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ワールズダスト  作者: Hekuto


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第百二十九話 廃都トミル王都 後編

 どうもHekutoです。


 修正作業が完了しましたので、百二十九話投稿させていただきます。楽しんで頂ければ幸いです。



『廃都トミル王都 後編』



 暗くも無く、かと言って明るくも無い一室。天井の明り取りから零れる自然の光の中、複数の男女がその場で静かに時を待っていた。


「御頭、全員揃いました」

 誰も一言もしゃべらないその部屋に並べられた座布団がすべて埋まると、上座に座っていた女性に厳つい初老の男性が声をかける。どうやらこの場に集まるべき人間は全て揃った様であった。


「ん・・・今あの子がグノーに報告に行っているけど、その件は聞いてるね?」

 御頭と呼ばれた女性、彼女は日本産新人類の忍者達がお世話になっている自由騎士団のトップである。この日彼女は集められるだけの幹部を集め、とある話をするつもりのようだ。


「はい、強欲の森にあの三人が行ってるって話ですよね」


「そうだ」

 それは、ユウヒと三忍の忍者達が魔境の一つに数えられる強欲の森へ入った事と、その理由についてである。自由騎士団にお世話になるなり騒々しく動き回った忍者達は、既にほぼ全ての幹部にその名が知れ渡っていた。


「それとユウヒ殿でしたか、何でも恐れを知らぬ勇者なんだとか言っておりましたな」

 さらにユウヒの名もまた、どこかの心無い三人の忍者バカにより、尾ヒレ背ビレに羽まで追加された様々な逸話が伝えられており、幹部の中でもだいぶ知れ渡り始めている。


「まぁその辺はあいつらの言う話だからどうか知らないけどね、強さに関しては相当のものだろうことはブレンの分析でも確かだとさ」


「なるほど、してその話は聞いておりますが何故今日は?」

 御頭は返って来た言葉に頭を掻くと呆れた様な声色で話し出す。どうやら忍者達の話はそこまで信用されていないらしいが、彼女達の組織にある諜報と情報分析を担当する部隊である『ブレン』が出した結果は、十分信用に値するものである様だ。


「あぁまだ話していなかった事の分析が終了したからその報告だ。ユウヒ殿が強欲の森に行く理由ってやつだね」


「名声などの類ではないのですか? 冒険者ですし」


「それにしては無茶をするものではあるがな」

 ユウヒに関する情報を限定的に知らされていた幹部達は、総じてユウヒの事を一般的な冒険者と重ねて考えているらしく、一連の話を功名心に逸った冒険者に良くある話として解釈していた。


「あーそんな俗っぽい話じゃ無いと言うことでブレンの考えは統一されてる。理由はユウヒ殿に下った神託だ」


『!?』

 そんなどこにでもある様な冒険者の愚かな行いが一転、御頭の口から飛び出た言葉に彼女以外の面々は一様にその顔に驚きの表情を浮かべる。彼ら彼女らは神託と言う言葉に様々な想像を膨らませ口を閉ざしており、その様子を御頭は面白そうに眺めていた。


「神託で強欲の森・・・何者の神託でしょうか? 最悪阻止せねばならぬ危険性も・・・」

 数分か数十分か、しばらくの間無言の時が過ぎた室内に、最も前に座っていた男性が周囲に目配せをすると、色々と考えた中で最も悪い想像を思い浮かべ問い掛けるように目を向けた。ユウヒが受けたものが人に害を成す神の神託である場合、彼らの考えでは十中八九引き起こされるのは過去に起きた災害の再現であった。


「名前は出さなかったが、十中八九ラフィール様だろってことだ」


「それは、ではユウヒ殿は教団の神聖騎士と言うことですか? しかしあの三人の同朋と言う事は、むぅ?」

 しかしその考えは可笑しそうに口元を歪める御頭の言葉で否定され、その言葉を聞いた一同は心なしか明るい表情を浮かべる。しかしそんな言葉にもどこか腑に落ちない部分があったのか、やはり代表して一人の男性が問いかける。


 それはこの話しを聞いたバルノイアも表情を歪めた件である。彼らの共通認識としてユウヒは三忍と同じモーブ出身と言う事になっており、しかしモーブにはラフィール教徒は存在しない。しかし女神ラフィールの神託で動くとするなら普通はラフィール教徒、その中で地位と戦力を兼ね揃えた者が動くと思うのがこの世界の常識であった。


「それが問題でね、どうやら教団すっ飛ばして直接ユウヒ殿に神託、それも謁見付きの可能性大、だそうだ」


「・・・大問題ですな、その事教団には?」


「言うわけないだろ? てか隠蔽工作もやってるよ」


「・・・そうですよね、下手すると大きな争いに発展してしまいますもんね」

 そんな常識など知らないユウヒ、そしてそんな常識を作った覚えも無い女神ラフィール、この二人によって引き起こされそうになった争いは、自由騎士団の手によって安息の内に治められるのであった。


「そういう事、んでもう一つがだね」


『まだあるんですか!?』

 少し疲れの見える御頭の前に座る精神的に相当疲れた老若男女は、その日の報告によって疲れ切り、報告会の行われた部屋から退出する背には哀愁が漂う事になるが、それはこの数時間後の出来事である。





 更なる報告に自由騎士団幹部が悲鳴を上げている頃、トミル廃都では風化した建物を警戒しながら調べて周る四人の人影があった。


「・・・クリア!」

「・・・無問題!」

「ユウヒ殿どうでござるか」


 どこか劇画調の渋い表情で建物の壁を背にし、時に素早く室内に侵入する忍者達、彼らは予定の場所まで進むと周囲を警戒しながら後ろを付いてくるユウヒを振り返る。


「んー駄目だな、半径百も無いかなってところだな」

 そこには三人と違いやる気無さそうな表情で困ったような声を漏らすユウヒの姿があった。それもそのはず、トミル廃都に入ってからすぐユウヒがいつも使っている魔法の一部に不調が見られたのだ。


「まぁそれでもチート乙だけどなぁ」

「しっかしなんで急に異常が出たんだ?」

「これまでに似たようなことはなかったでござるか?」


 いつもは異常に広い範囲を表示するユウヒの【探知】魔法は普段調整して使っているのだが、何の手加減もしていないにも関わらず現在はユウヒが呟いた様に比較的狭い範囲にしか効果が無いようである。


 実際忍者達が言う様にそれだけでも結構すごい事なのだが、ユウヒは納得のいかない表情で首を傾げており、慣れと言うものの恐ろしさを忍者達に感じさせるのであった。


「たぶんどこかに魔力を吸収する装置か何かがあるんだと思う、まぁあの時に比べればマシだけど前もそうだったから」

 首をかしげながら視界のレーダー表示を見ていたユウヒは、ジライダの言葉に一つ頷くと今の状態に対する予想を口にする。レーダーの減衰具合が某壺の中と似ていたらしく、ユウヒの予想では周囲に魔力を吸収する何かがあるという見解のようだ。


「ふむ、廃墟過ぎてそんな装置探しようも無いな」

「ドアぶち抜いたら屋根が落ちてくるとは思わなかったお」

「自業自得でござる」


 原因の予想が出来たからと言ってその原因を探すにも、彼らが考えていた以上に建物の劣化が激しく、注意して進まないと生き埋めの危険もある。と言うよりすでに一度生き埋め一歩手前まで行っており、それ故に忍者達が真剣? な表情で周囲の警戒を行っていたのであった。


「こりゃちょっと行って取ってくるってわけにもいかなさそうかな?」


「そうでござるなぁ」

「時間かかるなら尚更拠点はしっかりとした拠点探さないとな」

「さすがに天井無しはなぁ・・・」


 危険物を探しに来たユウヒであるが、予想以上に障害が多い現状に疲れたように肩を落とす。その言葉には三人も同じ思いらしく、朽ちかけた民家の天井を仰ぎそこに見える晴れ渡った青い空にため息を漏らしている。


「ふむ・・・ここまでで町中には危ない反応は無いし、とりあえず手分けしてみるか」


 それからしばらくの間周辺の民家などを四人で調べたユウヒは、あちこち崩れる建物内から外に出てほっとしたように息を吐くと、後ろから続いて出てきた埃まみれの三人にそう提案をした。


「泊まれる場所探しでござるな」

「よし! 一番いい場所見つけたやつが勝ちな!」

「ふっ・・・方向音痴に負けるわけがなかろう!」


 民家のタンスを開けては倒れ掛かってきた土壁に潰され、ベッドで絡み合うようにして抱き合う白骨を見ては、血涙を流して壁に頭を打ち付けたりと忙しかった三人。


 彼らもいろんな意味でユウヒ同様の精神的疲労を感じていたらしく、そろそろ彼ららしい行動に移りたかったようで、ユウヒの提案を受けたヒゾウは一目散に走りだし、ジライダはそのあとを追いかけていくのであった。


「・・・行っちまったな、とりあえず昼に中央の噴水があった広場に集合で」


「了解でござるよ、二人にも言っておくでござる」


 提案をした瞬間走り出した二人を呆れたように見送ったユウヒは、残ったゴエンモに言伝を頼み、ゴエンモは苦笑交じりに返事を返す。しかし勘違いしてはいけない、苦笑を洩らすゴエンモもまた彼らと同類であるのだ。


「頼んだ、俺はあっち側探してみるから」


「ところでユウヒ殿、優勝賞品は何でござろうか?」


「え? 俺が出すの? ・・・そうだな、一番よく出来たドライフルーツと「うひょーこれは負けてられないでござる!」・・・俺にうま味が無いな」

 ユウヒから優勝賞品提出の言質を取った瞬間、ゴエンモはギラリと目を輝かせ駆け出した。ユウヒの作ったドライフルーツは甘味の乏し現状において非常に貴重な存在であり、特に出来の良い物は忍者達曰く日本でも食べたことが無いほど美味しいとの事である。


 ゴエンモの背中を見送ったユウヒは、頭を掻いて溜息を吐くと、彼ら3人とは反対の方向に歩き出すのであった。





 第一回 宿泊地探索大会inトミル廃都杯、後日そんな名前で呼ばれることになる探索。その状況を、各探索者視点でお送りいたします。


探索者№1 ヒゾウ


「さて飛び出したはいいけど、どこを探し・・・ここどこだ?」

 スタートダッシュは完ぺきに決まったが、どこを探すか・・・ん? ・・・あれおかしいな俺今どこからこの路地に入ったんだ。


「あるぇ? こっちきてこっちで・・・まいいか」

 うん、まぁあれだよ、深く考えてもしょうがないよね? とりあえず先に泊まれそうなところを探してから考えようそうしよう。最悪狼煙でも上げればゴエンモ辺りが気付いてくれるだろ。


「とりあえず拠点、泊まる・・・と言えば宿屋だよな」

 早く探さないとジライダに先を越され兼ねないからなぁ、とりあえず宿屋っぽい建物でも探してみるか、泊まると言えば宿だし厨房とかの設備もあるだろうから最悪屋根無くても何とかなるべ。


「やどや~やどや~ここか! 惜しい、酒場かな? 見事に白骨だらけだお」

 あてず・・・ひらめきに従って走っていた俺だが、それっぽい看板が目に見えたので急停止してみるもそこはどうやら酒場の様だった。つか何でジョッキとベッドの看板を見間違えた俺www・・・あれだ、そろそろアルコールが飲みたい、欲を言えばキンキンに冷えたビール、いやまて今の気候だと熱燗とおでんだな。それにしても白骨にも慣れちまった、けど人間はまだ止めてないつもりです。


「荒れてるけど争った感じじゃないし・・・酒も全部空だな」

 酒場と思われる建物中は結構広い作りだが荒れ放題だった。折り重なる白骨に壁に凭れ掛かる白骨、カウンターの内側に倒れた白骨はどれも綺麗な状態だ。俺は骨格に詳しいわけじゃないが、何人かは小柄なので女性なのかもしれない。


「ん? おお! これは干し肉かって十数年物だから食えないかぁ」

 さらに店の奥に進むとそこは倉庫の様で、表に置いてあったのと同じ酒樽が積まれていたがやはりこちらも空っぽ、食べれそうなものあるわけがなくどれもミイラの様なありさまだ。


 唯一食べれそうかなと思える見た目の吊るされた干し肉はカッチカチでありとても食べたいとは思えず、俺は思わずボクシングの様にその干し肉に軽いジャブを入れてしまう。そうそれがいけなかったのだ・・・。


「シュッシュッ! 酒なら飲めたかもしれないの・・・に? 今嫌な音が、気のせい気のせいじゃなかぁぁ―――」

 軽いジャブを入れるうちになんだか楽しくなってきて、自然と軽快なステップを踏み始めた瞬間、足下から鳴ってはいけない音が聞こえ身を硬直させながらそっと足を動すと、乾いた破壊音と共に俺の体は周囲もろとも重力の井戸に引かれるのだった。




 ヒゾウ、酒場にてはしゃぎすぎ脱落リタイア





探索者№2 ジライダ


「くっそどこ行きやがったんだ」

 くそ、完全に出遅れちまった。・・・まぁヒゾウの事だから今頃迷子になってるんだろうけど、ただあいつ意外と運が良いからな。


「まぁいいか、方向音痴には負けられん・・・なんだあの土煙?」

 他人の心配なんぞしても始まらん! 先ずは何処を探すか? 下手に室内に入ってもまた痛い目にあうしここは慎重に行くとするか。ん? 狼煙じゃないな、言ってる傍からどこか崩れたかな、マジでボロすぎだろ。


「拠点と言えば頑丈な建物じゃないとな、お! ここは石造りでいいな」

 屋根は有って当り前、さらに頑丈さを求めるのがジライダ様クオリティなんだが、なんだよなんだよいきなり良さそうな物件が有るじゃないか、さっきの場所からそんなに遠くも無いのに正解引いたかな。


「しつれーしまーす。ここは何のた、て、モノナンデショウカ?」

 殺気!? と思ったら白骨さんデスネチーッス、コワクナイコワクナイ、もう慣れたはずなのだよ? 動かなければ胴と言う事はナイとデス。


「な、なんだ。ただの白骨か・・・もうこのくらいじゃ驚かないさ!」

 ふ、ふぅまったくこの世は地獄だぜ、なんだってこんな白骨だらけの場所に来たんだか、正直白骨何て理科室の白骨標本だけで腹いっぱいなんだよなぁ・・・それにしても。 


「・・・なんだかこの人厳つそうだから、次行ってみよう! 勘違いしないでよね! 可愛い白骨のある建物にするだけなんだからね!」


「何を一人で言い訳してるでござ「キィィィエアァァァシャベッタァァァァ!?」ふお!?」

 アアアアアァァァァァァ!?異世界白骨は喋るんですね知りませんでした!ごめんなさいもうナマイイマセンカラァァァ。


「異世界の骨なんか大っ嫌いやぁぁ」


「あいたた、あれは相当苦手でござるな・・・ん? ちょま―――」




 恐怖により暴走したジライダは、後ろに居たゴエンモの存在に気が付くことなく轢き走ると、石造りの武具店を跳びだした。咄嗟の事で避けられず轢かれ、膝をついた体勢のゴエンモは避ける暇なく、大量の武具を背にした大きく骨太な白骨のボディプレスに押しつぶされるのであった。





探索者№3 ゴエンモ


「やっとでれたでござる」

 く、なんたる地雷でござる、その名に違わぬ恐ろしい男でござったか。


「まったく酷い目にあったでござるよ」

 ジライダを見かけたから近づいてみたらこれでござる。骨太白骨のスカスカボディプレスは喰らうし、朽ちた防具は無駄に多いから重いし、口には土が入るわで踏んだり蹴ったりでござるよ。


「拙者も探さないといけないでござるが、やはり手堅く教会あたりでござろうな」

 はぁもう二人を探すのは後回しにして拙者も泊まれる家を探すでござる、てか普通に家探ししてるけど拙者もこの世界に染まったものでござる。帰ってから注意しないと捕まるかもしれないなぁ。



 武具屋っぽい店から大分歩いたけどまだ城から距離があるでござるし、ここは良い所を見つけたでござる。見るからに教会な感じの建物は凶暴兎神の神殿より圧倒的に広いのだが、なんだか妙な圧迫感があるので拙者は兎神神殿の方が良いでござるな、あのアットホームな空気はモブに優しいでござるからして。


「うむ、なかなかに頑丈で広そうでござ・・・おや?」

 しかし無駄に頑丈なつくりだと思ったらどうやら仕掛けがありそうでござるな、ここをこうするとおっと燭台が動いて・・・キター。


「隠し扉でござる! これはお宝の予感」

 どうも分厚い壁だと思っていたらなるほど、隠し扉に隠し通路でござったか。むふふ、大体こう言う金持ってそうな宗教施設には隠し財産とか有るのがファンタジーの相場でござる。


「こんなシークレットドアを見つけてしまうとは、トレジャーハンターに転職も悪くないでござるなぁぁ・・・んて思っていた時期もありました」

 金銀財宝か、それとも伝説の武具か・・・なんてちょっとトレジャーハンターな気分になって調子に乗ったのが悪かったみたいでござる。だからと言ってこの仕打ちはあんまりだ。


「どう考えても拷問部屋ですね。ありがとうございました・・・でござる」

 細い通路を奥に進み、さらに下へ下へと進んだ先で見た物は、右を見たら積み重ねられた白骨の山、左を見たら赤さびの浮いた謎の器具の山、前を見れば縛られ吊るされた白骨のクローゼット・・・。


「うへぇ・・・明らかにこの大きさ子供でござろう。もっと小さな骨もあるし、この教会に泊まるのはノーセンキューでござるよ」

 正直お宝からのこの落差にはジライダじゃないけどダメージがでかいでござるよ、小さい骨とか子供だろうしこれは角でござるか? 亜人とか言うやつか?もうお腹いっぱいでござる。


 こんなところに泊まろうものなら確実に悪夢決定じゃないかって、今何か動いたような・・・。


「・・・ま、まぁ気のせいでござろう、あははは、は・・・なにやっ!?」


「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」」




 天井を突き破り背後に現れた気配に振り返ったゴエンモは、恐怖に彩られた雄叫びを目の前の真っ黒な影と共に大きく上げた。


 実は、ゴエンモを見かけて追いかけてきたジライダであったが、彼を見失い教会内を彷徨った挙句、風化した床を踏み抜き落下する。そこは丁度ゴエンモがうろうろしていた隠し部屋の真上で、落ちた拍子に色々なものをかぶったジライダはまさに動く骸骨神父の様な姿になっていた。


 そんな物を見れば精神不安定だったゴエンモが驚きの声を上げてもおかしくなく、さらに隠し部屋の惨状とゴエンモの声で驚いたジライダが気絶したとしても、それは節理である。





 一方その頃、探索大会から微妙にはぶられたようで釈然としないまま、町の中ぶらぶらを歩き回っているユウヒはと言うと。


「む? 身の毛も弥立つ様な野太い男達の二重唱が聞こえたような?」

 周囲をキョロキョロ見回しながらどこかで聞いたことのありそうな叫びを受信していた。


「んーまぁだいじょぶだろ」

 そして同じくどこかで聞いたような感想を述べ前に向き直るユウヒ、存外彼の三人に対する扱いは辛辣なものがある。


「そんなことより寝泊り出来そうな場所が見当たらないな」

 それも彼らと気心が知れた仲だからこそなのだろう、そんなユウヒも急いではいないものの、忍者達同様風化した建物に未だ寝泊りの出来そうな場所を見つけられないでいた。


「どこもかしこも風化してるし、先客は多いし・・・ほんと何があったんだか」

 民家と思われる木造家屋はどこも半壊しており、石造りの建物も木造部分が脆くなって床を踏み抜いてしまう。さらにほぼすべての家屋には住人と思われる白骨が、生前の生活を匂わせるように存在していたため、ユウヒに使用を躊躇させていた。


「生き物が枯れるかぁ・・・異世界らしく呪いかそれとも科学で説明できる範囲、でこんなことって起きるものなのかね?」

 見る骨見る骨どれも綺麗に白骨化している光景に、ユウヒは首を傾げ考え込み眉を寄せる。実際彼が持つ現代知識では、この様な現象を科学的に説明するのはあまりに不自然な死に方の為に想像もできないでいた。


「そういえば精霊が来れないってのはたぶん魔力が少ないせいだよな、ってことは今【探知】がうまくいかないのも災害の影響か?」

 半壊した家屋を外から一軒づつ除きながらも、ユウヒはぶつぶつと呟き災害の妄想を続ける。


 実際この世界には魔力を吸収する設備は多々あるものの、ユウヒの使う【探知】に影響を及ぼすものなど早々存在しない、あっても古代に栄えた魔法文明の遺産くらいなもので、まかり間違って現代人が作れるようなものではない。


「思っていた以上に良くない状況なのかねぇと? あれは石造りで良さそうだけど」

 つらつらと考えを纏めて状況の悪さを再認識し始めたユウヒであったが、その目に大きな石造りの建物が入ると考えを中断し、しっかりとした足取りで歩を進める。


「兵舎って所かな? 出払った後なのか白骨も見当たらない、か・・・良さそうだな」

 しばらくその建物を調査したユウヒ、どうやらそれは兵舎や兵士詰所の様なものであったらしく、厨房こそ劣化が激しく使い物にならなかったが、寝泊りする分には問題が無さそうであった。


「えーっと探知の状況は、変わらないけど飛翔は問題なしだな」

 ユウヒは拠点をここに決めたらしく、石造りの建物から出てくると視界のレーダーを見て三人を捉えられない事に肩を落とすと、しっかりと機能している【飛翔】の力でふわりと宙に浮かぶ。


「さて三人は何処に居るのかな」

 ゆっくりとしたスピードで空に上がったユウヒは、周囲の建物より高い位置を維持すると、町並みに目を凝らし忍者達を探すのであった。


 尚、この後ユウヒは三人を探す、もとい救出するのに小一時間を要し、ヒゾウ捜索に至っては【指針】の魔法まで使う羽目になるのだった。




 いかがでしたでしょうか?


 町を地味に破壊しながら探索する彼らは無事に事を終えられるのか、ちなみに普通ならすでに2,3回死んでそうな目に合ってますが、それでも三人の忍者はタンスに手を伸ばしています。


 それではまたここでお会いしましょう。さようならー

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