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ワールズダスト  作者: Hekuto


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第百三十話 トミル城探索前夜

 どうもHekutoです。


 修正作業完了しましたので投稿させていただきます。皆様の一日に一笑を届けられれば幸いです。



『トミル城探索前夜』


 茜色の光が流れる空の下、強欲の森外周部では多数の人々が空を染めるものとは違う茜色に頬を染めながら、各々に課された役割に従事していた。


「アルディス様、報告がまとまりました」


「バルカスお帰り、早速聞きたいな」

 そんな焚火の光と、野営用の簡易結界により生じた淡い魔力光の中、野営地中央に張られた陣幕の中にバルカスが書類を抱えて現れ、中で寛いでいたアルディスは椅子に座ったまま振り返ると、笑顔で出迎え話を促す。


「私達居ていいのかしら?」

 陣幕の中には、アルディスの他に世話役のメイやエルフ達の代表であるセーナとナルボも同席しており、アルディスの言葉にきょとんとした表情でセーナが首をかしげる。それは部隊の代表者、この場合アルディスがしっかりと報告を確認した後でなければ、通常他勢力の耳に入れることは無いからだ。


「はい大丈夫ですよ、そう言う事になってるんだよねバルカス?」


「はい問題ありません。青の氏族の方から貰った報告も一緒に纏めましたので」

 しかし今回は、グノー王国軍とエルフの調査団の情報を精査し纏めたらしく、その定式にあてはまらない為、むしろセーナ達の同席は想定されたあるべき対処であった。


「・・・ナルボ?」

 そんなやり取りがあったことなど知らないセーナ、さらに言うならば簡単に情報を渡してしまっているナルボに対して言いたいことが山ほど出来た彼女は、隣に座り顔を蒼くするナルボに振り返ると、底冷えするような笑みを浮かべ首をかしげて言外に問いかける。


「い、いやぁほら、やっぱり纏めるなら一括の方が手間も少ないんじゃないか・・・と、思ってぇ?」


「・・・はぁ、次からは私に相談なり報告をしなさい。一理あるのでこれ以上は何も言わないけど」


「まぁまぁ、バルカスお願い」

 震えあがりながら必死に弁解するナルボに、その笑みを呆れた表情に変えながら大きなため息を漏らすセーナ。どうやらお咎め無しと理解したナルボは、いつの間にか入っていた肩の力を抜くと、力なく椅子に体重をあずける。


 そんな親子の語らい、正確にはセーナから漏れる怒気に震えていたアルディスは、今感じた恐怖をごまかすように、バルカスへと指示を出す。


「はっ! 先ず強欲の森外周では特に異常は見受けられませんでした。これは地中内部も異常無しと精霊魔法で確認したとの事です」


 アルディスの指示に返事をしたバルカスは、書類を手に取り報告を始める。


 アルディス一行は、予定より早く強欲の森外周部に辿り着いた後、冒険者を護衛につけた部隊による強欲の森調査と、野営設営の二部隊に隊を分けた。日が暮れ始める前に完了した調査の結果、彼らの一番心配していた災害の兆候になる現象は確認されなかったようである。


「精霊魔法使えたのですか?」


「まぁね、外周くらいなら外からの力を借りれば、少しだけど使えるわよ?」


「あ、なるほど・・・あ、続きをお願い」

 また強欲の森で使えないとされた精霊魔法も、その外に存在する精霊から力を借りることで行使に成功した様で、グノー王国兵士だけでは出来ないより詳細な調査も出来た様だ。不思議そうな表情を浮かべていたアルディスも、セーナの説明で思い至ったようで小さく頷いて見せ、説明を中断させていたバルカスに続きを促す。


「はい、外周部から確認出来るだけ内部の調査を行った結果、大量の倒木が見えたとの事です」


「・・・もしかしてカースツリー?」

 アルディスに促されたバルカスは、書類に視線を落とすと報告の続きを話し始める。バルカスの説明からすぐにアルディスはカースツリーの名前を口にするが、その考えに至った理由はこの魔物しか強欲の森周辺で目にされないからであった。


「断言はできないのですが十中八九そうではないかと、しかし様子がおかしいようで冒険者達曰く、全て倒されたものではとの事です」


「倒された・・・どれくらいの数かしら?」

 アルディスの言葉を肯定し頷いたバルカスであったが、後半部分に関しては彼自身眉を寄せる様な内容で、報告する声に籠った感情は質問するセーナにも伝わっている様だ。


「・・・それが、数えられないほどだそうで、折り重なった小山をあちらこちらに形成しているとの事です」


『え?』

 感情をあまり外に出さない物調面のバルカスが、珍しく困惑した表情を見せる事にアルディスもメイも不思議そうに彼を見詰める中、セーナの質問に対して予想もしない返答が彼の口から零れると、その場に居たバルカス以外の者からまったく同じ音が跳びだすのであった。





 一方同時刻、アルディス達の居る場所より早く山脈の影に染められたトミル廃都では、ユウヒの魔法による白い光の中で着々と拠点整備の作業が進んでいた。


「ユウヒ殿、石窯出来たでござる」


「あいよ、こっちも部屋の掃除完了だ」

 ゴエンモは廃材を使い料理用の石窯を作り、ユウヒは水の魔法と風の魔法を使って、寝床となる石造りの兵舎の掃除を丁度終わらせたようである。


「後は薪の調達わぁ・・・」

 残る二人は山へ柴刈りに、


「ふははは! 待たせたな!」

「うはは! 驚きで声も出まい!」

 

「・・・何で丸ごと持ってきてんのさ」

 もとい、燃料収集に向かった二人はカースツリーをしばき倒してきた様で、ユウヒとゴエンモが呆れた表情で見上げる先には、丈夫な石造りの兵舎の屋根に上り、頭上に1体の倒したのであろうカースツリーを掲げるヒゾウとジライダの二人。彼らが掲げるカースツリーの表情は、本来解るわけないのだが、ユウヒとゴエンモにはぐったりとして悲壮感に満ちている様に感じられた。


「それが小枝とか無くてな、めんど・・・しょうがないので丸ごと」

「いや丸ごとの方がめんどくさいでござろ」

「多い分には困らなくね? 直ぐに割るから待っててくれヨ」


 受けが良くない事に首を傾げた二人は、ゴエンモに手伝ってもらいながら自分達より大きいカースツリーを屋根の上から地面に下ろすと、背中の愛刀を抜き解体作業を始める。


「今から使う分だけ先にくれ」


「おう! まかせとけ!」


 ヒゾウとジライダが振りかぶる刀から若干不満そうな気配が洩れるのを見ながら、ユウヒは先に使う分を要求し、その声にジライダは元気よく答えた。どうやらカースツリー狩りは彼らの良いストレス発散になった様である。


「とりあえず一段落でござるか」


「そうだな、おっと? ・・・ふむ、俺の探し物は何処?【指針】」

 解体されるカースツリーを眺めながら腰を下ろしたゴエンモに、頷いたユウヒは何かを感じた様に手を上げた。すると丁度その手の中に解体中のカースツリーから飛んできた小枝が納まり、ユウヒは小枝を見詰めると何となしに妄想魔法を発動させ小枝を地面に放る。


「城でござろうか?」

「持ってきたぞ、次の行先は城か?」


「になりそうだな、明日城門まで行ったらもう一度使ってみるけど」

 その枝が示した先は遠くに見える王城、枝の指し示す方向に目を向けたゴエンモと、丁度薪にした元カースツリーを持ってきたヒゾウに問い掛けられたユウヒは、どこかめんどくさげな表情で肩を竦めて見せた。


「そっか、まぁ慎重すぎるくらいが丁度いいよな・・・」

「ヒゾウの口からそんな言葉が出るとか、明日は槍でも降るでござるか?」


「勘弁してくれよ、鉄の傘なんて持ってないぞ?」

 ユウヒの言葉を肯定しながら真剣な表情で頷くヒゾウ、その言葉を聞いたゴエンモは驚愕の表情を浮かべて空を見詰め、ユウヒも真剣な表情で空を見詰める。


「あれあれぇ? 言葉のナイフが妙に鋭いぞぉ?」


 さらに、二人のリアクションに心外そうな表情を浮かべておどけるヒゾウの後方では、薪割りをしていたジライダが驚いた表情で振り返り、予想だにしなかったヒゾウの言葉に動揺したのか愛刀を取り落としていた。


「それは良いとして、町の様子はどうでござった?」


「カレル村とそんなに変わりは無いかな、あっという間に何か起きた感じだ」

 打ち合わせていたかのようなやり取りは何事も無かったように元の空気の戻り、真面目な話へとシフトする。彼らの空気に慣れてない一般人だと付いていけそうにない流れだが、4人にとっては丁度いい塩梅の緩さのようだ。


「俺も似た感じだな、あぁそう言えば酒場のお酒は全部空っぽだったな」

「水分だから吸われたのでござろうか、こっちは拷問部屋付きの教会があったでござる」


「え、何そのダークファンタジー」

 彼らが全員合流したときには、既に日が大山脈に入りかけていた為、今日の報告会は今まで先延ばしになっていたのであるが、自然とはじまった報告の内容に、ユウヒは表情を引き攣らせた。


「薪もってきたぞっと、あそこな・・・マジ怖かったんだけど」

「まったくでござる。まさか楽しい異世界ライフにこんなダーク成分があるとは思わなかったでござる」


 薪を抱えて持って来たジライダも混ざり、嫌そうな表情での話す様なダーク成分は、彼らが思っている以上に多くこの世界に存在している。ただ彼らが周辺国家でもっとも安全な国であるグノーを中心に冒険していたことが、それらとの遭遇を今まで先延ばしにしていただけであった。


「俺等の世界も結構アレだからなぁ・・・どこにでもあるんだよ、きっと」


「出来れば一生関わりたくないお」

「だな、この先に同じような場面が無い事を祈るぜ」


 困ったような苦笑を見せるユウヒの住む世界にだってそれらの要素は当然存在するが、やはり比較的平和な国出身だけあり遭遇する事は極めて稀である。


「そうでござるなぁ・・・で? 城は今日みたいに探索するでござるか?」


「いや、探知が効かなくて合流するのに厄介だったし、明日は纏まって行動しよう」

 心底関わりたく無さそうな三人にユウヒが苦笑する中、空気を切り替える為に話題を切り替えたゴエンモ、その質問にユウヒも気分を切り替えたようで、苦笑いを何時ものやる気なさ気な表情に戻す。


 どうやら明日の探索は今日の様に合流に時間がかかる事を想定し、纏まって行動する様だ。


「あぁ魔法はまだ駄目か?」


「不調だな、やはり魔力を・・・そうだ」


「「「ん?」」」


 それもこれもユウヒの【探知】が真面に機能しないのが原因の一つであるが、その話題になると同時にユウヒは何か思い出したかのような表情を見せる。


「魔力が吸われているのも、たぶん災害の一部なんじゃないかと思うんだ」


「ほう?」

 その思い出した事とは、ユウヒが町を探索する中で感じたことからたどり着いた、このトミル王国を襲った災害に関する仮説であった。


「多分最初に魔力を吸収する何かがあったんじゃないかと、魔力欠乏を起すと意識障害が起きるみたいだし、そのままたおれて・・・こうなったんじゃないかなと」

 それは実際に各国間の話し合いでも考えられた現象であり、最も有力な仮説の一つである。しかしどの国もその原因にまで至る事は出来ず、未だに立証される事無く仮説のままで終わっているのだった。


「と言う事は魔力の吸収があった後生きたまま・・・」

「こわ!?」

「何だか食虫植物に捕まった虫みたいな扱いでござるな」


「食虫植物か・・・食人植物?」

 しかしそんな仮説も、彼らにかかれば瞬く間に変な方向へと断線して行き、そしてその断線した方向に乗って行くユウヒ。奇しくも各国が少ない情報をかき集めるように調査した結果導き出された仮設と同じ仮説を短時間で導き出し、同じ様に有力候補の一つである食人植物説にも至った彼らを、この世界の専門家達はどう思うのであろうか。


「さらに怖いんだが、まぁ何でも食ってる感じだけど」

「それなら暴飲暴食植物だな」

「語呂が悪いでござるが、強欲の森とはピッタリな名前でござるな」


「そうだな? もう誰でも知ってる情報だったかな?」

 さらにその仮説が既に仮定されている事にまで気が付き始めた彼らは、この世界の専門家と出会わない方が良いだろう、主に専門家たちの精神安定の為に・・・。





 ユウヒ達の夜が賑やかに更けて行く一方で、ユウヒの知らぬ場所では暗躍する者達が活発に蠢いていた。


「ふふふ、ヤツもだいぶ疲弊してきたようだな」

 この男コプレス・A・スルメフもその一人である。彼は巨大なモニターに映し出されている情報を目で追いながら楽しそうにその口元を歪めていた。


「そっすね? 昨日の夜からエラーに対するプロテクトがほとんどされて無いっす」

 その情報とは、アミールが管理する世界に対する様々なアプローチの対処状況を表すもので、そこから解るのは昨夜ある時間からほぼエラーに対する対処がなされていない事である。その理由はある意味疲弊ともとれるし、くだらない理由とも言えるのだが、まさに彼等にとっては知らぬが仏と言えるものであった。


「・・・猫はもう投入してないだろうな?」


「し、してないっすよ!?」


「ふん、まぁよい」

 嬉しそうなコプレスに振り返ることなく簡潔に情報をまとめたチャラそうな男は、コプレスからの言葉に慌てて振り返りると、勢いよくその蒼く血の気の引いた顔を振って否定する。


「スルメフ様こちらの準備は完了しました。いつでも投入可能です」


「そうか、ふふふふははは! これで一泡吹かせられる。・・・いやついでに消してしまってもかまわんかな? はははは!」

 何を思い出しているのかチワワの様に震えているチャラそうな男の後ろでは、コプレスが上機嫌に笑い声を上げており、どうやら彼らの切り札とも言える存在の準備が整った様であった。


「あーこっちの準備も出来てるっすけど、こんな旧兵器どこからもってきたんすか?」

 一方テンションが低くなっていく一方であったチャラそうな男性は、思い出したかのように自分の作業も終了したと告げるが、その表情は訝し気で首を傾げる姿は実に不思議そうである。


「ん? あぁそれか、それは奴の協力者のユウヒとか言う小僧の居た世界から持ってきたものだ」


「え? だいじょぶっすかそれ?」

 そんな彼の操作するモニター上には、長い筒状の物体や、ずんぐりとして丸みを帯びた短い筒状の物体などが映し出されており、それはユウヒ達の世界から持ってきたと言う。


「ふん、人如きが困ったところで何ともあるまい。それにあの世界は色々と問題があるしな、少し何かが無くなったところで気が付くまいて」


「そっすかー(いやぁ人が気が付かなくっても管理神な気が付くと、思うんだけどなぁ?)」

 それらの行為は当然であるが窃盗行為であり、管理神だからと言って許される物では無い。他の管理神にその事実が露見すれば、当り前のように処罰の対象となるが、ここに来て彼らが一つ罪状を増やしたところで結果が変わらないと言う意味では何ともないのかもしれない。


「くくく、いかんな楽しいと思わず笑いが込み上げて来るな」


「そうでございますな!」


「・・・それでやるのは何時なんすか?」

 只々舞い上がっている上司に対して、冷めた視線をおくるチャラそうな男、男はその視線を元に戻すと、何事も無かったように計画の発動時期について問いかける。


「いつでも開始できるようにしておけ、その時が来たら指示を出す。それまで私は自室に籠る」


「あーはい、了解っす」

 しかし返って来た言葉は未定、いつ始めるか分からないがいつでも始められるようにと言う言葉を残して、コプレスは足取り軽く自室へと戻って行った。


「・・・行ったッスか、しっかしこりゃ不味いかなぁ? 開始時間解らないと合図もなぁ「(チャラ男きこえますか?)」うほあぃ!?」

 自分の周囲から人気が無くなると、先ほどまでチャラそうな笑みを浮かべていた男性はその表情を僅かに顰めて溜息を漏らす。しかし彼が気を抜いた瞬間、頭に何者かの声が響き思わず変な叫び声をあげてしまう。


「おい! 何変な声出してんだよ、手元が狂うだろ」


「あ、すんませんっス! ちょっと手元が狂っちゃって」

 それは離れた場所で別の作業をしていた男達も驚かせたようで、大きな怒声が上がり周囲の人間からも非難めいた視線が注がれる。


「おいおい勘弁してくれよ? 旧兵器って言ったって爆発すりゃ結構な被害なんだぞ?」


「うっす! 気を付けるっす!」

 そんな視線と怒声に、立ち上がった男がチャラそうな笑みを浮かべ、周囲の人間に何度も頭を下げて見せると、周囲の人間はその謝罪を受け入れたのか、様々な種類の表情を浮かべて自分達の作業に戻って行く。


「ふぅ・・・(姐さん急に連絡なんてびっくりするじゃないですか)」

 全ての視線が自分から離れたことを確認した男は、机の上に引っ掻けてあったキャップを顔に被せ寝ている様な体勢で椅子に深く座ると、小さな溜め息と共に心の中で非難めいた声を出す。


「(精進が足りませんね。それでどうですか?)」

 するとどうであろうか、先ほど急に聞こえて来た女性の声が再度彼の頭の中に響き出す。これは管理神の使う魔法の様なものの一種で、個人単位で会話をする技術であるが、その声はどこか男性に対して冷たかった。


「(いや、それが開始日程なんですけど直前まで不明なんすよ)」


「(・・・そうですか、では開始直ぐに信号を出しなさい)」

 女性の声に対してどこか怯えともとれる感情の籠った声で話す男性に、しばし何か考え込むような間の後、女性の声は短い指示を出す。


「(え? そんな急でだいじょぶですか?)」


「(まぁ何とかなるでしょう)」

 この指示に男性は驚いた様な声を出して確認するも、女性の声は特に変動することなく単調に返ってくる。


「(了解す! なるべく開始直前に信号出します)」


「(・・・えぇそれでお願いします)」

 寝たふりをしながらチャラそうな男が心の中で敬礼をすると、そのイメージが伝わったのか伝わらなかったのか、女性からはどこか冷たく冷めた返答が返って来るのであった。その後男性は彼女をデートに誘い始めるのだが、いつの間にか接続が切られた事に気が付くまで、あと十数分である。





 チャラそうな男が落胆して不貞寝を始めた頃、アミールの執務室にはステラからの通信が入っていた。


「それは、本当なのですか?」


「あぁ残念ながら本当だ」

 その通信内容に対して、アミールは信じられないと言った表情を浮かべており、その顔色もあまり良いものとは言えないようだ。


「そんな大それたことをするなんて・・・あの糞上司」


「ア、アミール君?」

 いや、良くないよ言うよりは、俯かせた顔からはどこか黒い気配が洩れており、通信画面の向こうに居る筈のステラを怯えさせている。


「うふ、何でもないですよ? うふふ」

 吃るステラの声で顔を上げたアミールの表情はいつも通り笑顔であったが、その笑顔はどこか不安定さを感じさせ、いつもの安心するような空気とは違う不安になる空気を周囲に振りまいていた。


「そ、そうか・・・こちらも対策はしているが」


「はい! こちらも準備しておきます。ユウヒさん達の緊急回収に万が一被害があった時の為に治療の準備に、そうです! 心のケアもひつ「ストップストップ!」はい?」

 強い精神力でその空気を受け止めたステラの言葉に、表情を引き締めたアミールは口早に話し始めるが、その言葉は慌てたステラに止められる。この時のアミールの目には混沌とした光が宿っており、その光はある種のヤミを抱えている様な色であった。


「あのね? 直接攻撃に対する備えもしてくれるかな?」


「あ、そうですよね」

 そんなアミールの表情も、疲れと呆れの含まれたステラの言葉で元に戻ると、いつものどこかふわふわとした笑みを浮かべ恥ずかしそうに頬を赤らめる。


「(大丈夫かな?)」


「(ふむふむ、これは姉上が狂喜乱舞しそうな展開じゃな・・・ユウヒ君には悪いが、楽しみにしておるぞ!)」

 モニターの向こうでいつもの雰囲気を振りまき始めたアミールの姿に、一抹の不安を感じるステラ。その後ろでは通信の一部始終を見ていた白い少女が、楽しそうな笑みを浮かべて心の中で小躍りしているのであった。


 どうやら今のユウヒには、様々な暗躍の影が迫って来ている様であり、それが悪いものであれ良い物であれ、その名が広く知れ渡り始めたのは確かな様である。




 いかがでしたでしょうか?


 嫌々ながら王城に突入するらしいユウヒ達4人、そして暗躍する者達。何が起きようとしているのか、わかりませんが続きを期待していただければ嬉しいです。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー


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