第二十九話 新たな地へ、王都出発
どうもHekutoです。
今回は予約掲載というシステムを使っています。いつも新しいことを試すときはドキドキしませんか?そんなわけで二十九話『新たな地へ、王都出発』始まります。
『新たな地へ、王都出発』
「うぅ、ふあぁぁぁ・・よく寝たそしてまだ外は白んできたばかりかこの早起き体質は便利だが・・まぁいいか」
早起き体質、元々朝は比較的強いほうではあるが社会人になってから某黒い会社に入社した事でその能力に磨きがかかったのである。
「ま、今そんな事思い出しても詮無き事か・・そういえば夢にバルノイアの悲痛な叫びが出てきたけどなんだったんだろうな?ここに夢占いの本でもあれば参照したいとこではあるが」
そんな一人ごとを言いながら俺は宿を出る準備をするのであった。
「お?もう出るのか?若いのに早いのぅ感心じゃ」
この人は、この宿『ニジョウハン』の主人でガテルさんと言うお爺さんで奥さんと一緒に宿を切り盛りしているそうだ、ついでに昨日はファンタジーの代名詞エルフ、それにドワーフにも会う事ができた・・そうこのお爺さんはドワーフなのだ、背は低くしかしがっちりとした筋肉質な体にふさふさの髭まさにドワーフと言った姿だ。
「あはは、習慣ですよ・・ところでこの時間ってお店とか開いてますかね?出発前に食料を買いたいんですけど」
「おぉおぉ、それなら市場に行くと言い・・そうじゃの冒険に出なさるなら西門側の市場が良いじゃろ」
昨日はガテルさんと話が合い色々雑談をしたのだがその時に、ドワーフって言ったらこう山奥とか鍛冶場とか鉱山似合いそうだけどと言ってみたのだが、概ね間違っていないらしくガテルさんも元は鍛冶場で武器を打っていたらしいのだが奥さんと出会ってからはここで宿をやっているのだそうだ・・所謂一目ぼれと言うやつで、
「あらぁ?もう行ってしまうのですか?また来て下さいね、ガテルさんがあんなに楽しそうにお客様とお話しするなんて珍しいですから、ねぇ?」
奥から出てきたこの女性がガテルさんの奥さんのアマテルさん、なんでもドワーフと精霊族のクウォーターらしいと言う話を聞いたときはあまりにファンタジーすぎてびっくりしてしまった、ずんぐりむっくりしたガテルさんより少し背が高く線の細い見た目は、中学生くらいにしか見えない・・・ガテルと一緒にいても孫と爺である。
「はい、西の市場に行った後そのままグノー学園都市に行く予定です」
「あら、学園都市に行くのねあそこは面白いところよ~なんてったって町全体が若さにあふれてるもの」
尚、アマテルさんに年齢の話は禁句であるらしい、俺の場合は間違って聞かないようにガテルさんがあらかじめ教えてくれたのだが、まさかあの見た目でそんな年齢だなんて・・・俺の世界の奥様方が聞いたら騒然としてしまうであろう、まさに歴史の生き証人ってレベルを超えているのだから。
「んふ?どうかしたのそんなに見つめて?」
「い、いえなんでもないです・・ガテルさん西市場はどっちに行けば?」
こちらの考えを察したのか読んだのかアマテルさんのオーラが変わり首を傾げてくる、ニコニコと笑っている筈なのに背筋を冷たい物が流れる。
「お、おぉおぉそこの道を下って右に行ったら大通りに出るからその大通りを越えてずっと進めばわかるだろう」
「ありがとう御座います。それじゃまたこっちに来たらお世話になります」
「うふふ、いってらっしゃ~い」
少し表情に陰のあるアマテルさんの声に押されるようにして、嫌な汗を流し俺は市場を目指したのであった。
ここはグノー城下に4つある市場の中の一つで西市場と呼ばれている。
「ほへー活気があるなぁ・・でも見た感じ冒険者が多いのかな?と言うより旅支度をしてる人が多い?」
「ん?兄ちゃん西市場は初めてかい?」
そんな市場をキョロキョロと珍しそうに見ながら歩く人影ユウヒである、周りの人間の違和感に気が付き頭を捻って立ち止まっていると市場の人間に話しかけられる。
「はい?そうですね、むしろグノーの市場事態初めてです」
「なるほどな!やっぱりおのぼりさんってことか!よし俺が色々教えてやるよ!」
グノーの市場複数あるのには理由がある、それは中立国グノーならではの事情だった。多種多様な人種が訪れるグノーでは度々種族間の諍いなどが起きる為、一般区の各種別区画整理を行った結果当初一つだった市場が区画ごとにいくつも作られることになり、次第にそれは吸収合併を繰り返していき結果現在の4つの市場へと纏まって行ったのである。
「へぇそんな歴史があるのか、今でも諍いはあるのか?」
「あ?まぁたまにはあるが種族間と言うよりも喧嘩っ早い奴らが起こすって感じだがな」
グノー王家に変わり各国各種族間の融和政策が功を奏しグノー王国内での人種差別はほぼ無くなっているが他国ではまだまだ根深い問題となっている。
「そんな歴史上各市場ごとに特色があってな、西市場は保存食や旅の道具何かが多いから冒険者御用達って感じだな!あとは長距離を移動する商人達も多い、ただちょっとガラ悪いのも居るけどなぁ」
「なるほどそれで西市場を進められたのか、ありがとう教えてくれて」
西区は旅をする種族や冒険者用の宿などが多かったためか市場もその方向に拡大していったようである。
「良いて事よ!な「全部おじいの受け売りじゃない」・・んだよ~いいじゃねーか」
「ごめんね兄ちゃんが偉そうにして、よかったら家の商品見てってよ少しは勉強できるよ!」
若い男性の後ろからさらに若い少女っぽさを残した女性が出てくる、二人とも小麦色の肌に赤い髪の毛が映え健康的なスタイルである。
「兄弟か?」
「ああこの口うるさいのは家の妹だ他の家族は仕入中さ・・いたいいたい蹴るなって」
「ふむ、仲良きことはいいことだな」
ユウヒの言葉に二人の兄弟は仲良くない!と互いに罵り合う、そんな二人を微笑ましそうに見つめながらユウヒは品物に目を向けていた。
現在俺は西市場の一角で店先に並んだ商品を見ている、お店はテントの中にコンテナのような木箱を並べて商品置いているだけで、片付けや展開が迅速にできる仕組みの様である。各店舗ごとに多少の違いはあるが基本は同じ作りのようである。
「ふーん保存食にこっちは岩塩か・・ふむ品質は悪くないかあとは香草か」
「おうよ!うちは品質にはうるさいんだ下手なもん売るわけにゃいか「それも受け売り」だぁいいじゃねーか」
しかし本当に仲の良い兄弟だ、何だかホームシックになりそうだよ・・どうしても精神力上なれないけどなったところでなぁ家、放任主義だし。
「そうだな人生はそういった先達たちの摸倣から始まり次第に自分の味が現れるものさ」
「おお!兄ちゃんいいこと言うなーそうなんだよなー」
「・・・」
男性店員はうんうんと頷き歯を見せ笑顔であんた良い人だ!と言い女性店員の方はなぜか俺の事をじっと見上げている、気のせいか先ほどより小麦色の肌が若干濃くなった気がするが陰り具合のせいだろうか。
「とりあえず岩塩の良い物見繕ってくれ、あとそっちの干し肉も少し」
おう!と言う元気な声を上げると男性店員はとりわけ始める。
「・・ねぇお兄さん名前は?どこまで行くの?少ししか買わないって事は近くまで?・・あ、アタシはリズよろしく!」
「ん?俺は冒険者をやってるユウヒだこちらこそよろしくね、ちょっと依頼でグノー学園都市までな、そこまで遠くないし荷物は少ない方がいいからね」
なにやら急に質問攻めをしてくる女性店員のリズ、なかなか可愛い名前である。別に隠すわけもないので、さらっと説明しながら商品を待つ。
「へぇ?学園都市に依頼か、今の時期だとあまりおいしい依頼は無いって聞くけど?あ、おらぁバンスだ」
「良く知ってるな?確かにあまりおいしくは無さそうだが用事のついでだしなっとありがといくらだ?」
「小銀貨4枚だ銅貨分はまけとくよ・・しかし学園に用事か入学でもすんのか?」
男性店員のバンスが会話に入ってきながら取り分けた商品を渡してくれる少しと言っても結構な量だ、あと銅貨分の端数は切ってくれたようだ。しかし学園=入学って考えは普通なのだろうか?いまさら勉強なぞする気にはなれないがな。
「いや今更勉強なんかしないよ、ちょっと配達を頼まれてねそのついでに依頼さ」
「今更って事はした事あるの?」
「ん?まぁ昔な」
先ほどから質問攻めだな、やはりこのくらいの女の子はお話が好きなものなのか?よく妹もこんな感じで話したものだ。
「ふーん、そうだ!これおまけしてあげる少ないけどドライフルーツだよ!だからまた来てね」
「ありがとう、必要な物があればまたよらせてもらうよ・・そっちも冒険者が必要なら都合しだいで依頼を受けるから、それじゃね」
「「またのおこしをー!」」
おまけだと薄手の布袋に入ったドライフルーツを貰い、感謝と宣伝をしその場を後にした。他には特に欲しい物も無く俺はそのまま一般区の外に出た、途中門番の人にグノー学園都市への道を聞いたのだがここでもビシッ!と敬礼をされる、どうやら俺の噂は瞬く間に城関係者に広まっているらしい。
「まだ若い兵士だったが・・なんだろうあの異様なまでのキラキラした瞳は、穢れた俺の心が悲鳴を上げる所だった」
何故か外に出るのに予想以上の疲れを感じ、俺は道中に若干の不安を感じるのであった。
私バルノイア・グノーは、この数日で起きた人生最大の危機(ルティアナ暴走事変)を脱し疲弊した体も癒され、滞っていた政務に励んでいるところだ。私が今元気に生き残っていられるのもユウヒのおかげだろう、今も彼から貰った薬をお守りも兼ねて懐に入れてある。
「陛下!失礼します!」
「ん?何かあったか?」
そんなことを考え懐に手を当て今日の無事を願っていると、伝令兵が入ってくる。この執務室は緊急の時でも即時対応ができるように広く作っていて伝令兵は面倒な複数の手続き無しに入れるようになっている、その代りに騎士や魔法士に文官まで結構な人数が周辺に詰めているのだが、最初私はいらないと言ったのを騎士団に即拒否されてしまったのだ。
「は!先ほどユウヒ殿が城下を発ったとの事です!行先はグノー学園都市だと」
「ふむ、ご苦労・・しかしあそこに何の用があるのか、何か知っているか?」
別にユウヒの動向等に関して報告しろなど言ってないのだがこうして報告が来る当り家の人間たちもユウヒの事を気に入っているのだろう、しかしユウヒと学園都市か・・接点がまったく分からないな。そんな疑問を思わず伝令に問いかけてしまった。
「え?あ、すみません!私が愚考しますに冒険者ギルドの依頼かと、この時期はあまり冒険者的に美味しい依頼は残ってませんがそれ故ある程度ギルドも便宜を図ってくれるそうなので」
「ふむ、依頼か確かにその線もあるか・・まぁ気にしてもしょうがないな、悪かったな下ってよいぞ」
「は!失礼します!」
伝令は伝令、自分の意見を言うことなど滅多にないだろう、その為か一瞬その伝令はキョトンとした顔をした。その顔が少し面白かったがその想像の内容はもっともな意見であった。依頼か・・どんな依頼なのか、少し気になる所ではあるあの町は色々と騒がしいからな。
「・・何も無ければよいが」
彼の行く先の幸を願い私は、政務に戻るのであった。
それからしばらく経った街道でユウヒは休憩していた。
「だいぶ進んだからもうグノー城は見えないな・・そろそろ魔法で移動速度を上げるかな」
どうやら人に見られ騒がれる可能性を考えたユウヒはここまでは普通通り歩いてきたようだ。
「んーまー急ぐわけでもないしこれだけでいいか【飛翔】!」
ユウヒが良く使う魔法の内の一つ【飛翔】、体にかかる重力の軽減と体の周りに術者の任意で反発力を発生させ理論上、空を自由自在に飛行できる妄想魔法。しかしユウヒは飛ぶと言うより跳ぶように使っている、異世界とは言え空を飛んでる人をまだ視たことが無い為の配慮の様である。
「それじゃよっと」
そんな声を上げ大地を強く蹴ると、ユウヒは大地を滑るように飛び始める。
「んー風が気持ちいいなぁこれなら結構速くつくかな?っよっと」
しばらく飛ぶと星の引力にひかれ地面に足を付き再度踏み出し跳ぶを繰り返すこと2時間ほど、数回人とすれ違うもあらかじめ掛けていたのであろう【探知】の魔法で人の気配を感じとると普通に歩きはじめ普通にすれ違うとまた地面を滑るように飛ぶのだった。
「えーっと門番さんの言う話じゃ道中は小さい村一つに休憩場所二つだっけ?馬車で3日ってことだからそんなものなのかな」
この周辺国家のインフラの一つたる街道には基本となる作りがあり、その一つが休憩場や休憩所である。平均的な馬車の能力で一日に余裕を持って走破できる距離ごとに設置することになっていて、主要都市の中間に村がある場合はそこを起点に作られることが多い。
ちなみに休憩場は簡易な柵や堀などで作られたキャンプ場の様な物で、休憩所は休憩できる建物などがあり商人もそこで商売をしたりする為、異世界版サービスエリアと言った感じである。
「この先は場で次に村でその次が所か定期的に兵士の見回りはあるらしいが厄介ごとが無ければいいなぁ」
この制度はまだ新しい為、現在その性質上いくつか問題もあり利用者同士のいざこざや魔物、山賊被害なども起きている。しかし従来の完全野宿よりは幾分安全になり旅人や商人に喜ばれている。
「と言っても王都から最初の休憩場までが一番距離があるって言ってたし着いても暗くなってからかなぁ」
それから数時間、何度か休憩をはさみ魔物と思われる影を無視し夕暮れ時・・。
「ん?そろそろだと思うんだけど・・これは敵性反応、これはスル―できないかも」
ユウヒの視界の一部に表示されているレーダーのような部分がユウヒの意思に反応し拡大される、そこには進行方向に複数の生体反応を示す緑色の光点と、敵意を持つ存在である敵性を示す赤色の光点が表示されている。
「位置や障害物や光点の配置を見るに休憩場だろうな、で敵性側が襲撃準備中か・・ある程度知性もありそうな動きだな」
緑の光点の集団と赤の光点の集団の間には距離があり、動かない緑の集団に障害物に隠れながら少しずつ赤の集団が近づいている、その動きから襲撃直前の匂いを感じたユウヒはレーダーの様な表示を縮小させると【身体強化】と呟き移動速度を急激に上げたのだった。
そんなことがあっている場所より遠く離れた草原に二つの人影があった。その人影の周りには大きく円を描くように点々と石の柱が並んでいる。
「ねぇねぇメディーナちゃん、お母様おきてるとおもう?」
「さぁな?あの人ほとんど寝てるしなぁ・・まぁ行ってみるだけでもしとかないとな」
二つの人影はラビーナとメディーナの神様コンビであった、どうやらお母さまとやらに会いに行くようだ。そんな二人が祈るような姿勢で何か小声で呟くと周りの柱に幾何学的な模様と文字のような光が浮かび上がる、それは次第にすべての柱で起こりだし円の中央に光の柱が現れる。
「準備完了だね!それじゃしゅっぱーつ!」
「あ、こら!そんなに急いだらまた躓くだろって・・そのままつっこみやがったよ、はぁ」
メディーナの声も聞かず走り出したラビーナは見事に躓きそのまま光の柱の中へと頭から飛び込んでいったのだった、そんなラビーナに呆れ溜息をつくとメディーナも光の柱へと入って行ったのだった。
そこは暖かな金色の光で溢れた場所だった、壁も床も光り輝き天井はあるのかないのか、どこまで続くのかまるで分からないが何故か安心してしまう雰囲気に包まれている。
「あいたたた・・」
「まったく、もう少し落ち着いたらどうなんだ、ほらいくよ」
メディーナが光の柱を通り抜け光あふれる場所に現れると足元には、はしたなくお尻を突き上げた状態で転んでいるラビーナがいた。そのお尻から生えた丸いウサギ尻尾が悲しそうに揺れている、呆れた顔をしつつも手を差し伸べるメディーナ、なんだかんだと言っても持ち前の面倒見の良さは健在の様である。
「うぅ、ありがとう」
「私にしっかり摑まっときな離れるんじゃないよ?」
「えへへぇ」
メディーナに言われるまま腕に両腕を廻してしなだれかかるように摑まると、ニコニコと頬ずりするラビーナその行動に疲れた顔をするメディーナそんな二人は光溢れる謎の空間の奥へと歩を進めるのであった。
いかがでしたか?誤字脱字は修正したつもり・・。
やっと新た話へと繋がる地へと出発できました。新しい地では何が待っているのでしょうか?それより普通に到着できるのでしょうか・・・。
それではまたここでお会いしましょう。さようなら~




