第三十六話 休憩所の朝
どうもHekutoです。
妙に執筆時間が取れない中前回から1週間以内には更新しようと思い頑張りました本当は毎日更新したいところなのですが、そんなことは置いておいて三十六話始まります。
『休憩所の朝』
ユウヒ達が休憩所にて眠りにつき翌朝、夜中に幾人かの出入りはあれど特に何事もなく次の日を迎えた朝ユウヒは例のごとく早くに目が覚める。
「・・・んー・・(ここは?休憩所か、みんなまだ寝てるな・・)」
若干の寝ぼけがまだあるも時間と共にそれも無くなり、辺りを見渡し寝に入った時よりも少し人が増えたようで衝立で区切られた場所があっちこっちにできているようであった。しっかりと目を覚まそうとユウヒは隣のダックを起さないようにそっとその場を離れると少ない荷物を持って外に出る。
「んー、うん今日も天気はよさそうだな・・しかし昨日は暗かったけど外はこうなってたんだな」
休憩所を出て伸びをしたユウヒの前には十字に交差した広い道、その脇には等間隔で並ぶ置き馬車がありいくつかの馬車では何やら準備を始める人の姿が見える。
「なるほどーあんな感じに使うのか」
ユウヒは興味深そうに何か準備をしている馬車の方へと歩き出した。街沿いに置かれた置き馬車は簡易な塀に囲まれた休憩所の敷地内にのみ置いてありその置き方は道に対して横向きに置かれ、準備をしている馬車は道に面した側面の壁を開けることでカウンターのようにしその周りに看板などを設置している。
「なんだろう・・ああ、朝食か」
「あ、すみませんまだ準備終わってなくてもう少し待ってくださいね」
「あー眠気覚ましに散歩してるだけなんで、お気になさらず」
何を売っているのか気になったユウヒがカウンターを除いてみると、馬車の中で開店準備をしていた女性が気が付き応対する。しかし買い物の心算で覗いたわけでは無いと言う言葉に女性はそれでしたら朝食には是非当店のピタパをどうぞとにこやかにユウヒを見送ったのだった。
「ピタパ?・・ものすごく気になる、たぶん香り的にパンなんだろうけどピタパンに似てるのか?これは買わないと」
お店を過ぎた後どうしてもピタパが気になったらしく買うことを決めるユウヒ、ユウヒの右目は現物が無いと解析のしようが無く、アミール知恵袋も簡単な情報だけなので知識欲を満たすにはどうしても現物が必要なのだった。
その後も準備中の店を見て回り店馬車の裏に窯が置いてあったり、2台使い片方が完全な倉庫になっていたり、ダックの行っていた通り奥まったところに娼婦らしき人影を見つけ手招きされるも慣れたように手を振り替えしたり、と一通り見終わったユウヒは最初に立ち寄った店に戻ったのであった。
「あら!さっきのお兄さん来てくれたんですね♪」
「美味しそうな香りで気になってね、4人分頂戴」
「はぁいすぐに!銅貨4枚になります」
人数分のパンを頼むユウヒどうやら必要なかった場合は自分のお昼にするつもりの様である。
「結構大きいんだね?」
「そうですねーココの人達はなるべく大きいのを好む方が多いので、その分少し割高かもしれませんが・・」
「いや問題無いさ、それじゃがんばってね~」
「ありがとうございましたー!」
ユウヒの率直な感想に少し窺うように説明をする女性店員、気に入らなかったかと心配しているようだ。それを察したユウヒは問題無いと言い店員を激励すると休憩所に戻って行く、その後ろから店員の明るい声が元気よく響いたのだった。
「ん?もう売れたのか、宿の連中か?」
「ん~?たぶん冒険者さんかな武器持ってたし?」
そんな元気な女性店員の後ろ置き馬車の裏手から店員であろう男性が顔を出し女性店員に話しかける、どうやらこの時間からピタパが売れるのが珍しい様でその疑問に女性は冒険者かな?と答えたのだった。
さらにそのピタパ屋の裏手にはピタパを焼く窯が置いてありそこで焼いたピタパを随時店内に並べているようで店内にはピタパが積み重ねられていた。ちなみに宿の連中とは所謂娼婦やそこの客などの事を意味する言葉である。
「そらまた早起きな冒険者だな、ほら追加だ並べてくれ・・ところでなんで疑問系だったんだ?」
「はいは~い・・えーっとねーなんだか雰囲気が冒険者っぽくなかったからかなー優しそうな人だったよ?」
「・・・・・はぁお前の中で冒険者はどうなってるんだか」
追加のピタパを焼き渡しながら不思議そうに問う男性にピタパを慣れた手つきで受け取りながら女性は自分の感想を伝えたのだが、その感想に男性は女性の判別方法にため息を吐く・・が、
「え?お兄ちゃんみたいな厳つい人?」
「・・・・・・・・・・・・」
当然と言った感じで告げる妹の追撃のような一言に、ピタパを焼く兄は背中に哀愁を背負うのであった、現在31歳元冒険者で妹がお店を始めるということで引退し妹をサポートしている彼に彼女は・・居ない「そこ触れないで!?」居ないったらぁ居ない「(私が作らせないもの)」・・・そんな爽やかな秋深まる早朝の出来事であった。
「焼き立てなんだなーいい香りだ」
おれは先ほど買ったばかりのピタパと言うパンを自作風呂敷に包み休憩所に戻った、そろそろ寝てる人間も起きはじめたらしく出て行った時より少しだけ騒がしくなっていた。昨日の夕方暗くなってからは燭台に灯りが灯してあったが今はすでに消され屋根や壁にある採光用の窓から室内に光が注いでいた。
「おお、ユウヒさん居なくなっていたので心配しましたよ」
「あー俺起きるの早くてな外を散歩してたんだよ、途中ピタパ買ってきたけどみんなで食べないか?」
休憩所に入るとそのままみんなの居る場所へ向かう、するとダック氏がすでに起きて身だしなみを整えており俺に気が付くとすぐに話しかけてくる。どうやらおれが居なくて少し心配してくれていたようだ。
「なんと!それは気を使っていただいて、では私は飲み物を用意してまいります」
「・・・ユウヒいい匂い」
「お、クラリッサ起きたか」
ピタパを買ってきたと風呂敷を掲げるとダック氏はそれは急いで準備せねばと飲み物の準備に動き出し、その直後スッと衝立の向こうからクラリッサが顔を上げ微笑ましい第一声上げる。その行動がやはりどこか小動物のようで可愛いと思ってしまう。
「・・今起きた・・・」
「じゃナディも起してくれ、ピタパ買ってきたからみんなで食べよう」
「了解!ナディ起きるピタパは温かいうちが美味しい」
起きたばかりでまだ若干寝ぼけているか目元を手で擦りながら頭をふらつかせているクラリッサに朝食の提案をすると今までに無い敏捷な対応で了解!と言うと衝立の向こうへ跳びこむように消えていく、
「うにゃ!?な、なんですの?・・クラリッサですの起してくれるのはありがたいですがもう少し優しい方がいいのですわ」
「ピタパが冷める・・」
「ふえ???」
その直後妙に可愛い声が響くと寝ぼけたナディの弱弱しい苦情が聞えてくるのであった、どうやらクラリッサは全身でナディに飛び込んだようだ、そんな衝立の向こうからナディの混乱する気配が伝わってき俺は笑ってしまいそうになるのを堪えるのであった。それからしばらくし。
「いやぁ休憩所で朝のコヒーと焼き立てピタパ贅沢ですなぁ」
「そうなのか?」
ナディがクラリッサに急かされ身だしなみを整え衝立から出てくる頃には、食事の準備も整っておりそのまま朝食と相成った、ダック氏の用意してくれたコヒーはまんまコーヒーで、なんでもオルマハールとサハールでは一般的な飲み物らしい。
「はい、ピタパは焼き置きが普通で焼き立てを手に入れるには早起きしないといけませんからなぁ普段ならまだ寝てますな、はっはっは」
「焼き立ておいしい、ユウヒに感謝」
「すみません、御代を払うべきですのに」
確かに馬車の後ろでピタパを焼いていたみたいで馬車に次々と重ねて置いていた気がする、騎士二人も美味しそうに食べているが最初ナディは御代を払うと言っていたがこのくらいの出費なら別に気にならないと言っておいた。等のピタパなのだが見た目は直径25㎝の平べったく中が空洞のパンで、触感はナンのようにモッチリしており俺の知るピタパンとナンを足したようなパンのようで、味はパン単品でも十分甘みもあり歯応えもそこそこある為食べ応えは十分であった。
「気にするな俺は気にしない、それにコヒーの提供にも感謝しないとな」
「いやいやはっはっ、しかしユウヒさんは通ですなぁ甘味を足さないとは」
「昔っからさ、なんだか折角の苦味に甘味を加えるとなんとなく違和感を感じてなー」
「同意」
ダック氏が言うにはコヒーに甘味を足さないで飲むのは通な飲み方らしく普通は砂糖とか蜂蜜とか甘味を足すそうだ、俺は昔からコーヒーはブラック派でありどうもあの甘いコーヒーは違和感を感じる、クラリッサもブラック派のようである。
「私は甘味を足さないと飲めませんわね」
「私もですな、できればさらにミルクも足したいところですが、今は持ち合わせなんだ」
ナディとダック氏は入れる派の様でダック氏はさらにミルクも入れるようだ。こうして見ると世界は変われどコーヒーもあれば飲み方も違いがない事に少し不思議な感覚を覚えた朝だった。
朝食を摂り終わったユウヒが出かける準備をしているとダックに呼ばれ彼の馬車まで向かった。
尚、この日置き馬車店で一番売れたのはピタパであった、ユウヒ達が朝早くから焼き立てのピタパを食べていた為、周りにいた者達も起き抜けに嗅いだ香ばしい香りにピタパを買わずにいられなかったようであの兄と妹の店も早いうちから完売していたようだ。
「ユウヒさんこの三つの箱から1つ好きなのを選んでください。2つでもいいですよ?」
ダックに連れられて馬車までやってきたユウヒは3種類の大きさの木箱を見せられ、その中から選ぶように言われる、ダックのニュアンスから貰ってくれるなら複数でも良いようだが結構大きい為流石に2つは無理そうである。
「これは?結構な大きさですね流石に二つは道中邪魔になりますよ」
「存じませんか?まぁ縁の無い方は無いですからなはっはっは、これは盗品箱と言ってですな・・」
盗品箱とは、盗賊や海賊や盗掘団と言った盗みを所業にする者達の溜め込んだ物品が詰められた箱の事である。
しかしこれは盗賊達が入れたわけでは無い、実は各国と各ギルドが取り決めた制度の一つで盗賊等の討伐時手に入れた窃盗品などは各討伐を行った者達で分ける事になっていたのだが、中には曰く付きの物や貴族のものなどお金にしにくい物や所持していれば狙われかねない物など様々で、それならばと現れたのが箱売りである。
適当な大きさの密閉できる箱を用意し手に入れた窃盗品を無差別に入れ商人に売ると言う方法だ、しかしこれは商人側にとってはメリットが低く各国各ギルドが話し合った結果、箱の基準と買い取り金額の一律化それらを扱う商人に対する国からの補助さらに盗品取得者は自分で処理する以外で売り払う場合は必ず盗品箱を使う事となり今の盗品箱ができたのだ。
「・・まぁ国が認めてるのなら問題無いのかなぁ当たりはずれはありそうだけど」
「そうですなぁ商人側も中身は確認できませんから売る時は重さか大きさで一律ですな」
尚、盗品箱に入れられるものは無生物また腐敗しない物となっているのだがその理由はそれらを長期間入れた場合起りえる現象を思い浮かべてもらえば語る必要もないだろう。
「んーじゃこの木箱にしようかな?バックにも入りそうだし」
「いや助かります、私はこの盗品箱の売買許可を持っていないので2個以上持った状態で行商ができないのですよ」
「なるほどね」
ユウヒが選んだ木箱は一辺20㎝ほどの四角い箱で若干いっぱいになってきたバックにもぎりぎり入りそうな小ぶりの木箱であった。その木箱を手に取るとダックは安堵したように話し出し貰って欲しかった理由を話し、その内容にダックの強かさも感じたユウヒは流石は商人かと納得するのであった。
「それじゃ俺はこのまま学園都市に向かうとします」
「私は明日学園都市に向かいます、この先ではまだ暴走ラットの報告は上がっていないようです。お世話になりましたユウヒ殿」
「道すがらの依頼だしな、また縁があれば冒険者ユウヒをよろしく・・あと面白い話があれば飲みながらでも」
「ほうそれは、楽しみですな!満足いただけるネタを仕入れておきましょうはっはっは」
別れのあいさつの中ユウヒの言った最後の言葉にダックは、一瞬だけ商人らしい顔になると嬉しそうに笑うのだった。
ユウヒはダックと別れた後学園方面の街道へと歩いていると、休憩所に入口前で騎士科の二人に呼び止められる。
「あ!ユウヒさん、もう行かれるんですの?」
「おう、早めに出て早めに着きたいしな」
「そう、またどこかで会える?」
二人はだいぶユウヒに懐いたようである、と言ってもクラリッサの表情はいつも通りで読みにくいのだが。
「縁があればまた会えるさ、この後の護衛も気を付けてな」
「はい!全力を尽くしますわ」
「まぁほどほどにな、そいじゃな~ナルシーによろしく~」
ナディの元気な返事に若干苦笑いをすると手を振りながら街道へと歩いて行くユウヒ、
「・・・・愚兄の事など別にいいですのに・・」
その最後の言葉にナディは微妙な顔でぶつぶつと呟くのだった。
「・・ユウヒは良い人だったね、護衛騎士になるならあんな魔法士の人がいいんじゃない?」
「な!?ん・・そうですわねそう言う道もありですわよね、愚兄も自由に遊び回ってるのですし」
「?」
何となしにかけられたクラリッサの言葉に慌てるナディだが何か思いついたのか今度は急に何かを考えだす。そんなナディをクラリッサは不思議そうに眺めそれはナディが現実に復帰する1時間後まで続くのであった。
「(・・ナディ楽しそう、いいことね)」
時間は少し遡り森の中の少し開けた場所、そこには3つの影が蠢いていた。
「・・ぶべら!?・・我の眠りを妨げるとは何ヤツってゴエンモか」
「すまんでござる・・寝ぼけて落ちてしまったでござる」
「ふ、無様だな・・私のようにして眠ればいいものを」
影の正体はいつものごとく3モブ忍者のようで、森の木の上で一夜を明かしたのだろう現在太い枝でジライダが寝てるその上に落ちてきたゴエンモが天日干ししている布団のようにぶら下がっている。そしてその横の枝に、
「「まるでミノムシだな(でござる)」」
「その感想は想定内だが声を揃える辺りがひでぇ」
くるりと彼らの方に向きを変えた寝袋であろう、木にぶら下げたそれにすっぽり包まり首だけ出しているヒゾウ・・とてもミノムシである。
「で、我らの桃源郷は後どれくらいかかるんだ?そしてどけ重い」
「よいしょっと、そうでござるなぁヒゾウの天性の迷子スキルで結構迷ったでござるからな」
「・・それについては謝罪するが、反省も後悔もしていない!」
「「しろよ!!(でござる!)」」
どうやらあの夜、颯爽と跳びだした3馬鹿はヒゾウの迷子スキルによりただひたすら森を彷徨っていたようだ。
「ヒゾウから取り返した地図を参照して現在位置を確かめたでござるが4日は覚悟するでござる」
「3日の予定がロスった上に4日とな」
「正直すまんかった」
「まぁ過ぎた事はしょうがないでござる2日で村まで行く予定でござる」
げんなりした顔のジライダをみてヒゾウは寝袋から出るとしょぼん顔で謝るのだが真面目に謝ってるのか微妙にわからない、そんな二人にこれからの予定を伝えるゴエンモ。
「はぁ村まで真面な飯はお預けか・・」
「それまではこの兵糧丸で我慢するか」
颯爽と旅立ったはいいが長期の準備をしてなかったためすでに普通の食べ物は無くなっているようで懐から掌に乗る大きさの黒い球体を取り出すとちびりと齧るヒゾウ。
「文句があるなら食うなでござる」
「しかし良くこんなものの作り方知ってたなぁ」
「無い材料は別ので補ってるから味噌味じゃないけどな」
ヒゾウの漏らす不平に不満を零すゴエンモどうやらこの兵糧丸は彼が作ったようでなんだかんだと言いつつ意外と食べれる味なのか3人共朝食代わりにと齧るのであった。
兵糧丸とは、戦国時代などに戦時携行食品として食べられていた物で蒸した米や粟などの穀物、栄養価の高い木の実や薬草などの粉末に梅干し、お酒、味噌など様々なモノ混ぜ丸く固めた物で所謂、某カロリーが摂れるシリアルバーの様な物である。
「作り方はオタクの嗜みでござるが味噌が無いのは困ったでござるな」
「勇者ユウヒなら何とかしてくれると信じている」キリッ!
「うはww来た他力本願www・・・・きっと何とかしてくれるよ」
しかしこの世界には味噌、醤油などの食品が見当たらなかったらしく又、ゴエンモもそれらの製造方法までは分からず結果味付けに一苦労したようである。そんな三人はユウヒに新たな期待を抱き学園都市へと向かうのであった。
「まぁ全てはユウヒ殿に合わねば始まらないでござるな、そろそろ行くでござるか」
「おう!向かう方向は・・あっちだな!」
「「逆だよ!(でござる!)」」
どうでもいいが彼らの行く先がとても不安である。
どうでしたでしょうか?
本当はもっと書き込んでこの世界の雰囲気を出したいとか思ってるのです。がそんなことしてたら進まない話が更に進まなくなり文章が長くなりそして更新スピードが・・・なので少しずつ世界の雰囲気を感じれるモノを出していくつもりです。
それではちょいと長くなりましたがまたここで会いましょうさようならー




