第四十四話 騒ぎと彼等
どうもHekutoです。
少し前にネット環境とPCの起動状況が安定しましたので、執筆を開始し本日四十五話を上げることが出来ました。どうぞお楽しみください。
『騒ぎと彼等』
ユウヒがウィルニス湧水地で未知との遭遇を終え学園都市へ帰る準備をしている頃、そこから遠く離れた場所では一つの黒い影が地を這うように走っていた。そう、それはごきb「ちがうでござる!?」失礼、走っていたのは3モブ忍者の一人ゴエンモである。
「拙者なぜ叫んだでござるか?」
どうやらヒゾウの作戦通り【暴走ラット】の進行方向にある村などに注意を促した後、ラットの数が最も多くしかし進行速度が一番遅い北方面に向かって走っているようである。
「ふむ地図を見るに残りは国境砦とその手前の村ぐらいでござる、国境砦には国から連絡が行ってそうだし・・とりあえずは先に村それから確認に砦までって・・」
道なき道を走りながら器用に地図を見ているゴエンモは、残りのノルマを口に出しながら確認し予定を組み立てるが何かに気が付いたのか首を傾げると、
「これおかしくね?どう考えても仕事量一番多いだろおっとござろう・・・解せぬ」
実際3人で分担した仕事量だが移動距離だけで考えてもゴエンモの移動距離は非常に多く、すでに数件の村を回って一晩野宿し朝から移動中のゴエンモは神妙な顔で解せぬと呟くのだった。
「まぁここまで来ればあのネズミ共が来るまで数日の猶予はありそうだしいそ・・いだ方がいいでござるな休むのはそれからでござる」
なんだかんだと言いつつも真面目な性格なのか、言葉の途中で詰まると休みをを後回しにし目を細めると溜息にも似た言葉をこぼすゴエンモ、そんな独り言をさびしく呟きながら小一時間ほど走っているとゴエンモは何かに気が付き木の上に飛び上がり動きを止めた。
「・・何か妙な音が、まさかネズミ共がもう? ・・いや何か別の・・これは!?」
木の上に上り耳を澄ますゴエンモ、彼等3モブの手に入れた忍者の力はその五感にも及んでおり人間離れした聴覚を持っている、しかもこれは急な大音量にも即座に小音化したりと高性能であったりする。流石汚い忍者と言われるだけありそのスペックは嫉妬されるレベルのようだ。
「その評価は褒めているのかわからんでござる・・じゃなかった急がねば!」
妙な呟きとしょぼん顔をするゴエンモだがすぐに表情を真剣な物に戻すと、今までの何倍も速い動きで木から木へと飛び移りながら目的地へと向かうそして、
「む! いかん!」
これまでにない必死な形相になったゴエンモは焦った声を残すとその場から掻き消えたのであった。
そんなゴエンモの奇行から少し時間は遡りとある街道、ここはグノー王国帝国間国境砦に続く街道の一つである。
「父さん大丈夫? 休憩はいらない」
「ああ、大丈夫だ眠気もだいぶ抜けたからな、エルこそ大丈夫か?」
「うん全然問題無いよ」
その街道を走る屋根の無い簡易な一頭引きの馬車、その上では親子だろうか二人の男女が話をしている。
「そうかもうすぐ村だ昨日は野宿だったからな疲れてるだろ、村に着いたら母さんに何か作ってもらおうな」
「そうだねまさかあんなところで馬車が故障するなんて、休憩場じゃない場所での野宿ってなんだか安心できないよね」
彼らはこの先の村に帰る途中の様だが、話からすると馬車の故障で休憩施設以外で野宿をする羽目になったようだ、この街道は少し背の高い草と点々と木や岩がある草原の真ん中にある為、隠れる所があまりなく野宿をするには少々不安がある地形でその為か二人はあまり眠れていない様子である。
「そうだなー昔はそれが当然だったが、休憩施設に慣れると普通の野宿を進んでやりたいと思わないからな」
「そっか父さんって元冒険者だったんだよね、あんまりそんな話しないからつい忘れちゃうよ」
どうやらエルと呼ばれる少女の父親と思われる男性は元冒険者だったようで、確かにその身体はアリーネではないがゴツゴツと言う言葉が似合う筋肉を纏っていた、
「はっはっはあまり面白い話でもないしな、それにその話をすると母さんの武勇伝に・・は!?」
「どうしたの?」
どうやら彼女の両親は共に冒険者だった様で、男性は笑いながら昔について話すが後半になって行くほど嫌な事でも思い出したのか、尻すぼみになって行くと何故か言葉を言い切る前にビクッとするのだった。
「いや今何か悪寒が・・!?」ゴオッ!
「え? きゃーーー!」
「エル! くっ・・やってくれるな、大丈夫かエル」
しかしそんな楽しい家族の語らいを邪魔するように風の塊が馬車を襲いそのまま馬車を横倒しにする。どうやら男性は突風が来ることに気が付いていたのか、咄嗟に避けようと馬を加速させる体勢に入っていたが間に合わず、少女と一緒に馬車から投げ出され馬は横倒しになる馬車と共に横転していた。
「いたた、なんとか・・でもいったいなに!?」
「おい! 生きてるじゃねーかちゃんと狙えよばか」
「ちゃんと狙ったさ! こいつが着弾前に避けやがったんだよ!」
どうやら草原の草がクッションになりエルは特に怪我も無く、少し痛がりながらも起き上がり周りを確認する。すると周りの草むらや岩陰から、ぞろぞろと薄汚れた革製の軽鎧を身に着けそれぞれバラバラの武器を持った男達がニヤニヤと笑いながら出てくる。
「父さん・・」
「盗賊か・・」
エルが顔を強張らせながら父の後ろに隠れる、どうやら彼らは盗賊の様である。すぐに男性はエルを庇う様に立つと腰の剣を抜き構える。
「そーだよ盗賊様だ! なんか文句あっかごらぁ! あっはっはっは」
「ひっ!」
「おー遠くで見るより可愛いじゃねェかこいつぁ高く売れるな、おい! 分かってんな顔と体には傷つけんじゃねーぞ? それ以外なら切り落としてもかまわねぇ」
「わかってますよ、男は殺していんすよね?」
「好きにしろ」
盗賊の威嚇するような大声にエルは縮こまりながら父の後ろに隠れる、その間も盗賊たちは算段を始めると思い思いに武器を構えじりじりと獲物を囲むように動き出す。どうやら今回の獲物はエルと金品の様でどの男達もニヤニヤと顔を歪めている。
「くっ9人か数が多いな、エル・・父さんが時間を稼ぐからそのうちに逃げるんだ」
「え? そんな!?」
「あ~? 逃げる相談かぁ? 無理だって囲まれてんだかぁらな!」
「はっ! 早く!」
賊の数は全部で9人いて二人の男女を取り囲むようにして距離を詰めてきている、その包囲網で一番手薄な方にエルを誘導し逃げるように言うと男性は、叫びながら切りかかってきた賊に向かって進み出ると賊の手に持った剣が最高速に達する前に自らの剣で切り払い叫ぶ。
「ちっ・・やんじゃねーかよ! お前ら手伝え! 女を逃がすなよぉお!」
「ぐっ!何!? ガハッ!」ドゴッ!
「っははは良く飛ぶなーおっもしれぇなぁ!」
リーダーと思われる男が指示を出すと賊の大半は逃げようとするエルの方に向かい、その指示に動揺したエルの父に対してリーダーと思われる男と、両手で持つ大きなハンマーのような武器を持った男が二人で襲い掛かりエルの父はハンマーの攻撃を腹に受けるとまるでサッカーボールのように飛ばされる。その姿にハンマーを持った男は大口を開け笑った。
「父さん! いや離して! 父さん!」
「そんなつれねーこと言うなよぉ狂うまで犯してやっからよぉ」
「馬鹿野郎商品に手出すやつがあるか」
その間に一人の賊に捕まったエル腕を取られながらも父を呼び続ける。そんなエルに腕を捕まえている男は嫌らしい笑みを浮かべ舌なめずりをすると、後ろからエルに抱き着くように腕を腰に回すとエルの父に聞こえるように大きな声で話し出す。しかしリーダーと思われる男がその行動を諌めるが、
「いっじゃねーかよー・・じゃケツで我慢ししてやるよなぁ? うへっへ」
「い、や・・たす、け(私、このまま、いや! 父さん! 誰か!)」
しかしその男は詰まらなそうに返答すると今度はエルのお尻を撫でまわし鼻の下を伸ばしながら笑う、どうやらこの盗賊達には明確な上下関係は無いようで、リーダーと思われた男性も勝手にしろと言った顔である。そんなどんどんと悪化する状況にエルは頭が付いて行かず、只々来るはずの無い助けを願うだけだった、しかしどうやら運命か神の仕業か精霊の悪戯かそこに近づく黒い影があった。
「グフフとりまこの布邪魔だよな~? ほ~れごかいちょ! あガッ!?」ヒュッ!ゴスッ!
「いや! ・・え? なに?」
「何だ!?」
エルの後ろから抱き着いていた男はその手でエルの服を破こうと胸に手を伸ばす、その行為に恐怖で縮こまるエル、しかしその男の手が胸に触れると思われた瞬間、男の顔面に漬物石ほど有る岩が突き刺さっておりそれを見た者はエルも盗賊達も何が起こったか分からず驚愕の表情で固まってしまう。
「少女とは摘まず遠くより愛でるものなり、人の道を外れ少女を己が欲望のまま刈り取る者を人は、外道と言う・・」
「お、お前何もんだ!?」
「貴様らに名乗る名など無い!(うっしゃー一度言ってみたかったんでござるー)」シャキーン!
その直後どこからともなく声が響きそこに居た人間は皆その声の主を探す、そしてその男はエルの父とエルとの間、丁度街道と草原との境目にある高さ1mほどの岩の上にいつの間にか腕を組み直立の姿勢で立っていた。そこにいる者すべてがその男の放つ空気と言葉に飲まれ動けずにいたのだが、しかし気圧されながらも賊のリーダーと思われる男が虚勢ともとれる大声で叫ぶも、その黒ずくめの男は鋭い眼光で睨み返し言い返すと怒気を放つ・・・そう、その正体は残念忍者ゴエンモである。
「ぁ・・・・」ぽ~
「くそ! かっこつけやがって! お前らあのくそを殺せ!(ちょっとかっこよかったじゃねーか!)」
「はっはっは丸腰が突っ立ったまましっぐべら!」ガッ!
その怒気に気圧されながらも指示を出す男、その声に我を取り戻した一番ゴエンモに近いところに居た男は手に持っていた槍を構え、叫びながら岩の上のゴエンモ目掛けて突撃する。槍が自分の体にとどく瞬間、ゴエンモは前に倒れるようにその槍を交わすと岩から跳びそのままの勢いで己が右ひざを槍男の顔面に突き刺した。
「は、早い!「早いとはこういうものでござる」ひっ!?」キュッ! ゴキッ!
槍男が後ろ向きに倒れる横にふわりと降り立ったゴエンモを見てエルのさらに向こう、一番遠いところに居た男がその姿に恐怖し後退りをするも、その男の言葉にテンションが上がってきたゴエンモは目にも止まらぬ高速移動でその男の後ろに現れると首を絞め苦しむ暇も与えず落す。
「くそ! 全員で行くぞ!」
「たとえ複数で来ようとも守るべき者のある紳士の前では・・無意味!体術奥義!【朧四重葬】」
「「「「ケヒャ!? カフ・・」」」」
盗賊達は謎の敵を前に恐怖しながらも、一斉に攻撃を仕掛ければ何とかなると言う確証の無い希望にすがり4人一斉に跳びかかる、しかしテンションが上がっているゴエンモにはそれも意味を成さず、黒ずくめの頭巾から唯一見えている目を獰猛に光らせ叫ぶと後ろ腰に差していた短剣を抜きその場に残像を残すと4人の男達を同時に切り裂き男達の後方、盗賊達から離れるように距離をとっていたエルの隣に現れ短剣を鞘にしまう。
「ば、ば、化物・・・」
「ふん、外道に化物呼ばわりされる言われは無い・・」ジリッ・・
リーダーと思われる男が思わずそう零すと、ゴエンモは不機嫌そうに吐き捨て独特な構えをとり残りの二人に向かって殺気の籠った視線を飛ばす。それだけでも気の弱い人間なら気を失いかけないほどの眼光である、そんな姿を見るだけでも彼らが手に入れた力がどれだけ凄い物だったのか知れるだろう、その力が無ければ戦うことも人を殺めることも人を助けることも生きる事すらも酷く苦労していたに違いないのだから。
「くっ! ・・覚えてやがれ!」
「いやでござる(むさい野郎なんてぺっぺでござるそれより)」
生き残った二人の賊は互いに無言で目配せをすると捨て台詞を残し一目散に逃げて行く、その後ろ姿にホッとした様に目を細めるゴエンモは即答で記憶を拒否し心の中で毒を吐くも、すぐに振り向き緊張が切れたのかその場でへたり込むエルの方を見詰める。
「ぁりがと・・」
「うむ、大事無いでござるか?(何と言う美少女! 拙者こう言う展開を望んでたでござる!)」
度重なる緊張状態が急に緩んだためか上手く言葉を出せずか細い声でお礼を言うエル、そんな彼女に無駄にキリッとした表情で無事を確認するも内心美少女のピンチを救うと言う王道展開と、そのか細いお礼に興奮するゴエンモであった。
「はい、大丈夫です・・!? 父さんが!」
「む!」
ゴエンモの言葉に段々と頭が回って来たのかしっかりとした声で返事をするエル、しかし頭がはっきりとしてきたことで父が吹き飛ばされたことを思い出し父親の方へとフラフラ歩き出す。ゴエンモはそれに気が付くと先にエルの父親と思われる倒れた男性に近づき安否を確認する。
「ぐぅ・・う、あんたは? 助けて、くれたのか・・」
「安心めされよ脅威は去ったでござる・・ふむこれは衝撃を外したでござるな良い腕をお持ちでござる」
「はは、昔とった杵柄さ・・俺はガァスだあっちは娘のエニィル・・ありがとう
助かった」
ゴエンモは男性の状態を確認すると起き上がろうとする男性の首の後ろを抱え補助する。そんなゴエンモに男性は痛みを我慢しながら名前を告げるとゴエンモの言葉で安心したのか笑みを浮かべる、どうもゴエンモの見立てでは相手のハンマーが当る瞬間咄嗟に剣をクッションにしたのか打撃箇所が急所からずらされていたようで、それを示すかのように男性の手に握られた剣の腹にはひび割れが出来ていた。
「拙者ゴエンモと言うでござるこの先の村に用があるでござる」
「家の村にですか?」
ガァスの自己紹介にゴエンモは自分の名とここに居合わせた理由を述べる、すると父の無事に胸を撫で下ろしていたエルがきょとんとした顔で聞いてくる。
「ほうそうでござったか! では村まで護衛いたそう、えっとエニぃル殿?」
「あ、あのエルって呼んでください!」
「む、ではエル殿拙者馬車を動けるようにするのでお父上を頼むでござる」
それはちょうどいいと護衛を提案するゴエンモにエルは少し頬を赤くしながら愛称で呼んでほしいと頼む、するとゴエンモは自分が名前を言い辛そうにしていた為気を聞かせてくれたのかと、このまだ中学生くらいにしか見えない少女の優しさに目元を緩めガァスの事を任せると、横転した馬車ともがく馬を助ける為その場を離れた。
「はい!(ゴエンモ様・・素敵な人、エル殿ってえへへうふふ)」
「これは・・(家の娘が・・そうかもう恋をする年頃なんだねエル・・)」
そんなゴエンモの予想とは違い少女は恋する乙女の潤んだ瞳で意中の相手を見詰め、そんな彼女を父は感慨深そうに見つめ彼ならばとゴエンモ見ている。
「おお!? 止めるでござる!? 舐めないでほしいでござる!?」
「ぶるる!」
その視線の先にはそんな事にまったく気が付かないゴエンモが助け起こした馬に感謝の気持ちを舐める行為で伝えられていた。しかしこのゴエンモの一連の行為が2体の鬼を呼び覚ましゴエンモの身に黒い影を落とすことになるとはここに居合わせた誰もが予想だにしなかったのだった。その鬼とは・・・。
ここは、自由騎士団のアジト内談話スペースの一番奥にある広めの机そこには御嬢に散々扱き使われたジライダとヒゾウがだらりと机に伸びておりその姿を肴に御頭が酒を飲んでいた。しかしそんなだらけた二人が急に、
「「!!!!????!?」」ガタガタッ!!
「な、なんだい!? 急に?」
何かあったのか驚愕に染まった顔で立ち上がる。そんないきなりな行動に先ほどまで面白そうに酒を飲んでいた御頭はびっくりしたのかお酒を溢してしまい色んな意味で慌てて二人に問う、その御頭の声を聞いて聞かづか、
「こ、この悪寒は・・!?」
「・・・まさかゴエンモ・・」
「どうしたんだい・・何かあったのかい?」
ぶつぶつと喋り出す二人に御頭は心配そうに話しかける。その呟きにゴエンモと言う言葉が混じっているのに気が付くと御頭は真剣な顔つきになる。
「虫の知らせか・・ゴエンモの身に・・」
「急がねば! 手遅れになる前に!」
「・・・何かあったんだね、いいよ行ってきなこっちは大丈夫だから」
御頭の質問に震える声で答える二人、御頭はその言葉を聞いてモーブ忍者特有の何かでゴエンモがSOSを出したか、その危機に二人が気が付いたかと予想するといつもより優しい声で二人がゴエンモの所に行く許可を出す。今現在このアジトには最低人数しか居らず二人が抜ける事は戦力を急激に落すことになるのだがそれでも御頭は笑って二人に許可を出したのだ。
「「姉御・・・」」
「ふふ、その代りちゃんと3人で帰って来るんだよ」
そんな御頭の姿に真剣な目をする二人その二人にちゃんと3人だ帰ってくるように言うと体ごと視線をずらすと静かに酒に口を付ける御頭。
「「了解!」」
「仲間思いだね~・・なんだか妬けちゃうねー」
ジライダとヒゾウは綺麗な敬礼をするとその身を風にしたかのごとく素早い動きでアジトを後にした、そんな彼らに御頭は羨望の眼差しにも似たものを向けるのであった。
「ゴエンモ・・おまえ・・くっ!」
「やっちまいやがったな・・しかし! まだ間に合う!」
「「俺達が! そのフラグを叩き折る!」」
この二人最低である。そう、彼らは別にゴエンモの危機に反応したわけでは無くゴエンモが予期せず建てた恋愛フラグに反応したのだ。恋愛フラグそれは恋の始まりを告げる旗その旗を一つ一つ立てて行く事で栄光のゴールへと至れる。そして彼らは鬼となりその幸せの邪魔に行こうとしているのだ、その目に嫉妬炎を燃やしながら。
「ふははははは! 待っていろゴエンモ!」
「今逝くぞ! はーっはははは!」
「!?」ゾクッ!
「どうしましたゴエンモ様?」
「いや何やら悪寒が・・」
その頃ゴエンモは馬車で御者をしながら目的の村へ向かって走っていたのだが、自分に迫る2匹の黒鬼が発する邪念に気が付いたのか顔を青くし肩を震わせる。その後ろからエルが気遣う様に話しかけてくる。
「まぁそれはいけませんねではこれを・・」
「あ、あのエル殿近いでござるが・・」
そんなゴエンモの返事に目の奥で恋の炎を密かに揺らすと、エルは自分が肩に掛けているロングショールを慣れた手つきで広げると、御者台に座るゴエンモのすぐ隣に移動し自分とゴエンモを包むようにショールを掛けゴエンモの隣に座る、それはすでに密着と言っていい状況である。そんな予期せぬエルの行動に慌てるゴエンモだったが、
「近づいてるんです♪ ・・嫌ですか?」
「え!? いや、ではないでござるが・・・(くはっ! 何たる状況か!? 胸は将来に期待するとしてもこの柔らかさこの香り! っていかんいかんよ!? 私は紳士! 変態たる前に紳士たれ! イエスロリータノータッチ! あぁ! そんなすり寄ってこないで! 私の精神防壁が!? たすけてー助けて勇者ユウヒー!)」
「うふふ」
エルの言葉攻めと上目使いと言う強力な連続攻撃に拒否することが出来ずなすがままに成るゴエンモであった。
「・・・(娘よ大きくなって・・だんだんと母さんに似てくるなぁ)」
その後ろで横になる父は娘の成長にそっと頬を濡らすのだった。
一方その頃、遠く離れた草原に2匹の黒鬼が無言で走って居た。
「「!?!?!?」」ピキューーン!
「お~の~れ~!」
「ですとろーい!」
しかし何かを感じ取った二人は地の底から響いてくるような恐ろしい声と、謎の奇声を上げると血涙を流しながら草原を疾走するのであった。後日その草原では姿の見えない恐ろしい声と謎の突風と言う怪現象が報告されたのであった。何と言うかどこまでも残念な男達である。
さらに遠く離れたウィルニス湧水地学園都市間の街道、そこにはユウヒ一行が居た
「んー・・」
「どうしました?」
「うん、何か俺とは関係ない所で妙な騒ぎが起きてそうな気配が・・(そしてどうしようもない助け求められてるような)」
ユウヒの人外の感は遠くで起きている騒ぎを胸騒ぎで感じとる。そんなユウヒを気にするアリーネだが、
「はぁ?」
「いや気にしないでくれ、もうすぐ学園都市だなそー君もうひと頑張りだ」
「うー(任されよ)」
ユウヒの答えに不思議そうな顔をする。そんなアリーネに気にしないでくれと笑うと気にはなるも、やはり差し迫った危険を感じず誰かの助けようの無さそうな救援要請と共に保留すると、そー君を応援するのであった。
ここはどこかの上空そこでは一人の人影が独り言を呟いていた。
「んーこの辺で落したんだけど、不味いなぁアイツの集めた危険物だからそこまで危険じゃないと思うけど・・正直に謝るかでもアイツ怒ると怖いし・・うーん」
その人影は一頻悩んだ後どこかへ飛んで行く、誰も居なくなった空の上には強い風だけが吹いていた、心なしかその風の音は楽しそうに笑っているようにも聞こえるのであった。
(くすくすくす・・)
どうでしたでしょうか?
今回は3モブの中のゴエンモをクローズアップしてみました。するとどうでしょういつの間にかゴエンモがフラグを立ててしまったのです・・一体何を言ってry・・。
どうもシリアスは苦手なのでこの先の展開はどうなるか知りませんが、ユウヒやその他の人々の物語をまた見に来てやってください。それではこの辺またココで会いましょう。さようならー




