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ワールズダスト  作者: Hekuto


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第百四十三話 『カレル強襲』

 どうもHekutoです。


 修正作業等終わりましたので投稿させて頂きます。是非お暇のお供にでも楽しんで行ってください



『カレル強襲』


 忍者達が必死で自転車動力を漕いで辿り着いたのは、森の村から湖畔の村に変わったカレル村。しかし元から荒廃していた村は今ではほぼ更地となってしまっており、唯一無事な家屋であるラビーナの神殿へと向かった4人であったが・・・。


「ユウヒ君お帰り! 神殿を掃除して待ってたんだよ、どうかな綺麗になったかな?」

 忍者三人に背中を押されるようにして神殿の扉を開けたユウヒ、そんなユウヒ達を出迎えたのは明るい表情を浮かべたラビーナであった。


「うわーすごくきれー」

「ほこりひとつなさそうでござるー」

「わーいじゆうにはしりまわれるぞー」


 どうやら彼女は神殿内の掃除をしながらユウヒの帰りを待っていた様だが、神殿の中を見渡したユウヒは苦笑を浮かべている。


「うん、確かにきれいだな・・・埃どころか家具一つないと言う意味で」

 その苦笑の理由は、相手を小馬鹿にするような声で神殿内を駆けまわる忍者達の姿にではなく、駆けまわる神殿内にゴミどころか家具一つ置かれていない為であった。


「・・・う、うんあれだよ、だいぶ傷んでたからこれを機に一斉処分したんだよ」

 しどろもどろになっている彼女は所謂片付けられない子の様で、綺麗にすると言う行動を極端に行う事でその苦手を克服した様だが、その代償に神殿の中には彼女の石像だけが鎮座するだけで、それ以外に家具らしい家具はどこにも見当たらない。


「ユウヒーここなんかあるぞー」

「これは隠し扉でござるな?」


 視線をあちこちに彷徨わせる挙動不審なラビーナにユウヒがジト目を注いでいると、祭壇の脇で何かを見つけたらしい三人がユウヒに声をかける。どうやら彼らは隠し扉を見つけたらしく、ゴエンモに至っては既に壁を軽く叩いて開け方を探っている様だ。


「わわ!? そこはダメだよ!」

 そんな三人の姿を見たラビーナは、仄かに頬をピンクに染めていた顔を蒼ざめさせると、慌てて三人に駆け寄り彼らの行動を制止する。


「ぐへへ、駄目と言われたら開けたくなるのが忍者だ・・・ぜ?」


 しかし止められれば止められるほど突き進みたくなるのが、彼らの譲れないクオリティであった。だが同時にその好奇心が彼らの身に災難を降り注がせる元凶になっている事は、言わずもがなである。


「「「ぎゃああぁぁぁ!?」」」


「・・・お約束だな」

 隠し扉を開けた瞬間、雪崩のように飛び出してきた様々な荷物に埋まると言う、まさに想定内おやくそくな展開に、ユウヒは呆れた表情でジト目を向けるも、その手元にはこっそりと彼らを称える為の親指が立てられているのだった。


「ちちち、違うんだよユウヒきゅん! あれはそう・・・何かの間違いなんだよ!」

 そんなユウヒと違って、今のラビーナにはユウヒの内心に気が付く余裕は無い様で、蒼い顔で慌てて振り返った彼女は、顔の前で手を何度も振りながらよくわからない弁明を始める。


「ぷ・・・はいはい、あれは全部要らない物なのか?」


「え? ・・・うん、まぁいらないかな?」

 目を白黒させて弁明するラビーナの姿が面白かったのか、ユウヒは笑い声を抑えながら彼女の肩を軽く叩くと、忍者達の埋まった家具やごみの山に近づきながら、きょとんとした表情のラビーナに問いかける。


 ラビーナとしては忍者達を埋めてしまった原因が自分にあることと、見られたくない物を見られたことで頭が混乱していたのだが、怒ると思っていたユウヒの思わぬ表情に安心と同時に疑問が浮かぶ。それはそうであろう、彼女は今のでユウヒの仲間である忍者達が怪我をしたと思っているのだ。


「そか、ほらいつまでも生き埋めごっこやってないで片付けるぞ」


「あいよー」

「微妙に机の脚が刺さって背中が痛いでござる」

「埃多すぎだろ、ちった掃除しろよな」


 しかし現実は彼女の考えていたものとは全く違う結果の様で、ユウヒが手を叩きながらゴミの山に声をかけたかと思うと、黒い忍び装束を埃で煤けさせた忍者達が勢いよくゴミの山から生えて来たのである


「えぇ!? 怪我無いの? 大丈夫なの? ねえねえ!」

 多少痛がるそぶりを見せるも全くダメージを感じさせない忍者達の姿に、頭のウサミミをピンと立てたラビーナは、ゴミの山から下山してきた手近なジライダを捕まえると、心配そうな表情でぺたぺたと触り全身くまなく調べ始めた。


「お、おう忍者だからな」


 いくら彼らにとって恐ろしい兎神であったとしても、そこは女神であると同時に美女である。そんな美女が豊満な体を揺らしながら自分を心配してくるとなれば、喜ばない男は少ないだろう。そこはジライダも大多数の男と同じようで、喜びを感じ無駄に強がる始末。


「何を兎相手に照れてるでござる。ヒゾウそっち持ってくれでござる」

「うい、よっこらしょっと」


 そんな同朋ジライダの姿に、いろんな感情が籠ってそうな冷めた視線を向けたゴエンモとヒゾウは、何事もなかったように片付け作業を始めるも、その口元がどこか悔しそうであったとは、生ぬるい目をしたユウヒ談である。


「使えそうなのは俺が合成魔法で最低限の家具にするから分けといてくれ、あっちに燃やすゴミこっちに加工するやつで」

 一悶着ありはしたものの、問題なく片付け作業を開始するユウヒと忍者達、ユウヒは古びた家具から合成で新しい家具を作るらしく、使えそうな物を神殿のすぐ外に置くよう、それ以外は燃やすために神殿から少し離れた湖畔近くに置くよう指示を出す。


「「「うぇーい」」」


 そんな指示を受けた忍者達はやる気なさげな声で返事をするもその動きは機敏なもので、どこか笑いを誘うアンバランスな姿は故意に行っている様であった。


「・・・! ねね、私は何したらいい?」

 そんなやり取りに楽しそうな雰囲気を感じたラビーナは、何かを思い出したような表情を浮かべると、跳ねる様な足取りで駆け寄り、自分にも何か仕事がほしいとユウヒに声をかける。


「ん? うーん・・・神様だし、ふんぞり返ってればいいんじゃね?」

 急に傍に駆けて来たラビーナに首を傾げたユウヒは、合成の為に手に持っていた壊れた椅子の背凭れを下ろすとどうでもよさそうに答え、背もたれが無くなって軽くなった木製の椅子をラビーナに手渡す。


「ちょっとまって、ユウヒ君にとっての神様ってそんなイメージなの!?」


「ただの冗談だよ、そうだな・・・ぱぱっとバケツ作るから水汲みとかお願いできるか? 近くに湖も出来たし」

 ユウヒの口から飛び出た予想外な言葉に、ラビーナは真剣な表情で驚き不安そうに声を洩らすも、すぐに笑い声を洩らしたユウヒの言葉を聞いて、心底ほっとしたような表情を浮かべる。


「うんわかった!」

 ユウヒが神様と言う存在に悪い印象を持っているのかと慌てていたラビーナは、ユウヒの笑みと言葉にその顔に明るい笑みを浮かべ、ころころと良く変わる表情にユウヒは可笑しそうな笑みを浮かべながら合成魔法を使い始めるのだった。


 そんな二人の様子を離れたところで見ていた三人の忍者は、こんなに近くに居るにも拘らず、ユウヒ達との間に妙な距離感を感じるのだが、その距離感は彼らの心の闇が見せた唯の気のせいである。





 三人の忍者が自らの心に闇を感じている頃、強欲の森外周部には50人以上の人間が集まっていた。


「これより我々は強欲の森へ入る。第一第二小隊は殿下を中心に二重方円陣、冒険者諸君には先行偵察をお願いする」

 その集団は臨時で編成されたアルディス率いる強欲の森深部調査隊である。現在は調査直前の最終打ち合わせが行われており、これが終われば後は強欲の森へと足を踏み入れるだけであった。


「あいよー任せときな」

 そんな調査隊の中には冒険者の姿も見受けられ、打ち合わせの司会をしている騎士に声をかけられると、彼らを取りまとめているヴァラの大きな声と共にバラバラに声が聞こえてくる。


「うむ、エリエスの方には精霊魔法で定期的に周辺の調査をしてほしい」

 まとまりは無いがその声に覇気を感じ取った男性騎士は満足そうに頷くと、今度はアルディスの近くで待機しているセーナ達エルフ族に目を向けた。


「好きに調査していいのよね?」


「はい、我々の警戒内であれば構いません」

 以前の強欲の森では精霊魔法が使えないことで戦力にならなかったエルフ族であるが、現在は多くの精霊が強欲の森に戻って来ており、調査はもちろん戦力としても十分頼りになるセーナ達は、それ故臨機応変な遊撃部隊としての立ち回りが期待されているようだ。


「以上かな? それじゃ目的地まで、出来れば一度カレル村まで行きたい」


「はい、その予定で不測の事態にも余裕をもてるように物資も準備しました」


「よし、出発しようか」


『はっ!』

 戦力確認などの意味もあった打ち合わせは終わり、アルディスの声で二小隊強ほどの人間が強欲の森へと足を踏み入れる。この先で彼らが何と出会うか、それはまだ誰も分からない。ただ一つ解る事は、この事を知ったバルノイアが卒倒するであろうと言う真理だけであった。





 アルディスを中心にグノーの精鋭が気を引き締めている頃、こちらでも一人の女性が表情を引き締めてモニターと見つめ合っている。


「どこにもエラーがありませんね」

 その女性とは管理神であるアミールの事であり、引き締められた表情は次第に訝し気なものへと変わっていく。


「おかしいと言うか、逆にこれまでの主なエラー原因が判明したことに怒りを覚えますね」

 その表情の理由は、今まで頻繁に上がっていたエラーが一切確認できないと言う事実のせいである。しかしその訝し気な表情も次第に変化し、エラーの主原因が某管理神の仕業だと理解すると、その感情は確かな怒りとなってアミールの背後で気焔となって揺れるのであった。


「・・・はぁ嫌な予感しかしませんが・・・通信?」

 あからさますぎるこの状況に嫌な予感を感じるアミール、そんなアミールが溜息を吐いて肩を落としていると、通信を受信したことを知らせるアラームが聞こえてくる。


「はいもしもし」


「やぁアミール君元気かい?」


「そうですね、体調の方は問題ないです」

 モニターを操作して連絡を受けたアミールの目の前に現れたのは、モニターに映し出されたステラの無駄ににこやかな顔であった。表情に負けない明るい声のステラに、こちらは明らかに作った感の否めない笑顔を顔に張り付けたアミールの含みを持たせた声である。


「それは体調意外には問題有り、と言う事かな?」

 アミール大好きなステラはその違和感にすぐ気が付くと、その含みのある言葉にも気が付き、少しだけ心配そうな表情を浮かべ首を傾げて見せた。


「ええ、ちょっと嫌な予感がして・・・ところで先輩の方は何かあったんですか?」


「あぁうん、その悪い予感かな・・・あいつのところに潜入してたやつが見つかってしまってね」

 そんなアミールの嫌な予感は当たっていたようで、彼女の『嫌な予感』と言う言葉に頬を引く付かせたステラは、少し言い淀みながらも覚悟を決めた様な表情で話し始める


「・・・」


「それとは別のルートから入った情報だと、あいつが動き出したようで」

 ステラの話によると潜入調査員が見つかってしまったものの、情報自体は別のルートから手に入ったらしく、その情報通りであればアミールの嫌な予感の原因が活動を開始したと思われる様だ。


「その―――」


「え? 先輩!? 再接続を・・・あれ? 繋がらない」

 しかしその話は途中で通信の乱れと共に途切れてしまい、再度通信を繋げるための操作を行うアミールであったが、一向に繋がる気配がないことにアミールは首を傾げて同じ操作を続ける。


「こっちも!? これはジャミング? こんな強力な妨害なんて・・・やってくれますね」

 一向に繋がらない通信に嫌な予感をより一層強く感じたアミールは、別の場所へと連絡を入れてみるもそちらにも繋がらず。その異変にとあるシステムチェックを行った彼女の目の前には、彼女の仕事部屋のある空間を覆い尽くすような規模の多種多様な妨害を示す警告表示が点滅していた。


「故障!? なんてことを、復旧にどれだけ時間がかかると思ってるんですか!」

 その妨害はただ通信を妨害するだけではなく、様々なところに影響を及ぼしているのか次第に被害を拡大して行き、一部では機器の故障すら起こっている様で、アミールは怒りに任せて思わず机を叩いてしまう。


「アンチジャミング装置は半分持っていかれましたか、でもこの程度なら問題ありません」

 モニターを操作して大量の情報を流し見するアミール、そこからわかる情報に少し安心したよ様な表情を浮かべた彼女の独り言によれば、深刻な状態にまでは至ってないようである。


 しかしその安心した表情も、最後の方に書かれていたとある通信不可と操作不可の文字を読むまでであった。


「・・・ありますよ! ユウヒさんとの接続が全部切れてる!? あぁ・・・気象操作装置にも異常が」

 安心から一転大きく目を見開き顔色を真っ蒼にしたアミールの目に映っていたのは、ユウヒのバイタルデータなどを受信する装置の故障を示す表示と、ユウヒの周囲を常に晴れにしていた気象操作装置の故障を表す点滅である。


「まさか・・・ユウヒさんも狙われて」

 じわじわと全身を圧迫するように襲ってくる不安は、アミールに気持ち悪い汗を流させ、その不安は一つの嫌な予想を彼女に抱かせるのであった。





 アミールの不安が更なる嫌な想像を呼び込んでいる頃、その心配されている人物は満足そうな笑顔を浮かべていた。


「よし、テーブルとイスはこれでいいな」


「うわぁ! 綺麗なテーブルセットだね!」

 笑顔を浮かべているのは当然ユウヒである。どうやら合成魔法で作ったテーブルセットの出来栄えが満足いくものであったようで、最近不安定な妄想魔法と違いしっかりとした手ごたえを感じさせてくれる合成魔法は、ユウヒにとって良いストレス発散になっている様だ。


「うむ、合成魔法様様だな」


「でもユウヒよ、なんか普通の木と感じがちがくね?」


「あぁ、板にして使えそうになかったから粉砕して圧縮成形してみたんだよ」


「なるほど、それにしても目が細かくて滑らかだし・・・魔法すげぇな」

 しかしテーブルの素材になった木材はあまり品質が良くなかったらしく、板材として使えないならばと粉々に粉砕した後、魔法の力で無理やり押し固めて新しい材料にを作り出したユウヒ。これと似た素材はユウヒ達の世界にも存在するが、その場で、しかもほんの数分で作り上げられるようなお手軽素材では決してない。


「ユウヒ!」


「「「ん?」」」

 ジライダが神殿前に置かれたテーブルを興味深そうに撫でていると、ヒゾウのユウヒを呼ぶ声が聞こえ、ユウヒとラビーナとジライダの三人は一緒に声のした方へ顔を向ける。


「こっちの準備も完了だお、あとは火をつけるだけなんだけど」

「ユウヒ殿に点火してほしいでござる」


 三人が顔を向けた方には、隠し部屋から雪崩のように飛び出してきたゴミが何かの前衛芸術のように絶妙なバランスで積み上げられており、あとはユウヒに着火してもらうのを待つだけと言った状態の様だ。


「なして?」


「また何時奴が来るとも解らんからな!」

「こんなとこで火祭りされても困るでござるからな」


 しかし声をかけられたユウヒは、なぜ着火役が自分なのかと首を傾げて見せる。その理由はヒゾウが未だにサラマンダーの件を引き摺っているのが主な原因であり、実は着火時に倒れ掛かってきたら危ないからと言う理由もあるのだが、口が裂けても言えないヒゾウとゴエンモであった。


「あぁ・・・ん?」


「何の音だ?」

 二人の反応に火精霊恐怖症を察したユウヒであったが、何かが落下するような音が聞こえ音がした場所に目を向ける。


「なんだ、もう火つけてるじゃないか」


「へ?」

「そんなはずは、ござ?」


 音がしたのは前衛芸術の様なゴミの山からであったようで、しかし目を向けたゴミの山にはすでに火が付いており、赤々とした火を上げる姿にユウヒは首を傾げて二人を見詰めるも、見詰められた二人も不思議そうに首を傾げて見せるのだった。


「わぁあたたかい火だぁ・・・むふぅ寒くて火が恋しかったんだよぉ」


 首を傾げ合うユウヒ達の脇をすり抜けて焚火となった前衛芸術の前に陣取ったのはラビーナ。どうやら寒くなってきたことで暖かい火の魅力に吸い寄せられたようである。


「寒い・・・珍しいな、曇って・・・うん? 【探知】」

 ふやけた様な笑みのラビーナに微笑まし気な笑みを浮かべたユウヒであったが、肌に感じる感覚に違和感を覚えると空を見上げ、青空を覆い隠し始めた雲に目を見開き、さらに違和感を感じると目に魔力を込めながら空を見上げ続けた。


「どうした? ん・・・何か空に居る?」

「何か黒い点が見えるでござる」

「うはwwwそれは老化による飛蚊病で・・・は?」


 そんなユウヒの様子に気が付いたジライダは、焚火にかざしていた手を引っ込めると同じように空を見上げユウヒ同様に違和感を感じ、ゴエンモも空に黒い点が見えると言いヒゾウに老化じゃないかと茶化されるも、茶化した本人がその違和感を認識してしまう。


 何故ならその違和感は時間と共に大きくなっており、認識しやすくなっていたのだ。


「は? 焼夷? ナパーム? 子爆弾?」


「「「え!?」」」


 ユウヒの魔法が対象を捉える事の出来る距離まで謎の物体が近付いてきたことで、空に浮かぶ拡大し続ける黒い点が爆弾であると言う事が判明する。呆けた様なユウヒの呟きに驚きの声を上げる忍者達。


「うにゅ?」

 一方蕩けきった表情で火に当たるラビーナは顔を上げるも、状況がさっぱり理解できないらしく鳴き声の様な声を洩らし首を傾げて見せる。


「・・・た、退避ぃぃぃ!」


「もう落ちて来た!?」

「逃げろ!」


 次の瞬間、アイコンタクトで爆弾が落ちてきている事を認識した忍者達は、ユウヒの声と共に急いでその場から逃げ始めるのであった。しかしすでに物を焼き尽くす焼夷弾や、小さな爆弾は周囲で小さな爆発を起こし始めており、ユウヒと忍者達はここにきてようやく着火の原因がこの爆弾であることに思い当たるのであった。


「あわわわ!?」


「へぶ!?」


 逃げ道を探して動き始めるユウヒ、近くに爆弾が落ちてきて慌てて走り出すヒゾウとジライダ、爆発の音に驚き駆け出した足をもつらせゴエンモの横腹にタックルを決めるラビーナと、予想外の一撃に体をくの字に曲げ突き飛ばされるゴエンモ。


「【アースウォール】ってうお!?」

 咄嗟の事で真面に動けない一同に、ユウヒは妄想魔法で土の壁を築く。しかしその魔法はユウヒの想像した城壁の様な壁ではなく、広く大きく彼らを覆う帆の様な壁として出現する。


「よくやったユウヒ!」

「うげ!? もう貫通してるでござ!?」

「嘘だろ!? ユウヒの魔法が貫通されたのか!?」


 予想と違う魔法に驚くユウヒを、ジライダが称賛したのも束の間、爆発を受け止めていたはずの壁は細長い影に貫通され、湖畔の近くで大きな爆発を起こす。


「うひゃぁ!?」


「・・・は? ミサイル?」


 爆発音に長い耳を押さえるラビーナを退避させるために彼女の肩に手を置いたユウヒが見たものは、崩壊していく【アースウォール】の向こうから推進剤を燃やし突き進んでくる先の尖った円筒状の物体『ミサイル』であった。


「ここ、こっちくるぞ!?」

「ここは夢と魔法のファンタジーじゃないのかよ!」

「見たことある兵器ばかりでござる!」


 ユウヒ同様それが何か認識した三人は、その無駄知識故にその威力を正確に認識してしまいその顔を絶望に染め、


「あ」


『ヘ、ヘルプミィィィ!?!??』


 ラビーナが呆けた声を洩らしたのとほぼ同時に着弾するミサイルの爆発の中で、ユウヒと一緒に誰にとも無く只々感情のまま助けを呼ぶのであった。





 一方、ユウヒ達を阿鼻叫喚の図中に引き込んだ張本人はと言うと、


「はははは! くふ、なんとまぬけなくふふ」

 醜く弛んだ顎と腹を揺らしながら哂い、一向に収まる事のない病的な笑いに苦しそうな声を洩らしていた。


「ぷふ、左様ですな・・・ぶふ!」

 そんな元凶であるコプレス・A・スルメフの隣では、側近の男が口元を押さえながら抑えきる事の出来ない笑い声を洩らしている。


「無様に逃げ惑うだけで何も出来んとは、流石無能が選んだ人間だけあって無能だな! ぐはははは!」


「土の壁など意味もなかろうに、ぷくくく」

 彼らの見詰める先には、巨大なモニターがどこから撮っているのかユウヒ達を様々な角度から映し出していた。その中ではユウヒ達が右往左往しながら爆発から逃げ惑う姿が映っており、今まさにユウヒの魔法を先端がやけに鋭利なミサイルが貫いているところの様だ。


「所詮は野蛮な人間、我らの様に高貴な身の者には理解出来ん行動だな、ぷくふふふ」


「おぉおぉ等々助けを求めて叫んでますな」

 ユウヒたちの逃げ惑う姿に口元をいやらしく歪め優越に浸る二人、その周囲ではモニターに向かって爆弾の投下操作やミサイルの発射操作を行う者の姿があり、その大半がコプレスと似た同種の表情を浮かべている。


「軟弱なやつらだ。ふん、もう飽きたな・・・始末しろ」

 そんな部下たちの姿に満足そうな表情を浮かべたコプレスであったが、一通り笑って満足、正確には飽きて来たようで、手元のコップに入った赤い液体を口にすると、冷めきった表情でそう冷たく言い放つ。


「そうですか? それでは串刺しにしてしまいますか」


「おお、さっきの貫通爆弾か・・・いいぞやれ」


「はは! せめて面白い屍を晒すと良い!」

 コプレスの指示に、まだ満足していないような側近の男は、ユウヒ達の最期を最高のショーにするべく提案をし、その提案にコプレスは冷めていた表情を愉快そうに歪めて笑う。


 彼らの手によって刻一刻とタイムリミットが近づく中、異質な瞳が見詰めるモニターには爆発の中只々助けを求める四人と、気を失いユウヒに抱えられるラビーナの姿が、まるで道化の様に映っているのであった。




 いかがでしたでしょうか?


 何やらユウヒ達の雲行きが怪しくなってきましたが、いったい彼らはどうなってしまうのか・・・。そして彼らに助けの手を差し出す者は居るのか、次回をまたお楽しみに!


 それではまたここでお会いしましょう。さようならー

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