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ワールズダスト  作者: Hekuto


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第百四十四話 『鉄の乙女』

 どうもHekutoです。


 修正作業完了しましたので、投稿させていただきます。楽しんでいただければ幸いです。



くろがねの乙女』



 エリエス大森林の深部、その深い森の奥で果樹ばかりに囲まれた建物群に突然けたたましい音が鳴り響き、その音を聞いたゴーレム達は一斉に作業の手を止めて立ち上がる。


「姉さん!」

 それは妖精たちと果物を収穫していた二号さんも同様で、大きなコンテナに果物を満載させていた一号さんに振り返りながら大きな声を上げる。


「うん! 今ここに居る子で親方を助けに行くよ! 君はほかの子に言伝をよろしくね」


「はい!」

 妖精達が驚いて逃げてしまった音は、ユウヒからのヘルプコールを受け取ることで上がる緊急警報であった。少しでも早く駆け付ける為に、その手段を有した一号さんと一緒に居た数体のゴーレムだけで先行するようである。


「それじゃ集まって! いくよー」


「行ってらっしゃいませ!」


「【ワールドゲート】起動! ワープポイント親方、転移開始!」

 一号さんは一人伝令の為に残ったゴーレムに見送られながら、周囲に集まった五機のゴーレムと共に光に包まれ、その光が消えた時には六機のゴーレムの姿は消えていた。それらの状況を確認したゴーレムは光る眼を瞬かせると、周囲の妖精たちを伴い果樹園の中心地へと駆け出すのであった。





 丁度その頃カレル村のあった場所では、一歩も動けなくなった四人が空を見上げたまま、動けなくなった理由である物体を見上げ、その威圧感に頬を引きつらせている。


「あかん、これは終わったか・・・バンカーさんちーっす」

「短い人生でござった・・・辞世の句も思い浮かばぬでござる」

「空がおち「リアクティブフィールド!」・・・は?」


 互いに身を寄せ合い諦めをその顔に浮かべていた4人と一柱、しかし最後の気力を振り絞ってヒゾウがネタを口にしようとした瞬間、彼らの目に映っていた残酷な空を黒く巨大な何かが遮り、そこからは機械的であるがどこか柔らかな声が聞こえてくる。


「な!? いち―――」

 その黒い影の存在にユウヒが口を開くも、その声は連続する爆発音によって遮られてしまうのであった。




 一方そんな様子をリアルタイムで楽しんでいたコプレス達は、頬を膨らませ何かに耐える様な表情で、ユウヒ達を映し出す巨大なスクリーンを見上げている。


「ふ、ふはははあはははは、お前は何をやっているのだ・・・。ぷふ、あれではやつがどうなったか見えないではないか」

 しかしそんな空気も束の間、吹き出す様に笑い始めたコプレスの声を切っ掛けに、周囲から同質笑い声が溢れ始めるのだった。スクリーンにはユウヒ達の姿を覆い隠す様に粉塵が広がっており、コプレスは可笑しそうに笑いながら気にもしていないクレームをわざとらしく側近の男に付ける。


「これは失敗しましたな、少々火薬の量を誤ってしまったようです」

 そんなコプレスのクレームに、側近の男は此方もわざとらしい身振り手振りで申し訳無さそうに頭を下げるが、その肩はプルプルと震えており、明らかに笑いをこらえていることが分かる。


「ぐふふ、まぁ黒焦げミンチになっていても効果はあるだろうし良しとするか」


「そうですな、あとはこの様子を奴にも見せてやれば」

 側近の男が見せるリアクションに満足そうに口元を歪めたコプレスは、椅子の背に体重を預けながら映画でも見る様に粉塵舞う映像を見上げ笑い、側近な男は手に持った小さな機械を弄り笑みを深めていた。


「お前も悪い奴だな、ちゃんと慌てふためく様子から送ってやれよ?」


「しっかり編集しておりますので、ほいと・・・送信完了です。まぁ後半はライブ映像ですがな」

 どうやら側近の男はユウヒ達の姿を最初から録画編集していたらしく、彼が邪悪な笑みを浮かべ楽しそうに作業する姿に、コプレスは満足そうに頷く。そんな作業も一分とかからず終わると、すぐにアミールへと映像を贈ったのか手に持っていた機械を仕舞って前を向き直る。


「奴の狼狽える姿が目に映る、いや? 気を失っているかもしれんなぁ」


『わはははははは!』


 真面目な顔で前を向いた側近の男であったが、コプレスの言葉を聞くと吹き出してしまい、吹き出した側近の男に釣られる様にコプレス達は笑い始めるのだった。


「・・・(やってくれるじゃなぁい、でもしっかりと証拠は撮らせてもらったわよん♪)」

 そんなコプレス達の姿を見詰める怪しい視線が、笑い声を洩らす多数の作業員に紛れて一つ。そのはちきれんばかりの筋肉を収めた服に忍ばせた小型のカメラを回し、心の中で怪しい笑みを浮かべているが、その視線は時折側近の臀部に吸い寄せられるように動いている。


「ぐふふふ、まだ煙が晴れんなぁ」


「なかなか焦らしますなぁ」


「・・・(とことんまで下種ねぇ)」

 後ろから自分の臀部が視姦されていることなど気が付きもしない側近の男性が、嫌らしい笑い声を洩らすコプレスに相槌を打つ中、スクリーンに映し出された土煙は次第に薄れていく。


「確認後は閉鎖空間への攻撃も始める、準備しておけ」


「はっ!」

 しかし彼らの予想よりも倍近い土煙は中々晴れる事が無く、焦らされ過ぎてスクリーンを横目で確認しながらこの後の指示も出し始めるコプレス。


「・・・(それにしてもこの煙、妙ね?)あら?」


「「ん?」」

 そんな様子をお尻を横目で見ながら確認していた人物が、その土煙の動きに違和感を感じると急激に土煙が動きだし、思わず声を洩らしてしまう。その声に気が付いたのかスクリーンの動きに気が付いたのか、コプレス達も同質の声を洩らす。





 スクリーンの向こう側でユウヒ達を包んでいた土煙は、


「よく見えないなぁ【アップドラフト】!」

 どこか子供の様な無邪気さを感じる機械音と共に発生した、体が浮きそうになるほどの上昇気流で、中心部分から瞬く間に晴れていく。


「ぬお!? すごい風でござる!」

「ゴエンモ! いきてたか!」

「お前らも生きてるのか、お」


「三人とも無事か・・・こっちは、あーだめだなこりゃ」


 粉塵の晴れた場所では上昇気流に驚きながらも互いに無事を確認する忍者達の姿があり、またそのすぐ近くでは忍者達の無事を確認しホッとするも、自らの足元で目を回す兎耳女神に目を向け顔を引き攣らせるユウヒの姿もあった。


「きゅぅぅ」

 どうやら兎の神は耳も兎同様敏感だった様で、ユウヒに頭を撫でられて口元を緩めているラビーナは爆音による衝撃で気を失ってしまったようだ。・・・意識は無いようなので撫でられて若気ているのは、脊髄反射的な何かだと思われる。


「親方大丈夫!?」


「やはり一号さんだったか、助けにきてくれてありがとう助かったよ」

 そんな風にラビーナを介抱しているユウヒの元へ、辺りの土煙を吹き飛ばしながらくろがねの巨人、一号さんが姿を現す。土煙の中から脱出するとすぐにユウヒを見つけ駆けつけ、腰をかがめるようにユウヒをのぞき込む巨体からは、心配そうな声が聞こえてくる。


「えへへぇ、親方がヘルプコールを出してくれたから飛んで来たんだよ」

 そんな心配そうな声も、ユウヒのお礼の言葉を受けると途端に明るく照れた声に変わり、ユウヒはそんな一号さんの明るい雰囲気に自然と笑みを浮かべていた。


「マスターお怪我はありませんか、ああ!? 頬に御怪我を・・・メディック!」


「はいただいま! ご主人今治療するっス!」

 一号さんに遅れて土煙の中から姿を現したのは二号さんと残りの中型から小型のゴーレム達、その駆け寄る姿からは一様にユウヒを心配する気持ちが伺えた。特に二号さんに至ってはユウヒの頬に怪我があることを確認すると、悲壮感の伝わる声を洩らし、即座に控えていた小型ゴーレムに声をかけ治療を行わせる。


「な、な、なんじゃこりゃあ!?」

「・・・でかい」

「一号殿・・・」


 彼女達ゴーレムは、小型と言えど戦闘用の強化外装を身に纏えば2メートルの西洋甲冑よりゴツイ見た目だ。そんなゴーレム達に囲まれれば威圧感は半端ない様で、一応面識のあるゴエンモすら腰が引け、ジライダとヒゾウに至っては驚きと恐怖で顔を蒼くして、彼女たちを見上げている。


「あ! 自称汚くない忍者の人だ」


「・・・ゴエンモでござる」

「これがユウヒの・・・」

「やっぱ魔王だろ・・・」


 ユウヒの傍で腰を抜かしている忍者達にようやく気が付いたらしい一号さんは、その中のゴエンモに気が付いたらしく太い指を指しながら楽しそうな声を洩らす。一方ゴエンモはその呼ばれ方にしょぼんとした表情を浮かべ、ジライダとヒゾウは目の前に突き出された自分の胴より太い指に恐怖を感じ、それは同時にユウヒへの恐怖にもなるのであった。


「【探知】・・・おいおい、まだ来るぞ」

 しかし、危機的状況から助かり気の抜けたユウヒ達の元へ、更なる脅威が近づいてくる。ユウヒの【探知】の魔法に引っかかった何かは、ユウヒ達のはるか上空を示しており、しかし不調続きの妄想魔法は未だその物体が何であるかを表示することが出来ないでいた。


「来るって、爆弾か?」


「たぶんな、何か空から落ちてくるみたいだが・・・でかい?」

 空を見上げたユウヒにつられて空を見上げたジライダ、まだ爆弾が降ってくるのかと震えている様だが、事態は彼の予想を超えた何かの様で、ユウヒの探知が示す何かの大きさは、爆弾の何倍も大きい様だ。


「未確認降下物体補足」


「迎撃用意!」


「質量および形状解析、該当データ・・・有り!」


「え?」

 ユウヒの探知に映った何かは、電子戦用である二号さんの補足圏内にも入ったらしく、彼女たちは二号さんを中心にユウヒ達を庇うように立ち上がると、未来的な形状をしたライフルを取り出し上空に対して迎撃準備を行い始める。


 彼女たちの洗練された動きに忍者達が感動していると、二号さんが未確認降下物体の走査を終えたらしく人間味と無機質が混ざったような声で調べた結果を口にするも、その内容にユウヒは思わず声を洩らす。何故なら彼女たちの知識はユウヒの妄想の産物であり、それならば該当した何かはユウヒの妄想したクロモリの知識であると言う事だからだ。


「対象を帝国製機械歩兵の量産型と確認、これより対象を敵機と指定、殲滅します」


「どっかで聞いた覚えがあるような」

「SFとかでよくありそうな名前でござるが」

「・・・!?」


 しかし彼女が告げた名前はどこかで聞いたことのありそうな、またSFサブカルチャーなどで耳にするような言葉であった。その名前に首を傾げるジライダとゴエンモであったが、空を眺めていたヒゾウが慌ててその場から駆け出し始める。


「そんなことよりお前らこっちこい!」


「え? お、おう!?」


 ヒゾウが慌てて駆け出した理由は、空から落ちてくる物が視認できるところまで来ており、その落下地点がすぐそばだと分かったからであった。ユウヒも魔法の力でその事を確認すると、ラビーナを担いで安全な場所に忍者達を誘導する。


「厚く硬く・・・むむむ【ストーンウォール】うーん・・・よし、早く隠れろ!」

 ある程度離れると後方から重量物が地面に落下する音が聞こえ、ユウヒはすぐに隠れる為の壁を作り出す。しかしまだ不調は続いているのか、厚さや固さこそユウヒの妄想通りであったが、その形は歪に曲がっている。


「ぬおわ!?」

「びび、ビーム兵器?」

「ファンタジーから近代物になったと思ったら一気にSFでござる!?」


 それでも隠れるには問題ないため、三人と滑り込むように隠れたユウヒは、壁に背を預けながらそっと顔を壁から覗かせ、それに続く様に顔を出した忍者達は目の前の光景に驚愕した。


 そこには、どう考えてもこの世界に似つかわしくない武装で戦う、一号さん達ゴーレムの姿があったからである。


「・・・うちの子の武装が実弾系じゃなくてよかったな」


「なんで?」


 ライフルの先端から光の奔流を吐き出し続けるゴーレムの姿に、頬を引きつらせたユウヒは思わずそんな言葉を洩らしてしまい。その言葉にヒゾウは不思議そうに首を傾げた。


「鼓膜を破る様な連続する爆発音と飛び交う高熱の薬莢」


「おうふ、死ねるでござる」

「ロボットの足下は死地だったか・・・」

「ビームもぱねぇ・・・こんだけ離れてるのに熱波が」


 ユウヒの口からなぜそんな言葉が出たか、それは彼女達の使う武装はどれも静穏性が高い光学兵器であり、一般的な銃の様に実包と言われる弾薬を使わずバッテリーに蓄えられたエネルギーを消費して射撃を行う。


 これがもし彼らもよく知る実弾兵器であれば、彼女たちの様な巨体が使う兵器である。その実弾の大きさも非常に大きく落ちてくればユウヒ達も怪我では済まないうえ、火薬の爆発で弾丸を発射するのであれば、その音はユウヒ達の鼓膜を破らんばかりの音であっただろう。


 ユウヒの言葉に色々想像した三人は震えながらもホッとした表情を浮かべ、しかしビームかレーザーと思われる光が発射されるたびに感じる熱波に恐怖するのであった。


「はぁ・・・こっちは完全に伸びてるし、敵は・・・なんだありゃ」


「「「ロボット?」」」


 そんな彼らに襲いかかろうと迫ってきているのは、全高4メートルはあろうかと言うメタリックな光沢が眩しいロボットである。その姿に口を開けて驚くユウヒと忍者達、自分たちを守る一号さん達にも驚くものの、それ以上にSFチックなロボットの登場で、彼らの脳の処理能力は限界を迎えた様だった。





 しかしそれ以上に限界を迎えそうな者がここに一人、いやこの場の全員であろう。


「どう言うことだ。どう言うことなんだ!」


「そ、それは」


「なぜあの兵器がこの世界にあるんだ! くそ、どう見てもあれは主力型じゃないかデカ物は・・・」

 それは一号さん達の戦闘映像を巨大なスクリーンで見ているコプレス達であった。その口ぶりからは、一号さん達が何なのかを知っている様で、それと同時にそこに存在することが心の底から信じられないと言った様子である。


「は、はい・・・こちらのデータでもクロガネと酷似した兵器と思われ」


「分かっている! あれはもう現存しないはずだ。今放った帝国共の量産型も手に入れるのにも苦労したと言うのに、まさか・・・奴はこの事を知っていて」

 彼女達の事を『クロガネ』と呼んだ側近の男にコプレスは怒鳴りつけるように叫び、椅子の上で顔を俯かせると、ぶつぶつと小さな声を洩らし続ける。どうやら彼の中では、一号さん達の存在もすべてアミールとそのバックが関わっていると思えた様だ。


「は? いやまさか」


「いいや、あの四老害の息がかかった小娘だ。そうかそれで奴がこのゴミを奪ったのか、小癪な! すぐに攻撃を開始しろ!」


「は、はい! それで地上は?」


「あとは準備していた爆弾落としたら放置だ! どうせあれ単品ではこちらに攻撃する術はない! 中身の入っていない機械兵などほっておけ」


「はい!」

 コプレスの発言に困惑する側近に対し、彼は忌々しそうな表情で顔を歪めると、椅子から勢いよく立ち上がりアミールへの攻撃を指示する。一方ユウヒ達への攻撃は残りの爆弾を一斉投下し、あとは放置する様であった。





 そんな慌ただしいコプレス達と違い、こちらはじっと送られてきた映像を見詰めている。


「どうして、いえそれよりユウヒさん達の回収を急がないと」

 アミールもまたその映像に映し出された存在に覚えがあるらしく眉を寄せて首を傾げていた。しかし彼女にとっての優先順位はユウヒの安全であり、今ここで熟考することではない様だ。


「やっぱり、すべての転送ルートが潰されてる。でも新しく作っていた方は気が付かれてないみたいですね、ふふ」

 すぐにモニターの映像を切り替え作業を再開するアミール。


「ジャミングをどうにかすれば問題ないですね」

 彼女を苦しめる為に贈られた映像であったが、その映像が彼女に一縷の望みを残す結果となった様だ。


「それにしても・・・あれはユウヒさんを守っているみたいだけど」

 気持ちを持ち直した彼女は、ユウヒを助けるための作業を続けながらも先ほどの映像が気になっている様で、


「まさかユウヒさんがあの世界の生き残りってわけじゃないですよね? あの世界には世界間移動の技術は無かったはずですから」

 モニターに向かって何かの作業を続ける間も、その口から頭の中の想像が洩れだしていた。


「うぅわかりません。あ、繋がりました、あともうちょっとっ!?」

 そんな複数の事を考えながら行っていた作業も完了したようで、明るい表情で最後の仕上げに取り掛かった瞬間、彼女の体を激しい揺れが襲う。どうやらコプレスからの攻撃が開始されたらしく、アミールが目を向けたモニターには複数の警告表示が追加されていく。


「いたた、こっちにも攻撃してきましたか・・・」


「アミール君無事か!?」


「先輩!」

 頭を撫でながらモニターに目を向け悔しそうに口元を歪めるアミール、怒りの感情を隠すことなく顔にしたアミールの前に緊急の通信画面が開き、その画面に心配そうな表情を浮かべたステラが映っているのを見たアミールは驚きで目を見開く。


「よかった大丈夫みたいだね、これよりこちらも攻撃を開始するから安心したまえ」


「はい!」

 援軍の話は聞いていたアミールであったが、ここまで早く駆け付けることは無いと思っていたらしく、危機的状況にタイミングよく現れたステラに心の底から嬉しそうな笑みを浮かべた。


 そんな満面の笑顔を見せられたステラは、


「くふぅ! その笑顔で三百年は戦える!」


「あ、はは・・・」

 その鼻から赤い何かを吐き出しながら頬をピンクに染め、コプレスとの戦いに赴くのであった。





 一方、戦いはアミールの居る空間だけではなく、地上でも激化していた。


「とぉりゃー!」


 元から遠距離中距離武装が少ない一号さんは、その本領を発揮する格闘戦によってまさに千切っては投げを体現するような動きを見せていた。


「戦域マップ更新、6時の方向へ後退10時の方向弾幕維持、姉さん出過ぎです」


「あ! ごめんちょっとまって、ね! よし、こうたーい」

 しかし調子に乗りすぎて前に出過ぎたのか、戦闘指揮役を担う二号さんの冷たい一言に振り返り、掴んでいたロボットを振り回して数体のロボットを足止めすると、急いで後退を始める。


「うぅわぁ」

「なんちゅう脆い装甲じゃ」


 圧倒的な物量を蹴散らす一号さん達の様子を、安全な位置に移動しながらうかがっている忍者達はと言うと、ジライダはドン引きしたような表情で開いた口がふさがらず、ヒゾウはどこから取り出したのか右目に眼帯を付けて呆れた様な声を洩らしている。


「と言うより一号さんが無双過ぎる件でござる」


 また、ゴエンモは一度ゲーム内でフルボッコに合い、ユウヒ果樹園で話したことのある一号さんの無双っぷりに、今更ながら恐怖を感じている様だ。


「うぅむ、あのロボット後で回収したいなぁ」


「了解ですご主人」

 一方ユウヒは、遠くで宙を木の葉のように舞うロボットの姿に別の意味で関心が生まれた様で、思わずぼそりと本音を洩らし、傍に控えていた小型のゴーレムが目を光らせ空かさず反応を示す。


「ふえ? ここはどこですか? ・・・ユウヒきゅん?」


「ん? 起きたか、とりあえずまだ伏せとけよ? 何が跳んでくるかわからんからなってこら」

 そんな珍妙な空気の流れる中、気を失っていたラビーナが目を覚まし、まだ寝ぼけているのかユウヒを確認するとその腰にしがみ付き頬ずりを始める。


「ぬお!? ユウヒ来たぞ!」

「行ってる傍からでござる!」

「あれは頭か? 俺よりでかくね?」


 しかし、ユウヒがラビーナにかけた言葉がフラグとなったのか、狙いすましたかの様に飛んでくる何か、それは一号さん達が戦っているロボットの頭部の様で、その大きさはユウヒ達より大きく重そうであった。


「問題ありません!」

 そんな飛来物に慌てる忍者達であったが、ユウヒの隣に控えていたゴーレムが素早く彼らの前に躍り出ると、


「「「打ったぁぁぁ!」」」


「ほーむらん・・・って、物理に喧嘩売ってるなぁ」

 手に持った2メートル以上ある鈍器を振りかぶり、ユウヒに直撃するようなコースで飛んできたロボットの頭を湖の方に打ち返すのであった。


 綺麗な放物線を描き飛んでいくロボットの頭に、ユウヒは物理とは何だったかと僅かな現実からの逃避に走ってしまう。


「自分が守りますのでご安心を!」


「・・・そうか、ありがとうメワ」

 しかしどこか遠い目をしていたユウヒの顔も、振り返って元気よくそう宣言したゴーレムを見詰めると、その姿が不思議と子犬のように見えて微笑ましく感じたのか、自然と感謝の言葉を口にするユウヒ。


「・・・はい! がんばるっス!」

 感謝の言葉と同時に彼女の個体識別名『メワ』を口にしたユウヒに、メワと呼ばれたゴーレムはその目を淡いピンク色で瞬かせると、嬉しそうに返事を返すのであった。


「メワ?」


「メディック・ワンでメワだ」


「残念センス極まれりだな・・・」

「あれで衛生兵種のゴーレム、だと!? うそだろ・・・」

「ユウヒ殿の運用思想が根本的に何か違うんでござる」


 ネーミングセンスの残念具合を再度披露したユウヒに、忍者達は生ぬるい視線をぶつけ、そんな視線をぶつけられたユウヒは眉を寄せて首を傾げる。


 メディックとは、医療従事者や衛生兵などの事を指す言葉で、メワと言うゴーレムは戦場の最前線で敵を無力化しつつ、傷付いた仲間を治療すると言うコンセプトの下、ユウヒが全力で組み上げた衛生兵タイプゴーレムの一号機である。



 いかがでしたでしょうか?


 ええ、言いたいことはあるでしょうが・・・。さすがの忍者もユウヒも光学兵器の前では尻込みするようです。と言うか基本生身なので当然でしょうか。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー

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