表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールズダスト  作者: Hekuto


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

114/155

第百十三話 エリエスの森とユウヒの黒歴史 ハウジング編

 どうもHekutoです。


 今回は気がついたら妙に長くなっていて、分割する時間もなかったのでそのまま投稿することにしました。楽しんでいただければ幸いです。



『エリエスの森とユウヒの黒歴史 ハウジング編』


 空に輝いていた太陽も眠りに付き、空の主役は月へと替わる。しかし今この場所にはその主役に目を向ける者は居なかった。


 不思議な熱気と夜光木の幻想的な光に照らされ、焚火から伝わる暖かさは野外で楽しそうに酒を飲み交わす者達に寒さを忘れさせている様であった。


「・・・ふふ」

 そんな中、上座に座るシリーはその顔を嬉しそうに緩ませ、特別アルコール度数の低い果実酒を傾けながら時折楽しげな笑みを漏らしていた。


「あら、楽しそうな顔ね? 一人じゃ寂しいかと思ってきたのにお邪魔だったかしら?」


 いくら無礼講な宴の席とは言え、そこは族長である。エルフだけでなくとも遠慮しているのか、シリーの周囲には数人が静かに杯を傾けるだけであった。そんなシリーの下にセーナが現れるも、シリーの楽しげな笑みに不思議そうな表情で首を傾げて見せる。


「もう、そんなこと言わないでよセーナ」


「ふふ冗談よ、で? どうしたのよ」

 背後から近づいてきたセーナの言葉に、冗談とは解りつつも少し拗ねた様な困った笑みを向けるシリー、その姿にセーナは微笑み隣に座ると、いつもと違う雰囲気のシリーに問い掛ける。


 普段であれば宴の席だからと今の様な笑みを浮かべる事の無いシリー、微笑みを浮かべてもそこに隙を見せない姿は、度々宴の席で見せる彼女の仮面であった。しかし、今はどこか隙のある緩んだ笑みを浮かべ、その微笑みは周囲の男性の動悸を狂わせるような笑みである。


「え? あ、その・・・ユウヒさんの周りは、不思議だなと思って」

 どこか純朴にも蠱惑的にも感じる事の出来る微笑みの原因は、どうやらユウヒとその周囲に有る様で、セーナの問い掛けに初めて自分の表情に気が付いたシリーは、頬を少しだけ赤くすると、優しげな目でもう一度ユウヒ達の居る方へ視線を向ける。


「不思議?」


「えぇ・・・まるで初代グノー国王の理想をそのまま体現したような」

 セーナの問いに答える彼女の声色と、その目はどこか遠い昔を思い出している様な哀愁の宿る色をしていた。


 エルフは普通の人族と違いとても長寿である。しかも老いも遅く、長く若々しい時を過ごす。シリーもそれなりに長く時を過ごしており、グノー王家の初代とも親交があり、その思い出が今のユウヒと重なって見えていたようだ。


「・・・差別なき世界だっけ? まぁ確かにね。ユウヒ君だけ特別かと思えば、お仲間とか言う彼らも似た様な感じだものね」

 グノー王国は最初からその名前だったわけでは無い。元は別の名前だったのだが、グノー家が王家を引き継いだ時に名前が変わったのである。その初代グノー王が掲げた想いこそ、今のグノー王国の根底にあるものであった。


「そう、仲良くと言いながら欲望で濁った眼なら向けられたことはあるけど。あんな風に接し合うなんてどこかの変わり者さん達くらいだわ」

 しかし現状、王家の者や王家に深く関わる者の意識は改善されていても、全ての人間から差別や偏見を無くす事は出来ておらず、その結果が某クーデター紛いな貴族の反乱として現れたのであった。


 そんな事など知らないと言わんばかりに触れ合うユウヒ達の姿は、かつての友人達と重なり優しい空気をシリー達に感じさせていた。


「変わり者って意味ではユウヒ君達も相当だけどね」


「変わっていることが普通の世の中なら、もう少し平和なんでしょうね・・・」

 シリーに変わり者のと呼ばれた王家の血筋を思い出し苦笑したセーナは、ユウヒを見ながらもう一度同じような笑みを浮かべそう漏らすと、シリーは小さく微笑み、今度はため息交じりの言葉を漏らす。


「何かあった?」

 その表情の変化と言葉尻に違和感を感じたセーナは、持ち上げた杯を下ろしながら首を傾げる。


「いつも通りよ、帝国がキナ臭さを増しただけ」


「そう・・・ほら飲んで飲んで、折角の祝いの席よ」

 どうやら、森の混乱は治まったがシリーの仕事である外交の方では、まだまだ問題が山積しているようであった。その事を察したセーナは、小さく呟き顔を俯かせると次の瞬間にはその顔に明るい笑みを浮かべ、シリーの背に抱き着くと、お酒の入った瓶を自分の頬を押し付けているシリーの頬とは反対の頬に押し付ける。


「わ、ちょっとセーナそんなに!?」


「ほれほれ、私の酒が飲めんのかぁ? うふふふ」

 急に後ろから抱き抱えられたシリーはびっくりするも、おどけて見せるセーナに負けて微笑みを浮かべると、


「もぅ・・・ありがと」

 眉を困ったように顰めると小さく感謝の言葉を漏らしたのであった。





 そんな見る者によっては赤面してしまいそうなやり取りがなされている頃、忍者達はと言うと。


「「「ほぅ地主とな」」」


 本日の宴一番の見所を見逃し、ユウヒの新たな武勇伝に耳を傾けていた。


「いつの間にかな」

 一通り話し終えたユウヒは、自分で話した内容に肩を竦めると困ったように笑う。


「むしろユウヒ殿こそ永住するのかと」


「それは今の所無いなぁ」

 ユウヒが広大な土地を手に入れたと聞き、ゴエンモは率直な意見を漏らすも、今の所ユウヒにはその気は無いようで、その言葉を聞いた忍者達は納得したように頷く。そんなユウヒの世界組とは違い、周囲で聞き耳を立てていた幾人かは落胆の声や、ガッツポーズをとる者の姿があった。


「しかしそれは是非とも住居を建てて拠点化せねば」

「パラダイスに移住、悪くないな」


 ユウヒ同様永住する気がなさそうな忍者達であったが、別荘の様な扱いの出来る場所としては魅力的な様で、ユウヒに断りを入れる前から妄想が止まらないようだ。エルフの里パラダイスまで忍者の足で1時間以内の別荘は、彼等にとって悪くない条件のようである。


「さよけ、問題起さなきゃいいぞ?」

 鼻息荒く妄想をダダ漏れにする忍者達に呆れた様な目を向けるユウヒは、適当に許可を出す。一応今日一日彼らの行動を制裁がてら見ていたユウヒは、彼らが不埒な事を仕出かすとは思っていないようで、仮に彼らが永住すると言っても気にしない様であった。


「ふむ、しかし地主より先に家を建てると言うのもな・・・」

「確かに、他人の・・・しかも無人の土地に家を建てるとか盗むようでちょっと」


 むしろユウヒより先に家を建てたりする事に引け目を感じる辺り、変態である忍者達の良心は一応健在の様である。


「無人じゃないぞ? 一号さんが居るし、ゴーレムだけど」

 忍者達がどうしようかと互いに相談し合う姿に、ユウヒはお酒の入ったカップを傾けながら苦笑すると、気にしなくてもいいと言う意味を込めて現地に居るゴーレムの名前を紹介する。


 その紹介にユウヒの方に振り返る三忍、しかしその表情は何故かゴエンモだけ驚愕に歪められていた。


「・・・は? まさか、ユウヒ殿その一号さんとは、魔王城のメインホール前広場の番人の事じゃ」


「「「ばんにん?」」」


 何故か小刻みに震えるゴエンモはその声も同じように震えており、黒さが増した状態でも解るほどに顔を蒼くしている。そんなゴエンモが口にした内容に、ユウヒもジライダもヒゾウも同じ言葉を口にし同じように首を傾げて見せた。

 

「いや、ユウヒの城の話なんじゃ?」


「え?」


「自分の魔王城だろ?」


 震えるゴエンモの言葉で首を傾げたユウヒに、ジライダとヒゾウは素で疑問の表情を浮かべ互いに首を傾げあい、周囲のエルフやエリエスの住民達も不思議そうな視線を向けている。


「ぁ・・・てか魔王城じゃないっつうに。確かにメインガーデンには何時も一号さん達が待機してたけど・・・番人ってわけじゃいぞ?」

 何の事だか考え込んでいたユウヒは、何か思い当たる事があったのか小さく声を漏らすと、ツッコミ忘れていたヒゾウとゴエンモの魔王城発言に眉をひそめ、思い当たる事に関して口にする。


 ユウヒ達が日々の貴重な時間を注ぎ込んでいたクロモリオンラインと言うゲームには、多数のオンラインゲーム同様ハウジングシステムと言う自分の家を作れる機能がある。


 ただ、広大かつ多数のエリアを有するクロモリのハウジングシステムは、幅広い世界観同様に様々な要素がこれでもかと詰め込まれていた。ユウヒはその中でも城を建てるスキルと補助スキル群を取得し、黒歴史時代、不人気エリアの片隅に一人ボッチで城を建てたのである。


「嘘だ!」


 そんな城のメインガーデンと言う場所にその広さを利用して待機させていたのが、一号さん達ゴーレム達や室内に入れられない様々なアイテムであった。


「いやほんとだって」

 そんなユウヒの説明に何故か全力で否定するゴエンモ、以前の話しからゴエンモがユウヒの城に挑戦している事は分かっているが、何故そこまで否定するのかはユウヒにも見当がつかないのか困惑顔である。


「なになに? ゴエンモのトラウマ? 俺気になっちゃうなぁ」


「性格悪いでござる。でも否定できない悔しぃ」


 必死に否定する蒼い顔のゴエンモに、何か察したようなヒゾウが下から覗き込むようにゴエンモの顔をニヤニヤとした顔で見詰める。そんなヒゾウの言葉にげんなりした表情を浮かべたゴエンモは直ぐに両手で顔を覆うと、悔しげに体をくねらせる。


「悔しがられてもなぁ? あれインダストリアゴーレムだぞ?」

 正直見ていて気持ち悪いゴエンモの動きに周囲が微妙な表情を浮かべる中、ユウヒは困ったように頭の後ろを掻きながら首を傾げる。


「ウーソーダー!!」


「この取り乱しかた・・・面白い話な予感!」


 先ほどまで体を気持ち悪くくねらせていたゴエンモは、ユウヒの言葉と表情を指の隙間から覗かせた血走った目で見詰めると、怪しいポーズで立ち上がり両手を広げ全力で否定して見せる。


「だから本当だって」


「・・・それなら説明してやるでござる! ユウヒ殿の城が如何に鬼畜かを!」


「鬼畜言うな!?」

 一人興奮し続けるゴエンモは困った顔のユウヒに指を突きつけると、声高く宣言する。その後ろではジライダとヒゾウが目を輝かせ、いつの間にか隣にやって来たウパ子も表情の乏しい顔を僅かに高揚させわくわくとした感情を漏らしていた。





 そんなユウヒ達の周囲では、ゴエンモとユウヒのやり取りを見ていた者達が俄かに騒がしくなり始めていた。


「ユウヒは城もち?」

 赤い髪のエルフ少女シーリンは、ユウヒが城を持っていると言う部分が聞こえたのか興味深げに聞き耳を立てる。


「貴族なのかしら?」


「貴族でも城って相当じゃないか?」

 その隣で酒を飲んでいたシーリンと同じ赤エルフの男女はユウヒの人物像を膨らませ、いつの間にか貴族と言う事になってしまっていた。尚、この世界で城と言える物を持つ貴族と言えば一部特殊な例を除けば子爵位以上である。当然そんな貴族と言われる人種は様々な特権も有しておりその一つが、



「貴族、か・・・そうだとするなら既に複数人と結婚していても可笑しくは無いのか?」

 グロアージュが何となしに呟いた重婚である。妾や側室などと呼ばれる相手を作るのはもちろん、制度上正妻と同じ権利を有する相手も作ることが出来る。そんなグロアージュの言葉に、


『!?』

 周囲の女性陣は過敏に反応し、ユウヒを見詰めた後何故かグロアージュに射殺せそうな視線を飛ばすのであった。


「む!?」





 急な悪寒にグロアージュが咳き込みそうになっている頃、遠いどこかでは暗闇の中に蠢く複数の影があった。


「・・・」

 それらの影は互いに視線を交えると、何かを確認し合う様に頷き合う。


「・・・・・・」

 そして何かの確認が終わると、一人一人違う方向へと移動を開始する。そんな中一人だけその場に残った人影は、暗闇の中でもその白さが分かる姿をしていた。いや、むしろ暗闇こそがその美しい白を際立たせている。


「さぁ狩りの始まりじゃ」


 その白はそう呟くと、闇に溶けるようにその姿を消すし、あとに残ったは真に静寂だけであった。





「そして、拙者等は互いに打合せ通り風雲ユウヒ城へと侵入を開始したでござる」


 どこかで忍者達の様な影が蠢いている一方、エリエスの森では語り部ゴエンモの話が始まっていた。妙に気合の入った語りに周囲の人間の大半は大なり小なり耳を傾けている。


「その名前どうにかなんないのか?」

 目の前で始まった話にユウヒは酒とつまみを食べながらも、自分の城の名前に不服を漏らす。


「うぃきにもそれでのってるお」


 しかし、そんなユウヒをキョトンとした表情で見詰めたヒゾウが何でもない様にとある情報を口にする。ネットをやる者なら一度は聞いたことのある様な攻略サイトを口にし、そこにユウヒの城の名前として『風雲ユウヒ城』が載ってると言うのだ。


「・・・マジで?」

 その言葉には流石のユウヒも驚いたのか、口に銜えていた魚の燻製をポロリと落とすと、拾う事も忘れて呟く。


「マジでござる。トラップキャッスルとかもあるでござるが、まさか知らなかったとか・・・」


「攻略サイトはあんま見てないからなぁ」

 ユウヒの呟きに驚いたのはゴエンモ達である。彼らにとっては当然知っていて可笑しくない知識だったようで、頭を掻きながら釈然としない表情を浮かべるユウヒに、信じられないと言った顔を向ける。


「それで? その後はどうなったのよ」

 何故か見詰め合い固まる四人に、いつの間にかユウヒの頭の上に陣取り移住許可証を抱き締めたピクシーは、話の続きが気になるらしく続きを催促し始める。


「んん、拙者等は先発攻略組の反省を元に少数精鋭による城壁突破後、中庭で集合してメインホールを目指したでござる」


 特等席に座るちっちゃなお客に、ゴエンモはわざとらしく咳払いをすると、気合を入れ直し若干低くした声で語り出す。


 ユウヒの城に挑戦したゴエンモ達は、6人パーティ二つの合計12人で戦いに赴いた。しかもその人数をさらに複数に分けて城内に侵入したらしい。


「ふむ? 何故数を用意しなかったんだい? 普通城攻めともなれば相当な数の兵が必要だろ?」

 そんなゴエンモの言葉に疑問の声を漏らしたのはナルボである。いつの間にか話を聞きやすい場所まで移動していた彼は、不思議そうに首を傾げるとゴエンモに問いかけたのである。


「あはは・・・」

 そんなナルボの疑問と、ゴエンモが説明するであろう内容に心当たりのある城主であるユウヒは、一人乾いた笑いを漏らす。


「そこがユウヒ殿のエゲツナイとこでござる! あの城壁周りは攻めてくる人数や攻撃の数で対応を変えるでござる!」


 先発隊である複数ギルドの合同メンバーは、安全を考慮し6人パーティ24組の144人と言う大人数を用意して、過疎エリアに建つ未知の城である風雲ユウヒ城に挑戦した。その頃はまだユウヒの城であることは分かっておらず、攻略サイトにも外から写した写真しか載っていなかったからだ。


「そう言うのは結構あるんじゃないか?」


 ジライダの言葉通り、それまでに城を建てたプレイヤーの中には、ゴエンモの言ったようなシステムやギミックを備えた城は数多く存在している。またそれらのギミックには細かいコストが用意されており、城のレベルごとに決められたコスト内で調整する必要があった。調子にのってあまりに複雑なシステムなどを組み込むと、すぐにコストオーバーを起してしまうのだ。


「それは知ってたでござるよ? でも・・・先発隊は大人数だったでござるが、全員が落とし穴型の空堀に落されたあと氷原の城らしく氷水を流されたでござる」


 当然それらの事も知っていた攻略パーティは、何が起きても大丈夫なように多数のパーティで波状攻撃を仕掛ける事で、不慮の事態に対する対応を行っていた。しかしそこで起きたのはゴエンモの説明通りである。


 ユウヒの城は、一見高い山の麓にある平地に建てられた中規模の平城で、外周には堀も無く攻略難度は高そうでは無かった。


 しかし、三隊に別れていた攻略パーティの最後尾が、あるラインを越えた瞬間、城門に直接攻撃していた前衛、その少し後ろから援護攻撃を行っていた後衛、そして波状攻撃最後のメンバーすべてが巨大な落とし穴に落されたのである。


「うげ、行動遅延コンボかよ。そう言えばユウヒ城は氷原エリアだっけか」


 行動遅延、攻略パーティは深い空堀に落された事で、着地時にどうしても発生してしまう一時的硬直を受けてしまう、しかしそれだけならすぐに魔法で地上に戻る事が出来るはずだった。


 だが、下がただの空堀で安心した一同を待っていたのは、巨大な取水口の口が開く音と、そこから噴出する大量の【冷たい水】。この氷原名物冷たい水には、行動阻害のバッドステータスが付いており、さらに水の中には大きな氷の塊を混ざっていたらしく、氷の衝突による連続的な物理ダメージは、脱出魔法の詠唱を妨害した。


「そのうえ、真面に動けない所に頭上からサンダーチェインを放たれて全員に多段ヒットしたでござる」


 行動遅延に行動阻害、さらに詠唱妨害とコンボを決められた一同は、岸に上がろうと比較的昇りやすそうな城壁側に泳ぎ始める。しかしそんな攻略者を待っていたのは、城壁からせり出してきた複数の槍の様な装置から放たれた雷の魔法【サンダーチェイン】であった。


 この【サンダーチェイン】は、一人に当たると近くの人間に飛び火し、さらに他の人間へと攻撃が連なって行く魔法であり、効果は連続ヒットによるダメージボーナスと行動阻害の【痺れ】である。


「・・・流石魔王ユウヒ容赦ねぇ」


「巨大な氷と急激な水流でほぼ壊滅の様相は、阿鼻叫喚の地獄絵図でござった・・・」


 あまりに悪質なコンボの数々にヒゾウは蒼い顔で震え上がり、実際に攻略メンバーだったゴエンモは語りながら当時を思い出したのか、やはり蒼い顔で震えている。しかしそんな彼にはまだコンボが待っていた。


「・・・たぶん、落とし穴は重量設定をミスったから、そのせいで無駄に大きくなったんだっけ? 氷水は多分水源が原因だな。サンダーチェインは、機国エリアで廃狩りした時のゴミの寄せ集めだったような・・・」

 それはユウヒの口から漏れた真実である。先ほども述べた様にそれらの仕掛けには細かい設定が多数存在しており、巨大落とし穴は起動時の重量を重くし過ぎた事によるその他の自動設定で巨大になったようだ。


 さらに大きな氷の混ざった冷たい水は、背後の山から水を引いたことによるエリア補正によって生じた事であり、ユウヒの意志の下で設定された物では無かった。


 また、クロモリには複数のエリアがあると同時に、過去現在未来まで行き来することが可能で、雷の魔法はそんな未来世界産の電撃照射銃ゴミアイテムを寄せ集めて作られた物である。


「真実がひでぇ」


 自分達を苦しめた悪質コンボが、設定ミス、環境補正、さらにゴミ扱いされる様なアイテムの寄せ集めと言う真実に、開いた口の塞がらないゴエンモ、その視線に声無く苦笑いを浮かべるユウヒに、ジライダはげんなりとした顔でそう漏らすほかないのであった。


「ふーん? で? 中は入れたの?」

 周囲の者達は彼らの話しを半分程度しか理解できない様で、首を傾げながらも続きが気になるのか、未だユウヒ達に目を向けたままである。さらに話が理解できない様な表情のピクシーは、ユウヒの頭の上から良く分からない成りに楽しんでいるのか、話の続きを催促する。


「もちろん入れたでござる。人数揃えないと城壁の防衛機能が作動しないでござるから」


「なるほどぉそれは盲点なわけだね」

 ピクシーの催促に頷き入れたと言うゴエンモ、そう、この城壁には致命的な欠点があった。それは設定以上の重量がある程度城壁に近づかなければ、巨大落とし穴からの流水地獄コンボは発動せず、電撃に関しても効率の為に人数設定がされていて少数の対象には反応しなかったのである。


 大人数だから安心と思いきや、少人数の方が安全だったと言う使い古された様な盲点に、ナルボは感心したように頷く。


「まったくでござる。ただその後が酷かったでござる」


 頷くナルボにこちらも頷くゴエンモ、周囲でもその話に同意するように頷く者がちらほら窺える。そんな中ゴエンモの話は再攻略の為に編成された少数精鋭の話に移って行く。少数かつ高機動を考えて編成されたメンバーの中には、クロモリでもこっちでも忍者系の職に就いていたゴエンモも含まれていた。


「中か、外がそれならまた極悪トラップ満載か?」


「ごくあくって・・・」


「それが、最初は特に何も無かったのでござる。それで気が抜けたところに魔法系トラップと召喚系トラップが待ち受けてて・・・人数が半分になったでござる」


 少数精鋭の攻略メンバーは、相互補助出来る最少のチームに分かれると、何の反応も見せない城壁を跳び越えて行った。その後何事もなく内部で合流したメンバー達を待っていたのは、異様な静寂からの突然始まるトラップ地獄であった。


「・・・ねぇ」

 攻略メンバーを半壊させたトラップの説明をしようとゴエンモが口を開く、するとそこにピクシーから疑問の籠った声が差し込まれる。


「なんでござる?」


「あんた失敗したのよね? 何で生きてんの? もしかしてお化け?」

 その疑問は、ゴエンモ達とこの世界の住民との間にある齟齬が生み出した当然の疑問である。


 普通、戦争だの攻城戦だの失敗すれば高確率で死ぬだろう。さらに今話された内容からはどう考えても助かるとは思えないのが、ゲームなど知らない現実に生きるピクシーやエルフ達である。ゴエンモが周囲を見回すと、同じような疑問を持った者達が頷いたり首を傾げたりして注視していた。


「あぁ城攻めと言っても競技みたいなものだからな、人が死ぬような事は無い」


 その齟齬に気が付いたジライダは、誤魔化しと安心を与える為にそれらの出来事を安全な競技と言う事にしたようだ。実際それまで顔を蒼くして話を聞いていた者も、競技だと聞いて幾分安心したよな表情を浮かべている。一部は妙に感心したように頷く者や考え込む者、また過酷過ぎる競技を行う者達が居る事に驚いている者も居た。


「・・・まぁゲームだしナー」


 そんな周囲の状況に苦笑いを浮かべるユウヒと三忍は、ヒゾウが代表して彼らの心中を誰にも聞こえない小さな声で漏らすのであった。


「ふーん、それなら面白そうね。で? どうなったの?」

 競技と聞いて不安より興味の方が勝ったのか、珍しく真剣な表情を浮かべていたピクシーは、いつもと同じニコッとした笑みに戻ると、再度話の続きを催促する。


「おほん・・・魔法トラップにより、自然とルートが絞られる内部構造の先に広がる庭いっぱいの氷精と、そこから抜けたと思ったら今度は大量の武器やら鉄の塊が天井の召喚陣から落ちてくるトラップホール」


「うへ、只々めんどくさいなそれ」


 ピクシーの催促に、また気を入れ直したゴエンモのよるユウヒ城城内の出来事は、ゴエンモの喋り方も相まってより悪質なトラップに聞こえ周囲を引き込んでいく。


 始まりは移動阻害や強制移動トラップによる進路誘導、さらに怪しげなルートを避けさせる心理的進路誘導。その先には可愛い見た目に反し倒すのが面倒な氷精の群れ、そこを急いで掻い潜った先の建物内は頭上注意の看板と大量に落ちてくる多数の謎アイテム。


 リアルな設定が売りのクロモリでは、頭にトンカチが当っただけでも当り所によっては致命傷になるのだ。その何倍も大きな重量物が天井から降ってくれば誰だって逃げ惑うのは当然である。


「そして・・・その建物を抜けた先のメインガーデンに、ヤツが居たでござる。ある意味それまでに脱落した者達は、幸せだったのかもしれないでござる」


 それらのトラップを掻い潜った先に、ゴエンモのクライマックスが待って居た。


「ヤツ?」


「さっき言ってた工業ゴーレムか?」


 神妙な声と顔で語ったヤツと言う言葉にピクシーは首を傾げ、何となく察したジライダは正解を言い当てる。しかし、


「工業ゴーレムなんて嘘でござる! 後で調べたけどあれ外装は工業用だけど中身は別物でござる!」


 ゴエンモはその答えが気に食わなかったのか声を荒げて否定する。あんなものは工業用ゴーレムなんかじゃないと。


「別物?」

 口数の減ってきたユウヒの頭の上でわくわくした表情を見せるピクシーが首を傾げ、ヒゾウがオウム返しに気になるところを呟く。そう別物である。


「崩壊機国エリア産レアドロップ品だらけのレジェンド級ゴーレムでござる!」


 先ほど未来世界と言ったが、基本的に現在過去未来を頻繁に行き来する者は少ない。何故なら時代背景が違うのと同時に、ゲームのプレイスタイルも違うからである。過去や旧世界、ファンタジー世界などと呼ばれるユウヒ城のある世界観は、ファンタジーRPGと呼ばれるジャンルに区分され、内容もレベル制やコミュニティシステムなど一般的なMMOに酷似している。


 そんな過去エリアと違い、未来世界は人の生息圏が宇宙に進出した頃から、その文明が一度崩壊した後など複数のエリアに分かれており、そのプレイスタイルは過去エリアと違い一般的にFPSやTPSなどと呼

ばれるシューティングスタイルがメインである。


 このように異様なゲームシステムが作られたのは、なるべく多種多様なプレイヤーを呼び込むためであるが、同じゲームで好きなジャンルを遊べると言う事は意外に好評であった。またほとんどのプレイヤーが気に入った時代から本格的に出る事が無く、それは時代ごとに使えなくなるスキルが多かったことも一つの要因である。


「おぅ・・・それってファンタジー好きに外道扱いされてた廃人エリアか」


 そんな、過去エリアのスキル全般が使えなくなる未来エリアでも特に難易度の高いエリアが、宇宙文明が崩壊したエリアである。


 荒廃した未来都市や人の居なくなった都市で動き続ける暴走したロボットなど、自然豊かな過去エリアと全く違うそのエリアは、未来エリアでは珍しく魔法が使えるのだが、弱体化が酷く魔法を使うより銃で一発弾丸を発射した方が強く、過去エリアや剣と魔法のファンタジー好きからしてみたら行く必要性の無い世界であった。


「え? あそこって真面なドロップあるの? 採掘と発掘のエリアだろ? MOBドロで真面なアイテムあんの?」


「廃材ってのが出るぞ」


「それは換金アイテムだろ?」


 そんな世界の楽しみ方はプレイヤー同士のシューティングゲーム以外だと、トレジャーハント位であった。強力な暴走ロボットの目を掻い潜り、崩壊前の文明遺産を発掘していくのだが、その大半がコレクション品とされ、特に使い道が無い物とされている。暴走ロボットや生物兵器を倒しても、手に入るのは廃材と言うお金に交換できるアイテムだけである。


「ところがどっこいでござる。特定スキルの組み合わせで鑑定できるらしいでござる」


 しかしそこに盲点があった。どうやら魔法が使えると言う所に何かしらの世界観的繋がりがあったらしく、ゴエンモが説明したように過去と未来の特定にスキルを揃える事によってまた違う楽しみ方が出来たらしい。


「マジかよ、でもそんな美味しそうな話ならすぐに広まるだろ」


「だから、らしいなのでござる。情報ソースが少な過ぎるでござるよ」


 しかし、もしそんな要素があるとするならばすぐに広まるのが昨今のゲーム事情である。それがそうならなかったのにはいくつか理由があるらしく、その一つに鑑定出来たと言う情報が少なすぎると言う事のようだ。


 実際ゴエンモもウワサと実際に目の前で見た結果しか知らず、どう言った経緯で鑑定できるのかも分からない上に面倒な検証が多く必要な為、誰も今まで手を付けていない。


「俺も良く分からんが、特定のスキル取って機国系のMOB狩りまくってたら発現したっぽい」

 またユウヒの様に掲示板を利用しない人間も多い為か、情報がネット上に上がらず。さらにその奇跡の様な組み合わせと偶然の中で発言した鑑定スキルは、秘密主義者の手により徹底的に露営を防がれていた。あるのは誰かが鑑定した事で世に出回る謎のパーツとその完成品だけである。


「発現タイプのスキルか、趣味で大体取るスキルもメインにしてるエリアで別れっちまうからなぁクロモリ」


「まさに世界を股にかけた人間しか気が付かないスキルでござる」


 それらの事情を何となく理解したヒゾウとジライダは納得したように頷くと、伝説の希少生物でも見るかのように、ユウヒを見詰めるのであった。


「ねぇその話ってあのでっかいやつの事なんでしょ? 何がすごいの?」


「それはでござるな」


 全体の意味は分からずとも今の話が一号さんの事に繋がると直感で理解したピクシーは、特等席から身を乗り出すと、目の前のゴエンモに問い掛け、問い掛けられたゴエンモは過去に戦った一号さんを思い出し、調査結果も混ぜながら話を続けた。





 一方宴の席で話題に上がる一号さんは、


「へっぷし! う?」

 巨体を震わせ可愛いクシャミを漏らすと首を傾げて周囲を窺っている。


「・・・まいっか、それでどうしよっか?」

 しかし特に何かあると言うわけでも無かったのかすぐに視線を戻すと、腰を落ち着けた自分の周りで話し合いをする仲間達の輪に戻るのであった。


「やはり城壁からの方がいいのでは?」

 ユウヒの土地となったエリエス大森林深部の一角、その中央に広がる更地には大きな光る石柱が地面から生えており、夜の闇の中に十分な灯りを提供している。その周りでは、ユウヒの土地、いや領地を守るために残った見た目は工業用ゴーレムらしいゴーレム達が、一号さんを中心に何かの話し合いを行っていた。


「いや、ここは以前の世界の様に殺伐とはしてないだろうから、城壁は簡易式で先ずは城館からがいいだろ」

 ユウヒがこの世界に作り出したゴーレムは総勢20体、ユウヒと共にクロモリの世界を駆け抜けた記憶を持つ彼女達は、何を隠そう風雲ユウヒ城をユウヒと共に作り上げている。どうやら彼女達はこのユウヒの領地となった森に、新たなユウヒ城を作るつもりでいるようだ。


「んー私は御風呂からがいいなぁ」

 一体一体、いや彼女達は一人一人にしっかりとした個性があり、性格もまた様々である。そんな20人のゴーレムが揃えば会議は踊るし纏まるのも一苦労なようで、互いに意見を出し合っては仲良く検討を繰り返し、ユウヒを見送ってから始めた会議は未だに終わりを見せていない。


「お風呂かぁ重要だよね」

 今は城を建てる事は決定したが、何から建てるか話し合っているようで、一応彼女達の中のリーダーである一号さんは、交わされる会話の中から気になるところをピックアップしているようだ。しかし普通に考えてゴーレムに風呂は必要なのだろうか・・・。


「出来れば先に私たちの部屋も欲しいところ、いつまでも多層外骨格だけではな」

 城壁は簡易な物で済ませ、中身から重点的に作るつもりのようだが、ユウヒが不在の今は先ず自分達の事を優先するようだ。


「確かに、お姉さまはまだいいでしょうけど・・・」

 自分達の部屋と言う言葉に全てのゴーレム達が頷き、一際小柄なゴーレムが姉と呼んだ一号さんを見上げて小首を傾げる。流れる様な女性的曲線で構成される一番小柄な彼女でも、成人男性を越える体格であり、もし誰かが彼女達の話し合いを見ていれば感覚が狂い首を傾げる事だろう。


「うん、そうだね。先ずは皆の家からだね。それじゃどんなのにしようか?」

 そんな話し合いは進み、先ずは自分達の住居となる建物を作る事に決定したらしく、一号さんの問い掛けにより次々と姦しく案が出されて行く。


「5階建てくらいの無骨なラーメン構造!」

 素早い動きで手を上げたのは元気なボーイソプラノの中型ゴーレム、彼女の言うラーメンは当然麺料理のラーメンでは無く、一般に鉄筋コンクリートの中高層ビルなどに使われる構造である。


「格納庫もかねた、あーちこぞう!」

 若干の舌足らずな言葉で手を上げたのは小型ゴーレム、正確にはアーチ構造である。これは工場や体育館など広い空間を必要とする建物に使われる構造で、解りやすく言えば板付き蒲鉾みたいな形である。


「格納庫ならシェル構造が良い!」

 その隣の同じく小型ゴーレムは両手を握りしめて発言する。これも広い空間を必要とする建物に使われ、また曲面などで構成される為見た目も美しく作れる。しかしこれは卵と同じで面の力には強いが集中加重には弱いと言う欠点もあった。ついでに彼女が全力で力を振るえば、どんなに丈夫に作っても貫かれるだろう。


「あぁそれなら地下も欲しいなぁ」


『ほしい!』

 彼女達の発言は次第にエキサイトして行き、一号さんの何気ない地下も欲しいと言う言葉を皮切りに、より姦しい空気で森を満たすのであった。





 そんな楽しげな声が溢れる森と違い、こちらはゴエンモを中心に妙な空気で溢れていた。


「う、宇宙戦争時代の戦闘用ゴーレム・・・」


 どうやらゴエンモが調べたユウヒのゴーレムに関する説明は終わったようで、その内容を理解できる人物たちは絶句しているようである。因みにボーイソプラノな中型ゴーレムと舌足らずな小型ゴーレムなどは、この戦闘用ゴーレム(全天候型)に該当する。


「よ、要塞攻略用のシージゴーレム・・・」


 さらにヒゾウが呻くように漏らすこちらのタイプは、一号さんである。因みにネーミングの理由は、ユウヒが最初に作ったゴーレムだから一号さんであるが、この辺からユウヒのネーミングセンスの残念感が分かるだろう。


「あははは・・・そんなフレーバーテキストもあったねぇ・・・」

 ゴエンモの説明と妙な空気に乾いた笑いを漏らすユウヒ、しかしその乾いた笑いは何もゴエンモの説明によるものでは無い。実はゴエンモが解析できたフレーバーテキストは極一部であり、所持者であるユウヒが見る事の出来る内容には、さらにやばい事が記されており、そのことがバレなかったと言う意味での乾いた笑いであった。


「そんなバリバリの戦闘ゴーレムに工業用外装付けても、結局は戦闘用でござるよ・・・」


「ついでに、途中で空から降って来た金属の塊は、まだ手を付けてない謎パーツかな? 確か不安定な高周波ブレードとか暴発気味なレールガンとかもあったから鍛冶職系じゃないと手付けられない奴だと思う」

 一通りの説明を終えたゴエンモから向けられるジト目に開き直った様な笑みを浮かべるユウヒは、説明を追加する。ユウヒはゴーレム製作のスキルこそ持っていたものの、鍛冶やブラックスミスでは無かった為、使えなさそうな物は全部トラップ用の質量兵器として使っていたのだった。


「こぅわ!?」

「あの尋常じゃない切れ味のやつでござる!?」


 見る者が見れば喉から手が出るほど欲しがるようなレアアイテムも、ユウヒにとっては侵入者対策の良い凶器でしかなかったようだ。


「へ、へー・・・一号さんが居ればユウヒの里も安全なのね」

 そんなやり取りの9割方理解できていない様子のピクシー、それでもユウヒのゴーレムがいかに強力かと言う事は、忍者達の表情とニュアンスで分かったのか、その表情を引き攣らせている。きっと彼女の中で一号さんを怒らせる事は禁則事項のトップに記憶されたであろう。


「・・・(やはり遺産だったのか・・・その遺産を動かせるとは、興味が尽きないなぁ)」

 また逆に先程の会話を7割方理解してしまったナルボは静かに思考を巡らせると残り3割を絶妙な勘違いで保管し、ユウヒに対する評価を大きく上方修正させるのだった。どうやらこの世界はファンタジーだけでは説明できない何かがあるようだ。


「なるほど、それで守護者か・・・フルボッコにあったんだな」


「当然でござる。FPS廃人御用達エリアのシークレットなレアドロップ品で出来たゴーレムとか、勝てる分けがないでござる」


 一通りの話でようやくゴエンモの取り見出し様とトラウマを理解したジライダの言葉に、当り前だと言わんばかりのゴエンモは肩を落とし愚痴を零すと、喉が疲れたのかノンアルコールなジュースを飲み始める。


「過疎エリアに佇む城の中身は廃人レベルだったか・・・行かなくてよかったな」

「まったくだ。無謀だと聞いてたがここまで来るとチートだな」


「まったく、人の黒歴史を晒してさらに暴言とは、失敬なやつらだよおまいらは」

 いつの間にか自らの黒歴史の一端を、ゴエンモのトラウマ話としてばらされたユウヒは、さらに自分の事を酷評する忍者達にジト目を向けると、不満そうな声を漏らす。


「「「サーセン!」」」

 ユウヒの言葉尻からそこまで怒っていないと感じたからか、忍者達は大して感情の籠らない謝罪を返すのだった。この後電撃を喰らうとも知らずに・・・。


 また、そんな騒がしい一角の周囲ではユウヒに対する想像が膨らみ、様々な所でヒソヒソ話しが行われていることなど、この時の怒れるユウヒには気付くことが出来ず。ユウヒと言う人物に対する評価がおかしな事になりながらエリエス大森林緑の里の夜は更けて行くのだった。


 いかがでしたでしょうか?


 前も言いましたが、忍者がユウヒの黒歴史を漏らす行動には悪意はありません。善意でもないですけどね。


 それではこの辺で、またお合いしましょう。さようならー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ