予告第二話 地球で戦うストレス戦士達
どうもHekutoです。
予告第一話と付けたのなら二話もあるわけで、といっても今回はとても短いので箸休め程度に読んで頂ければ幸いです。
『地球で戦うストレス戦士達』
ここは母なる地球のとある島国、その国の都心にある料亭の一室では、三人の男たちが静かに杯を傾け合っていた。
「無事法案は可決できましたな」
「ええ、流石にこの法案相手に無駄な遅延工作は出来ないでしょう」
三人はそれぞれに島国の重鎮と言って良い立場の人間なのだが、今は嬉しいことでもあったのか、普段の緊張感が感じられない自然な笑みがその顔に見て取れる。
「だが本当に問題なのはこれからだろ、まだアノ中がどうなっているかもわからん」
「内部から脱出出来た市民の証言は取っていますが・・・」
「同じ証言がほとんど無いと・・・」
しかしそんな空気も、三人の中で最も体格の良い男性の顰められた顔と声で僅かに引き締まる様に感じられた。どうやらうれしいこともあった様であるが、同時にこれから先の方が問題の様で、その事を思い出し考えるだけで理性と関係なく表情は険しくなるようだ。
「ええ、今の所最も可能性があるのは中に入るとランダムでどこか遠くに飛ばされる・・・瞬間移動するでしたか」
「ん? 俺の聞いていた話と違うな、異世界に居る様な幻覚を見せられるが一番じゃなかったか?」
「それが、中で体験した通りの場所に怪我があるとかで、現実なのだろうと言う話にまとまりつつあるので、今はワープか何かではないかと言うのが調査部の見解ですね」
ただ気になるのは、彼らの話が大の大人が真剣に話し合うには、僅かに違和感のある内容と言う事である。何とも言えない面妖な表情で意見を述べ合う三人の口から出る言葉は、どれもどこか現実から離れた、所謂空想の世界を彷彿とさせるものなのだ。
「まぁ、どの道中に入ってみるほか無いですな・・・外からじゃ何も解らないですし」
「ああ、既に自衛隊の突入部隊は準備が完了している。明日にでも一度突入するはずだ」
だが彼らは空想の話をしている訳でも、ましてや幻想と現実の境目が分からなくなったおじさん達でも無く、真剣にそれらの話と対策を講じているのである。
「最終手段をとることにならなければいいのですが・・・」
どうやらユウヒの故郷である日本の首都では、現在明らかな、それでいて現実離れした異変が巻き起こっている様だ。
「ドームの物理的破壊、か・・・できんのかよ?」
「アメリカさんはそのつもりのようですよ?」
しかもそれは日本だけの問題では無く世界中を巻き込んだ大きな異変として席舞いしており、いくつもの大国が日本同様に手を拱いている様である。
「拡張型か・・・どうなるか」
「戦争でなければアレの使用も許可されるかもしれません」
そしてその異変は人に忌むべき力を行使させる可能性すらあり、
「・・・最初にやるのは何処だろうな」
彼らの予想では日本人にとって最も忌むべき力が使用される事も、ほぼ確実と見られている様だ。
一方その頃、三人の男性の話題に上がっていた国の白い大きな建物の一室では、
「以上が第八次拡張阻止作戦の結果です。次に第九次作戦ですが―――」
「もういい、今現在で良い結果は出ているのか?」
鋭い眼つきでスクリーンを睨みつける男性が、軍服を着た男性の報告を聞きながら鼻を拭ったティッシュを少し乱暴な手つきでゴミ箱に投げ捨てている。
「それは、明確に阻止できたと言える結果は出ていません。ただ拡張速度は当初より遅くはなっているのです。が・・・」
そんなティッシュを投げ捨てながら報告を中断させた鋭い眼つきの男性の問い掛けに、軍服の男性は顔色を悪くすると自然と俯きそうなる顔を必死に上げつつ問い掛けに答えるが、
「その理由も解らないか・・・何か分かった事は?」
その答えは鋭い眼つきの男性を満足させるような内容に至らない様であった。
「では私から」
軍服の男性が下がると今度は線の細い眼鏡の男性が書類を手に話し始める。
「解っていることが少ないので簡単に説明させていただきますが、先ずドームは一切の光を反射せず、それにより光、紫外線赤外線を含めた計測が出来ません。また物理的な接触による破壊も熱エネルギーによる破壊も出来ていません。ただ蓄熱はしている様なので、我が国の持つ最大火力をもってすれば許容量を満たすことが可能なのでは、ないかと・・・」
その内容からは『ドーム』と言われる存在の異質さが良く分かり、今までに経験した事の無い存在の説明に、鋭い目付きの男性はさらにその目を細め、最後の言葉と男性の表情を見て忌々しげに口元を歪めた。
「・・・アレか、まだ戦争に使うわけじゃないだけマシなのだろうが」
それは目の前の男性の説明から、言外にとある兵器の使用を提示されている事が分かった事と、その兵器を利用すると言う意味を彼が良く理解しているからである。
「しかしこのままの早さで拡張されては直ぐにインフラが滞ってしまいます。決断は早い方がよろしいかと」
「・・・・・・許可しよう。多少民衆とあの国が騒ぐだろうが、仕方なしか・・・」
苦虫を噛み潰したと言う表現がもっともふさわしい顔で、眼鏡の男性が話す言葉を聞いていた男性は、軍服の男性にも視線を向けた後、スクリーンに映る巨大な半球状の黒い物体を睨みつけると、威厳のある声で許可を出す。
「我々が自国を燃やすだけですので、あの国にもこの位は我慢してほしい所ですな」
「・・・残りの作戦を行いつつ準備を急がせてくれ」
苦渋の選択に胃が痛む様な感覚を覚えた男性は、どこか飄々とした雰囲気で肩を竦めソファーに座る眼鏡の男に、何とも言えない負の感情が籠った視線を送ると気が付かれる前に表情を戻し二人に指示を出す。
「「はい」」
どうやら日本の某所で話されていた言葉は立派なフラグとして建設されたようである。何故彼らの前にこのような事態が立ちはだかる事になったのか、どこでいつ小さな蝶の羽ばたきが起ったのか、そしてこの場で羽ばたいた大きな蝶はユウヒにどんな影響を与えるのか、それを知る者は誰も居ない。
いかがでしたでしょうか?
なんだか地球が可笑しな事になっているようですが、果たしてユウヒに本当の意味で日常は返ってくるのか、まだまだプロットやらなんやらで次回作は長引きそうですがお楽しみに。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




