第三話 手にする力・・・マジ?
こんにちは、Hekutoです。
第三話完成しました、わぁい・・でも当初の予定より長くなってしまったようです道理で書いても書いても終わらない気がするわけです。
あと、タイトルが変わりました混乱させたらごめんなさいです。前のタイトルはけっこう似たのが多くて仮名だったのもあり元からあった候補の中から選びなおしました。
それでは、第三話『手にする力・・・マジ?』はじまります。
『手にする力・・・マジ?』
俺が今立って居るのは地上から見ると長閑に見える白い雲のさらに上、暴風が吹き荒れ人がその身一つで生きることなど不可能な場所。しかし今はアミールの張ってくれている結界とやらのおかげで、微風すらも感じない・・・筈なのだが、なぜか乾いた風が吹くのを感じた。
「・・・」
目の前にはニコニコと溢れんばかりの笑顔で両手いっぱいにあるモノを抱えるアミールが居る、たぶん風を感じた原因はそのモノのせいだろう。
「・・・えーっと、アミールさん? これはいったい?」
俺は意を決しその正体を突き止めるべく、そのモノを指差しながらこの場で唯一答えを知るであろうアミールに問いかけた。
「ふっふっふー、これはですねぇ【ワクワクくじ引きBOX】です!」
今までのほややんな感じを受けるその顔が、俺の問いかけを聞いた瞬間キリッとした表情に変わり、元気よく答えてくれるアミール。その手に抱きしめられているモノは、一辺60cmの立方体に直径20cmほどの丸い穴が空いており、側面に『ワクワクくじ引きBOX! ~はずれクジ無し!~』と書かれたどこか安っぽい白色の箱である。
「ま、まさか・・・クジ引きが準備、なぁんてことは、ないよな?」
アミールがその箱を取り出した時から感じていた嫌な予感が、より深まるのを感じつつ勇気をだして聞いてみる。
「はい! ・・・あ、あの! 唯のクジじゃないんですよ!? これでも先輩からいただいた凄い神器なんですから!?」
元気よく答えるも、俺の表情を確認して察したのか慌てて【箱】がいかに凄いものなのかと説明を始めるアミール。その背後にまたもや頑張る子犬を幻視することとなった俺は、両手で抱えたくなるような重さを頭に感じつつ彼女を見詰める。
アミール曰く、この箱はそれはそれは凄い神器? で、クジを引く人が必要としているものや、これから必要になるものなどの情報を【アカシックレコード】とやらから引き出し、さらには瞬時に無限にある可能性を計算し、もっとも有効なモノを箱の中から用意するらしい。
そして引いた内容の力や知識や道具などを半自動で授かるか・・・いや、凄いとは思うしチート級な性能っぽいけど、見た目と言い名前と言い何とも残念な神秘だ。
「なんだろう・・・無駄に凄いと言うかひどく残念に感じる神秘だな」
あまりの衝撃に考えていたことがそのまま口から出てしまう。
「あぅあぅ・・・そ、そうです! ならば私の力を使って5枚引けるようにしますから! 本当は3枚までらしいですが、私の力で5枚に増やします!」
若干涙目になって焦るアミールだったが、良い事を思いついたといった感じの表情で説明し、私頑張りますと言う瞳で俺を見詰めてくる。しかし、それは身長の差で上目遣いになり、俺は顔が熱くなるのを感じて思わず目を逸らしてしまう。
「・・・わかった、ありがたく5枚引かせてもらうので、落ち着いてくれ」
「はい♪」
何がそんなに嬉しいのか、花が咲いたような笑顔と言うやつで返事をしてくるアミール。美人・・・いや美少女だな、美が付く女性と言うものは実に卑怯だと思った瞬間である。俺は最悪のパターンを思い浮かべ戦々恐々とした感情が洩れる顔で、問題の【残念な神秘】に腕を突っ込み、そこで俺は更なる真実を知った。
「なぁ、この箱の中っていくつクジが入ってるんだ? ・・・凄くわっさわっさするんだけど?」
そうなのだ、計算して最も有効なモノを用意と言っていたので10枚、多くても20枚程度の中から選ぶのかと思っていたのだが。見た目から考えられないような広い空間が箱の中に広がっており、そこに大量のクジと思わしき手のひらサイズの紙が入っているようなのだ。
「そうですねぇ? 人にもよりますけど100万枚~200万枚って言ったところでしょうか?」
「・・・マジか、こいつ絶対ネタとか入ってるだろ。そんなの出たら嫌だぞ俺」
嫌な未来を想像してしまい冷や汗が頬を伝う。
と言うのも俺はクジ運がそんなによくないのだ、MMOやアプリゲーにはよく、ゲーム内アイテムを買うのにクジ形式を用いて手に入れるシステムがあるのだが、俺は素直に大当たりを出した例が無い。以前自棄になって求める大当たりが出るまで引き続けた結果・・・ものの数分で諭吉大先生1小隊(6人編成)が帰らぬ人となり、それ以来俺は一切のクジに手を出すことをやめたのだ。
「正月のおみくじですら引かなくなった俺が、まさか異世界でクジを引くことになるとわなぁ・・・」
何とも言えない気分で無限に広がるような箱の中を弄る俺を、アミールは楽し気な、ワクワクと言った言葉がぴったりな顔で見つめている。その表情に思わず出しそうになった溜息を飲み込み、視線を箱へと落とす俺は、
「(さて、1枚づつ引いて・・・いやまてよ? まとめ買いの方が当たり率が上がるという都市伝説があったな)んー・・・でや!」
昔からある【クロモリオンライン】の都市伝説を思い出しながら、5枚一気に引いたのだった。引いたクジはトランプほどの大きさで、見るからに上質な厚めの紙? で出来ていた。
「わわ! 一気に引いたのですか!? なるほど、ユウヒさんは漢だったのですね!」
「なんだそりゃ?」
引いたカードをアミールに渡しながら、よくわからない理論に言葉が自然と漏れる。
「先輩が言ってました!」
きっとその先輩は冗談か天然で言ったのか、もしくは悪友的先輩である悪先? なのではなかろうか。
「そうか、良い先輩だったんだな・・・」
御座なりに相槌をうつ俺の目の前で、カードを受け取ったアミールは【残念な神秘を】虚空へ消した。
こっちのほうが謎の箱よりずっとわかりやすい神秘だよな・・・。
「はい、わりと素敵な先輩です。・・・ちょっと、けっこう? 意地悪ですけど」
ナニカを思い出したのか言葉が尻すぼみになるアミール、やはり悪先? だったのだろうか。
「それじゃあ結果を発表しますね!」
クジカードを確認してアミールが元気よく宣言する。
そしてクジ運に不安のある俺が授かった神の加護とは、
【真理の右目(金)】
右目で捕捉した対象の知りたい情報を、各世界の【アカシックレコード】から視覚情報として引き出す解析眼。見た目は金色の右目で、能力のオンオフは出来るが目の色はそのまま。
【合成魔法(極)】
魔力を使い高度な合成を行う錬金術の一種。
(極)のレベルに達すると無理のある合成でも妄想力でカバーすることが出来る、想像ではなく妄想である。
【口語妄想魔法】
魔力を用い自らの内にある自分だけの世界を現実に再現する口語魔法、使える者はほぼ居ないとされる。妄想力しだいで星を砕くことも出来るが、しかしまったくの無から有を生み出したり、未知の存在の召還といったことは出来ない。
【底無き魔力の源泉】
無限に湧き出で循環する魔力の奔流。
この力を手に入れたあなたの辞書には、魔力切れの言葉は存在しません。さぁその魔力で世界を埋め尽くしましょう。
【初めての異世界探索セット M】
異世界探索初心者に贈る探索セット、某先輩が独断と偏見で揃えました。ちなみにMセットのほかには、S、L、LLの三種類があります。ご一緒にナゲットはいかがですかぁ?
と言う以上の五つである。
「・・・・・・・・」
これはどこから突っ込むべきであろうか? この、何とも厨二臭い名前とチート性能か?それともアミールの読み上げる説明文の胡散臭さか、S・M・L・LLってハンバーガーかよ! しかもポテトじゃなくてナゲットなんだ・・・。
「・・・これは何時もらえるんだ?」
変更、もしくは拒否できるか気になりアミールに問いかけたのだが、
「力とそれを行使するのに必要な知識は、クジを取り出した時点ですでに手に入っている筈ですよ? それにほら」
彼女はそう言うとサッと鏡を取り出し俺に向ける。いったいどこからその手鏡を取り出したのか気になったが、俺は彼女の視線に促され鏡を見てみることにした。
「・・・これはなんという厨二病的ヘテロクロミア」
その鏡に映った俺の右目は見事な金色になっていたのだ、なんてことだこの歳になって厨二病に罹ってしまうとは・・・。
「知識ですが、クジの内容のほかにも言語等この世界で必要になりそうなモノをイロイロ入れておきましたので、後でゆっくり確認してくださいね」
ニコニコとそんな事を言って来るアミール、イロイロって・・・気になったのでクジの内容や言語等に意識を向けると、知らないはずの事が次々と頭に浮かびそれを当然のように俺は受け止めていた。
「なるほどこれは便利だ。しかし・・・この力はチートですね本当にアリガトウゴザイマシタ」
あまりのチートっぷりにネタに走った俺は悪くないと思います。
「チート? いえいえどういたしまして♪」
とりあえずアミールにネタは通じないようだ、いやあえてスルーと言う可能性も、無いか。明らかにこの娘は天然の気をビンビン発している。
「次はこれですね、少々お待ちください。・・・えい!」
アミールの手には一枚のクジカード、そこには【初めての異世界探索セット M】と書かれている。カードに向かって何か呟いた彼女はカードを俺の足元に放り投げ、投げられたカードは一瞬光ると、ドサッと言う音と共に光が止む。
「これは? 肩掛けバッグとポンチョ? に人魂? ・・・お、おおお!?」
足元と言っても透明なので浮いているようにしか見えないが、そこに現われた荷物を確認する。しかし妙な人魂みたいなものが気になり突いてみると、それはすぅっと俺の体に溶け込んでいった。
「えぇっと、待ってください今説明書読みますから」
といいながら何が起こったか解らず若干焦っている俺に向かって、小さな紙切れを読み始めるアミール。
【オートポンチョ】
見た目は一寸長めな普通のポンチョ、しかしその実態は非常に高性能で、自動清浄、自動乾燥、安眠機能、などが付いている。さらに高い耐久性と防御性能も併せ持つ名品。
【軽業師の肩掛けバッグ】
見た目普通の革製肩掛けバッグだが、非常に軽く中に入れた荷物も軽くしてくれる粋なやつ。
【狩人の心得】
日夜強大な魔物と戦い続ける者達の精神力の塊、触れることで自らの魂と同化させ強靭な精神力を手にすることが出来る。その心構えがあれば身一つで凶暴な竜の前に立ったとしても、春のそよ風を楽しむ余裕すら持てる。
「尚、Mセットは量より質をコンセプトに揃えました。・・・以上だそうです」
と最後に締めくくり紙切れ? 説明書? を読み終わるアミール、その内容は何とも凄い効果みたいだが最後のが・・・。
「あの人魂みたいなのが狩人の心得ってことか、何が変わったかよくわからないな?」
「そうですね? 見た目も変わらないみたいですし、そのうち効果が出てくるのかもしれませんね?」
若干の不安もあるが異常は特に見当たらないし忘れることにした。しかし俺のクジ運は良いのか悪いのか微妙にわからないな。
「(少なくとも目は金色にならなくて良かったのに)はぁ・・・」
「どうしました?」
首を傾げながら俺のため息に反応するアミール。
「いや、準備できた? し、これからどうするのかなと思ってね」
金目のことは置いておいて、これからのことについて聞いてみる。
「そうですね。地上の比較的安全な場所に転送しますので、そこから旅をしつつ危険そうなモノを探していただく事になります」
「そうか・・・わかった。貰った力の確認も地上でやるつもりだから安全な場所なのは助かる、人里とも少し離れているほうがいいかも知れないな」
何故か、今いるのは遥か上空雲より上なのである。どんなに足場が安定しているとは言えやはり人は地上の生き物、地に足が付いていないと不安なのだ。未知の力を使うのにここでは正直怖い、しかし目の力くらいならいいだろうと右目に意識を向けて何気無しにアミールを見てしまったのが問題だった。
「・・・!!! ブッ!?」
「ど、どうしました!? 大丈夫ですか?」
「い、いや! なんでもない! さージュンビしないとなぁっと」
右目の力を発動させてアミールを見た俺の視界には、初めて使ったため制御がうまく出来なかったのであろう。ゲームのステータス画面のようなものがアミールの周りに大量に現われ、無駄に詳細な情報を俺に教えてくれた。しかし、そこにはアミールの名前のすぐ下に【B/W/H】と言う項目があり慌てて力を切ったのだが。
「(すぐに切ったにもかかわらず数字を正確に覚えている自分が恐ろしい。・・・しかしスゴイな、ナニガとは言わないけど)」
「???」
赤くなった顔を隠し焦りながらポンチョを着る俺を、アミールが心底不思議そうな顔で見つめてくる。どうやら気が付かれなかったようだが・・・ふぅぅ、次からは気をつけよう。
「・・・ジュ、準備できたぞ?」
声が裏返りながらも平静を装う。
「え? あ、はい・・あとこれをどうぞ」
そう言うと不思議そうな顔のままのアミールは、掌サイズの茶色い金属板と小さ目の袋を渡してきた。
「ん? これは?」
「これはですね、既に失効していますが身分証明にもなる冒険者カードです」
「冒険者カード・・ファンタジーって感じだけど失効?」
ゲームや漫画でもよく出てくるアイテムで、身分証明になるってところもファンタジーものならよくあるが・・・失効。
「過去の経歴がまったく無いと怪しいでしょうし、昨日まで無かった冒険者カードが急に現われるのも不自然と思いまして。ユウヒさんの仮初の過去もカードに記録しておきました」
どうも冒険者カードには記憶媒体の機能もあるらしく、ギルドでは失効した冒険者カードの情報まで保管してはいないらしい。アミールも意外と考えている? のかな。
「仮初の過去も知識として与えておきました」
むむ・・・確かに知識として入っているようだが、これはなかなかヘビーだな。
「その冒険者カードは冒険者ギルドに持っていってお金を払えば再発行してもらえます。早めにしておいたほうがいいですよ?」
「それでこの袋の中身はお金って事か」
袋の中を確認すると金銀銅の小さな長方形のコインが入っていた。
「はい当たりです♪ 余裕をもって入れていますが、あまり無駄使いしちゃだめっですよ?」
おめぇは俺のオカンかと苦笑いしつつ、お金とカードをバッグに入れる。確かにバッグに入れた瞬間重みを感じなくなった・・・うぅむ、流石ファンタジーだなぁ。
一方そのころ、とある商店街のゴミ置きスペースでは・・・。
「あんたたちありがとうねぇこんなに綺麗にしてくれて、これは商店街の人達からのお礼よ」
そう言いながら三人の男達に、飲み物を配る恰幅の良い女性。
「いや、我々は当然のことをしたまでですから」
「これが、労働の喜びか・・・俺、そろそろ真面目に働こうかな?」
「ちょwwおまニートかよwww・・・なんだ俺と一緒か」
そう、彼らは勇者ユウヒを助けるべく腐界に立ち向かった漢達である。
「グビ・・・うまし、ところで我らはなぜゴミスペースの清掃なんかはじめたのだったか?」
「おまwwわすれたのかよwww・・・なんでだっけ?」
「むぅ、きれいになっていく達成感で有頂天になって忘れてしまったな・・・まぁいいじゃないか喜んでもらえたしお礼ももらえたし、これがリア充なんだな」
「「や、それは違うだろう」」
そこには、そんなやり取りをする男達とそれを微笑ましそうに見つめる商店街の人々、さらに見違えるように綺麗になったゴミ置きスペースと化していた公園の姿があったと言う。
どうでしたか?自分的には長めだなっと感じるのですが?もっと長いほうが良いでしょうか。
例のごとく誤字脱字&文法プギャーにドキドキしつつ投稿させてもらいましたが、商店街の男達の迷走具合でプロットが作れそうな今日この頃です。プロットばかり増えていってどれも本編書けてないのが現状なんですけどねw。
次の更新はいつになるやら、またここでお会いしたいですね。さようなら~