第三十五話 休憩所
どうもHekutoです。
三十五話が出来ました、やはり戦闘シーン意外は書きやすいです・・それでは『休憩所』の様子を見ていってください。
『休憩所』
ここは街道の休憩所、そこには木造二階建ての大きな建物を中心に大小様々な馬車がきれいに並べられている。
「いや~やっと着きましたなぁ」
「・・疲れた」
「ふーん馬車がいっぱいだなぁ」
「ああ、あの馬車はですね置き馬車と言ってですな」
しかしその馬車には馬は繋がれていないし厩に繋がれている馬の数も合わない、実はそこに並べてある馬車は使わなくなった馬車で、休憩所に立ち寄ったものが自由に使えるように置いてあるのだ。
「まぁ規則で馬を繋いではいけないので立ち寄った商人の一時の店として使われたり倉庫代わりに使われたり宿代わりに使われたり・・・・」
と途中まで話すとダックはユウヒにちょいちょいと手招きををする、ユウヒはキョトンとした顔をしたがどうやら耳を貸せと言う合図と解りダックに近づき耳を貸す。
「(後ろの二人にはちょっと言えませんがね、まぁ男女の宿としても使われてるんですよ。)」
「(・・・なるほどね、そりゃたしかに大きい声じゃ言えないな、蹴り落されかねん)」
「そうですな!はっはっは!」
「「???」」
ダックの大笑いにくっくっと笑うユウヒそんな二人を見て不思議そうにする女性陣であった。
「・・ユウヒさんは休憩所は初めてですの?」
「んーまぁそうだな一人行動が多いし」
「ほう、今時珍しいですな?と言ってもこのくらい大きい規模の休憩所も珍しいのですが」
街道の規則にある休憩所とは基本的に街道が交差する場所で村などが無い場所に作られることになっている、事実この休憩所も東西の他に南北へと道が続いている。
「この街道をずっと北に行くと帝国、それから南に行くと途中山があってそれを越すとサハールとアクアリアの国境の町に続いてるのです」
「なるほど、まあどっちも特に行く予定は無いんだけどな」
「そうですか、おっとここまで来れば大丈夫です。みなさんは先に休憩所に行っててください私は荷を渡してきますので」
ダックの説明に相槌を打つユウヒ、そんなユウヒの反応にニコニコと話すダックはどうやら説明好きの様である。そんな中丁度木造の休憩所前まで来るとダックが馬車を止め先に降りているように促す。
「わかりましたわ先に行って良い場所をとっておきます」
「いやぁ助かりますな」
休憩所内は基本、大きく分けられたりしているもののその壁は衝立程度であり雑魚寝が普通である為、人が多い時は場所取りで大変なのであるそれでも旅をする者にとっては屋根と壁があるだけかなりマシなのであろう。
「ユウヒ、休憩所について教えてあげる・・」
「お、そりゃ助かる」
「あ、ちょっと二人とも待ってくださいまし!?」
ダックと話していたヴァナディスより先に馬車から降りていたクラリッサは続いて降りてきたユウヒの手を取るとさっさと休憩所へと歩いて行く、それに気が付いたヴァナディスは慌ててその後を追うのだった。
「はっはっは、いやぁやはり旅の共は多い方がいいものですなぁはっはっは特に同性がいるだけでこれほど胃に優しいとは・・ははは」
ダックは再度馬車を動かすとそう言いながら楽しそうに笑った、どうやらこれまでの男性一人と言う状況は少なからず彼の胃に負担をかけていた様である。
「ここで靴を脱ぐ、でも靴も荷物も自分で持っておかないとダメ・・」
「ふーんなるほど、持ってかれるって事か了解」
俺を先導するようにクラリッサが色々と説明しながら先を歩く、その説明は非常に完結な説明の仕方である為こちらから詳細を確認するのだがそのたびにクラリッサは無言でコクコクと頷く、そのしぐさがどこか小動物を彷彿とさせ癒される。
「ユウヒさんはよくクラリッサの言いたいことがわかりますわね?私も慣れるのに苦労しましたのに・・」
「んー?感かな?」
不思議そうな顔で俺に尋ねてくるナディ、と言われてもまったくの感なので俺にもなぜわかるか解らない・・【意思疎通】も使ってないしな。
「・・ナディあそこ、良さそう」
「感ですの・・そうですわね今日は空いてて助かりましたわ行きましょユウヒさん」
どうやらクラリッサが良い場所を見つけたようで指さす、そんなクラリッサと俺を見比べながらどこか釈然としない顔をするナディだが諦めたのか表情を戻すとまた歩き出したのだった。
「・・この布の衝立で仕切る」
「クラリッサありがとうですわ、ユウヒさんこれで男女や隣との間を仕切って分けるのですわ・・・ね、寝ているときに入って来てはいけませんことよ?」
クラリッサが持ってきたのは、布と木枠で出来た薄い簡単な仕切りであった、入口近くを見てみると同じものが大量に積み重ねてあったので人が多い時はあれで小さくわけて雑魚寝するのであろう。しかし・・ナディはあのナルシーの妹なだけあってとても美人だ、といってもまだ美少女と言った方がいいだろうか?そんな彼女が照れながらのそのセリフである、ここにあいつらが居たら血(鼻血)の海になっていそうだな。
「へっくしょい!・・でござる」
「どうしたゴエンモ風邪か?うつすなよ?」
「おまww異世界で風邪とかwww・・・未知のウィルスとかいそうでリアルに怖いんだけど」
森の中休憩する影が3つどうやらユウヒを追いかけて森に入ったドタバタ3モブ忍者のようである。
所戻り休憩所では、「「「出番これだけ!?」」」あるだけましです。
「こちらでしたか、良い場所が取れましたな」
「ええ、今日は人が少ないみたいですし」
休憩所内で休んでいたユウヒ達の下へ荷の受け渡しを終えたダックが帰ってきたようだ、ユウヒ達の居る場所は出入口や厠などからある程度離れた壁際である。
「そうですな、やはり暴走ラットの影響もあるのでしょう先ほど聞いてみたらどうも帝国側でも発生しているみたいですから」
「そうですの・・・暴走ラットの危険度を私たちは見誤っていたようですね」
「馬車のスピードに追い付けるなんて思わなかった・・」
ダックから暴走ラットの話を聞いて、騎士科の二人は想像を大きく超えるシリアルラットの能力に自分たちの浅はかさを感じ恥じているようである。ちなみに通常時のシリアルラットではどんなに頑張っても馬車に追い付けることは無く、これも暴走と言う特異な条件であったからこそである。
「まぁ勉強になったと思っておけばいいさ無事に目的地まで着いたんだし、そういえばダックさん達はこの後どうするんです?」
「そうですなぁ少し馬に無理させましたし明日一日ここで休み学園都市に向かおうかと思っています。学園都市迄行くのはナディさん達との約束ですし」
「私たちもその日程で構いませんわ、ユウヒさんはどうされますの?」
どうやらダック達三人は明日もこの休憩所に留まるようでその話を聞いたユウヒは少し考える素振りを見せると、
「んーそうだな、今日索敵した感じだとシリアルラットについては大丈夫っぽいし明日の朝にここを発って学園都市に向かうよ」
「・・・そんな事も分かるの?」
「少なくとも昨日より圧倒的に少ないしね・・まぁ明日道中シリアルラット見つけたらなるべく駆除しとくよ」
ユウヒの予想にクラリッサは不思議そうに尋ねると、ユウヒは昨日の事を思い出したのか苦笑いしながら明日も道中の駆除を約束した。
「なんとそれはありがたいですな!はぁしかし偶然とは言えこんなに御強い冒険者の方に護衛してもらえるとは運がありましたなはっはっは」
「そうですわね、結局私たちは何もしてませんでしたし・・」
「いや護衛対象の周辺警護も立派な役割だよ護衛が全員前に出てもね?役割分担は重要だよ」
ダックの言葉にしょんぼりするナディを元気付けるようにユウヒは今回の行動を評価した、その脳裏には昔オンラインゲームでの苦い記憶がよみがえっていたのはここだけの秘密である。
「ユウヒさん・・・ありがとうですわ、そ、その私もう休みますね!」
「ん?おうお休み~」
ユウヒの気遣いに照れたナディはそう言うと慌てたように衝立の向こうに移動していった、それをボーっと見ていたクラリッサも寝ると一言言うとナディの後を追うように衝立の向こうに消えていった。
「そうですな我々も休みますか、そうだユウヒさん申し訳ないのですが今回の報酬物資報酬でお願いできませんかな?」
物資報酬とは、通常金銭で払われる報酬を物で払うことを言いお金を使わない種族や仕入れ直後の商人の依頼なんかでは偶にある事なのである。
「んーまぁ特にお金には困ってないけど何かあったんですか?」
「はぁ実は先ほど荷の納品に行ったのですが先方の懐が足りなくてですな残り分を現物で渡されまして・・」
こちらも休もうかとユウヒ達が準備していると、急にダック氏困った顔で護衛報酬の話をしだす。
「なるほど、それでダックさんの懐もよろしくないので現物支給と・・まぁいいですよ?」
「おお!ありがたい、実は代わりにと渡された品なのですが私が許可を貰っていない種別の荷だったもので困っていたのですよ、ああ!価値はそれなりにある物ですので売ればそこそこお金になりますですはい!」
ここで説明しておくと、商人や行商人など商いをする者は商人ギルドで各種手続きを行い様々な権利を金銭で買わなくてわならない、その中には行商人が扱う荷の種類の権利も有りその権利外のモノを指定数量以上所持した状態での行商は禁止されており罰則も重たい物が多いのである。
「あはは犯罪臭のするもの以外ならそんなに焦らなくてもいいですよ信用してますから」
「ユウヒさんありがとうございます。それでは今日はもう遅いので明日出発する時に渡せるよう準備しておきますです」
「わかりましたそれじゃもう寝ましょうか」
そんなユウヒの反応にダックは背後に今にも感謝のオーラを出現させそうなくらい喜んでいたとか、そんな安請け合いが次の日ユウヒの手にとあるモノを与えることになるわけなのだが。
「(あぁ今日はなんてすばらしい日だろう、何事も無く無事ここまでたどり着けさらに未許可商品もユウヒさんが貰ってくれるしもぅユウヒさんいやユウヒ様には足を向けて寝れませんな!はっはっはー)」
「(なんで私こんなにドキドキしてるのでしょうか・・ユウヒさん・・・はぁぁぅぅ)」
「(・・・ナディが変?まいいか、今日は楽しかった、初めての魔法も見れた、今までの魔法とは違った、また見たいな・・)」
「(なんだろうさっきから妙な気配がするんだけど?・・気にしても仕方ないか、寝よ)」
そんな各々の思いを抱き休憩所の夜は更けていくのであった。
その頃とある建物の中、妙に機嫌の良い少女が軽い足取りで歩いていた、そして大きな木製の扉の前まで来ると片手を振り勢いよく扉を開ける。
「じゃまするわよーイリシスタ居るかしらー?」
「ぶふぉ!?あ、姉上いきなり何事ですか!?」
「あぁいたいたってまたあんたそんなジジイ姿で・・はい!元に戻る!」
その少女はあのフェイトである、その視線の先には白髪白髭の老人イリシスタとその部下の女性三人それからその足元に白くてボロボロのナニカが転がっていた。しかしその状況を見たフェイトは機嫌の良さそうな顔をしかめると老人イリシスタに文句をつける。
「いやこれは「つべこべ言わない!」・・わかったのじゃ、これでよいかの?」
「素直でよろしい・・何かあったの?勢ぞろいで・・あと何その白いボロ雑巾・・」
フェイトの苦情に一切の言い訳をできないままイリシスタはしょぼんとした顔でローブを翻すと一瞬で白髪の美少女へと姿を変えた。その行動に満足したのかフェイトは表情を戻すと部屋のメンバーを見渡し首を傾げ、床に転がるナニカに付いて質問する。
「フェイト様はお気になさらないでください、アレはタダの女性の敵と言うゴミ(チャラ・ウォン)ですから」
「ふーん、まぁいいけど・・ゴミならさっさとゴミ集積所に出しと来なさいうまくすればリサイクル(較正)できるかもよ?」
「はぁい!りょうかいでーす」
その質問に部下Aは即座に答え、その言葉を聞いて察したのかフェイトは小悪魔のような笑顔で一切の慈悲も無く指示を出す・・こういう所が冷血や女帝などと言われる由縁である。尚その白いボロボロのナニカは部下Cが元気よく引き摺って行ったのであった部屋の外から何かぶつかる鈍い音を響かせながら。
「まったく騒がしいの・・これはアレじゃこの間の流出の件じゃ姉上にはまた後で報告書をまとめて持って行くのじゃ」
「ふーん・・そっ、わかったわその件は置いておいて・・じゃーん!良いお茶が入ったから一緒に飲みましょう」
部下Cを見送ったイリシスタは姉に今話していた件を伝えるも等の姉は特に興味なさげに流すと持ってきていたバックからお茶の葉を取り出すとお茶に誘う。
「ほう、姉上が良いと言うのじゃったら当りじゃろ、ビーお茶の準備じゃ」
「はぁいすぐ準備しますねー」
「どうぞフェイト様」
どうやらフェイトの味覚はイリシスタも理解しているらしく楽しみだと部下Bにお茶の準備をさせ、フェイトは部下Aに椅子を引いてもらうと満足そうに座る。
「ありがと、これがその茶葉よあなたならパッと見でも大体分かるでしょ?」
「ふむ?・・ふぉ!これはまたどこで手に入れたのですかの姉上」
「しりたいー?ふふふ~教えてあげてもいいけどー?」
フェイトは部下Aに礼を言うと取り出した茶葉をイリシスタに渡す、フェイトの言うようにイリシスタ・G・グリシスは鑑定や調査などに高い適性があり管理神のなかでも少し特殊な立ち位置で仕事をしている。そんなイリシスタが驚愕することからそのお茶のすごさが分かるだろう。思った通りの反応だったのだろうニヤニヤと笑みを浮かべ焦らすフェイト。
「勿体ぶらんでくだされ、どうせ教えたくてしょうがないんじゃろうに」
「あら、わかった?」
「どんだけ長い付き合いじゃと・・」
そんなフェイトにじと目で呆れたようにその行動を見透かすイリシスタ、フェイトがキョトンとした顔をするもその理由にいままでと違った優しい笑顔を浮かべる。
「ふふふそうだったわね、実はこれねアミールに分けて貰ったのよ」
「ほう?それはアミール・トラペットですかの?」
アミールと言う名前に最近会った女性の事を思い出しながらその名前を呟く。
「あら知ってたのね?そ、しかも驚きなさい実はこれ作ったの人間なのよ!」
「・・・真ですか?これは単純に考えても神秘クラスですぞ?てっきり神々の贈り物かと思っておったのじゃが・・ふむ」
更なる事実にその驚愕の表情を緩めることを忘れたかのようにその茶葉を見詰め考え込むイリシスタそんな状況が嬉しいのか頬に指を当てながらニコニコと微笑むフェイトは、
「驚いたでしょう、これ飲んでからお肌つるつるよ~・・あなた触ってみる?」
「・・・し、失礼します・・」・・・ゴクリ!
部下Aの方を見ながら挑発するような妖艶な視線で問いかける。とても幼女とは思えないその視線に部下Aはゴクリと音を立て唾を飲み込みそっと指をその頬へと伸ばす。
「ふふふ・・ぁんくすぐったい♪」
「カハ!」ブシュー!
「あらま・・」
そっと触れてくる指にこちらも幼女とは思えない異性同性構わず惑わすような艶っぽい声色を上げる、その瞬間吐血と鼻から歓喜(鼻血)を吹き出しながら倒れる部下Aその姿を少し驚いた顔で見つめるフェイト、そんな姉と部下の姿をやはり呆れたように見つめるイリシスタ。
「・・・あまりうちの部下で遊ばんでくだされ」
「ごめんねー私もこの反応は予想外だったわぁあははは」
「まぁいつもの事じゃが、しかしこれを作った人間とは何者じゃ?ちょっとした若返りの効果に美容効果それに微量じゃが魅了の効果もあるのちょっと綺麗に見える程度じゃが」
部下Bに目配せをし部下Aを任せると再度真剣な目で茶葉を見詰めるイリシスタはその茶葉の正体を淡々と解析する。
「それがねーどうもアミールの良い人みたいでねぇ、ユウヒって子らしいんだけど力を手に入れて数日でここまでモノにしたみたいなのよぉ」
「ふむ・・ユウヒ殿か」
「あら?知ってるって顔ね?」
イリシスタの問いにフェイトはものすごく楽しそうにユウヒの名前と詳細を告げる、その名前にステラの部屋で聞いた名前だと思い出すイリシスタに知ってたの?といった顔をするフェイト。
「ん?うむちょっと名前だけの・・しかし、やはりと言うかアミール君は惚れとるのか、ステラには秘密にしておくかの・・何仕出かすかわからんしの」
「なになに!面白い話?教えてーお姉ちゃんにもおしえなさーい」
「・・・実はのこの間の話なんじゃが・・」ニヤリ
「うんうん♪」ワクワク
姉の求めに少し考えるもニヤリとこれから面白い話を始めるぞと、書いてありそうな顔で話し始めるイリシスタ、どうやらこの姉妹見た目や表面上の性格は似ていないものの根本のところはそっくりのようである。
「ふふ、たのしそ・・それにしてもエーちゃんったら恍惚としちゃって」
「・・うぅ・・ハァハァハァ・・うー・・・」
普段はクールビューティーな同僚の見せる何時もの痴態に困った子ねぇと頭を撫でて介抱していたBは立ち上がると色恋話に花を咲かせる少女達の下へと向かって行くのであった。
「これはしばらく置きそうにないなー・・イリシスタさま~お茶いれるので茶葉くださ~い」
こうして姦しい管理神達の夜は更けていくのであった。
どうでしたでしょうか?
ここ何日かで急に読んでくださる方が増え嬉しい限りです、が私の更新速度は亀さんのままで申し訳ない。もう少し時間がさければあるいはなのですが・・書きたいネタは溢れてくるのですけどねーw
それではこの辺でまた次回ここで会いましょうさようなら~