第五十五話 朝と飴とモーニングティー
どうもHekutoです。
今回は時間もとれて完成するのが早かったので(自分の中では)早めの更新です。(自分の中では)ある朝の森とユウヒの物語をお楽しみください。
『朝と飴とモーニングティー』
衝撃の【モミジ俺はロリとちゃうで事件】の後、周囲を警戒しつつ合成魔法の可能性について試行錯誤を続けていたら何時の間にか朝を迎えていた。朝と言っても例のごとく空が白んできたばかりのようで、キャンプ地は開けていて明るい森ではあるがまだ薄暗い。
「・・・正直作りすぎた、反省も後悔もしていないかもしれない」
木から降りそんな森の風景を楽しむも、両手にかかる薄い皮袋の重みにもう少し自分の辞書に薄く書いてある自重の文字を濃くするべきか、考えなくも無いかもしれないなどとよくのわからない自分への言い訳をする。どうやらそれなりに疲れているのかそれとも元からか、思考回路が不調である。
「うーん、普通なら眠気もきそうなものだが問題無かったな」
体の筋肉を適当に伸ばしながら呟いたとうり、不寝番中特に眠気は来なかったし集中力も途切れることは無かった。普通なら確実に眠気でフラフラしている自信があるのだが、これもきっと狩人な心得辺りが影響しているのであろう。
「まぁそれは良いとして、そろそろ夜番の二人を起しに行くか」
別にそれが嫌と言うわけも無く、俺は耐え難い睡魔と闘う必要が無いことに便利だ程度にしか考えていない。そんな自分の手にした妙な力を再認識すると、俺は体を動かし解しながらレーダー上で二体固まって睡眠状態になっている反応へと向かって歩くのであった。
「くーくー」
「すーすー」
「こりゃまた・・・何この可愛いの」
とある早朝の薄霧流れる森の中、男は熊と犬に出会った。その種族名の前に子を付けることをお勧めされるような二体は、焚火の近くに置かれた丸太の上で折り重なるようにして寝息を立てていた。
「すーすー・・・うにゅ・・・すーすー」
「うむ、起こすの勿体ないなぁ・・・まぁ朝食の準備してれば起きるかな、しかしカメラがあれば・・・」
そう、そこに寝ていたのは夜番をしている筈のラッセルとキリノの二人、そしてその二人の前にはカメラを持ってない事を心底後悔しているようなユウヒ。一通り二人の寝姿を堪能して癒されたユウヒは、そんな事を言うと焚火の火を起し朝食の準備を始めた。
「うぅ・・・甘い匂い・・・うん?」
「ラッセル起きたか?」
「・・・は!? あれ? あれれ? 明るい?」
焚火の前ではユウヒが何かを作っている。前日の夜に今日の朝食配給がカタパンと言う乾燥パンであり、ボソボソして食べ辛いのだと聞いていたユウヒは、少しでも食べやすくする為にと残りの果物を使い即席のジャムを作っているようだ。その甘い香りに誘われるようにむくりと上体を起こしたラッセル、キョロキョロと当りを見回しているがその顔は完全に寝ぼけていて混乱している顔である。
「やぁおはよう気持ちよさそうに寝てたな」
「・・・しまった!? ってキリノ? なんでここで寝てんのさ?」
「さぁ? 夜中に出てきてそのまま寝たっぽいぞ?」
混乱中のラッセルにユウヒはニコニコとした表情で朝の挨拶をする。目の前のユウヒを見詰めると状況を把握したのか犬耳をピンと立て立ち上がろうとするラッセル、しかしキリノがラッセルの太ももを枕にしているせいで立つことが出来ずにいる。
ついでに先に仮眠をとっていたキリノは深夜そろそろ交代しようかと起きて来たのだが、ラッセルが寝ていたのでそのまま隣で夜番をするも睡魔に勝てずラッセルに倒れかかるように寝てしまったのだった。
「・・・もしかして俺達が寝てたの・・・」
「気が付いてたね?」
「このことは先生に!?」
どうやらラッセルはキリノの事はそこまで気にしていないようで、今一番気になることは失態がオルゼにばれる事の様だが・・・。
「まぁ諦めろネリネが可笑しそうに笑っていた時点でな」
「おわったー!?」
どうやらそれも意味は無く夜型ネリネにバッチリ見られていた様である。その無常な現実にラッセルは若干涙目で頭を両手で押さえると天にほえるのだった。
「うぅうるさいなぁ・・・ぁ」
「やぁおはようキリノよく寝れたかい?」
「ぁ・・・ぁぁ・・・ぁうえ!? ふん!」
その何とも微笑ましいラッセルの行動に声を殺して笑うユウヒ、それらの声で冬眠中の熊さんが目を覚ましたようである。そんなキリノにもユウヒは笑顔で朝の挨拶をするも、何事かを理解し急激に顔を赤くしたキリノは即座に起き上がると混乱しながらも状況を把握しそして、おもいっきり拳を振り抜く・・・ラッセルに向かって。
「あぶ!? 何すんだよキリノ!」
「記憶を失え!」
「なんでぇ!?」
どうやらラッセルの膝枕で寝ていた事実が恥ずかしいと言う乙女心故の行動の様だが、まったくそれを理解していないラッセルは、キリノの攻撃を避けながら混乱し続ける頭で疑問の声を上げるのだった。
「あははははくくく・・・朝の準備運動も良いが顔洗ってきなさいな、涎の跡が付いてるのも可愛いが恥ずかしいだろ?」
「はう!?」
そんな子犬と子熊のやり取りを見て可笑しそうに笑うユウヒは、笑いを噛み殺しながら起きてすぐにテンションがMAXのキリノにおすすめの行動方針を伝える。するとキリノは耳まで真っ赤にし口元を抑えるとパタパタと足音を立てながら水場の方に向かうのだった。
「あ、ちょキリノ待っておれも行くから! いた!? まてってー」
「朝から元気だなー・・・茶でも入れるかな」
何がどうなっているのかさっぱり分かっていないラッセルはキリノに付いて行くも、手で口元を押えたキリノの器用な回し蹴りをくらい悲鳴を上げる。しかしそれでも二人は攻撃と回避を繰り返しつつ一緒に水場へと向かう。そんな二人の戯れあう姿にユウヒは目を細めると、微笑ましそうに見送るのであった。
そんな朝の珍事で暴走したキリノが正常に戻った頃、少し離れた場所に有る水場には二人の男女の姿があった。
「ふむ・・・」
「ふあぁぁ・・・ん? 早いなどうした? 難しい顔して」
「まったく、顔を洗う事を勧めたくなる顔だな」
それは身支度を整えたのであろう乱れのまったく見当たらないマギーと、寝起きなのだろう髪の毛に寝癖と若干服がよれているオルゼである。そんなオルゼの姿にマギーは眉を寄せると溜息を吐くように言葉を漏らす。
「うっせ今から洗うよっ・・・で何かあったか?」
「あぁこっちの班とお前のとこの班を合流させようかと思ってね」
「んーんー? 使えなかったか?」
マギーの言葉に水場で手拭いの様な布を水で濡らしながら悪態をつくオルゼ、しかしマギーの表情に何か相談事があると気が付くと話しを勧めながら顔を拭きはじめる。どうやら班を合流させる話のようで、顔を拭ったオルゼは手拭いを肩に掛けると思い当たる事を含ませた質問をする。
「まったくな・・・最初はハァハァうるさく寝たら寝たで鼾が五月蠅くてな・・」
「まぁこっちも似たようなもんだな・・・それでいくか、他の班はどうだ?」
どうやら問題にしていた例の冒険者が使えなかったのが原因のようで、オルゼも似たような状況なのか話に乗ってくる。しかしそのためには他の班の状況も気にしないといけない為少し難しい顔をしながら話を進める。
ついでにテカリもモメンも凄い鼾の持ち主だったようで、2班と3班の魔法士科生徒はその鼾のせいで夜眠れず現在死ぬように寝ていたりする。冒険者科の生徒はどんな状況でも必要な睡眠を取れるように練習している為、そこまでの被害は出ていないがそれでも若干寝不足になっているあたりその破壊力も知れると言うものである。
「1班は不思議と上手く行ってるな、4班もネリネ君が夜型だから問題無かったな」
「1班はアドバイスしたからな・・・生徒に、しかしネリネ先生は夜型なのか道理で夜は動きが良かったわけだ」
マギーの報告を頷きながら聞くオルゼ、どうやら1班には何かアドバイスをしたようである。しかしネリネが夜型な事に感心を示すと何故かマギーの顔から表情が消え、
「・・・オルゼ次私のネリネ君をいやらしい目で見たら抉り取るぞ?」
「こわ!? 見てるわけないだろう、それで5班は?」
オルゼの鼻先まで近づき何をと言わずとも目だと分かるようなジェスチャーで脅迫するマギー、そんなセリフと動きに純粋な恐怖を感じたオルゼは話を逸らす為5班の事を聞く。
「・・・正直びっくりだよ、冒険者科の子は最終的に寝ていたがね」
「あぁ・・・まぁあの二人に夜番は難しいかもな、ん? びっくり?」
腰の引けているオルゼからすっと離れると顔を少しだけ顰め5班について話し始めるマギー、その内容にある程度は予想していたのだろうオルゼは脳裏に思い浮かべた子犬と子熊に苦笑いを浮かべるも、それがびっくりと言う言葉とと繋がらず首を傾げる。
「ああ、ユウヒ君だがどうやら不寝番していたようだよ」
「ほう、確かにびっくりだしかしそれで今日もつのか?」
「さぁ・・・おや? 噂をすればユウヒ君だな」
マギーの話に驚きの顔を浮かべるオルゼ、それだけ最近では冒険者が不寝番をする事は珍しいのであろう。しかしその状態でまともに動けるか二人で心配していると、丁度そこへユウヒが荷物を持ってやって来たようだ。
「おはようございますー寝れましたか?」
「おはよう少なくとも君よりは寝ているよ・・・大丈夫なのかい?」
「あはは、まぁ今のとこ大丈夫ですね」
ユウヒの朝の挨拶に答えるマギーは少しだけ眉を寄せたまま質問する。実は夜の巡回時にマギーはユウヒと話していてその時に不寝番についても聞いていたのだった。マギーに軽く笑って大丈夫だと答えるユウヒ、そんな二人の会話を聞いていたオルゼは、
「ふむぅ見た目はそれっぽくないのに中身はしっかり冒険者ってことか良い事だ!」
と言いサムズアップをし、まったく悪気のない顔で笑いかけるのだった。
「・・・ふぅ、それでどうしたんだい? 何かあったかな」
「ははは、実は昨日行軍実習? の時に周りに居た子達としっかりできたら飴玉あげるって約束したんですけど」
「ん? ああそういえばそんな話をしていたなネリネ君だけズルいとかなんとか」
天然オルゼのいつもの様子に軽く溜め息を吐くと、身なりの整っているユウヒがここまでやってきた理由を聞くマギー、どうやらユウヒは昨日の約束を守るために夜の間に飴玉を増産したようである。
「たぶんそれですね、折角なんで皆にと思ってですね。目覚ましに甘い物っていいですよね」
「ん? おお! 綺麗だなこりゃ・・・本当に飴か? 宝石みたいに綺麗なんだが・・・」
マギーに説明しながら持っていた薄い革袋の口を広げるユウヒ、その中身には透明感のある赤色をした飴玉が大量に入っていた。その袋から広がる甘い香りに釣られ中身を見たオルゼがどこか感動した様な声を出し飴玉を見詰める。
「飴ですよ? 全員分以上あると思うんで御一つどうぞ?」
「すまんな! では一つ・・・」
「こいつはこんななりで甘いもの好きなんだよ「甘い! うまい! おおお!」・・・うぅっ! 私も一つ!」
ユウヒの声に速効で食いつくオルゼ、どうやらかなりの甘い物好きの様である。そんなオルゼの姿に呆れたように肩を落とすマギーだったが彼女も女性である、目の前で甘い物を美味しそうに食べられては我慢も出来ないと言うもの。彼女らしからぬ可愛い声を出し飴を口に頬張る。
「素晴らしい! これはどこで買ったんだ? 高かったか?」
「えっと手作りなので売ってはいないですね」
「「手作りだと!?」」
あまりの美味しさにハイテンションでユウヒに入手先を聞くオルゼ、その姿は今に掴みかからんと言った感じだったが、ユウヒの返事ですぐに大きな右手でユウヒの左肩を掴むことになった。ついでに反対の右肩は目を細め飴を舐めていたマギーが、ユウヒの言葉を聞いてその細い左手で掴んでいる。
二人が落着くのにしばらくかかり数分後・・。
「うーむ・・・職人でもやっていけそうだな」
「君は多才すぎないか?」
ユウヒから受け取った皮袋の中身とユウヒの顔を交互に見ながら声を漏らすオルゼ、その横では顎に手を添え難しい顔のマギー、その頬が飴玉で膨れているのは見なかったことにしておこう。
「そうですかね? それじゃ飴玉お願いします。5班には直接渡すので」
「うむ感謝する!」
多才と言われても合成魔法しか使っていないけどなとユウヒは恍けたような顔で小首を傾げると、手を振りつつその場を後にした。そんなユウヒの姿に上機嫌なオルゼは全力で手を振っている。
「・・・また一つ謎が増えたか」
「ん? 良い奴じゃないか、それでいいだろ」
「ふん、単純な奴め・・・まぁ否定はせんがな」
そんな小走りで帰るユウヒの姿にマギーは顎に手を添えたまま眉を寄せる。オルゼはそんなマギーに笑いながら答えると、マギーは単純と鼻で笑いながらもどこか嬉しそうな顔で笑っていたのだった。
どうもユウヒです。今のはちょっと危なかったでしょうか? 一般的な物の価値の調査も兼ねて飴を渡しに行ったのですが・・・。
「う~んランク低い飴で正解だったな、どうもこの世界は全体的にランクの低いのが一般レベルみたいだなぁ」
夜中黙々と合成を続けた結果、大量の飴玉や保存の効くドライフルーツその他薬などを作り、荷物の整理もできたので大変充実した夜でした。しかし、飴玉の最高ランクがBと高く薬類の事もあり作った物の中で一番低いランクをまとめて持っていったがそれでもあの反応である。ちなみに持って行った飴のランクは平均Eランクである。
「甘味に関しても一般平均は低いんだろうな、その辺の調査もした方が良いかな」
「あ! ユウヒさんお帰り!」
「おうただいま・・・まだ二人だけか」
俺が焚火の場所まで帰ってくると出た時と同じように若干傷だらけのラッセルが出迎えてくれる。どうやらまだキリノとラッセルの二人だけの様だ。
「まだ早いからしょうがないですよ」
「あ、お湯沸騰してますよ」
「お、丁度いいくらいだなありがと」
俺の言葉に困ったような顔をしたキリノの顔はスッキリとしていて、少し前までの赤みは無くなっていた。そんな風にキリノの顔を観察しているとラッセルが焚火に置いてある鍋を指さす。焚火を離れる時にお願いしたお湯はちょうどよさそうである。嬉しそうに俺のお願いを聞いてくれるラッセルを見ていると子犬にしか見えてこないのだが・・・いやある意味間違っていないのか。
「何するんですか?」
「ん? みんなが起きてくるまで温まりながら待とうと思ってね3個、4個くらいかな」
「何ですかそれ?」
「赤い玉?」
鍋で沸かした結構な量のお湯を見て質問してくるキリノ、俺は質問に答えながらバッグの中から作っておいたクレアザミのお茶を取り出すと掌で転がし二人に見せる。二人は俺の掌の上の赤っぽい球体を覗き込むとさらに不思議そうな顔になって行く。
「携帯性を備えたお茶だよ、中を見ててごらん?」
「「?」」
「あ! 花が咲いた!」
「くんくん、いい匂いだ花みたいな香りがする」
説明するよりも実際見せた方が分かりやすいだろうと思い、十分沸騰しているお湯の入った鍋を焚火の火から離すと茶葉玉を放り込む。すると次第に球体はほどけていき綺麗なクレアザミの花が咲く。その光景にキリノは楽しそうに声を上げラッセルは興味深げに香りを嗅いでいる。
「まぁ原料が花だからね」
「お茶って花からつくるの?」
「花からも作れるし普通は茶葉って言うくらいだから葉から作られるんじゃないかな?」
「なるほどー」
お茶が出来るまで他愛のない話をして過ごしていると、十分に色が出て綺麗な赤色に染まったお茶が甘く爽やかな香りで空間を満たしていく。
「そろそろ良いかなほらカップ用意しないと飲めないぞ?」
「「いいの?」」
そろそろ飲みごろなので手持ちのカップに注ぐと、何故かそれをじーっと見つめる二人。そんな二人を正気に戻すように話しかけると、まったく同じ言葉でまったく同じように首を傾げる二人。某動画サイトに投稿すれば金色になりそうなくらい愛らしい姿である。
「最初からみんなで飲むつもりだよ」
「・・・アタシ5班でよかった」
「おれも」
「?」
そんな二人の反応に俺は困ったように笑うと元からそのつもりだと告げたのだが、二人はしみじみと言う言葉が似合う顔でそんなセリフを呟くのであった。
キリノとラッセルがしみじみとユウヒがキョトンとなってからしばらく時間が過ぎたころ、魔法士組が眠りから覚めてテントから出てきたようだ。
「ユウヒさんおはようございます・・・体調は大丈夫ですか?」
「おはよう、特に問題は無いけど?」
「タフですね・・・」
先頭を歩いていたカステルが、不寝番をしたのであろうユウヒを気遣う様に声を掛けるも、まったく疲労の見えないユウヒの姿に思わず本音を漏らしてしまう。そんなカステルはまだ若干眠たい様で欠伸を噛殺している。
「カステルの後ろはだいぶ眠たそうだね・・・」
「あ、ははは興奮してたんでしょう寝るのが遅くなってしまって、ロップちゃんはすぐ寝ちゃったんですけど」
「寝るの得意だよ!」
「・・・自慢になるのか? ・・・さむ」
苦笑いを浮かべるカステルの後ろにはフラフラと歩いてくる3人と元気なロップの姿があった。どうやらロップ以外の子は興奮してかすぐに眠れなかったようで、そんな3人とは対照的に元気な声を上げるロップにサワーリャは良い事なのかそうでもないのか悩んでいる、どうやら寒さのせいか縮こまり頭もうまく回転しないようである。
「えっとサワーリャだったか? 寒そうだなこっちにおいで暖かいお茶があるぞ」
「すみません・・・種族のせいか寒さに弱くて、あぁ暖かい・・・美味しい」
ユウヒにおいでおいでされるサワーリャは、何の警戒心も抱かずユウヒの隣にピッタリとくっつき座るとユウヒの持っていたカップを貰いお茶を少しずつ美味しそうに飲むのであった。そんな姿に何故かカステルの表情が硬かったのはナイショである。
「ロップも飲みたい!」
「みんなの分あるからカップを持って来なさい」
「はぁい♪」
「カップ・・・!? ・・・うぅ」
サワーリャが美味しそうにお茶を飲む姿にロップも飲みたくなったようでサワーリャの隣で羨ましそうに声を上げる。そんなロップにユウヒは優しげな声を掛けるとロップは嬉しそうに返事をしカップを取りに駆けて行く。そんな中サワーリャ思考回路が回復してきたのか、自分の使っているカップがどういう物なのか理解して顔を少し赤くしていた。当然それはユウヒの自作カップである。
「ユウヒさんほんと先生みたいですね・・・と言うよりおとゲフゲフ・・・なんでもないですよ?」
そんなユウヒの周囲で繰り広げられる光景にカステルが思わず本音を零しそうになるも、不自然な咳で誤魔化す。しかしその時のユウヒの表情は少し固まっていたとはサワーリャ談である。
「持ってきたよ!」
「あいよ、ほら熱いから気を付けろよ昨日みたいに熱い思いするからな」
すぐに気を取り直したユウヒに戻ってきたロップが複数のカップを渡す。どうやら眠たさと寒さで動きが鈍っているみんなの為に全員分持ってきたようである。ユウヒはそのカップにお茶を入れると注意しながら順番に渡していく。
「ありがとう! んーいい香り~♪」
「ハーブティの様な紅茶の様な不思議だけどとても美味しいです」
「ハーブとクレアザミで作ったお茶だ、体力回復と頭をすっきりさせる効果があるんだよ」
ロップは礼を言うと立ったままカップに鼻を近づけ香りを楽しんでいるようだ、その隣ではちょこんと言った感じで大きな丸太に腰掛けたルニスが上品にカップに口を付け感想を言いユウヒがお茶の説明をしている。
「へぇ~じゃ今日の実習にはぴったりだな」
「確かにあんたにピッタリね」
「キリノには言われたくないにゃ・・・いふぁいでふきふぃのふぁん」
その説明にラッセルがお茶を見詰めながら感心していると、キリノが笑いながら茶々を入れる。その言葉に心外だと言った感じで言葉を紡ぐラッセルだったがその言葉を最後まで紡ぐことは出来ず、キリノの手により頬っぺたを抓まみ上げられるのであった。
「今日は索敵実習ってやつだっけか?」
「あ、はいそうです。今日と明日班を二つに分けて交互に索敵実習をして明後日は実技実習です」
この野外実習はより現実的な実戦経験を積むと言うのがコンセプトで行軍、野営、索敵、戦闘の四つを連続した一連の流れとして経験すると言うものである。その中で今回の索敵とは、森のどこに野生の魔物などが居るか調査し二日間集めた情報から自分たちで討伐できる相手を三日後の戦闘実習で倒すことが目的で全員が目的を達成するとほぼ実習は終了となる。
「今日はおれとルニスとレムリィです」
「あんたちゃんと二人を守りなさいよ? 前衛一人なんだから」
「分かってるよ任せとけって変なとこには近づかないし」
どうやら索敵実習の打合せは済んでいるようで、お茶やユウヒの作っていた即席ジャムで美味しそうに朝食のカタパンを食べ終わると実習に行く3人は準備しておいた装備をチェックし装備し始める。
「それじゃユウヒさん私たちはどうしましょうか?」
「ん? 二日とも俺が付いて行くよ実戦は全員で行くんだろうし」
「いいんですか?」
準備をしている三人を見ながらカステルは護衛の相談をし始めるが、二日ともユウヒが護衛すると言う返事にカステルはキョトンとした顔で確認する。それは一人で生徒達の護衛をすると言うのは意外と負担が多い為、通常の冒険者なら嫌がるような仕事であるからだ。
「おう、索敵は得意だからね。帰ってくる頃には体も冷えてるだろうから暖かい場所を用意しててくれればいいさ」
「そうですか、わかりました。留守番組の護衛の方は任せてください」
そんな背景もあり又、ユウヒの実力もそれなりに知っているカステルはユウヒの楽しそうな表情に何とも言えない頼もしさを感じるのであった。
「よろしく。それとこれみんなでおやつにでも食べてよ」
「なんでしょうか? ・・・わぁ綺麗ですねぇ宝石? あれ? 甘い香りが」
「宝石飴ってやつだな、こいつは特に良い出来だからな。よいしょっと」
「はぁ、綺麗ですねぇ・・・ん? 良い出来?」
簡単に行動方針を決めたユウヒはバッグから中身の詰まった薄い革袋を取り出すとカステルに渡す。その中には色とりどりの、宝石と見紛うばかりの飴玉がぎっしりと詰まっていたのである。そんな袋の中身にびっくりして固まるカステルを横目にユウヒはすくっと立ち上がると準備をしている三人の方に歩いて行く。
「3人共準備できたか? 索敵班は俺が護衛するから何かあったら言う様に、基本ついて行くだけだけど危なそうだったら声かけるから安心してくれ」
「「「はい!」」」
ユウヒの声に元気よく返事するのは、美味しいごはんで元気なラッセルとやっと眠気の覚めたルニスとレムリィの三人である。
「先ずはどうするんだ?」
「はい、先ずは先生に出発の報告と割り振りの場所を聞いて探索開始です」
「分かったそれじゃ行こうか?」
「「「はい!」」」
ユウヒの今の姿を傍から見たら完全に引率の先生か保護者である。保護者と言う意味では間違って無くもないのだが。そんな生徒達の最後尾を付いていくユウヒの背後に駆け寄る影。
「あのユウヒさん? ちょっといいですか?」
「ん? なにかあった?」
「一つ質問なんですが・・・この飴ってユウヒさんが作ったわけじゃないですよね?」
「ん? 作ったよ? 飴もお茶も。あ、それじゃ3人先に行っちゃったから俺も行くね」
「あ、はい・・・行ってらシャイ」
その影の正体はカステルであり、ユウヒと交わした会話の内容によりユウヒの新たな一面を知ることとなったカステル、彼女はそのまましばらく固まっていたと言うのは寒さかべつの要因か縮こまり未だにユウヒのカップを手に持ったサワーリャ談である。
いかがでしたでしょうか?
このくらいのスピードで執筆できればいいのですが・・・。今の生活じゃ厳しいですね。
今回はほのぼのとした空気感を感じてもらえればいいなと思ってます。激しいバトルパートをご所望の方には申し訳ないですが、戦闘描写の苦手な私にはこちらのほうが書きやすいのです。でも頑張って戦闘描写も書いていこうと思いますの楽しみにしていてください。
それでは長々と書きましたがこの辺で、次回もここでお会いしましょう。さようならー




