第百二十二話 枯れ森
お久しぶりのHekutoです。
パソコンさんが新しく我が家にやってきので無事投稿できました。これからまた定期的に上げていく・・・予定なので、楽しんでいただければ幸いです。
『枯れ森』
年中山脈からの強風に晒され高木の育たない平原【エリノマ平原】。嘗て風を信仰する神殿があったとされるそこは常に吹き続ける風に体力を奪われ、さらに利益のある土地でもない為、冒険者すら滅多に奥まで入らない地域である。
そんなエリノマ平原と、こちらも危険地域として人が近寄らない強欲の森周辺の境界線には、現在珍しく人影が4つ存在した。
「ユウヒ殿・・・奴らは、奴らはいないでござるか?」
「んーそうだな、この辺一帯から急に居なくなったみたいだ」
その人影とは、数日前にエリエス大森林を抜けて平原に足を踏み入れたユウヒ一行である。吹きすさぶ風と冷気に負けずここまで歩いて来た彼等であるが、ユウヒを除いた三人は異常なほど周囲を警戒して歩いていた。
「よ、よかった・・・これで強制空中遊泳をしなくて済む」
「絶叫系は嫌いじゃないけど、あれはちゃんと安全が確保されているから楽しいんだ」
「一応怪我はさせないって言ってたんだがなぁ」
その警戒の原因は、この季節エリノマ平原一帯に多く存在するも、その姿を見る事の出来ない風の精霊であった。彼ら三人は某不用意な行動以降、味を占めたらしい精霊達から度々ちょっかいを掛けられては大空を飛ばされている。
「そんなの解らんでござる! 途中から雪やら氷やらも飛んできてたでござるよ!」
「うむ、風の精霊の他にも氷の精霊も途中混ざってたからな」
さらにそれらのちょっかいは日を時を跨ぐにつれ過激さを増して行き、昨日に至っては突風の中にゴルフボールほどの氷も混ざっており、耳元を通り過ぎて行く音にゴエンモ達は恐怖していた。
「通りで・・・」
「勇者ユウヒ、帰りは別の道にしよな」
「・・・ん、善処する」
と言っても飛ぶのも恐怖するのも忍者達だけで、地面から精霊と一緒に見上げ、つい先ほどまで居た精霊達にはまた来てほしいと頼まれていたユウヒは、ジライダの言葉に目を泳がせながら曖昧に頷く。
「「「うわぁぃ不安にしかなれない返事あざーす」」」
ユウヒの見せる曖昧な返事と泳ぐ視線に何となく状況を察した三人は、笑顔と泣き顔が混在した表情でおどけて見せるほかないのであった。
「そんな事より、目的地はここからでいいのか?」
そんな恐怖の強制空中遊泳も足下から草木が無くなり始めた頃から鳴りを潜め、心なしか地肌を晒した大地を撫でる風にも力を感じることが出来ない。
「そうでござるなぁこの辺からだと思うでござるが・・・」
「何もねぇな」
「森なんて無いぞ?」
どうやらそこは既に強欲の森とされるエリアの様であるが、ジライダが首を傾げるように周囲に森は見当たらず、あるのは地肌むき出しの乾いた地面と石や岩。
「あっちは草原で木々がぽつぽつと。・・・こっちは立ち枯れた木々がいっぱい」
さらに少し離れた草原と反対の方向には、乾いた大地と立ち枯れた様に見える乾いたダークブラウンの地肌が痛々しい生気の無い木の群れ。
「もしかしてこの枯れたのが強欲の森?」
「うわぁ何か訳有り気な・・・」
「これが心配されてた理由か」
まるで枯葉剤でも撒かれた様に枯れきった木々は、よく見ればそこが森であったことを彼らに伝えており、またその姿は恐怖と共に様々な想像をユウヒ達に行わせた。
なぜこの森は枯れているのか、毒か魔法かそれとも自分達の想像を超えた何かなのか、見ていてあまり気分の良くなるような光景でない事だけは事実の様で、四人共に難しい表情である。
「まぁいいや、俺の求める危険物はどっち? 【指針】」
しばらくの間、遠くに見える枯れた森を眺めていたユウヒであるが、一つ小さな溜め息を漏らすと足元の乾いた枝を手に取り、魔法のキーワードを口にしながら枝を宙に投げた。
「・・・この先みたいでござるな」
「・・・行くか」
「らじゃー」
「おうよ」
枝は空中でゆっくり一回転すると、ニュートンに喧嘩を売るような動きで一点を指し示す。その方向は明らかに強欲の森を示しており、半場予想通りの動きに肩を落としたゴエンモにこちらも疲れた様に頷いたユウヒ、静かに三人の顔を見たユウヒは覚悟を決めた様に歩き出し、三人もその後に続いて歩き出した。
ユウヒ達が再度歩みを始めた一方で、遠く離れたこちらでは何かの作業を進めている様である。
「調子はどうかね?」
「例のモノに関しては問題無いっスけど・・・」
そこでは様々な機材やモニターに向かって黙々と作業をする者が多数おり、その中で一人何もしていないコプレスは腰かけていた椅子から立ち上がると、如何にもチャラそうな男性の後ろに立ち、作業の進行状況について問いかける。
「何か問題でもあったのか?」
「世界内に予定していた必要量の干渉が出来ないんっすよ」
「なに? 裏コードがあっただろ」
そのチャラそうな男性は見た目に反して有能なのか、彼が振り返り問題がありますと言う表情を見せたことにコプレス意外そうな表情を浮かべ、続く言葉に眉をひそめた。
「そっちもダメっすね、なんか書き換えられてるみたいで」
「バカな!? あれは早々書き換え・・・いや、そうかアイツか」
それほどにその障害は信じられない事であったのか声を荒げるコプレスであったが、脳裏をとある人物の顔がかすめると納得したように、それでいて悔しさに呻く様な声を漏らす。
「だから直接世界の中にアレ持ち込むの無理っすね」
「・・・まぁいい、外からでも十分効果は有るだろう」
どうやら彼らはアミールの世界に直接何らかの行動を起すつもりでいるようだが、それも先手を打たれ思う様に行かない様であった。
「ほんとにやるんスか?」
それにより多少の変更は入りつつも、おおもとの計画は変える心算が無いのか、
「当たり前だ。同時進行で行う計画はどうだ?」
「そっちは先輩らが嬉々としてやってるみたいっス」
「そうか」
何を言っているんだと言った表情のコプレスは、チャラそうな男性から視線を外すと周囲で黙々と作業を続ける人間に目を向ける。
「まぁ何か上手く行かないみたいで伸びそうではあるんですけど」
「・・・・・・」
しかし彼らは真面目に作業をしているのではなく、単純に作業が上手く進まない事から言葉が少なくなっているだけであった。その事実を聞かされたコプレスは、一瞬呆気にとられるも憮然とした表情をチャラそうな男性に向ける。
「俺をそんな目で見られても困るッス」
しかしそんな視線を受けたところで彼には何の責任も義務も無い為、軽く肩を竦めて見せ、その姿にコプレスは僅かな苛立ちを感じるのであった。
チャラそうな男性が風になびく柳の様にコプレスからの視線を受け流している場所から、気が遠くなるほど離れた強欲の森。
「「「・・・・・・」」」
「・・・こっちみんな」
そこでは三対の瞳から溢れるじっとりとした圧力に、ユウヒが嫌そうな表情を浮かべている。
「ユウヒ殿、これ絶対良くない森でござる」
「そんなの最初っから解ってただろうに」
「やっぱ枯葉剤とかまかれたんじゃねぇか?」
ユウヒ一行が強欲の森に入ったのは昨日の昼前、その間彼らの目に映る光景はその大半を茶色系の色が占めており、空に晴渡る青色とのコントラストは余計に枯れた森を寂しく見せていた。
「どこもかしこも枯れた樹ばかりで迷子になりそうだお」
「・・・それは、つっこめばいいのか?」
「ツッコミどころが多いでござるな」
その代わり映えの無い森は、彼らの方向感覚を狂わせるには十分な効果を持っていたのも事実であるが、ヒゾウの言葉に対して周囲の人間の視線は冷たかった。
「いつも迷子だろ! とか、ついさっきまで迷子だっただろ! とかつっこんでやればいんじゃね?」
「あれ? 妙に風当り強くね?」
「当然でござるな」
視線の冷たさと言葉の棘に後退りながら首を傾げるヒゾウ。そう、彼は例の如くその方向音痴ぶりいかんなく発揮していたのである。
森に入ってすぐの休憩時にはふらっと散歩に出たままユウヒ達と逸れ、夕食時にはトイレに立って迷子になり、テンション上がって鬼ごっこを始めれば、一人先行したかと思うとしばらくして最後尾後方から泣き事が聞こえる始末。
「サーセン!」
「・・・まぁ代わり映えしないと言うのは分かるけどな」
ヒゾウの方向音痴は今に始まった事では無い為、彼らも半場諦めている節があり、何故か照れた様に謝るヒゾウに三人は短く小さなため息を吐くのであった。
「しかし、このまま行っていいのか?」
「その心は?」
ヒゾウに対して溜息を漏らしたジライダは、周囲に目を向けるとユウヒに向き直りそう疑問を洩らす。
「食糧だいじょうぶか?」
「大丈夫だ問題無いでござる」
「フラグ乙!」
ユウヒの言葉に食料の問題を口にするジライダ、そして不穏な空気を纏ったセリフを吐くゴエンモ、彼らはエリエス森を出る時に当然食料も準備していた。しかしそれは向かう先が森と言うことも有り、現地調達も見据えた準備である。しかしやって来てみればそこは見渡す限り枯れた森、生物の息吹をまったく感じられない場所では食料調達など出来る分けも無かった。
「まぁもうしばらく大丈夫だろ、森に入ってまだ二日目だし」
「そうでござるな、あと一週間は問題無いでござるな」
食料に関しては特に気にしていない気楽なユウヒの言葉に、食料担当のゴエンモは一つ頷くとバッグを揺らす。その中には保存食など含めた食材がまだまだ入っているようで、ジライダの言葉にもそこまで深刻になっていない。
「我は肉を所望する」
「水飲んで満たしとけでござる」
しかし発言者であるジライダの本音は肉であった。本来の予定なら生肉は狩りで入手する予定であったようで、それがこの道程では一度も食べるのに適した動物を見ることが出来なかったのである。
「水だけは無限にあるからな」
それに反して水に限ってはユウヒの魔法で無限に手に入り、彼らの空腹感を紛らわす一助になっていた。
「一家に一台、いや1パーティに一人ユウヒ殿でござるな」
「家電かよ」
ゴエンモの言葉に嫌そうな表情を浮かべるユウヒ、そんな姿をじっと見つめたヒゾウとジライダの脳裏には、給水器になったユウヒの姿が浮かび思わず笑い声をあげるのであった。尚、この数分後、不用意な発言をした二人がユウヒに追いかけられる事は言うまでもない。
強欲の森で鬼ごっこが開催されている頃、ユウヒの唐突な出立による混乱も治まって来た緑の里。その森には未だにグノー兵士の姿が見受けられていた。
「・・・・・・バルカス、残りの仕事は何だっけ?」
その理由は疲れた顔を隠そうともしていないアルディスの仕事が終わらないからである。
「後は、部隊の再編制とその後に死骸の処理確認、あとは念のために強欲の森の警戒調査ですね」
追加された仕事に関しては終わったらしく、羊皮紙にインクで書かれたばかりのサインをそっと乾かすバルカスは、羽ペン片手に突っ伏すアルディスの質問に振り返ることなく淡々と答えた。
「そっかーまだまだあるね」
「物資補給の一部が問題無くなっただけでも早い方ですよ。これでとりあえず移動も開始できます」
「そうだね、ユウヒのおかげだね」
疲れた表情のアルディスは机が冷たくて気持ちいのか、頬を付けたまま机の上を転がる様に顔の向きを変え、バルカスの言葉に顔を上げるとニコリと表情をほころばせる。
「出所は不明ですが、今の所問題は出てませんからな」
「でもそのユウヒはどこか行っちゃったし・・・むぅ」
しかしそれも束の間、アルディスに受け答えしながら、バルカスが慣れた手付きで羊皮紙を筒状に丸めて専用のひもで縛っていると、視界の端に再度突っ伏したアルディスの姿が映り、さらに唸り声まで上げ始めた。
「冒険者とはそういう者です。あまりあてにし過ぎてはだめですぞ」
「そうだね。冒険者は自由だから縛れないんだよね」
その姿に思わず苦笑を洩らしたバルカスは、アルディスの執務机の側まで近づくと、この世界にとって常識とも言える冒険者の評価を口にする。
「下手に縛れば痛いしっぺ返しが待ってますからな」
「僕その御伽話好きなんだよね」
その評価の原因になったとされる御伽話を思い出したアルディスは、顔を上げると今度は背もたれに体を預けながらニコニコとした笑みをバルカスに向けた。しかし笑顔を向けられたバルカスはと言うと、なんとも困ったような笑みを浮かべている。
「王族がそれを言うのも、まぁあれは旧アクアリアが舞台ですが」
それと言うのもその御伽話は、様々な偉業を成し遂げた冒険者が悪い王様に嵌められ自由を奪われると言う話で、最終的に悪い王様はその冒険者にお城諸共焼き殺されてしまうのだ。それが昔の冒険者とアクアリア貴族の間で起った実話を元にしたものとは言え、あまり王族が好きだと言って良い物でも無いのである。
「きっとユウヒなら同じことしそうだよね・・・どこ行ったんだろなぁ」
「行くところがあると言う話でしたが、聞いた話だとエリノマ平原側に向かったとか」
しかしアルディスはその事をまったく気にした風も無く、むしろユウヒなら過去の偉人の様に悪者を懲らしめそうだと、良いのか悪いのか判断に困る評価を洩らす。
「うん、でもあっちって何も無いよ? 街道からも外れてるし気候も荒いし」
「そうですな、古戦場の他にあるとすれば未発見の遺跡ですか、探せばまぁ出て来るでしょうが・・・今の時期に発掘は厳しいでしょう」
まったく悪気の無いアルディスにバルカスは苦笑しながらも、手に入れる事の出来た情報からユウヒの足取りを予想し始める。しかしその予想される範囲に冒険者が寄り付きそうなものは少なく、また季節的にもあまり条件が良いとは言えない。
「あとわぁ・・・強欲の森?」
「まさか、あそこは魔物の巣窟ですぞ?」
そしてその予想の範囲を広げる事で、偶然にもアルディスは正解を言い当てた。しかしそれは同時に常識的にもっともありえない回答でもあり、バルカスも否定的である。
「でもユウヒ強いし、すごく強い忍者の仲間が三人も居るんでしょ?」
「むぅ、確かに強かったですが・・・あの森の魔物は狡猾ですからな」
それはアルディス自身も半分くらいは違うと思っている様で、意見を肯定にもって行きながらも表情は複雑なものだ。実際に今まで様々な理由から強欲の森への侵入を試みた者達は、ほぼすべてが帰って来ていない。
帰って来た者も心を壊した者が大半で、魔物の巣窟であり、またその魔物が集団戦を仕掛けてくる賢い魔物であること以外、詳しい事はその魔物の種類すら解っていない。
「そっかー・・・でも、ユウヒってその事知ってるのかな?」
「・・・」
因みにこの話は有名な話であり、教会や初心者冒険者が必ず受ける講習でも話されるものである。この子供でも知っている恐ろしい話を知ら無い者など、この周辺国家に存在しないだろう。しかしその事をユウヒが知っていると、彼等二人には断言する事が出来ず。
「・・・」
何となしに呟いた言葉に返ってくる沈黙と言う返事に、アルディスはバルカスと見詰め合い嫌な想像から妙な汗をその頬に伝わせる。
「ねぇバルカス、早めに強欲の森の警戒調査に向かいたいんだけど・・・良いかな?」
「・・・急ぐ内容では無いのですが、特に止める理由も有りませんな」
頬を伝う汗を拭う事無く明らかな作り笑いでバルカスに今後の予定を提案をするアルディス。その提案に対してこちらも作った様な真面目な表情を浮かべたバルカスは、ひくつく口元に力を籠めて提案を受け入れ頷く。
それから数分後・・・。
「お茶が入りましたぁ・・・どうされたんですか?」
休憩に入ると言う事でお茶の準備に行っていたメイがアルディスの下に戻ると、そこでは真面目に書類を整理するアルディスとバルカスの姿が有り、出て行く時とは真逆の空気に思わずそう問いかけてしまうメイ。
「ん? 何でもないんだよ?」
「うむ、なんでもないぞ?」
「・・・あの、お仕事休憩の筈では?」
しかし返って来る二人の声はどこか作り物めいた真面目な声で、それは何か隠し事のある時の陛下の様だと感じたメイは、訝しげな視線を向けながら休憩について問いかける。
「あぁうん、休憩するよ? でも何だかもう少し進めたくなっちゃって」
「真面目な事は素晴らしい事だぞメイ」
「はぁ?」
それでも返って来る声の雰囲気は変わらずそのままで、不思議そうに首を傾げたメイは、ティーセットを机から離れた場所に準備しながらも、不思議そうにチラチラと二人の様子を窺い続けるのであった。
ついでに、バルノイアの隠し事はほぼ全てルティアナに看破されているのだが、これは完全に余談である。
そんなやり取りがなされた翌朝、ここは強欲の森。
「ユウヒ殿これは・・・」
「明らかに・・・可笑しいよな?」
そこでは野営明けのユウヒ達四人が、起き抜けからその表情を強張らせていた。
「この森ってこんなに木が密集してたっけ?」
その理由は彼等をぐるりと隙間なく囲む枯れた樹木達にある。樹木の群れはユウヒの張った結界に張り付くように綺麗な円形を構成しているが、そもそも彼らが寝る時にそれらの木々は存在しなかった。
より正確に言うならば木々は存在したものの、周囲に散らばるだけで密集はしていなかったのだ。その結果から導き出される答えは、ユウヒの金色に輝く右目が教えてくれた。
「・・・これ魔物ですね。解りました」
そこに居る全ての木々が魔物であると・・・。
【カースツリー】
死者の嘆きにより呪われ魔物化したと言われる枯れた樹木。元が樹木である為非常に判別が難しく、痛覚が鈍い為多少怪我をしたところで動じることは無い。
種別としては食人植物に該当し、油断した人間を集団で襲い幹に開いた鋭利な口で対象を細かく切断して内部に吸収する。
右目により目の前の異常を把握したユウヒは、同時に概要を想像したのか気持ち悪そうに顔色を変える。
「どうする?」
「どうするよ?」
「選択肢。1 逃げる。2 逃げる。3 逃げる。さぁどれ?」
ユウヒの言葉で目の前の木の群れが魔物であることを確信した三人は、トランプの様に広げた護符を両手で胸の前に持ち、それぞれにユウヒへと視線を向ける。その様子はまるでババ抜きか何かしている様にも見えるが、中身は選択肢なのかユウヒに選ぶよう迫るヒゾウ。
「逃げるしかないな、でもどう考えても回り込まれるだろ」
しかしその中身は逃げるしかないらしく、だからと言って360度全方位を囲まれた以上、ただ逃げると言うわけにもいかない。
「と言うか囲まれて身動きできないでござるよ!」
「ん? なんだ?」
「木の幹が裂け・・・」
不可視の壁と前進しない4人のやり取りに焦れたのか、密集していたカースツリーはその擬態を解く、鋭利で大きな口を開き枝を太く逞しく膨張させると、まるで人の手腕の様に振り上げ結界を叩き始める。
「うはぁヤル気にみなぎってるなぁ」
その姿に色んな意味でのヤル気を感じとったユウヒは、説明文に書いてあったグロテスクな表現で歪んだ顔を、溜め息一つ吐いて元に戻すと徐に立ち上がり、背中の短槍を手にするのだった。
いかがでしたでしょうか?
何とか今日の投稿に間に合わせることができましたが、半徹夜作業だったので誤字脱字に不安が残るところです。ついでに寝落ちしてたのは秘密です。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




