第二話 その『ゴミ』は美しかった
どうも、妄想が暴走中のHekutoです。
二話目が出来ましたので投稿させていただきます。
流石に次は、少し時間がかかりそうですがそれまでこれで楽しんでいただけたら幸いです。
それでは、第二話 『その『ゴミ』は美しかった』をどうぞ。
『その『ゴミ』は美しかった』
頭上には雲一つ無い遥か広大な空、足下には見渡しても地平の果てを見渡せない大地、本来なら生物が生きることを許されないその場所には、今一人の男と女が不自然に浮いていた。普通では考えられない状況の中、その二人はさらに会話まで行っているようだ。
「はい、私は世界間管理委員会所属の世界管理神をしておりますアミール・トラペット準管理神です」
見上げる俺に対して態々居住まいを正した彼女、アミールさんはそう話し始めた。
「(世界管理? 委員会? ・・・神??)」
俺の頭の中は周りの環境故に唯でさえ大混乱の只中にいるのだが、彼女の言葉によりさらに混乱して一周した結果、俺の心は何故か妙な落ち着きを覚えはじめていた。
「今浮いているのは透明な物理的結界を張って足場を、暴風や生命維持などから身体を守るため限定的な物理結界を張っています。・・・なので、普通に立っていただいても平気ですよ?」
そう言われて初めて自分が未だに両手をついて座り込んでいるのに気が付いた。・・・訂正しよう、やはり落ち着けてはいない、俺はまだ絶賛混乱の真っ只中に居るようだ。
よくわからないが彼女曰く落ちないようなので、そっと両手をついて立ち上がる情けない俺。この時若干足が震えていた事は最重要機密とし、俺は心の黒歴史ファイルにそっとその事実を閉じるのだった。
「それから、転移用のゲートを目立たないようにゴミ箱の中に展開していたのですが、どうやら驚かせたようで・・・すみません。そのうえ、急に上空ですものね」
アミールさんは最初の元気はどこへやら、話を続けると次第に表情を暗くしていき、最終的にはしょんぼりとし表情で謝罪を口にする。
この時俺は、彼女の頭に垂れた犬耳を幻視してしまい、慌てていたのか咄嗟に思い浮かんだことを謝罪するも、
「い、いや! 俺の方こそ急にしがみついたりして悪かった!」
謝罪したことで混乱していたわりに、何故かしっかりと覚えている柔らかな感触を思い出してしまい、また顔が熱くなって来るのを感じた。
「え? あ、あの・・・はい大丈夫ですから」
どうやらアミールさんも恥ずかしかったのだろう、いや怒っているのかもしれないが少し顔が赤くなっているのが見て取れた。微妙に気まずい雰囲気が流れ始めるのに焦った俺は、必死に別の話題を探し始める。
「あーえーっと、・・・世界管理、委員? とか、管理神? ってなに? あとなんだっけ?ゴミを見せるって話だったような? なぜにお空の上なん?」
話題を探しながら話しているうちに、ゴミ箱に食べられる前に話していたゴミについての話を思い出した。ここまで話題を変えることに成功した俺の頭は、まだ混乱から脱していないようだが、多少はマシになってきているようだ。
「えーっと、世界管理委員会と言うのはですね。こほん、無限に存在する世界が互いに干渉しあったり、バランスを崩して世界間的な災害が起きないように調整している所で、管理神は実際に各世界に赴き、担当の世界で実務を行う者達の事です。これらは比較的最近完成した仕組みなんですよ?」
無限! 世界! 世界災害! ・・・あまりにスケールがでかすぎて理解が追いつかないが、神か・・・確かにこんなでかい話は神でもなければ無理なのかもしれない。最近出来た仕組みって言ってるけど、それ以前はどうなっていたのか怖くて聞けない。
「ただ、私は諸事情でこの『ゴミ』の管理をしているのが現状なのです。あの・・・それと私のことは是非アミールと呼んで下さい。さんはいりません」
あれ? 俺口に出してアミールさんて言ってたか?? ・・・しかし、『このゴミ』ってどれのことだ? どこにもそれらしい物はというか、空の上なんだが。
「この?」
アミールさ・・・アミールが俺の後方やや下向きに指をさしているのでその方向を見る、そこには今まで見たことが無いような美しい光景が広がっていた。
星が丸いことを実感させてくれるような湾曲した地平線、どこまでも深く青い海と宇宙の境界、雪で真っ白に染められた山頂が美しくも荒々しく切り立った山脈、人が住んでいるのであろうか、よくは見えないがぽつぽつと人工物のような物も見える。
目の前に広がっていたあまりに壮大な光景に、俺の口からは純粋な思いで形作られた言葉が零れ出た。
「きれいだ・・・」
「え?」
「こんな壮大な風景生まれて初めて見たよ・・・すげーな、宇宙飛行士とかはこういうの見てんのかな?」
本当に感動した時に人って、難しい言葉なんか浮かばないものなんだな・・・そして同時に何故か勝手に頬が緩んで行くのも感じる。
「・・・綺麗、ですか? えへへ・・・何だかその一言だけで救われた気がします」
「へ?」
そしてアミールは目の前の光景の真実を話し始めた。
曰く、この見渡す限りに満ち溢れるありとあらゆるモノは、無限に存在する世界の管理神などが、自分の世界には不要と言って捨てられたモノで構成されていると。
曰く、【世界ゴミの集積場】と呼ばれていたこの場所を、遥か昔幾人かの管理神らが遊びで一つの世界として構成しなおしたのだとか。
しかし出来上がったものはかなり問題のある世界だったうえ、大規模な世界間災害まで起こしたとか? その辺記述は何故か無くなっていて詳しくは判らないらしい。
結果、この世界にはとある封印処理が施され、その不安定さから【世界】とは認められずに未だ【ゴミ】、または【世界ゴミの集積場】扱いのままなのだとか。
「そっかー・・・こんなに綺麗なのになぁ?」
「ふふふ・・・ありがとうございます」
と言ったアミールの笑顔は、あまりに可愛過ぎて直視できなかったことをココに記しておく。
さらに話は進み【お願い】の話になった。
「あの、それで本題の回収なんですが・・・」
「え? あぁ、そういえばそんな話だったっけ?」
あまりに美しい景色に、最初の話も緊張も混乱もすべて頭から飛んでいたようだ。
「はい・・・あの、一つでもいいので回収していただけないでしょうか? ・・・ある程度のサポートは出来るので」
アミールの話を聞きながら俺は考えていた。これがゴミなのかと、管理神やらなんやらってのは、こんなに美しいものを捨てるんだなと、きっと日本人の俺じゃなくても『モッタイナイ』って言うだろう。
・・・ん? でもアミールってけっこう凄い不思議ぱわー持ってそうだから、俺って正直いらなくね? そんな、モッタイナイと言う思いの次に現われた疑問、その答えを求め俺はアミールに問いかけてみることにした。
「それでその回収が必要なゴミってどこにあるんだ? てかアミールすごそうだからパパッと回収できそうな気がするんだけど?」
「えーっとですね、この・・・世界とは認められていませんが、この世界は非常にデリケートに出来ていまして。私みたいな存在力の高いモノが直接行きますと、それだけで世界に深刻なダメージを与えかねないのです」
しょんぼりと、どこか子犬を連想させるアミールの姿に、俺は胸がキュンとなるのを感じた。アミールは美人顔なのだが彼女が縫う雰囲気は、どこか幼さを感じさせ可愛くも見えてしまう。俺がそんな邪な事を考えている間にも、彼女の話は進む。
「それで、世界に与える影響が少なくて済む、この世界と同格の世界から協力してくれる方を探していたのです」
なるほど、それがあのキャッチセールスだったのか・・・大男は出てこなかったが、まんまと俺はキャッチされてしまったわけだと、真剣だけどどこか弱気なアミールの視線にコクコクと頷く。
「次に回収してもらいたいものなんですが、その・・・数も種類も場所もわからないのです。ごめんなさい」
さらに話は進み、回収してほしい物に関する話題になると、頬に軽く手を当てしょんぼりと視線を外すアミール。
なんだこのカワイイ子犬! お持ち帰りゲフン! ゲフン! ・・・違った、しかしこれはまさか。
「もしかして探すところから?」
「はぃ・・・駄目でしょうか?」
キターー! 上目遣い+潤んだ瞳+俺には見えるその頭に生える垂れ耳がぁぁ・・・。
「ぐぬぅ! ・・・いやしかし、ここがどんな世界かさっぱりだし、危険があるかも・・・い、いや別にアミールの願いを聞きたくないわけじゃないんだよ!? ・・・あれだよ! 俺じゃ頼りないってか、えっと・・・あぁ」
奥歯を噛みしめ興奮を抑えながら言っていて、自分のセリフのあまりの情けなさに俺は段々と声が尻すぼみに小さくなってしまう。
「えっとですね! この世界はそちらの世界風に言いますと剣と魔法のファンタジーと言った感じの世界です!」
何故だろう、説明してくれるアミールの背後に頑張る子犬の姿が幻視できるのだが、本格的に俺の頭は大丈夫だろうか。
「あと! 私もできるだけサポートしますし、力や知識もある程度なら授けることが出来ます! それに・・・頼りないとか言っちゃダメです。少なくともこの世界のことを美しいと言ってくれたユウヒさんの言葉で、私の心は救われました。でも、無理は、いけませんよね」
元気よく話していたアミール、最後はまたしょんぼり垂れ耳モードに戻っていた。そして背後の頑張る子犬もコッチを見てキュ~ンと鳴いている、ような気がする・・・・疲れているのかな、俺。
「うん、私大丈夫です」
あぁ無理だわ、完敗だよ・・・え? 可愛すぎでしょ? しかもそんな風に言われちゃぁねぇ? ここで断ったら男が廃るってもんだよな、それに・・・。
「おk、手伝ってやるよ! 帰ったって何もやること無いだろうしな」
そう、このまま日常に戻ったとしても【クロモリオンライン】は、もう居ない・・・なら異世界の冒険と洒落込むのも悪くないさ。それに、ここで引いたらうちのギルメンから口々に馬鹿にされちまう、漢じゃないってな。
あと、これはきっと俺の気のせいだろうけど、どこかで嘗ての戦友達が『逝って来い!』と笑いかけてくれている気もした。
「本当に・・・いいのですか?」
「おう! まぁやれるだけやってやるさ・・・あ、でも長期間家を留守にするなら家族に一言言ったがいいかな?」
もしこのまま何日も帰らなければいくら放任主義っぽい両親も心配・・・してくれるよね? なんだろう、笑って大丈夫と言ってサムズアップする両親と、平気そうな顔をして内心心配しまくる妹が容易に想像できてしまう。
「こちらとあちらの世界では流れがいろいろ違うので、ユウヒさんの『世界』時間が進むことはありませんし。万が一の場合も時間軸を調整して転移することも出来ますが、いったん戻られるのでしたらゲート開きますよ?」
どうやら大丈夫らしい、若干『世界』ってところに違和感を感じたが、まぁそう言うことなら。
「いや・・・家族に会ったら今の気持ちが揺らぎそうだからいいや、このまま旅にでるさ」
「わかりました。それでは旅の準備をしましょう」
そう言いながらどこからともなくナニカを取り出すアミール。俺はこの時、その取り出したモノを見てすぐには反応することができなかった。
「はい♪」
この場に似つかわしくないとある物体の出現に、時が止まった様に固まる俺の耳には、嬉しそうなアミールの声だけが聞こえたのであった。
ここはとある商店街の一角にあるゴミ置きスペース。
「我らが勇者がゴミ箱に食われた!」
「いかん! 助けるぞ! あそこはGですら数秒ともたない腐界ぞ!?」
目の前で衝撃の瞬間を目にした男たちは、顔を青ざめさせながらも慌しくゴミ箱へと走り寄る。
「くっ! この距離でも感じるとはなんて瘴気だ!?」
「息を止めるんだ! ぐわ! 目が染みる!?」
「ゲホゲホ! ・・・おい! どこにも居ないぞ!?」
近くに寄っただけでも臭い立つ死すら感じさせる臭気、息を止めても粘膜を容易く貫通してくるほどの強烈な瘴気、それでも彼らは勇者を助ける為にその足を止めず前進する。しかし、一人の男が発した声で、固唾を飲んで見守っていたまわりの者達を含め、男達の表情は驚愕に染まる。
「まさかあの話は本当だったのか・・・」
「知っているのかラゲフン、あの話?」
「あぁ、この商店街の地下には巨大な秘密基地があると言う・・・」
「まさかあの美女はそこの工作員!? ・・・勇者め無茶しやがって・・・くっ!」
その日、とある商店街のゴミ置きスペースには、綺麗に整列したまま空に向かって敬礼をする男達が居たと言う。
おつかれさまです、どうだったでしょうか?自分的にはけっこう満足してますwでもやっぱり誤字脱字や文法には心配が尽きないですね。
次回予告? ユウヒに突きつけられたものとはいったい?ユウヒを襲う驚愕の正体とは!そして男達は秘密基地を見つけ・・・え?そっちはいいて?はぁい・・
それではまた次回ここでお会いしたいです。さようなら~