第三十二話 世界間管理委員会
どうもHekutoです。
少しずつすごしやすい夜と朝になってきました今日この頃、三十二話が出来ましたのでお送りします。いつもと違う視点でどうぞお楽しみください。
『世界間管理委員会』
どこか高層ビルの廊下を思わせるような場所、そこをきれいな金色の髪をふわふわと靡かせながら歩く綺麗な金色の目をした女性、
「ん?君は確かアミール君じゃったかの?」
そう、アミールである。
「え?あ、はいアミール・トラペットです・・?」
「ん?おお、すまんのこの間ステラの部屋で一方的に知っていたのでな、つい声を掛けてしまったわい」
アミールの前方から真っ白なローブに真っ白な白髪と豊かな髭を揺らしながら歩いて来た老人がアミールに声をかけた、しかしアミールはその人物に覚えがなくキョトンとしながら自己紹介をするのであった。
「はぁ?もしかして流入物の件で連絡があった時声だけしてた?・・でも声が違うような」
「ふぉっふぉっふぉあの時はメインの姿に戻っておったからのこっちは趣味の姿じゃ」
「あぁなるほど、えっと・・」
そう、この老人然とした姿の割に背筋のピンと伸びた男はあの時ステラの部屋を来訪した少女、イリシスタなのであった。
「お、そうじゃなワシの名前はイリシスタ・G・グリシスじゃイリシスタと呼ぶといい」
「あ、Gの方ですか失礼しました」
実は管理神に決まった形は存在しない、基本的に自分の気に入った姿や思考パターンや心の在り方から次第に姿が決まってくるだけで変えようと思えばどんな姿にでもなれるのだ、曰く原初の管理神達は殆んどが不定形生物の様であったと言われている。
「よいよいそんなもの肩書きじゃ、もう今の若いもんは知らない者もおるくらいじゃからのっと何か用事があったのじゃろ呼び止めてすまなかったの」
「あ、いえ・・では失礼します。イリシスタ様」
現在はホモサピエンス型が一般的となり、新しく生まれる管理神もその影響を受け生まれた時から人の姿をしているのが一般的である。中には今でも人の姿をとらない管理神も居るようである。
「様はいらんのじゃぁ、それじゃぁの~ふぉっふぉっふぉ」
「(・・・いい人そうでした・・先輩の知り合いなのに真面そうです)」
どこかしょぼんとした顔で不満を言うイリシスタは手を振りながらアミールが来た道を歩いて行く、そのどこか優しそうな雰囲気にあの先輩の知り合いと言う事がどうしても違和感にしか感じずしばらくその場で頭を傾げるアミールであった。
その後、しばらく歩き目的の場所に着いたのかアミールは特別会議室4-2と書かれた扉の前で立ち止まると少し深呼吸をしコンコンコンとノックをすると緊張したように声を出す。
「失礼します!下級管理神補佐アミール・トラペット召喚に応じ参りました。」
「おぉう入っといでー」
すると扉の中から緊張感のない入室許可の声が聞え、アミールは扉を開け中に入っていった。
「失礼します」
「おお、待っておったぞアミールほれそこにお座り」
「やっと来たわね、もう貴方が早く来ないからそこの筋肉ダルマがまだかまだかうるさかったのよアミール」
その部屋の中に待っていたのはアミールが所属する世界間管理委員会、その委員会の最高責任者である四大老の内二人、男性がマーリン・S・ランバースともう一人女性の方がフェイト・G・フォーチュンである。
「は、はいすみません・・」
「別に怒っちゃいないわ、急に呼び出したのはこっちなんだから・・それといつも言ってるじゃないもっと砕けて良いって、そうね~こう、フェイトおねえちゃ~んとか言ってだきついてきていいのよぉ?」
「はっ!何がおねーちゃ~ん、じゃ!見た目完全にお前の方が年下じゃろこのエタロリババァが」
この二人と言うより四大老全員なのだが、アミールが生まれた時から孫のように可愛がっていた為、所謂爺馬鹿婆馬鹿なのである。
マーリン・S・ランバース通称筋肉要塞、鍛え上げられた鋼の肉体に渋めの壮年男性で最も古い管理神の一人であり、その肉体には一切の攻撃が効かずその肉体による体当たりは一撃で世界を消し飛ばしたとも言われている。
フェイト・G・フォーチュン通称冷血女帝またの名をエターナルツルペタロリババァ(マーリン命名)見た目は可愛い小学6年生くらいだがその実最も古い管理神の一人でありその華奢な拳から繰り出されたとは思えない一撃には慈悲の一欠けらも無かったと言う逸話を持っている。
「なんですって!この筋肉ダルマ!・・・ふむ妹設定も悪くないかしら」ズルッ!
「あ、ははは・・・」
しかし今では丸くなり?委員会の責任者をしているふたりであった、フェイトのボケにすっころぶマーリンその二人の姿からは全く想像できない過去である。
「ま、いいわ早くお座りそんな突っ立たれても話辛いわ」
「小っちゃいからの、ごふっ!?」
だがマーリンの茶々に対するフェイトの一撃は現在も慈悲を感じ取れないのであった。
「ふぅまったく乱暴者め・・さてアミール今日呼んだ理由じゃがのいくつか有ってじゃなまず一つ目じゃがお主現在【例のゴミ】の管理を実質全部一人でやっておるじゃろ」
今までのボケボケしていた雰囲気が消えキリッとした真面目な顔で話し始めるマーリン、その気迫に押されてか返事をするアミールは若干涙目になっていく。
「えっとはい、ゴミ世界の事ですよね?全権受託され今管理させてもらってますが・・・何か不手際でもありましたでしょうか・・」
「ちょっと何泣かしてるのよ!」
「うるさいのぅちとだまっとれ「むぐぅ?!?」別に不手際もしておらんから泣くでない、ちょっと聞きたいことがあるだけじゃ」
アミールを涙目にする真面目な雰囲気のマーリンに掴みかかろうとしたフェイトだが即座に動いたマーリンによりテーブルの上に置いてあった大量の饅頭を口に突っ込まれ鎮圧される。
「す、すみません・・フェイト様大丈夫ですか?「むーむーむー!(何すんのよ!クソ爺!)」「だいじょうぶじゃと言っとる「むー!!(言ってなーい!)」」はぁ・・」
「ごほん!・・でじゃな聞きたいことと言うのはじゃなお主これからもあの世界を管理していくか?もし嫌ならすぐに管理を変えてやろう、おっとこれは贔屓やなんかじゃないちゃんとした理由があってじゃ・・どうじゃ?」
マーリンの説明の途中でばっ!と顔を上げるアミール、しかしマーリンの早口による説明で押しとどめられる、その真剣な横顔を口の中の饅頭を咀嚼しながら見つめるフェイト・・地味に締まらない少女?である。
「私は・・・」
「むぐむぐ・・ごくん、ふぅ遠慮しないでいいのあんたの本心を聞かせなさい。悪いようにはしないわ」
現在のゴミ管理を別の管理業務に変えてもらうと言うことは、元々今の状況を理不尽と感じていたアミールにとっては非常に嬉しい話である、しかしそれはアミールの願いによって異世界に行っているユウヒが異世界に居る理由をなくしてしまうことにも繋がりそれは・・・。
「・・・私は投げ出したくありません、確かに最初押し付けられた時は嫌でしたがそれでも私に協力してくれる人もいます。それなのに私が途中で投げ出すなんてできません!あの【世界】は私が・・私達が責任をもって終端の日まで管理します!」
俯きがちに呟くアミールに饅頭を飲み込み終えたフェイトが声をかけると、アミールはゆっくりと顔を上げると答え始めるその語調は次第にしっかりとし力が籠り始め言い終わる頃には、叫びにも似た声になっていた。
「ふむ・・」
「ふーん」
その答えにマーリンは目を細めフェイトは顎に指を添えると面白そうにニヤリと笑う、その状況に今自分が答えた態度を改めて考えると不味かったかと慌てはじめるアミールしかし状況はアミールが考えたものとは全く違った。
「は!あぅ、あ、あの「合い分かった!!」ひゃい!?」
「ならばこれより・・・アミール・トラペット下級管理神補佐の階級を剥奪しぃ!」
「え?ええぇ!?」
マーリンの気迫にびっくりしさらにそのあとのセリフを頭の中で再確認し再度驚愕するアミールしかし彼女の驚愕は更なる言葉で休まることを知らなかった。
「特殊世界間管理神に異動を申し渡す!これによりアミール・トラペットには該当世界に関する全責任及び、全権限並びに管理に必要な各種手続きの制限を解除するものとする!」
「え?・・・え?え?ええぇぇぇぇぇぇ!!!」
度重なる驚愕によりいっぱいいっぱいだった頭に更なる言葉を叩きこまれ一時的にフリーズ仕掛けるもその言葉の意味をゆっくり確認するとアミール今までの人生否、神生中で最大級と言っていい驚愕の事実に驚きの声を張り上げたのだった。
「うふふふー♪おめでとうアミールこれで一人前の管理神ね、しかも下級飛び越して中級以上上級以下の待遇よぉ」
「な、な、なぜですか!?わ、私何も!?」
「まぁ落ち着きなさいちゃんと話すからの」
今まさにアミールの頭の中を一言で説明するならば『大・混・乱』であろう、そんなパニックになってあたふたする姿を、好々爺と言った感じで見つめるマーリンは落ち付けと促しフェイトはニヤニヤとした表情でしかしその瞳には優しい色を灯しながらアミールを見守っていた。
それから30分ほどが経ち・・・。
「落ち着いた?」
「まだ少しドキドキしてますが大丈夫です」
フェイトがアミールに話しかけると、そのフェイトとは対照的な胸に両手を当て「うっさいわね!」うおっと!?びっくりした・・。その自分の胸に手を当て目を瞑っていたアミールは問い掛けに目を開けると大丈夫ですと返した。
「ならば説明しようかの、まずあのゴミ世界じゃがアレは元々『A』の一族が責任をもって管理することになっておったのじゃがの、最近になってその責務を放棄しているのではと言う報告があってな」
「それでこっちで少し調べてみたんだけどね、どうもいろいろ『ホコリ』が出てきてるみたいなのよ」
「ホコリですか?」
話し始めた二人を真剣な表情で見つめるアミールは『ホコリ』と言う言葉を聞き返す。
「うむ、じゃがあ奴ら巧妙に痕跡を消しておってな決定打に欠けるのじゃよそこでだ、あ奴らを泳がしながらゴミ世界のすべての権利者をお主に変えることで何かしらの尻尾をつかめればと思ってな」
その説明を聞きなるほどと頷くアミールは、現在行っている過去の書類の整理作業で出てくる様々な違和感を思い出して『ホコリ』の正体を何となく予想する。
「まぁもし失敗してもあなたならきっとうまく管理してくれるでしょ?はっきり言ってアレはあのコプレスとか言うのに扱えるような代物じゃないのよ、実際現在進行形で本来の契約に反して管理サボってるみたいなものだし?」
「まぁお主は今まで通り管理してくれればいいし権限も増えてやりやすくなるじゃろ、ただ責任も増えるからの!気を引き締めて事にかかるように!・・の」
フェイトの身も蓋もない言葉に若干苦笑いになるアミールであったがマーリンの言葉にキリッと真剣な顔に戻ると力強く答えた。
「!はい!がんばります!」
「ほっほっほ・・さて次の話に入る前に少し休憩をはさむかの」
「そうね・・饅頭は無くなったし何か持ってくるわ」
アミールの返事を聞いてニコニコと嬉しそうに微笑むマーリン、そんな様子を見て席を立ちお茶菓子を探しに行くフェイト。
「まったく全部食べてしまうとは、意地汚いヤツじゃのぉのぅアミール」
「あんたが無理矢理突っ込んだんでしょうが!この耄碌爺!」「げふるぁ!」
そんなフェイトを悪戯っ子の様な目をしてアミールも巻き込み煽るマーリン、しかし即座に顔を怒りで赤くしたフェイトの小柄な体型から生み出されたとは到底考えられない痛烈なシャイニングウィザードで黙らさられる。
「あ・・ははは、あ!それじゃ私お茶入れますね!実はお二人にも飲んでもらおうと思って最近手に入った茶葉を持ってきたんです」
「ほう、それは楽しみじゃな」
「ふーん?何茶?」
渇いた笑いをするアミールの言葉に、そのまま襟首を掴みもう一撃叩き込もうとしていたフェイトが攻撃を止めてアミールを見ると、マーリンもそのままの体制で首だけアミールに向け楽しみだと述べフェイトは何茶か問う。
「えーっとハーブティーになるんでしょうか?でも紅茶に近いかもしれません」
「ふんふん?ならクッキーかケーキ辺りがいいかしらね?ちょっとさがしてくるわぁ」
お茶の種類を聞いたフェイトは持ってくる物を考えるとアミールに行ってくると告げマーリンから飛び降りると部屋を出て行く、その出ていくまでの間もフェイトとマーリンの憎まれ口の言い合いは続いていた、どうもこの二人にとってはいつもの事の様でアミールも困ったように微笑むも何も言わずお茶の準備をするのであった。
それからしばらく経ちお茶もそろそろ飲めそうである。
「ふんふふ~ん♪」
「ふっ(最初は少し心配もしたがあの様子なら大丈夫そうじゃの・・しかし少し見ぬ間にまた一段と成長したのぅ)」
鼻歌を歌いながらお茶の準備をするアミールを見詰めるマーリン、その思考もその目尻も完全に孫の成長を喜ぶそれである。
「もってきたわよぉ・・って何ニヤニヤしてんのよ?」
「ふふ、何アミールがちょっと見ぬ間にまた一段と成長したなと思ってな」
そこにお茶菓子を大量に抱えたフェイトが戻ってき、ニヤニヤするマーリンに気持ち悪い物を見たような目で問う、その問いにマーリンは椅子に深く座りながら答えた。
「んー?成長・・・・ね、どこ見てんのよこのエロ爺」
「そっちじゃないわい!」
マーリンの答えにフェイトはマーリンの目とその視線の先にある日々成長を続ける双丘を何度か確認すると、気持ち悪い物を見たような目からどこまでも冷たく蔑むような視線でぼそりと告げた。その返しは予想外だったのか椅子からずり落ちながらもツッコミを入れるマーリン。
「わかってるわよ冗談よ・・確かに前までのあの子じゃあんなセリフは出てこないわよねぇ」
「うむ、今回の話じゃって継続は大穴じゃったしの」
「実際誰も賭けてなかったものね」
マーリンのツッコミに涼しい顔で返すフェイトもたしかにと、鼻歌を歌いながらお茶の準備をするアミールを眺める。しかも今回のアミールの対応について賭けをしていたようで、しかも全員外れだったようだ。
「何があったのじゃろうな?」
「ん?恋でもしてんじゃないの?」
「・・・な!?なななな、なんじゃと!?何処の誰じゃその者は!知っておるのか話せすぐはなもがぁ!?」
マーリンの呟きになんでもない事のようにサラリと想像を伝えるフェイト、あまりにも簡単に言ってきた為頭に入った言葉をゆっくり確認することになったマーリンは、その言葉の意味を正しく理解すると飛び上がるように起き上がりフェイトに詰め寄る。しかしその行動はさっきの仕返しも込めたフェイトの一撃により口を塞がれる・・・切っていない一本の太いういろうで。
「うっさいわねぇ感よ感、女の感ってやつね・・ちゃんと飲み込みなさいよ」
「もがもごもぐ(女の感か・・しかし何故にういろうなんじゃ・・まぁ美味いがの)」
「女が急に成長とかのベターなところじゃない?」
ちゃんと飲み込めと言われ大きな口でういろうを咀嚼するマーリンに予想とその理由を説明するフェイト、飲み込みずらいであろうにマーリンは口が大きいだけありすぐに飲み込んでしまいそうである。
「むぐむぐごくん・・ふむ、そうじゃとすると聞くことが増えたかの・・」
「あんま露骨に聞くんじゃないわよ?嫌われても知らないからくっくっく」
「!?・・むぅ嫌われるのはリアルに死ねるのぉ」
顎を指で扱きながらむむむと唸るマーリンにフェイトはまさに悪戯娘と言った目をしながら小さな手で口元を隠しながら脅し嗤うと、脳が即座にその残酷未来を妄想しその結果に青ざめるマーリンは本気でそんな未来が来たら死にそうである。
「あとね・・」
「ふぉ!?まだなにかあるのか?」
「あの子の前であの世界の事をゴミと言わない方がいいわよ?一瞬だけど悲しそうな顔をしてたわ」
フェイトの静かな言葉にマーリンはさらに残酷な未来があるのかとビクッとするも気にせず話し続けるフェイト。
「なに!?そうか・・すでに嫌われてたりせんじゃろうか?」
「はぁ・・そうなりたくなかったらあの世界にちゃんと名前付けてあげるのね、さり気なくの方がきっとポイント高いわよ?まぁあんたにそんな高度な事が出来るとは思えないけど?」
しかしその言葉の意味に少し思い当たる節があったらしく真面目な顔でそうかと呟く、がそれもつかの間すでに嫌われているんじゃないかと情けない顔で心配しだすマーリン。そんな情けない顔を見せられたフェイトは一つ溜息をつくと彼女には珍しくアドバイスをする。しかし嫌味も忘れないのだった。
「む!?むむむ、さり気なく名前をぐぬぅぅ・・」
「お待たせしましたぁ・・?どうしたんですか?」
「なんでもないわよ、ほらお菓子も色々持ってきたから並べるの手伝いなさい」
アミールがお茶を持って戻ってくると青ざめるマーリンが目に入り不思議そうに首を傾げる、そんなアミールにフェイトは気にするなとお菓子を渡しながら準備を促す、
「あ、はい!えーっと・・ういろう?」
慌てて受け取り準備をしようとするアミールしかし、クッキーやケーキに混ざって何故か入っているういろうにまたも首を傾げるのであった。
どうでしたでしょうか?
今回は私が書く世界観の基礎になる世界観をメインにふれてみました。と言ってもこれだけじゃ良くわからないかもですが、そのうち短編かなにかでこの世界観に詳しく触れてみたいとも思います。それではこの辺でまたねさようなら~