第二十八話 冒険者らしく
どうもHekutoです。
感想をくれる方、評価点を付けてくれる方、ありがとうございます。ユニーク数も段々増えてきて嬉しい限りで、もっと多くの人を楽しんでいただければ幸いです。
そんなわけで『冒険者らしく』はじまります。
『冒険者らしく』
大分日も高くなってきたグノー城下町一般区そこにユウヒは居た。
「さて新たなクエスト受注完了したが・・なんだかゲームっぽい言い方だな俺」
自分の考え方がどこかゲーム臭くなりその思考傾向に何とも言えない気分になっているようだ。そんなユウヒが居る場所は所謂噴水前広場、行きかう人々の休憩や待ち合わせなどに使われる一角である。
「さて、グノー学園都市か・・どうせなら他にも行きがかりとか学園都市向けの依頼が無いか探してみた方が効率的かな?」
グノー学園都市は西に馬車で3日ほどかかる距離にある大きな都市で、今からすぐ準備をしても出発は昼過ぎになってしまう為、今日は準備に使い一晩宿に泊まって明日の朝出発予定の様だ。ユウヒは流れる噴水の水を見ながら頭の中で組み立てた予定を口に出してまとめる。
「早朝に出るとして、一人なら特に装備を多くしなくていいな魔法の縛りも無いし・・ならまずはギルド行ってみるか」
そう言うとパッと立ち上がったユウヒは、行きかう人々の脇を縫うように軽い足取りでギルドを目指すのであった。
「お、あった」
俺は広場を後にしてギルドを目指したのだが、途中道が分からなくなり感で進んでみたがどうやら当っていたらしく目の前に冒険者ギルドが見え始める。昨日見たのとまったく同じ建物なので間違いないだろう、涼しい気候だが日が昇れば日差しもきつくなるわけで俺は影を求めてギルドに入って行った。
「えーっと依頼はあそこだったな、丁度いい物があればいいけど」
「んお?ユウヒだったか今日は依頼探しか?」
「そうです何かいいのは無いかと・・と言うかもう覚えられたんですか?」
「はっはっはこの仕事やってりゃこのくらい当り前よ!でどんな依頼が良い?討伐か?討伐か?それとも討伐か?」
「いやいや討伐しかないだろそれ・・そんなに討伐依頼があるのか?」
「そうなんだよ、グノー騎士団が定期討伐したばかりなんだけどな?妙に多いんだよな魔物の報告が、まぁ大して強力なのはいねぇみたいだがこの間のアサルトの件もあるからなぁ偵察系の依頼も多いぜ?」
アサルトってたぶん俺らの依頼だよね、しかし偵察か・・適当にフィールドを歩いてどこに何が居たかの報告をギルドに報告する定期依頼系の一つらしく、あまり報酬は良くないので受けるのは低ランクが多いらしい、ただ危険地帯の偵察は報酬も良く中堅冒険者が好むようだ。ちなみに、一般的に害や討伐対象にある生物全般のことを纏めて『魔物』と呼んでいるこれは冒険者用語なのだが広く大衆にも使われているようである。
「ふーんなんだろねー?、まいっかそれじゃグノー学園都市まで行くんだけど何かある?」
「入学でもすんのか?・・んーなにかあったかな」
そう言いながら男性職員は、カウンターの奥にある本棚から何か取り出しながら調べ始めてくれる、その間に俺も依頼掲示スペースを見て回った。
「んーこんなもんだな?研究機関も多いから納品物や学園の遠征実習護衛とかだな入学時期なら都市までの護衛依頼もあるが今は時期じゃねぇからなー」
「納品は分かるけど遠征実習護衛って?」
「ふむ、学園都市ってのはこの辺の国の中じゃ一番学科の種類が多いことで有名なんだが、知らないって顔だな?」
「うんまぁあまり詳しくは無い」
「そかそか、でだなその中には戦闘系の学科だったり魔法学科だったりあるわけよ、そのカリキュラムの中には遠征しての実地戦闘なんてのもあってな、しかし複数の生徒を教師だけで護衛するのは無理なのさ」
「・・生徒だけじゃダメってことか」
「まぁ高等部や上級生、一部の特別クラスなら無くもないだろうが基本護衛が付く、所詮まだ学生だ冒険者素人とたいして変わらねえからな」
「なるほどねそれで学生について行って護衛か・・めんどくさそうだな」
「はっはっは、まぁ基本的に教師連中が付くしそこまで危険なの所にゃいかねぇし、そんな大変なことは滅多におきんよ学園側も不祥事は嫌がるからな、形式上お偉方の子女も居るからな」
「ふーん・・それってここで受けても移動が間に合わなかったら失敗扱いなのか?」
「いや、失敗にゃならんが成功でもないし信用は落ちるな・・まぁそんな期限ぎりぎりの依頼は置いてないから安心しろはっはっは」
「そっかそれじゃちょっと見させてもらうよ」
おう!と言うと男性職員は俺の前に依頼書を広げてくれる、おれはその羊皮紙に書かれた内容を見ていったのだが。
『薬草採取3種類どれだけでも!!』『研究材料にゾンビを採取して来て!』『野生のマール狩り!エリエス遠征!』『学園の草刈!ただ草を刈り続けるだけの簡単なお仕事!』『幼年学部遠足護衛!子供好き歓迎(ロリショタ除く!)』『グノー高級区クロモ菓子店の限定ケーキ納品!(購入より2日以内)』『冒険者学科中等部実地戦闘護衛!』『魔法科中等部実地戦闘護衛』
「・・・・・・・」ぷるぷるぷる
「・・・・・・・」ドキドキ・・
「・・なんだこれまともなのがほとんどないんですけど・・」
「ばれたか!・・いや悪意があってこれを出したわけじゃないんだぞ?」
むむむ、確かにその苦笑い全開の表情からは悪意を感じないが、どうなんだこれ薬草の採取とか3種類と書いてあるが種類が書いてないし、ゾンビ10体丸ごと持って来いっておい、エリエス遠征って帰還が6カ月後っておかしいだろ、草刈で1か月ってどれだけの範囲だよ、ロリショタ・・こっちの世界でもこの言葉あったんだな・・、馬車で3日かかる距離なのに2日でもってけるかよ、残りの2つの内容は普通だが護衛か。
「はぁ、作為的なモノを感じるんだけど」
「すまねぇ入学シーズンはマシなのあるんだが、こういうのは残っちまうんだよ護衛は期日に余裕があるからおすすめだが・・やっぱり人気が無くてなぁ高等部や上級の女学系学科や貴族系はすぐ埋まるんだが」
「そりゃ・・下心丸出しだな・・」
明らかに若くて可愛い女の子目当てや貴族の子女目当てもしくは、玉の輿か逆玉か・・はぁ欲深きは冒険者か・・・。
「冒険者なんて大抵そんなもんだぞ?荒くれ者や欲深いのがほとんどだ・・・あんた冒険者らしくないよな」
「ほっとけ」
「いやいや褒めてんだけどなぁ・・てなわけで俺を助けると思ってよ」
護衛か、まぁこの世界の冒険者育成機関がどういう内容の授業をするのか多少気にはなるからな、報酬は大銀貨5枚か・・追加報酬要相談食事付・・むぅ待遇はよさそうだな。
「しょうがない、冒険者学科のほうを受けるよ」
「おっし!流石はガレフのおすすめだ!情に熱いねぇ!すぐ依頼書類発行するからな!」
「ガレフ・・いったい俺の事なんて言ったんだろう・・」
嬉々として書類を作る男の後ろ姿を見ながら若干の不安を感じてしまうのは、しょうがないと思うんだ・・なんせランクの照会すらしないで書類完成させてたし・・Fなんですがこれ今気が付いたんだけどDランク以上推奨って書いてあるんですけど。
「よし!完成だ、あとはこれを学園都市の冒険者学科の受付に出してくれればあとは向こうで説明してくれる、いやぁしかし助かったぜそろそろこれも返却時期でよーあんま返却が続くとギルドとしてもなぁ」
「あぁそう、ところでこの推奨ランクなんだけど・・」
「ん?ああそれか!別気にしなくていいぞ所詮推奨で固定や絶対尊寿ってわけじゃないから低くても構わん!」
いいのか・・なんだか以前行ったギルドと比べると何だか適当だな、まぁ実際にあそこで依頼受けたわけじゃないから良くわからないけど、んーなんだか疲れちゃったな先に宿探すかな。
「あーそぅ・・ならどこか安い宿屋を教えてくれ・・疲れた」
「おう!いいぜ、おすすめの宿を教えてやるよ!」
異様に元気の良くなった男性職員に宿を教えてもらった俺は、教えられた宿に行くとそのまま寝てしまうのであった、食事無しで一人部屋が一晩小銀貨2枚で部屋も綺麗で寝具も悪くなかったので短期宿泊には良い宿だと思う、そういえばあのギルド職員の名前聞いてなかったな・・まぁいいか。
その夜、ここは高級区にある一軒の住宅その一室。
「・・・アン聞こえるかしら?」
「・・ジ・・ジジ・・はい聞こえます!」
その部屋のテーブルには丸いリングがいくつも浮いておりそれらは球を作るようにくるくるふわふわと空中に浮かんでいる、その前にはあのエルフの女性ミューゼルが深く椅子に座っていた。
「よかった、最近調子悪いのよね?この通信魔法具」
「まぁその魔法具ずっと使ってますしね」
通信魔法具と言われたリングの球体から少し反響し聞こえてくる声は、少し幼さを残した女性の声だった。どうやらアンと呼ばれた女性の様だ。
「はぁそろそろ買い替えかしら?高いのよねぇ・・そっちで余ってるの無いかしら?」
「そうですねぇ魔法具研究室なら試作品とかありそうですけど?」
「やよ!あそこの試作品はいつ爆発するか分からないじゃない!」
買い替えの話にアンが提案するも、何か嫌な思い出でもあるのか全力で拒否するミューゼル、今はゆったりとした白いワンピースを着ているのだがその裾が感情に合わせるように揺れている。
「あっははは・・彼らもがんばってはいるのですよミューゼル様」
「様はやめなさい、堅苦しいのは嫌いだわ」
苦笑いをするアンにミューゼルは嫌そうにつぶやいた。
「もぅ、いつもそうなんですから・・この通信会話だってほかの人に聞かれたら私が怒られるんですから」
「そんな子がいたら私が物理的に怒っておくから安心おし」
「はぁ・・ところで何かあったんですか?」
どこか子供のようなミューゼルの言葉に、若干の疲れを感じさせる溜息を零すアンだったが思い出したかのように要件について聞きだす。
「ああそうでした本題を忘れるとこでした。実は上質な紙の件ですが目途が立ちましたよ?求めるレベルより少し及ばなかったですが十分でしょうし、あの冒険者ならもっと上質な紙を用意してくれるかもしれません」
「ほ!本当ですか!?流石はミューゼル様こんなに早く解決してくださるなんて!」
「私は何もしてませんわ、これはきっと精霊がめぐり合わせてくれたのでしょう・・」
そう言うとミューゼルは興奮するアンに微笑みながら今日あった事を話し始めたのであった。
「そんなことが・・そのユウヒと言う冒険者が持ってきてくれるのですね?その話を聞いたら追加報酬分も用意してさらに追加依頼分の報酬も用意した方がよさそうね!」
「あらあら、あまり無理難題を言ってはなりませんよ?私のお気に入りなんですから」
ミューゼルの話を聞いたアンは歓喜の声を上げるとユウヒが到着してからの事を考えてか報酬の準備について口走る、そんなアンにミューゼルは頬に手を当てながら困った子ねといった感じで嗜めるのであった。
「はぁ、しかしミューゼル様が気に入るなんてそれも珍しいですね・・しかし精霊に溺愛されて錬金術を使えるかもしれない方ですか、それが本当なら相当高位の錬金術師かもしれませんね?」
「もぅ様はいらないって言ってるのに・・そうね確認はしてないけど自分で作ったと言うのだし錬金術じゃなくっても技術は相当の物よね、冒険者ギルドに問い合わせてみようかしら」
アンは不思議そうな声を出しつつユウヒと言う謎の冒険者の事を想像する、もしこの会話をユウヒ本人が聞いたら確実に疲れた顔で勘弁してくれと言ったに違いないだろう。しかしここにはユウヒの事を深く知る者はおらず、ミューゼルもまた謎の冒険者ユウヒの評価を無意識に上げていくのであった。
「そうですね・・そんな人が冒険者やってるのも珍しいですが」
「そうね、確かに冒険者らしくなかったわね?礼儀を知ってるし優しそうだったし」
ミューゼルはう~んと言いながら首を傾げ頬に指を当て、アンはう~んと唸りながらまだ見ぬ冒険者を想像するのであった。
「くちゅん!・・・誰か噂したかな?・・しかしなんだか今日は久しぶりに冒険者らしいことした気がする・・・寝よ・・」
宿のベッドの上でクシャミをして目が覚めたユウヒはそれだけ言うとまた夢の世界に落ちて行ったのだった。
「・・おいしい」
所変わりここはグノー城のティーラ・グノーの寝室、そこには寝間着姿の姉妹がお茶を飲んでいるようである。
「本当ね、ユウヒさんが作ったお茶なんですってすごいわね」
「・・ユウヒは何でもできるんだね・・また会えるかな?」
「ふふ、えぇルルイアが良い子にしてればきっとまた会えるわ」
「ん、いい子にする」
その空間はどこか時間がゆっくりと流れているような雰囲気で何とも微笑ましい限りである。・・ある一部を除いて。
「(はぁはぁ・・っぐっじょぶですユウヒ様!こんないい雰囲気のお二人は久しぶりです)」
「(ハァハァ・・・タマリマセンね・・これで私今日の疲れが吹き飛びました・・ハァハァ)」
壁際に待機するメイドが二人、姉妹に気が付かれないように忠誠心(鼻血)を垂れ流していたのだった。・・・残念なメイド達である。
「あなた、お体は大丈夫ですか?」
「ああ、ユウヒのくれた薬は素晴らしいなあれを飲んでからそんなに経たないにも関わらず体にあった疲労感がまったくないよ、寧ろ力がみなぎるようだ」
所代わりとある寝室、朝から伏せっていたグノー王バルノイアはベッドに腰掛けた状態で疲労感の消えた自分の体とベッドサイドに置いてあるユウヒ謹製の滋養強壮薬の小瓶を見比べながら賞賛する。
「腰の方はどうですか?」
「そちらもまったく問題ない・・しかしこれほどの魔法薬を置いていくなどユウヒ、彼はいったい何者なんだろうか・・」
そう言うと難しい顔で考え始めるバルノイア、しかし後方から布が擦れ合うような音が聞こえるとビクリと肩を震わせ、まるで錆びついた機械のごとくギシギシと後ろをゆっくり振り向く。
「本当ですね、私も一つ飲ませてもらいましたが・・からだがぽかぽかしてきます・・ふふふ」
「・・まぁまてルティアナ話し合おう我々にはまず話し合いが必要だ・・」ガクガクブルブル
そんな震えるバルノイアの見えない位置、ルティアナの後ろにあるテーブルの上には封の開いた陶器の入れ物が一つ、そこにはこう書かれていた『精力剤』と。
「うふふふふ・・はい・・今宵も存分に話し合いましょう・・カ・ラ・ダ・デ・・」
「いいぃぃやあぁぁぁ――――――――――――――――」
その日の夜完全防音された王の寝室から絹を切り裂くような男の悲鳴が聞こえたと言う・・・。
「うぅん・・へくちっ!・・うぅ・・バルノイア・・イキロ・・・むにゃむにゃ・・ぐー」
そうしてグノー王国の夜は静々と更けて行くのであった・・一部を除いて。
いかがでしたか?誤字脱字等無いといいのですが。
ユウヒにとって『らしく』と周りにとっての『らしく』について触れて見ました、これからもこのズレがユウヒの物語を彩って行くのではと思ってます。
それではこの辺で、またここで会いましょうさようなら~( ゜∀゜)ノジ




