡れ濡れですねわかります!」


 ユウヒの説明にゴエンモは腕を組み火遁火遁と呟きながら考え事を始め、ジライダは渋い顔で風と水を求め、ヒゾウはその求める狙いをキリッとした表情で言い当てる。


「ヤル気が斜め上行ってるな、しかし風と水かぁ」


 ユウヒの言葉に何故かサムズアップと妙にキリッとした表情で見詰めてくる三人に、楽しそうなユウヒはすぐに表情を難しい物へと変える。


「それはそれとして、火の触媒はどんな物でござる?」


「ああ、丁度良さそうな技術がこの世界にあってな、護符と言うらしい」

 そんなユウヒに、ゴエンモは先ずは良い話題からと思ったのか火の触媒について聞きだす。ゴエンモの質問に、ユウヒはバッグの中から日本の紙幣ほどの紙束を取り出し三人に見せる。


「「「こ、これは」」」

 その紙束に三人は身を乗り出すのであった。





 妙な所で久しぶりに再会した三人は全くぶれる事無くネタに生きてました。


「文字と記号と魔力で色々な効果を発揮する物らしくてね、応用すれば触媒になりそうなんだよ」

 今はそんな三人から依頼されていた触媒の試作品を見せている。


「これはどっからどう見ても漢字でござるな」


「これで不思議現象を起せると言うことは、もしかして日本にも忍者が?」


「いや、この場合陰陽師とかじゃないか? 幻想はここに生き残っていたとか」

 どうやら掴みはおっけー? なのか分からないが三人は護符を前に議論を始めている。彼らが言う様に元の世界にもこういった物があるとするなら、帰った時に調べてみても面白いかもしれない。


「その辺はよく分からんが、一応これでもそれなりに触媒に出来ると思う」


「それなりとは?」


「うん、招来の記号と属性の漢字に俺の魔力を籠めておけば触媒として機能してくれると思うんだけど、どうも魔力がちゃんと籠らないみたいで」


 彼らから聞いた忍術の概要から護符を触媒に出来そうだと思い、合成魔法と妄想で作ってみたのだが、右目で調べたところ効果は思ったほど期待出来そうに無いのである。


 理由として考えられるものは単純に技量不足と妄想不足、しかしそれは他の合成を見るにちょっと考え辛い。一番ありえそうなのが素材不足、いくつか素材を変えて作ってみたのだがある程度属性に対応した素材を使わない事には、護符に籠められる魔力量とそれを保持できる時間が微々たる物になる様で、作った物に魔力を籠めると高確率で破裂するのだ。


「対応した属性素材が必要でござるか」


「ふ、我に任せるが良い! すぐにでも素晴らしい風の素材をとってこようぞ!」

 どんなに凄い神様印の魔法でも、素材が無い事には妄想を再現できないと言う事なのだろう。しかし三人に頼めばそれも解決できそうである。


 しかし、そんなに風属性で透遁を使いたいのかジライダ、程々にしないと痛い目見るぞと思うがその辺も込みなのだろう。その無駄に尊大なポーズからは、そんな意志が伝わってくるのだった。


「水はなにがいいだろうか?」


「河童のきゅうりとかでござるか?」


「なんだそのチョイス・・・よしキュウリ捜すぞ」


「そのこころは?」

 椅子の上に立つジライダを見上げながら今度はヒゾウが水の触媒を考え始めた。そこにゴエンモのどこかズレた提案が飛び、その提案に疑問顔で首を捻ったジライダは急に目を見開くとやる気を出し始める。俺がどうしたのか気になり聞いてみると、


「美少女河童のきゅうりを取り上げて涙目萌え!」

 そんな言葉が返って来る。あの一瞬でそこまで妄想するとは、流石ネタの人である。


「ヤバいこいつ未来に生きてやがる!? 行くぞ!」


「ぶっ!? ちょ! 帰ってこいでござる!?」

 俺がいろんな感情を籠めて拍手をしているとヒゾウも勢い良く立ち上がり、ジライダと熱く握手を交わすとそのまま勢いよく店を出て行く。二人の急な行動に水を飲んでいたゴエンモは口から水を噴くと慌てて追いかけはじめたのだった。


 どうでもいいけど、三人共どうやって頭巾越しに飲み食いしてるのだろうか、口元もすっぽりと黒い頭巾を被っていると言うのに・・・。


「おーい・・・いっちまったよ御代どうすんだ?」


「おう! 兄ちゃん良いて事よ!」

 そんなどうでもいいことを考え現実逃避をするも、食い逃げと言う現実は変わらない。しかしすぐに後ろから店主のそんな声がかかり、振り向くと男臭い良い笑顔の店主がキラリと歯を見せながらサムズアップをしていた。


 尚、このポーズは三人と少女うどん談議をしているときに習っていた様だ。


「いやいやあんたも商売だろ」


「話の内容は良く分からなかったが! 少女の涙でキュウリって事だろ!」


「・・・・・・」

 俺は一応断りを入れようと思って声を出したのだが、どうやらこの店主もあの三人と同じでノリと勢いで生きる人種の様である。俺は店主の笑顔を見ていると、このまま流れに任せた方が良いと感じるのだった。


「ここまでアイデアくれた客から金なんてとれねぇってもんよ!」


「そか・・・うん、ご馳走になるよ」


「おう! ところで兄ちゃん、きゅうりってなんだい? あと河童少女も」


「あーうん、えっとキュウリってのは・・・」

 それから俺は、店主おやっさんの手で何かの味付け卵を追加された大盛りの『うでん』を食べながら、屋台の親父さんにキュウリや河童について説明をする事になった。結構俺にとっても役立つ情報なども聞けたのでこれはこれで良い出会いだと思う。


 先ずはキュウリだが、そっくりな野菜があるらしくオルマハール産の野菜で【グリロッド】と言うらしい、長さは1メートルほどと長いがそれ以外はキュウリと変わらないようだ。基本的に砂漠や荒野での水分補給源として食されるらしい。


 次に河童だが似たような亜人族が居るとの事だ。この辺だとエリエス連邦辺りでなら見かけるかもしれないとの事で、その姿は人と大して変わらないものの指の間に水掻きがあったり、乾燥を嫌うため白く平たい魔法の帽子で体の保湿をしているそうだ。


「世界ってすごいなぁ」


「そうだなぁ世界は広くて凄いよなぁ」

 俺の呟きに、きっと俺とは別の事を考えているのであろう親父さんが同調してくれる。しかし流石は異世界もう何でもアリである。そういえばここは様々な世界の様々な要素が集まって出来ているんだったか、それなら実際に何でもアリなのかも知れない。





 ユウヒがこの世界の事について色々と考えている頃、ここはグノー学園都市騎士科女子寮の一室。


「・・・? おかえりナディ」


「・・・・・・ですわ」

 ヴァナディスとクラリッサの部屋である。丁度御風呂から戻って来たのか、水で濡れた髪が色っぽいヴァナディスがドアを開け部屋に入ってくる。しかしその顔は俯き加減で、ドアも急いで入るとすぐに締め鍵をかけた。そんな彼女の様子にクラリッサは不思議そうな顔をする。


「ん?」


「噂になってますわ」


「うわさ?」

 ヴァナディスの良く聞こえない呟きにクラリッサが不思議そうな顔のまま首を捻ると、今度はしっかり聞こえる声でそう話し出すヴァナディス。


「うぅ・・・騎士科高等部の女生徒が寮に男を連れ込んだって」


「へぇ~」


「へぇ~・・・じゃないでしょ! あなたの・・・! いえ、私たちのことでしてよ・・・」

 どうやらユウヒの事が瞬く間に広まったようで、ヴァナディスが今まで入っていた寮の共同風呂では、その噂で大いに盛り上がっていたようである。


「・・・? ナディ連れ込んだ?」


「・・・ユウヒさんがここに来たでしょうに」

 少し顔の血色が良いヴァナディスが尻すぼみになりながら話す内容に、クラリッサは疑問の言葉と共に首をコテッと傾げる。そんなルームメイトの姿にヴァナディスは呆れた様に肩を落とし、力なく溜息にも似た言葉を零すのだった。


「ああ・・・でも、料理してくれただけ」


「噂は事実など必要としない物です・・・」

 ヴァナディスの言葉で噂の全容を察したクラリッサの言葉は、変な事のために連れ込んで無いと言う事を言いたいのであろうが、ヴァナディスの言う様にいつの時代もウワサと言うものは真実など二の次なのである。


「ふーん、でもきっと、大丈夫」


「そうですわね、何もない事を祈りますわ」

 それでも何か自信があるのか大丈夫と言い切るクラリッサに、ヴァナディスは疲れたような苦笑いを浮かべるのであった。


 その心の中で自らの信じる神に祈りを捧げながら。




 いかがでしたでしょうか?


 妙に人気がある3人ですが、彼らの未来は一体どこに向かってるのか少しだけ心配で、大いに楽しみですね。

 今回の遅い更新は夏疲れが出ているようで、執筆スピードが上がら無かったのが原因です。ですが次回も必ず投稿しますので、温かい目で待ってていただければ幸いです。


 それでは今回もこの辺で、さようならー

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