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スプーキーズ  作者: 海月
1/2

その男、影のノ如ク黒キ

 どうも、筆者のZezeと申します。

 この作品は世間でいう”ちょっと変わった人たち”の、それでも彼らの中の普通の、極一部を綴っていく冒険復讐劇です。

 作品はオムニバズ形式で、毎回違った人物の視点から物語が始まり、一人の男の復讐劇を中心に動いていきます。

 長い物語ですが、この物語に付き合ってくれる方、ちょっとでも読んでくれる方がいたら、筆者としては、それだけでも幸いです。

 では、長い長い物語を、時間の許す限り、ごゆっくりお楽しみくださいませ。

 その世界は見渡す限り広く、しかし目の行き届かないところにいけば限りが見えてきそうでいて、それでいて世界は膨張を続ける。

 そしてその世界には人間という生き物が存在し、人間には人格、そして精神というものがあった。

 その精神というものには個別というものが存在し、それは肉体以上に個性というものを、人間にもたらしていた。

 "それ"は一見、一定された範囲内で活動しているように見えるが、しかし見る角度によっては規格外性を生み出すこともあった。

 そうなると"それ"は、異質なものとされ避けられてしまうこともあった。

 でも、でも、だ。

 他方からは異質だとしても、本人にとってはとても大事で重要で、いたって普通なことだとしたらどうだろう?

 しかし、それでも、人はそれを異質異端だといって遠ざける、本人には普通であっても、だ。

 これは、そんなちょっと変わった人たちと出会いながら進む、ちょっと変わった一人の男の、


 へ ん て こ 復 讐 劇 である。


 さて、世界を覗き込んでみよう、今回は寒い国のお話、昨晩粉吹雪が舞った次の日の話だ。

 天候は昨日のことが嘘のように晴れ晴れとして、しかしそれでも積雪は高く、いくら長ブーツを履いていたとしても、裾ぎりぎりまで埋もれてしまうほどだ。

 それでも、さんさんと輝く太陽は、厚く積もった雪を溶かすには力が足りなかった。

 そんなヒリリと冷たくてたまらない街中、正確には道路の端っこ、行き交う人々が避けて通り、不審げに見る先に、半分を雪に埋もれさせた真っ黒なカタマリが落ちていた。

 時折動いて見せている辺りでは、見た感じ、黒いビニールのごみ袋ではないようで、どちらかといえば生物に近いのかもしれない、が、断定はできなかった。

 そんな真っ黒の上に、ふと、これとは別に、薄黒い小さな影が覆いかぶさった。

 そして黒い物体は不意に、意思とは別に上半身をわずかに宙に浮き上がらせ、そうすることで初めてその正体が分かった。

 カタマリは、うつぶせの格好で倒れていた全身真っ黒の衣装の、一人の男だった。


 俺は、冷えて凍える体に、ジワリジワリと温もりが浸透してくるのを感じた。

 ぼんやりと目が開く前で、暖炉に炎が燃えているのが見え、ふと傍らに目をやると、小さな机には湯気を立ち上らせる小さなカップのココアがあった。

 俺は、パンツ一丁の裸に布団をかぶせられた姿で、イスに揺られて目を覚ました。

「ここは、どこだ」

 といえば、どこかの家の、どこかの部屋、ということくらいしか形容しがたい、いまだ冷える体に身震いした。

 そこで声をかけられた。

「手元の机の上にあるじゃない」

 少女の声だ。

 さっきの口からこぼれた言葉への、返事らしかった。 確かにココアが傍らに置いてあるのは分かった。

 俺は、"ココア"じゃなくて、"ここは"と言ったんだよ、場所について言ったんだ。

「目が覚めたのね」

 後ろを振り返ると、そこには、金髪のショートヘア、ワンピースを着た変な少女がいた。

 理解した。

 この季節はずれの服を着た変な娘が、俺を助けたんだ。

「なんだ。オマエ」

「あたし? あたしは、ユニエル・キャロット。8歳で、好きな食べ物はグラタン、嫌いな食べ物はニンジン」

「待て、そういう意味じゃない、名前は分かったが、オマエはなんな・・・」

「うん? 普通の町娘だよ」

 嘘だと思う、絶対、頭のネジが2~3本外れてると思う、普通の娘はこんな真冬にワンピースなんか着ないからな、あと人の話は区切らせるのは少し腹が立った。

「ええと、だ。お前が俺を助けてくれた。ってことでいいの・・・・」

 そこまで言って、今度は俺が言葉を区切らせた。

 毛布を跳ね除け、今一度裸にされていることを確認すると、今度はパンツの中を探った。

 パンツの中には、男に必要なモノだけが在った。

「どうしたの? 荷物なら暖炉の横に干してあるけど」

 少女、ユニエルが指差す先、ブロック暖炉の横に、俺の荷物であるコート、シャツ、ズボン、刀とナイフもリュックの横にあり、麦藁帽子が刀に掛けてあった。

 すぐさまそこに手を伸ばし、ズボンを手に取るとベルトの辺りを見た。

 ベルトには銃をしまうホルスターが掛けられていたが、肝心の中身が無かった。

 無い。

「何を探しているの? 単純に脱がせただけだから、お財布には触ってな・・・・・」

 俺はユニエルにズンズンと近づいて両手で両肩をつかみ、大きく揺さぶった。

「拳銃があったでしょう!? リボルバーがホルスターに入ってただろう!」

「キャ!? し、知らないよ、見てない! 武器だなんて危ないもの、まごの手に引っ掛けて運んだんだよ?」

「盗ってないのか!? 嘘じゃないだろうな? もし嘘だったら!」

 ガキが泣きそうな顔をして小刻みに震え、こちらを見上げている。

 そういえば、子供と女は手に書ける趣味は無かったっけ、攻撃してくるなら別だがな。

「ちっ、分かったよ、とりあえずは保留にしてやる」

 俺は暖炉ブロック横の荷物をひったくり、まだびしょぬれなシャツ、コート、ズボンの穴に手足を通し、麦藁帽子を深く被って、刀を腰に身支度をした。

 その様子を見ていたバカ娘が、尋ねてきた。

「どこ行くの?」

「街中を探してみる、もし露店なんかで転売されてるのを見つけたら、タダじゃおかないからな」

 玄関はどこだと探すと、バカ娘にこっちだよと案内された。 玄関で自分の靴を見つけて履く途中、ずっと思っていたことを言ってやった。

「オマエ、この気候でワンピースなんか着て寒くないのか?」

 そしてらバカ娘は、律儀にもこう返事をした。

「だってお気に入りなんだもの、それに暖炉があるから寒くは無いよ」

 さっきまでの泣き顔が嘘のように、バカ面下げて笑いやがった。

 ふん、まぁ、本人が気に入ってそうしてるならいいかもしれんが、そうなると光熱費がバカにならないんじゃないだろうか、資源は大切にしろよ、しかし、だ。

 もし本当にリボルバーを知らないというのが嘘だったらどうするか? 主義だから子供殺しはしないにしろ、それ相応はしてやると決めた。

 そうして町に出てから、2~3時間が経った。

 いくつかの店を探し回ったが、"あの"リボルバーはぜんぜん見つからない、探索を始めて9件目か、この街は広い、広いがその分、露店だけじゃなくアンティークショップもたくさんあるようだ。

 同じ道や店に出てしまうことも度々あったが、かれこれもう10kmくらいは歩いたと思う、でも普段の旅からすれば、これくらいの距離はどうということはなく、まだまだいけそうだった。

 ・・・・と思ったところでいきなり訂正だ。

 あまり慣れない雪道のせいか、普段よりも足腰が疲れてきた。

 腹の虫も、<ぐぅ>と情けない声を上げやがった。

 なんだこりゃ、早く見つけださなきゃならんのに、体の力が抜けていくのを感じ、俺は今朝のようにまた前のめりに倒れた。

 せめて倒れるときくらいは、真上を向いていたいものだ。


 それから何時間経ったか、俺は再び、あの家のあの部屋で目覚めた。

 ぼんやりする頭に、ほのかにいい香りが漂ってきた。

 いつの間にか、もう夕飯の時間になっていたのか、目の前の机の上に、ホワイトシチューの入った皿が置かれてるのに気がついた。

「あ、目が覚めた?」

「また、オマエか」

 目をやった向かいの席に、ユニエルが、ほっぺたにシチューをつけて、ケラケラと笑っていた。

 シチューを見て、俺の腹が、また情けない声を上げた。

 それを聞いたバカ娘が笑った。

「おなか空いてたんだよね、それ、食べてもいいから」

 俺の前に置かれていたシチューとスプーン、もうひとつの皿に載せられたひとつのパンを指差した。

「なんでまた助けた」

 俺は挨拶もなしに、とにかく手を伸ばしてパンをつかんで、かじりついた。

 ユニエルは、俺の挨拶もなしのいきなりの食事の開始にも、またいまさらな質問にも何一つ文句を言わず、ただ答えた。

「倒れてたから」

 今なんつったかこのバカ娘、底抜けのバカなのだろうか。

「倒れてたからだよ」

 バカ娘は、パンを口でモゴモゴさせながら、二度目を言った。

 あー、分かった分かった、俺はノラ犬かノラ猫かよ、返す言葉もなかった。

 でもただひとつ、これだけは言っておいた。

「そうやって勝手に助けて、俺が暴漢だったら、どうするつもりだったんだ」

「ぼーかん? なにそれ?」

 バカ、バカ、バカ、バカ、ブァーカッ、やっぱバカだね、この娘は、そう思った後、丁寧に説明してやりましたとも、女の子をふん縛ったりして、あれこれしちゃう男のことだよ、とな。

 これを聞いたユニエルの瞳が、一瞬、すっと拡がったような気がした。

 まぁ、子供には過激だったかも知れんな、だが聞くほうが悪い、あぁ、そういえば、だ。

「オマエ、親はどうしたんだ」

 深夜勤めなのだろうか、でも、それなら日中いなかったのは変だと思えた。

「オヤ? おやって、何?」

「パパとママのことだよ」

 それを聞いたらユニエルは、また瞳をすっとさせて、視線をシチューの皿に移した。

「知らない」

「知らないって、オマエ」

 それからはだんまりで、しばらくの間、スプーンが皿をこする音のみが響いた。

 その沈黙を破ったのは、ユニエルの方からだった。

「シチュー、おいしいね」

「あ? あぁ、確かに美味いな」

 ニンジンが入っていないのはこいつがニンジン嫌いだからだろう、でも、空っぽの胃袋には本当に美味かった。

 俺が、シチューにがっついているのを見ていたユニエルが、ケラケラ笑いながら言った。

「自信作なんだよ、ホントはグラタンの方が好きなんだけどね」

「ふーん、お前が作ったのか」

「うん」

 笑顔の返事だった。

 すると、今度はこんな話題を切り出してきた。

「探し物は見つかった?」

「・・・・いいや」

「武器なんてダメだよ、みんな死んじゃう」

「あぁ、そうだな、でも、大事な物だ」

 右手で銃を握る形を作った。

 そう、大事な物なのだ。

 あれが無ければ俺は・・・・・

 今度は俺の沈黙で、また静かな時間が流れた。

 シチューが空になる頃、今度は俺が、俺のほうから沈黙を破ることにした。

 空になった皿を流し台に持っていくユニエルの背中に向かって、一言、言っておいた。

「ありがとうな」

 そしてらバカ娘は、また笑った。

 ケラケラ、ケラケラと、な。

「ねぇ」

「なんだ」

 洗面台で泡立てる背中のほうから質問が来た。

「おじちゃんは、なんて名前なの?」

 今更の質問だ。

据わって背中を見つめる方は、思わず噴出してしまった。

 背中からは、ケラケラ声が返ってきた。

「ブラック、でいい。そう呼んでくれ、それとおじちゃんはよせ、まだそんな年じゃない」

 洗いものを続けていた手が止まり、その背中を振り向かせた顔は、目をパチクリして、俺をまじまじと見つめた。

「黒?」

「そうだ。いつからか、そう呼ばれるようになった。だから、それでいい」

「見たまんま、だぁ!」

 両手を挙げて万歳をするユニエルは、手から泡を落としつつもかまわず、出会ったばかりの俺がこいつを知っている限りでは、最高の笑顔を作った。

 何がそんなにうれしいのだろうかね?

 

 そう、真っ黒だ。

 少し赤みがかっているが、肌も、

 長くぼさぼさに伸びた、髪も、

 コートも、ズボンも、返り血を浴びて、

 そういえばリュックの布地も、

 シャツだけは取り替えて白だが、

 経歴も、あるときから、今に至るまで


 全部、真っ黒だ。


 でも、今は、それでいい。

「それで、いいんだ」

 それを聞いたバカが、ぱっと両腕を広げたまま、こう言った。

「じゃあ、私が白になってあげる」

 バカだ。

 そうだな、世界有数の三大美女も真っ青のバカがここにいるぞ、俺はとうとう、大声を出して笑い出してしまった。

 それを見て、ユニエルも大笑いしだした。

 何がこんなにも可笑しいのか全然分からない、でも俺は、久しぶりにしたの大笑いで笑い涙を流す中で、思い出した。

 過去に置き去りにされて、でも忘れられない"あの笑顔"を思い出して、一粒、本物の涙を知らぬ間に落とした。


 俺はこのとき、"このこと"に気づいていなかった。

 これから、ずっと、ずっと後になってから"このこと"に気づいた。

 そして、そのときには、すでに手遅れになっていた。

 でも、今は今だ。


 バカ娘が質問してきた。

「ねぇ、ブラックは、どうして麦藁帽子を被っているの?」

「あ? これか、これも大事な物のひとつなんだ」

「そうなんだ。やっぱり、かな、ブラックって旅人さん?」

「まぁな、ちょっとした事情で世界を歩いて回ってる」

「ふ~ん、だから寒い国なのに、被っているんだね」

 俺はそう言われてから、麦藁帽子をいったん脱いで、テーブルの上に置いた。

 それからこう言った。

「でも、こいつは別に、無くしたとしてもいいんだ」

 聞いて、ユニエルは不思議そうな顔をした。

「どうして? 大事な物なのに?」

 俺は手を合わせて、それから指で何かを編むような動きを見せてやりながら言った。

「"あいつ"がな、俺の、作る帽子は最高だって言ったんだ。だから、無くしたとしても、壊したとしても、また一から作ればいいんだ」

 動作を見せてやった後、帽子を被りなおして、藁の編みこみの隙間から天井を見上げた。

 見上げた先の電灯は、太陽ほどではないが、意外と眩しかった。

 そうだな、さっきの大笑いのお返しにひとつ、意地悪を言ってやるとした。

「あぁ、そうだ。あのリボルバーが、もし見つからなかったら、そのときはオマエを、さっき言った女の子をふん縛る目にあわせてやろうかと思ってたんだ。まぁ、今はもう、そんな気は起こらんがな」

「・・・・・そうだったんだ」

 それを聞いたユニエルの瞳が、また、すっと拡がった。

 何か引っかかるな、でも、でもだ。

 さっき言ったのは意地悪だからやらないとしても、もし、本当に、あのリボルバーが見つからなかったとしたら、どうするか、それだけが考えられなかった。

 一応、言っておくことにした。

「あぁ、でもだな、冗談だけども、それは最悪の場合であって、普段はそういうことはしないんだぜ? 冗談だ、冗談だとも」

 俺はロリコンでもないからな、そして俺にはそういうことをしている暇がない。

 ふと時計を見やると、夜の10時だった。

 金の持ち合わせがこの間の宿で底をついたのを思い出し、仕方がないので、これをひとつの縁と思って、少し情けないことを言うことにした。

「あぁ、えぇと、だな、ユニエルさん、実は俺、金を持ってなくて、だから宿場も取れなくて・・・・・」

「あっ、もう夜の8時だ。ねぇ、ブラック、もし泊まるところが無かったらだけど、もしよかったら家に泊まっていってもいいよ」

「その、外は寒いし、良けれ・・・・ お?」

 宿場問題が、どういうわけかすんなりと解決した。

 呆気にとられてばかりだ。

 それか俺が甘ちゃん過ぎただけか、いや違う、そうかもしれないけれども、大部分はこのバカ娘のペースにとられているだけだ。

 "この俺が"かよ? たかが変な町娘一人相手にか?

 我ながら呆れた。

しかし結局、この日は、この家の布団に世話になることになった。


 次の日の朝、ユニエルに起こされ、パンをご馳走になってしまった俺は、腹を満たした後に早速、リュックを背負い、刀を手に麦藁帽子を被り、なくしたリボルバーの捜索を再開した。

 まずは昨日訪ねた店のうち、数件を再び訪問して店主に問い詰めたが、やはり見つからなかった。

 ラチが空かないので、この町の別の区画を探してみることにした。

 昨日の今日である、足がもう疲れてきやがった。

やはり到着したばかりの街で、十分な休養もせず、旅続きのと、二日連続で歩き続けようというのがいけなかったか、それともやはり、足にまとわりつく積雪のせいだろうかと思った。

 座るところが無いので、休憩をかねて棒立ちをしていると、ふいに声をかけられた。

「お兄さん、お兄さん」

 そいつは露天商の親父だった。

 狸腹で、怪しいサングラスで、分厚いコートを着て、とにかく怪しい親父だった。

「黒が良く似合うナイスガイさん、ちょっとウチを見ていってよ」

 相手にしたくないタイプの人間だった。

 でも、一見して雑貨商人か、まさか、な、一応除いておくことにした。

 露店親父に尋ねた。

「何がある」

「アクセサリーから、とんでもないモノまで、なんでも揃えちゃってますよん」

 ウザイもみ手はシカト、とにかくコイツにも問い詰めた。

「リボルバーを取り扱ってないか、それも、とびきり変わったやつだ」

 すると、露店親父はヘラヘラと薄気味悪い笑みを浮かべて、懐から何かを取り出した。

「おっ? どこかで洩れたかな? ちょうど昨日、仕入れたんですけども、これが妙で・・・・・」

 露店親父が取り出したのは、銀色の拳銃だった。


 見つけた。


 俺は露店親父の手首を握り絞めた。

「まさかあぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁ!!!」

 俺の突然の大声に、露店親父、通行人、ついでに鳩が飛び立ちと、老若男女が驚いてこちらに振り返った。

「てめっ、コレをどこで拾ったっ!」

 露店親父が驚きと手首の痛みに目玉をひん剥き、うめきながら声をひねり出した。

「ど、道路に落ちてたんだよ、見たところハンマーも無いし、弾だって込めようにもブロックが開かないし、玩具かと思ってたんだけど、お、お兄さんのだったのかい?」

「あぁ! そうだったんだよ、だから返せ!」

 露店親父の手首が、メキメキと音を立て始めた。

「痛い痛い! 分かった、分かってから、手を離して、何もねだらないから、タダでいいから!」

 露店親父の手から、リボルバーが零れ落ちて、積雪にボスッと埋まった。

 手を離してやって、念願の落し物を拾うと、特にいじられていないか確認をした。

 それから適当に、リボルバーを宙に向けて構えてみて、ターゲットサイトをにらみつける、標的は適当に、ここから約30メートル先にあるとまれの標識に決めた。

 いまだ観衆の視線が集まる中、トリガーを引いた。


 <バンッ!>


 とまれの標識に、何かがぶつかる音が響いた。

 一瞬遅れて、突然の大きな音に、周囲は騒然となった。

 俺は周りのことなど構いなく、"リボルバー"の調子のよさにうなずき、ホルスターに銃身をしまった。

 やがて、騒ぎを聞きつけた警官が2~3人集まりだした。

 そのうちの一人が、俺の姿を確認すると、無我夢中で無線機に呼びかけた。

 やれやれ、面倒なことになった。

 俺はトンズラをこくことにした。


 トリガーが引かれたとき、銃声は無かった。


 別の区画まで逃げおおせた俺は、逃げる途中で隠れたパン屋でアンパンを万引きし、パン屋店主にバレて、さらに街の深くまで逃げることになった。

 つぶあんの甘さが疲れきった心を癒してくれたが、体の方までには癒しが行き届くことは無く、俺は結局無駄に疲れることになった。

 ゼーゼーと方で深い呼吸をしていると、ふと、離れて前を歩く偶然の姿に気づいた。

「オマエ、こんなところで何やってんだ」

 ユニエルのやつがいた。

「あっ、ブラック!」

 バカ娘がこっちに向かって走ってきた。

「ここ、オマエの家から結構遠いじゃないか、こんなところまで来て何やってるんだ? 買い物か?」

 バカ娘の返事はこう言った。

「ブラックが、また倒れてるんじゃないかと思って」

 げんなりだ。

 あぁ、確かに俺は、旅の途中で行き倒れになることがしょっちゅうあるが、そのたびに、あぁ、そのたびに、こいつみたいなお人好しに助けられていたんだっけ、否定できないのが情けなかった。

「さっき、アンパン食べたから平気だ」

「万引きはだめだよ」

「・・・・なんで分かるんだ」

「だってブラック、お金持ってないって言ってたじゃない」

 悔しくて返す言葉も無い、おっと、ひとつだけあった。

「ふん、オマエこそ、そんな小さな足に、こんなところまで来れる力があるとは思えないな」

 かなり情けない負け惜しみかもしれんが、俺にだって意地くらいはある、大人の力を行使した俺の勝利だ。

 ふと、ユニエルは明後日の方向を指差した。

 指された指の先には、路面電車の駅があった。

 あー、俺はどうしてもこのバカ娘には勝てないらしい、警官には勝てるのにな。

 最強のバカ娘が、俺の手を引っ張った。

「これから教会に行くの、ブラックも一緒に行こうよう」

「あ? 教会だと?」

 丁度疲れていたところだ。

 ガラじゃないが、休憩するには悪くないだろう、ついていくことにした。


 連れられた先は町の一角、まんま絵に書いたような教会だった。

 ちょっと違うところがあるとすれば、その教会には墓地が無く、代わりに多量の花畑が広がっていた。

 玄関のドアまでつき、湯に得るがドアを開けながら一言言った。

「こんにちわ、スローニ神父」

 ユニエルと俺が入って、礼拝堂に並んだ椅子のずっと向こう、十字架の前に一人、例は衣服の初老の男がこちらを向いた。

「こんにちわ、ユニィ、今日もお元気ですね、おや? そちらの方は?」

 互いに歩み寄っていく途中で、神父が俺に気づいた。

 ユニエルが笑いながら言った。

「えへへ、私のお友達、ブラックっていうんだよ」

「どうも」

 俺も会釈をし、互いに適当な位置で立ち止まった。

「そうですか、ユニエルさんのお友達の方ですか、初めましてブラックさん、私、当教会で神父をしています、スローニ・ラグナと申します」

「いや、丁寧にどうも、でも俺は信徒でもありませんし、ちょっと休憩がてらに立ち寄っただけですから」

「構いませんよ、神の御心は寛大ですから、どうぞ好きなだけ、おくつろぎください」

 そういう神父の笑顔に、何か勘に障るものを感じたが、俺はもう散々に疲れた。

 椅子を二つ借りて、ひとつにリュックを置いて刀を立てかけると、もうひとつにどっと座り込んだ。

 すると神父が、俺の刀を見て一言つぶやいた。

「ほほぅ、なかなか良さそうな剣ですな」

「分かるのか」

「ええ、私もサーベルを振るっていたものですから」

 俺は神父の体格を見て、ひとつ聞いてみた。

「今でもやっているように見えるがね」

 神父は首をかしげて、こう返した。

「いやいや、さすがに今は体がついていきませんよ」

 そして、神父はキョロキョロと何かを探し始めた。

「そういえば、ユニィの姿が・・・・」

「あいつなら外の庭で、バカみたいに鳥を追っかけてるぞ」

 窓を見やれば、バカ娘がケラケラ顔で、白い鳥を追い回して遊んでいた。

 そうだな、あまり詮索しすぎることではないかもしれんが、暇つぶしもかねて、神父にも聞いてみた。

「なぁ、神父さん、あいつ、ユニエルには親がいないのか、聞いても何も言わないんだが」

「・・・・・あの子の両親、ですか、両親は2年前にですね、亡くなられたそうなんです、身よりも無いものですから当教会で引き取ろうかといったんですけどね、どうしても家がいいと言うものですから、だったら、たまにでも遊びにおいでと言ってあるんです」

 だからか? 親はどうしたと聞いたときに、変な反応をしたのは、でも、それにしてはまだ何か変な気がした。

 もう一声言ってみた。

「他には、何も無かったのか?」

「え? どうかしました?」

 それが神父の返事だった。

 それからして、ユニエルが、遊びつかれたのか戻ってきた。

 ケラケラ顔に、汗が薄くにじんでいた。

 戻ってきたユニエルに、神父はしゃがみこんで目線を合わせて言った。

「おかえりなさい、ユニィ、あぁ、そうそう、忘れるところでした。そろそろ、いつもの時間ですよ」

「えっ? あっ・・・ うん・・・・」

 すると、ここでもだ。

 ユニエルは何か変な反応をした。

 俺は尋ねてみた。

「なんだ? いつもの時間って?」

 聞いてもユニエルは不審な反応をするだけで何も言わず、すると神父が言った。

「懺悔ですよ、ほら、ここは教会でしょう?」

 そうなのか?

 まぁ、確かに間違っちゃいないだろうが、懺悔というのはそうにも緊張するものなのだろうか?

 ユニエルは少し何かを考えるようにしてから、こう言った。

「あのね、ブラック、私、ちょっと神父様とお話があるからここで待ってて、すぐに終わるからね」

 そうしてユニエルと神父は、礼拝堂の隅の扉を開けて、その向こうへと行ってしまった。

 それから数十分が経ったか、あの娘は、すぐに、とは言っていたが、俺はずいぶんと待たされていた。

 懺悔とはそうにも時間のかかるものなのだろうか、考えてみたが、俺には分からなかった。

 考えているうちに、ユニエルだけが、礼拝堂に戻ってきた。

 俺はユニエルに声をかけた。

「結構時間かかったな、もう、いいのか?」

「うん、もういい」

 俺のところに来たユニエルは、さっきよりも挙動不審で疲れた様子で、俺から目をそらして返事をした。

「何かあったのか?」

「別に、何も、そろそろ帰ろっか、電車賃おごったげる」

 聞く俺の言葉にもよそよそしく、ユニエルは俺の手をつかみ、引っ張り出した。

 俺は仕方が無く、刀を手に取って椅子から立ち上がり、二人して教会から出ると、歩いた離れにあった道路の中央分離帯、路面電車の小さな駅に向かった。

 乗った電車の中で揺られながら、俺は再度追及してみた。

「神父と何話してたんだ?」

 横に座る娘はチラッと俺と目を合わせて、すぐに視線を窓の外に移した。

 視線を窓の外に移す途中で、ユニエルは、ぽつり、と一言。

「ひみつ」

「ひみつって、オマエ」

 それからは無言で、やはり何も答えてくれなくなってしまった。

 やがて下車駅に着いたのか、湯に得るが俺のコートの端をつかんで手で引いて、何も言わず席から立ち上がった。

 下車する中で、一応宣言したとおりか、ユニエルは、電車賃を俺の分まで、自分の財布から払ってくれた。

 俺たちは路面電車を降りた。

 降りて、そこで俺は、ふと気づいて、背中をさすって確かめた。

「あっ!」

 声を上げる俺に、ユニエルがぽつりと指摘した。

「ブラック、リュック忘れてる」

「なんで早く言ってくれないんだ! どこだ、どこに置いてきたか!」

 今朝背負って出かけた。

 昼ごろにリボルバーを見つけた。

 それで警官から逃げて、その後ユニエルと会って、協会に行くからと言われてついていって、それから、そうだ思い出した。

「そうだ、教会だ」

「バカ」

 あー、腹が立つぜ、バカ娘にバカと言われた。

「明日取りに行けば? 私はもう帰るから」

 ユニエルはそう言うと、一人で歩いていってしまった。

 あー、もう、確かにそうかもしれんが、あのリュックには旅に必要なものがいろいろと入ってるんだ。

 時間がどうであれ、今日中には取りに戻りたい、なんとも面倒なことになった。

 俺は夕暮れを一人突っ走り、2~3度滑って転びそうになりながらも、来た道をまたさらに往復して、すっかり暗くなったころに教会に着いた。

 玄関の前で息を整え、一息ついてからドアに手をかけた。

 一瞬、時間も時間だからしまっているかと思ったが、鍵は開いており、難なく教会の中に入れた。

 すっかり暗くなった誰もいない礼拝堂の中で、ずらりと並ぶいくつもの椅子の中から、数刻前まで自分が使っていた椅子を見つけるのにまた一苦労をし、なんとかその場所を見つけ出した。

 しかし、どういうわけか、あの黒いリュックは見当たらなかった。

 色のせいで暗闇の中に溶け込んだのかとも思えたが、月明かりのおかげで手元はよく見えたので、それは否定できた。

 リボルバーの次は、リュックを無くしたか、いや、場所が場所だし、もしかしたらあの神父が忘れ物として保管しているのかもしれないか、ならばあの神父を探すことにした。

 礼拝堂の隅の扉も、運が良かったのか鍵が開いていて、向こう側に行くことができた。

 扉の向こうの廊下は、俺よりも真っ黒な暗闇がずっと伸びていた。

「もしもーし、スローニ神父さーん」

 暗闇にに向かって一回呼びかけてみた。

 返事は無かった。

 俺は仕方が無く、廊下のもっと奥深く間で進んで、もう一回声をかけてみた。

 やっぱり返事が無かった。

 もっと進んでみることにしたが、廊下の通路が分かれてきて、奥まっていくほどにだんだん入り組んだ形になってきた。

 いい加減出てきてほしいぜ、ボヤキながら歩く中、俺はふと、歩みを止めた。

 前後確認、左右確認、来た道を少し戻ってみることにした。

 が、どうにも自分が歩いてきた道とは違っている気がしてならなかった。

 俺は迷子になった。

 そこからしばらく道を戻ってみたが、ぜんぜん礼拝堂の扉がある場所に出る気配がしない、正直この展開は勘弁してほしかった。

 ずっと歩いていると、しばらくして、何か明かりのようなものが薄っすらと見えてきた。

 やっと人のいる気配を感じ取り、近寄ってみると、ドアがあり、明かりはその隙間から漏れていた。

 向こう側からは、話し声のようなものも聞こえた。

 耳を澄ますと片方はあの神父のものだった。

 客でも来ているのか、こんな時間でも懺悔というものをやっているのだろうか、どれ、いきなり開けずにドア越しにちょっと聞いてみた。


 聞いてみたものは、予想とはかけ離れたものだった。

 そして俺は、とても腹が立った。


 気に入らない、神父の野郎が、"あいつ"が、このやり方が気に食わなくて仕方が無かった。

 体に力が入る、と、俺の足元が、じりっと音を立てた。

「ん? 誰かいるのですか?」

 案の定、ドアの向こうからは神父の声、俺はドアから数歩下がった。

 ドアが開き、神父が姿を現した。

「あら、貴方は確か、ブラックさん、でしたか」

 その様子に俺は、何食わぬ顔と、まるでたった今来た様を装って言った。

「お、やっと見つけた、こんばんわ神父、ええとですね、昼にこちらに来たとき、ちょっと忘れ物をしてしまいまして、黒いリュックなんですがね」

 俺は気づかれないようにチラリと横目で、中の様子を伺った。

 そういうことか、もう一人、客人の方は、昼間に騒ぎを起こしたときに、無線で応援を呼んでいた警官だった。

 畜生め、これだから警官なんてのは嫌いなんだよ、警官の方はというと、目が合っちまったのに不自然に無視してきやがった。

 神父が言った。

「あぁ、ブラックさんのものでしたか、こちらで預かってますよ、お待ちください」

 いったん部屋の中に戻った神父は、黒いリュックを抱えて、再び俺の前に現れた。

 あの癇に障る笑みを浮かべながら、両手でリュックを差し出してきた。

「お待たせしました、さぁ、どうぞ」

「どうも」

 俺がリュックを背負っていると、神父が尋ねてきた。

「そうだ、ブラックさん、さっき何か聞こえませんでしたか?」

「いえ、何も、多分俺が呼んでいた声じゃないですか、ここにたどり着くまでに何度か呼び声を上げたんですけどもね、聞こえてたんなら、出てきてくれればよかったのに」

 互いに互いが、何食わぬ顔で問答を交わした。

 しかし、神父の顔、笑みを浮かべる顔の目が確かに据わっているのを、俺は感じていた。

 ひとつ礼を言って、教会から出た。

 教会から出た後、歩き、少しずつ歩みを速めた。

 時折後ろを気にして振り向くも、今のところは問題無しのようだった。

 しかし、どうにも気に食わない問題だが、相手が相手である、こちらから手を出すにしても、決定打となるような手が思いつかなかった。

 それよりも、今はどうするか、だ。

 ユニエルのことを考えると、今日はあいつの世話になる気にはなれなかった。

 かといっても、野宿をするにしてもこの街は寒すぎた。

 よし、ちょっと運試しでもすることにした。

 人通りの多い道から、暗くて細く、まず誰も通らなそうな裏路地を選んで歩いた。

 歩いて、歩いて、探し回った末に、俺の運はツキに回った。

 薄い明かりの下で、チンピラ風の男が数人、ひ弱そうな男一人を相手に、カツアゲをしている現場を発見した。

 すぐさま俺は早足で近づき、何を言うこともなく、ずいっとそいつらの間に割って入った。

 カツアゲ犯のうちの一人が、突然乱入してきた俺に向かって、いちゃもんをつけてきた。

 でも、関係ない、無視して、俺はまず、何も言わずにそいつを殴り倒した。

 他の連中がこれに逆上し、まとめてかかってくる、俺は続いて二人目を蹴り飛ばし、三人目を張り倒して、後ろからつかみかかってきた四人目を背負い投げた。

 そうして、あっという間にチンピラ全員を伸し上げた。

 被害に合っていたやつが礼を言ってきたが、俺はこいつには用はないので適当に返してやった。

 さて、俺が用のあるのはこのチンピラどもだ。

 倒れて伸びているチンピラ全員の懐から、金銭という金銭を巻き上げてやった。

 そうしてかき集めた金は、しけたものではあったが、宿場で一泊するにはちょうどいいくらいの量になった。

 すると、だ。

「これはこれは、ちょうどいい」

 通りに戻ろうとした俺は、一人の男に呼び止められた。

 あー、問題が起こった。

 そこには、一人の警官がいた。

 しかも、さっき教会で神父のやつと話していた、あの警官、今見たくない顔ワースト3の人間だ。

 警官は警棒を片手に肩を軽くたたきながら、周りに倒れているチンピラたちを見やり、そうして俺のほうをジロジロと見ながら言った。

「あの話を聞かれていたかもしれんと後を追つけさせてもらっていたが、始末する手間が省けたぜ、このまま強盗容疑と"その他諸々"で逮捕してやる」

 警官はまるで悪党のような下卑た顔をして、腰から手錠をギラつかせた。

 俺は右手を右腰に下げた刀に手を添えた。

「何が逮捕だ職権乱用が、寝言は寝て言えよ」

 右手で刀を引き抜き、手首のスナップを利かせて片手で構え、左手は左腰に添えた。

 警官はこの芸当に、賞賛の声を出した。

「ほぉ、それが噂のお前のスタイルか、器用なもんだ、でも、"お前"を仕留めれば俺は大金持ち、アンド大出世だ」

 警官の舌なめずりをする下品な様子は、とても市民を守る街のヒーローとは思えなかった。

 こいつには本当に反吐が出そうだ。

 張り詰めた空気が交錯する間を、どこから来たか、野良犬の遠吠えだけが通り過ぎていった。

 刹那、警棒が殴りかかり、刀の一線がそれをはじき返し、二つの太刀筋が幾度か交差する、交差して、回線の火蓋を切った警防が当初優勢のように見えたが、徐々に、いや、一気に形勢は刀のほうに傾いた。

 狭い路地裏には似合わない激戦は、突如数歩下がった警官によって中断された。

 警官が、棟の無線機に手をやった。 やって、その手に突如、小ナイフが突き刺さり、貫通した切っ先が無線機を破壊した。

「面倒なこと、してくれようとしてんじゃねぇよ」

 警官がこの薄暗がりで気づかぬうちに、俺は左腰にあった手を前方に突き出し、そこからナイフを投擲していた。

 警官は増援の呼び出しに失敗と、傷の痛みに表情を歪めた。

「くっ、生け捕りでもよかったのに、くそっ、"賞金"が下がってもいい、お前はここで殺してやる、正当防え、ぼっ!?」

 そうやってひるんでいる隙に、俺は警官の懐にもぐりこんで、みぞおちにアッパーを繰り出してやった。

 腹に重い一撃を食らった警官は、低いうなり声をひねり出して、ガクリと前のめりに、俺に寄りかかるようにして倒れこんだ。

 くそっ、ヒゲ面がウザったいぜ、ん?

「ちょっと待てよ、こっちも丁度いいこと思いついたぜ、いつもならお前みたいなのは、とっくに斬り殺してるところなんだがな、よっと」

 俺は語尾を小さくつぶやいて、気絶した警官を方で担いだ。

 そして路地を歩いて出て、大通りに出る際は、まるで酔いつぶれたのみ仲間を担いで家に帰る仲間風を装って歩いた。

 仕方なくやってるから本当に仕方のないことだが、誰がこんなやつと飲み仲間になるかと、俺は心底で不平を言った。


 一苦労して俺は、やがて一軒の家の前まで来て止まった。

 さっきの戦いから十数分が経過しているが、警官は相変わらず気絶している、結果として、こっちとしては都合がいいと苦笑しつつ、俺はその家に向けて、性格にはその家の中にいるだろう人物に声をかけた。

「おい、開けてくれ」

 しばらくして、家の玄関が、世情を解く音を立てずに開いた。

 開いたドアの向こうで、パジャマ姿の少女が一人、眠そうな顔で言った。

「遅かったね」

 ユニエル、この娘は本当に律儀なやつだ。

 夕方あれだけ詰問して嫌な気分にさせたのに、俺がこの家にまた戻ってくると信じていたのか、それともやはり本物の馬鹿なのか、俺にはもう分からなくなった。

「鍵くらいかけておけ、泥棒に入られても知らんぞ」

 するとバカ娘は眠そうな顔つきで、ケラケラと笑った。

 そんな笑顔を見た俺は、たまらなく嫌な気持ちになった。

 なぜ笑っていられるのか、俺は柄にもないことを思ってしまった。

 "今"のこいつには、笑顔でいてほしくないと思ってしまっていた。

 俺は家に上がり、捕まえてきた警官を引っ張り込んだ。

 ユニエルが、その警官に気づいた。

「あ・・・ あ、あれ? そっちの人は? お巡りさん? どうしたの? ブラック、何かしたの?」

 俺はいい加減、こいつのこの態度に不機嫌になってきた。

「お前は黙って、ロープか何か、縛るものを持ってこい」

 ユニエルがなんでとかどうしてとか言ってきやがったが、念を押して言って、ユニエルが持ってきた縄跳びで警官を椅子に縛り付けた。

 そして、未だ気絶している警官を、引っ叩いて叩き起こした。

 警官は、倒れた時と同じような声を出して、目を覚ました。

 目を覚まして、俺の姿を見て逃げようとでも思ったのか足をバタつかせて、椅子ごとひっくり返った。

 現状を理解したのか、警官が俺を見て悪あがきとして毒づいた。

「この人殺しめ」

 俺は、椅子ごと床に付す、"俺とは別の外道"に言い返してやった。

「うるせぇ、職権乱用、横領略取、児童買春野朗」

 俺の宣告に、告白対象外であるユニエルが、その小さな体をビクつかせた。

 そして、しどろもどろな口調で、こんなことを言いやがった。

「何を言ってるのブラック? けんかはダメだよ」

「オマエは黙ってろ!」

 俺が事態を何も知らないとでも思っているのか、大バカ娘は、まだとぼけ続けた。

 警官が、怯える少女を見つけると、ここぞとばかりに優しそうな面と声で言った。

「おぉ、ユニィじゃないか、その乱暴者の犯罪者に居座られて困っているんだね、もう大丈夫だよ、警官のおじさんが助けてあげるからね」

「テメェ、まだ言うかっ!」

 そのときだ。

俺の右腿に、何かがぶつかった。

 痛ぇ、血が出てる、ユニエルが果物ナイフを持ち出して、俺を刺していた。

 この娘は、どうして、なぜ、そこまでこうなのか、でも俺は知っていた。

 俺は、あの教会で、あのとき暗がりで扉越しに聞いた事実を、尻尾を出した猿芝居娘に言った。

 しかし、正直はユニエルのためなんかじゃなく、この気に入らない一件をぶち壊しにするために言ったんだ。

 聴かされたユニエルは、俺が何も知らないとでも思っていたのか、ヘタリこんで小さな体を小刻みに震わせて、力いっぱいに泣き叫んだ。

「あ、ははは、うそだよ、ブラックはうそを言ってる、ブラックなんて嫌いだ! 出てってよぉ! あ、あぁ、うわぁぁん!」

 俺は、刺さったナイフを気に留めず、泣きじゃくる娘を、力が無くて、それでいて他者の力に翻弄される今年かで傷にいた少女を抱きしめた。

 少女は、これっぽっちも無い小さな力で、包む俺の両腕を振り放そうとした。

 でも、離してやらない、俺は、いつしか、この娘の涙をどうにかしてやりたくなっていた。

 俺は、ユニエルと向き合った。

「朝になったら、あの忌々しい野郎をぶっ飛ばしに行くぞ、だから、今日はもう寝ろ、いいな」

 俺はユニエルから手を離すと、小さな体を後ろ向きにして、背中を軽くポンと押した。

 放されたユニエルは肩を震わせながら、部屋の向こう側、たぶん寝室だろう方に姿を消した。

 少しして、ドアの向こうから、小さな、でも大きな泣き声が聞こえてきた。

 そんなやり取りを見ていた警官が、フン、と鼻を鳴らして嘲笑した。

「ハッ、忌々しい建物か、よく言いいやがる、それに"お前"が人助けなんてな、驚きが隠せないぜ」

 また、続けてこう言った。

 警官は、"見た目"だけなら中年の警官が、供述した。

「あぁ、そうさ、お前の言うとおりさ、でもな、どうやって立件させるつもりだ? 証拠なんて無いからな、それに俺の権限で揉み消すことだってできる、そもそも"お前"の言うことなんて、誰が信じるものかね?」

 ずいぶんと見苦しい負け惜しみだ。

 だが、俺には証拠なんてもうハナから関係ない、こいつらの話していた情報が正しければ俺はただ全部を叩き壊すだけだ。

 それに俺もバカだからな、後のことは知らん、終わったらこいつと神父から深く情報を聞き出して、"あいつら"を探しに旅を続けるだけだ。

 警官がこんなことを言った。

「まさか"世紀の殺人鬼"が、ロリコンだったとはな、こりゃ笑いものだぜ」

「黙ってろ」

 ナイフを突きつけて、俺は警官を黙らせた

 ちなみに内心で反論するが、俺にはそういう趣味は無い、ただ旅の途中でこういう事件や出来事に巻き込まれることが多いだけだ。

 しばらくして、警官が便所に行きたいと言い出したので、倒れたままの椅子を起き上がらせてやるついでに、椅子の下に適当にあった新聞紙を敷いてやった。

 身動きをとれずにいた警官が不平を言ってきたが、無視をしていると、少しして異臭が漂い始めたが、俺は突きつけるナイフの手を緩めることは無かった。

 警官は、また、こう言った。

「朝までこうしているつもりか?」

「そうだ」

 警官の喉元に突きつけられたナイフの切っ先が、月明かりで光っていた。

 そうして数時間がたったか、いつの間にかユニエルの泣き声は聞こえなくなっていて、それからして、警官が観念したのか、こんなことを言ってきた。

「なぁ、悪かったよ、オレも神父も、本当はただ薬がほしかっただけなんだ、だって、誰だってそうだ、あんただって」

「うるさい」

 警官の命乞いを、俺は途切らせた。

 だが、警官は止めることなく命乞いを続け、ついにある情報を漏らした。

 そして俺は、その情報に、まるで喉奥から爆発が噴出しそうなくらいに、怒りの喚起が込み上げてきた。

 俺はすぐに、ユニエルが寝入っているだろう部屋のドアを開け、ユニエルを叩き起こした。

 涙で赤らんだ寝ぼけ顔に、俺は大声で言った。

「起きろ! あのクソ教会に行くぞ!!!」


 夜明けの朝空の下、俺とユニエルは、捕まえた警官を同伴させて、教会へと向かった。

 教会に到着した俺たちは、まず俺が教会の扉を蹴破り、がんじがらめにした警官を放り入れ、最後にパジャマの上にコートを着たユニエルが入った。

 入ってから、ユニエルがぐずって、俺の腕を引っ張りながら言った。

「ブラック、ねぇ、もういいよ、私のことはいいから帰ろうよ、帰って」

 俺は無視して、ユニエルと警官を、教会内に入ってすぐの椅子の裏に隠して、大声で叫んだ。

「神父! スローニ神父!」

 しばらくして、礼拝服のスローニ神父が礼拝堂の奥から現れた。

「おやおや、ブラックさん、おはようございます」

 挨拶をする暇があるとは、ずいぶんと余裕なこった。

 俺も、軽薄さを装って挨拶を交えつつ、言葉によるジャブを一発はなった。

「おはようございます、でも、"そちらほど"は早くは無いですがね」

 俺の返事に、神父は少しおかしな顔をした。

「いやいや、ブラックさんはお若いですから、それで、こんな早くにいらっしゃるとは、昨晩の落し物に何か足りないものでもありましたか?」

 すかさず俺は、二発目のジャブを、さっきよりも強力なやつを入れた。

「ええ、すごい忘れ物をしましてね、"でもね、伊達に人生の3倍"生きてらっしゃる方ほどじゃ、物忘れはひどくはありませんよ」

 神父の眉根が、ピクリと上がった。

 俺はそれを見逃さず、とどめのストレートとして、神父には見えない位置に放置しておいた警官を、礼拝椅子の裏から蹴り出して、口元のテープをはがした。

 そいつを見た神父は、あの微笑みから一転、目を見開いた別人の形相をした。

「ジョンソンさん、あなた、まさか」

「すまねぇ、スローニ様、オレだって死にたくな」

 そこまで言葉を発して瞬間、警官ジョンソンの頭に、サーベルが放たれ突き刺さった。

 警官は死んだ。

「そうですか、喋っちゃったんですか、せっかく良い思いをさせてあげてたのに」

 サーベルは、不気味に微笑む神父の右腕から放たれていた。

「馬鹿だったんですね、あれだけ口止め料の献金やら、懺悔と称して信者の娘や引き取った娘達で遊ばせてあげてたのに、あっさり口を割るなんて、あぁ、本当に馬鹿なんだ」

 スローニは、そのドス黒い本性を露呈した。

 そして首をかしげながら、こう続けた。

「そうですね、うん、あなたの言うとおりです、私は肉体こそ40代前半ですが、君の3倍、ということはもう100年は生きているということになりますね」

 なりますね、だとさ、平然と答えやがった。

 俺も自分が大体20代中頃だとは自覚してるが、それは本物の年月だ。

 こいつみたいに偽っちゃいないし、モウロクもしちゃいない、それに、だ。

「老化を抑制してくれる薬をですね、売ってくれる会社があるんです、でもね、その会社は裏社会の組合でして、その上、薬の値段もそこそこ高いし、教会も維持しなくちゃいけない、だから顔の整形やら、警察の一部、あぁ、これは今、私が殺めてしまったんだ。そのパイプを利用して、世代身分の改ざん等を行いつつ、信者からお布施と称して、高額の金銭をいただき、薬の購入と警察への献金をしていたんです」

 スローニは、懐に隠し持っていた二本目のサーベルを引き抜くと、ついでに服の襟もとをめくって見せた。

「そうそう、その薬会社がまた変わった組織でしてね、会員証としてバッチを付けなければいけないんですぅよ、これがそうです」

 その"バッチ"を観た俺は、身の毛が逆立つのを感じた。

 そのバッチにまつわる"過去"が思い起こされる中で、今にもとびかかりそうな心を抑え込む、そして今回のこの気に入らない一軒の核心に迫った。

「あいつも、ユニエルも、その警官の相手をさせていた娘の一人なんだってな」

 それを聞いたスローニは大きな声で笑った。

 癇に障る笑い声だ。

「ハハハハハ、ユニエル。ユニィ、ですか。そう、確かにあの子もそうですよ、もっとも引き取りまでには至りませんでしたがね」

 それからスローニは、その癇に障る不気味な笑顔で、さらに癇に障る話を語り始めた。

「あの子の昔話、知ってます? 5歳の頃にね、実の両親を寝首掻いて包丁で殺したんですって、でね、その両親がまたすごいですよ、父親は影で連続婦女暴行犯をはたらいていて、母親もまたそのことを知りながら口外せず、自分は娼婦をやっていて、さらにはそろって自分の子供のユニエルに性的虐待をしていたんです、子供には何の罪もないのにね。でね、ユニエルは、とうとう耐えきれなくなって、ある日の夜に両親を殺してしまったんですよ。それで本当ならそれなりの施設に送られるところだったんですが、そこを私め神父が預かることにしたんですよ、でも、あの子は自分の住んでいる家がいいと言っていたのでそこは引きとめませんでしたが、今度は高額のお布施の提供者の一人になったのと、事件の口止めのための警官への献上物になっちゃって、ねぇ? そう、すべては私が若返り薬を買うため! 可笑しな話でしびっっっ!?」

 放たれた渾身の右ストレートをくらって、神父はぶっ飛んで倒れた。

「だ、そうだ! 全部聞いたか、ユニエル!」

 礼拝堂に並んだ椅子の最後の列、神父からは見えない場所に隠しておいたユニエルを、俺は大声で呼び出した。

 ユニエルは恐る恐る、椅子の陰から身を出した。

 その表情はもはや、驚愕とも、悲しみとも、絶望とも、どれとも取れないとてもひどいものだった。

 ユニエルは、震えた声で言った。

「そうだったんだ。だから神父様は私に、お巡りさんとあんな遊びをさせてたんだ。ブラックの言ってたことは本当だったん」

 そこまで言って、ユニエルは、力がなくて弄ばれてきた少女は、体を震わせて泣きだしてしまった。

 泣いて、泣きながら、肩のショルダーバッグから、何かを取り出した。

 それは、鈍く光る包丁だった。

 それを振り上げて、ユニエルは走り出した。

 切っ先の向かう先は、まだ倒れたままの神父だ。

 そんな、再び過去へと向かおうとする狂気の切っ先を、真っ黒な手が、その黒さで刃の光を闇で包んだ。

 衝突した"今"に、少女は気づいた。

「あ・・・・・・」

 少女は思い出す、3年前の、あの広がった赤い血の海を、そして涙がまた。

「どうしてこうなんだ!」

 黒い影が、礼拝堂いっぱいに広がる声で叫んだ。

 手に刺さったままの包丁を、そのまま少女の手からひったくった。

「気にいらねぇ、この一件が! 神父の野郎が! 特にユニエル、オマエが気にいらねぇ! ケラケラ笑ってるかと思いきや、都合の悪い時だけそっぽ向きやがって、本当に楽しい時だけ笑えるように、笑顔はとっておけ、わかったな!?」

 不器用な俺には、それが精いっぱいの言葉だった。

 言われた少女は、"今だからある壁"にもたれて、泣き崩れた。

「冗談じゃないですよ」

 いつの間にかスローニが、その身を立ち上がらせていた。

 手にしているサーベルの先を俺に向けたスローニは、ユニエルにこう言い放った。

「余計なことさえしなければ、警察に話を通してこのまま見逃してあげてもよかったんですが、ユニィ? その男はですね、その男こそ、国際指名手配犯"黒い斬り裂き鬼 ブラック・ザ・リッパー"なのですよ!?」

 神父は自分よりも凶悪犯だろう、俺の通り名を公表し、勝ち誇った顔をした。

 <バキン!> 突然、大きな音が響いた。

「知るかよ」

 俺の左手には、一丁のリヴォルバーが握られていて、トリガーが引かれていた

 撃ち出されたモノが、サーベルに命中し、刀身をへし折った音だ。

 しかし、刀身に弾が当たったにしては、音が不自然だ。

 質量のない衝撃を受けたスローニが、また後方に吹っ飛ばされた。

 スローニは二度の起床の最中、声を震わせてつぶやいた。

「ぐ、あ・・・発射音がなく、弾が当たったどころか、弾の落ちた音もない、発煙すら・・・・ まさか・・・・・」

 銃の形をした"それは"、殺傷能力を持ちつつも銃の特性を持たず、故に、銃にして銃にあらず、スローニは、"それ"の名を漏らした。

「まさか、"チタンファクト"・・・・!」


 "チタンファクト"


 それは、チタニウム合金によって精製された外殻を持ち、その多数が武具をモチーフに作られて、風を動力として動く物体。

 風を動力といっても、それは外部からではなく、内部から生み出されていた。

 内部の中心に搭載された特殊な真空の種、"エア・マテリアル"によって生みだされるのである。

 これはエネルギー体でありながら、その起源も風で、そのまた原動力となる風力を自己生成することができるため、文字通り永久機関なのである。

 これを内蔵して、チタンファクトは風によって、銃弾、刃、爆風といった無形質量を、使用する際に具現化するのだ。

 チタンファクトは、武器として使用した場合、モチーフや用途によって多彩な特性を発揮する。

 たとえばモチーフが剣の場合、実態を持たない真空の刃を具現化できるため、太刀筋が読まれにくい、永久に刃こぼれしないといった特性がある。

 対して銃は、命中音以外音が出ない、風圧自体を真空の銃弾とするために次弾を装填する必要がないなどがある。

 しかし銃の場合は、結局のところ風をぶつけるのであって、対象物を風圧で粉砕することはできても貫通させることができない、大幅に弾道が反れる他、これは真空剣にでもいえることだが、強風が吹きつける場所では威力が落ちるどころか、真空物質の具現化すら困難という決定的な振りが生じる。

 爆発については不明だが、それらは、調書の実を上げれば、その形状上の武器の系統においては例外なく最強といえる。

 また、外観の形状も奇抜なものばかりなため、芸術作品としても至高の類という呼び声も少なくなかった。

 だが、その核たるエア・マテリアルはおろか、各個すべてのチタンファクトが、製造者も、製造方法も、一切合財不明であった。

 ゆえに、究極の殺人アンティークといっても過言ではなかった。


 スローニは眼前、向けられた鋼色の最強の銃口を見て怯み、観念した表情でぽつりと言った。

「それは、貴方のような人間が持つには、あまりにも不相応なものですよ」

 言って、力なくがくりと首を項垂れた。

 確かにそうかもしれない、こいつに言われるのも不服だが、この銃は本来俺のものではない、ある男の形見で、そのお人よしな男とある女、そこに俺を交えた今は亡き奇妙な三角関係の、無念の塊のような残留物の一つだ。

 そしてもうひとつの残留物が、俺の作る麦わら帽子なんだ。

 でも、だ。

「それを、オマエが知る必要はない、俺はただ、オマエを、この気に入らない一件をぶっ潰すことにした。それだけだ」

 それともうひとつ、俺個人にのみ関係する"件"について、スローニの野郎に尋問することにした。

「その"バッチの会社"について、他に知っていることを話せ」

 銃口をスローニの額にガッチリと突き付けた。

 スローニは言った。

「・・・・・他ですか・・・・他には詳しくなんて知りません、ただ、この区域の逆方向あるアロウズ区に、取引支社が在ることだけは知っています。そこから違法若返り薬"リターン・エイジ"の取引を行っていたんです。それ以上は私も知りません」

 俺は手に持っていた包丁を抜き取り、スローニの襟もとから、バッチをひったくった。

 つまりはほとんど無駄骨ということだ。

 俺は、突き付けていた引き金を引いた。


 俺はユニエルを抱きかかえて、教会を後にして、人目がまだ少ない朝の街中を歩き、ユニエルの家へと帰りつき、中に入った。

 ユニエルは言った。

「自分で歩けたのに」

 ゆっくりとおろしてやる中で俺は言った。

「オマエが俺の足に追いつけるわけないだろ」

 バカ娘に顔を向き合わせる中で、昨晩の寝不足やら早朝のいざこざやらで疲労感がどっと、全身に押し寄せてきた。

「でも、昨日から今まで、ブラック、ずっと走ったり歩きっぱなしだったもんね」

 そうだな、旅で体力は付いている方だが、今回はいろいろありすぎて疲れた。

 自分でもよくここまで体力がもったなんて驚きだ、

 でも小休憩くらいならいくらか取ってたんだぜ。

 俺は、ガラにもなく苦笑してしまった。

 朦朧としていく意識の中で、ユニエルが微笑むのを、確かに、見た。

 なんか、いつかぶりだな、なんでか、こんなにも気分が落ち着くのは、そうだ。


 あいつの、笑顔だ・・・・・


 そうだろう・・・・・・


 ○○○○、さん・・・・・・


 俺は溜まった疲労と睡魔からか、深い眠りに就いていた。

 床の上に伏したままの男に、少女は、大きくも小さな声で、優しく言った。

「ありがとうブラック、おやすみブラック」

 そう言った少女も、眠気からか、その場で倒れ込み眠りについてしまった。


 いびきをかく黒い男の横で、伏せた白い少女は、静かに寝息を立てた。


 昼過ぎごろ、黒い影がガバッとその身を起こした。

 目が覚めた場所は、どういう理由か、床の上から椅子の上に移っていた。

 目の前にはテーブルが広がっており、少し離れたところに、湯気を立ち上らせるグラタンと、銀色のフォークが載っていた。

 なんだこりゃ、と言おうとした先に、声をかけられた。

「あっ、ブラック、起きたんだね」

 もっと離れた先、パジャマから私服とエプロン姿に着替えたユニエルが、瞳をぱっと輝かせていた。

「はい、ブラックの分だよ」

 ユニエルが、焼きたてのグラタンとフォークを、俺のところに持ってきた。

「美味そうだな」

 俺はその香りから、率直な感想を思わずこぼしてしまっていた。

 腹が空いていたのもあるが、多分、それだけじゃないと思う、でもそれがなんであるかは、俺には分からなかった。

 口にしてみると、このグラタンは本当に美味かった。

「今朝の、どうなったんだろう」

 ユニエルはテレビの電源を点けた。

 以下は、テレビのニュースキャスターの言葉である。


『今朝未明、このフェクサンシティのドラヴ区タウ教会で、殺人事件が発生しました。殺人被害にあったのは、同教会のスローニ・ラグナ神父と、市警官ジョンソン・ダイソン氏の二名で、スローニ神父は頭部を銃で撃たれて殺害され、ダイソン氏は頭頂部にサーベルを突き刺されて殺害されたようです。しかし現場からは犯行に使われたと思われる銃弾が発見されず、検死でも検出されませんでした』

 キャスターの締めはこうだ。

『警察は、この不可解な事件を、慎重に調べていく方針です』

 だとさ、警官の頭部に刺さったサーベルからスローニの指紋がどうとか、神父のやつが裏で警官と一緒に子供に暴力をふるっていたとか、そういった黒い話は一切出てこなかった。

 あとは"現場近くで黒い男を見た"とかなんて特にだ。

 そりゃ、国際指名手配犯が街に来ている、だなんて話が漏れれば、街は大混乱となるだろう、だが、警察が良い方に頭を使えば、秘匿すべきことはそれだけでいいはずだ。

 なのに、悪い方に頭を使うもんだから、都合の悪い話も秘匿しちまうんだ。

 グラタンを食べながらニュースを見ていた俺だが、次のニュースでその手は止まることになった。

『次のニュースです、昼前の10時頃、アロウズ区のビルで、大規模な火災がありました。この3階建てのビルは全焼、火元は内部から出たそうです、このビルでは製薬会社をやっていたとのことでした』

「なんだと!?」

 俺は椅子をはねのけて、テーブルから立ち上がり、テレビの前に駆け寄った。

 神父の野郎から聞き出した"例の薬品会社の支社"だ。

 なんだ? 他に外部の人間がいたのか? 昼前の10時だと? 壁時計の指針は、現在12時半を指している、こんな時間じゃ既にその薬品会社の人間には逃げられているはずだ。

 今から追いかけたとしても、どこに逃げたのか、どこまで逃げたのか、そもそも追いつくにはタイムラグがありすぎた。

「くそっ!!!」

 テレビの角を掴んで、激しくゆすった。

「ブラック、もしかして今の・・・・」

 ユニエルの言葉を、俺は大声で区切った。

「あぁ、そうだよ! せっかく掴んだ尻尾なのに、やつらは早々に切り離しやがった!」

 "奴等"のバッチは、カラスの翼をモチーフに作られているが、これじゃ、やってることはトカゲだ。

 毎度毎度、掴んだと思ったらとたんに切り離され、俺の手元には"奴等"の尻尾たるゴミみたいなバッチしか残らなかった。

 俺は、床にドスンと尻をついた。

 その様子を見てか、ユニエルが声をかけてきた。

「ブラック」

「うるさい」

 俺はテレビの原電を消した。

 テレビの前で、呆然と尻をついて座り、真っ暗になったモニターを見つめる。

 今は、そうすることしかできなかった。

 耳にのみ、食事を再開したユニエルの、食器をこすり合わせる音、その後、しばらくして片づけをはじめたのか洗い物をする音が聞こえ、止んだ。

 それからして、小さな足音が、俺の後ろまで来て留まった。

 ふてくされる俺の横顔に、白い少女の顔が並んだ。

「ねぇ、ブラック」

 その声は無邪気で無垢なものだった。

「なんだ」

 それとは対照的に、不服な声で応えた。

「ブラックは、いつまでここにいるの?」

 なんだ? それは出てけってことか? 確かにさんざん世話にはなったし、不服だが、気に入らないことも一応は片付いた。

 あぁ、確かに、出ていくには頃合いだ。

「そうだな、もう行くことにする」

 俺が立ち上がると、ユニエルがこう応えた。

「じゃあ、ちょっと待ってて」

 言って、その間に俺が自分の荷物をまとめていると、ユニエルがコートを着て、肩には、ぱんぱんに膨らんだショルダーバッグを下げて戻ってきた。

「オマエ、そりゃなんだ?」

「ちょっと付き合って」

 聞き返すと、ユニエルは問答無用に俺の手をつかんだ。

「オマエ、何言って――――」

 強引な小さな手に、俺の大きな手は引かれて、出て行くはずだった俺はユニエルと共に街中へと駆り出されることになった。

 ぐいぐいと引かれて、引かれるままに振り回されて、俺は言った。

「待て待て、オマエ、俺をどうする気だ? まさか、その、ぱんぱんのバッグには刃物がいっぱいで、それで俺を・・・・・」

「ちがうよー、それにブラックは強いもの、だれも勝てないよ」

 否定はされたが、俺は最強を自負した覚えはない、そりゃ、"奴等"を滅ぼすまでは死ねないがな、でも、だとしたら何だ?

 ふと、あることが思いつかれた。

「まさかオマエ、今回のお礼とか何とか言って、俺をホテルにでも連れこんで、あれこれ――――――」

 はっ、と俺は、自分が道のど真ん中で、大声でそれを言っていることに気がついた。

 白昼の街の群衆の視線が、一気に俺に向かって突き刺さった。

 特に、おばちゃん連中がこっちを見ながらひそひそ話しをしているのが、心に痛々しかった。

 とはいえ実体的な痛みはないのだが、この群衆の視線が弓矢ならば、さすがの俺も全身を射抜かれて死んでいるだろう、まだ死ぬ気はないが、気持ち的には満身創痍ともいえた。

 そして、前を歩くバカ娘から、とどめの一言が来た。

「こんな昼間からホテルであれこれだなんて、ブラックのエッチ」

 これで気持ち的には、俺は一回死んだ。

 ごめんなさい、俺はもう、この娘さんの言うことに黙って従います。

 やがて、連れられて着いた先は、一軒のデパートだった。

 そこに入って、まずは子供服コーナーに止まった。

 そこでユニエルは、おもむろに服を選定し始めた。

 そうか、俺は理解した。

 なるほど、俺が出て行くついでの荷物持ちにされている、のか? あれ? でも俺はこのまま出て行くつもりなのだが? あれ?

 俺が思考と格闘している間に、ユニエルは選定が決まったのか、選んだ一着を自分の体に当てて、俺に訪ねてきた。

 白いワンピースだった。

「ねぇ、どうかな? 似合う?」

 思考途中だったため、上の空の返事をした。

「あ? あぁ、いいんじゃないか?」

 それが5~6回続いた。

 で、7回目に、ユニエルにこんなことを言われた。

「7着目は、ブラックが選んで」

 俺は断わりを言ったが、どうしても、だと言われた挙句、でなければ騒ぐとまで脅された。

 これは自分で呆れるくらい滑稽だ。

 世紀の国際指名手配犯が、デパートの子供服売り場で、わずか8歳の小娘に脅されて、たじろいでいるのだ。

 あー、もう、これ以上面倒事は御免だ。

 やっぱり、どうしても、どうやったとしても、俺は、この最強のバカ娘には勝てないらしい、多分、この世界の外にいる創造主が決めたことに違いないはずだ。

 仕方がないが、そうだな、ある一着を選んで、手にとってみた。

 白いドレスだ。

 麦わら帽子の似合いそうな、"あの人"が来ていたのによく似た、純白のドレスだ。

 不意に、ユニエルに声をかけられた。

「ブラック? どうしたの? ブラック?」

 俺は、その声で我に返った。

 どうやらドレスを見ていた中で、少し遠くを見ていたようだった。

 俺は言った。

「あ? あぁ、これがいい、と思う」

 買い物かごに、最初のワンピースやらオーバーオールズボン等の6着、そして最後のドレスを入れて、会計を済ませた。

 会計は結構な額だったが、全然平気だった。

 ユニエルが持ってきたぱんぱんのショルダーバッグには、神父の野郎がユニエルからお布施と称して巻き上げていたものを、取り返した金がたんまりと入っていた。

 その中身を見て、俺は少し、胸をほっとなでおろした。

 もし本当に刃物が入っていた場合は、女子供とだけは無駄な殺し合いなんてことは、なるべくやりたくないからな、その後、ユニエルが今度はカバン売り場に行きたいと言い出した。

 まだ行くのか、ユニエルの家で寝て少しは疲れが取れたものの、昨日の今日溜まった疲れで、こんなに振り回されては回復した意味がない、昔の知人が女の買い物に付き合うのは疲れると言っていたが、確かに戦うことよりも何倍も疲れてきた。

 実を言うと、俺は昔、商売人だったことがある、なるほど、たまに来ていたカップル客の男の方がいやに疲れているように見えたのは、こういうことだったんだな、そう思う間に、俺たちは、カバン・リュック売り場に到着した。

 カバン・リュック売り場で品物の選定を開始したユニエルが、しばらくして、一つの品を手に取り、俺の方を向いて言った。

「ブラック、これ、買って」

 その両手に抱えられていたのは、ユニエルの体の3分の2くらいの大きさのある、大きなウサギのぬいぐるみのような形のリュックサックだった。

 言われた俺は、ユニエルの、まだ膨らみの大きなショルダーバッグを指さして言った。

「あ? なんで俺が? 金なら、まだクソ神父から奪い返したのが、たくさん残ってるだろ?」

 そう、ユニエルの家計は、あの過去話からは想像できないほど、意外に裕福だったのだ。

 で、両親を亡き者にした後のところで、残された金にも神父が目を着けていたそうだ。

 そして、今朝、教会での戦闘後の帰り際に取り返した財産が今、肩に掛けられたショルダーバッグいっぱいに入ってるわけなのだ。

にもかかわらず、ユニエルは、俺にこのリュックサックをねだった。

「ブラックに買ってほしいの」

 少し睨み合った結果、結局、ユニエルの真剣そうなまなざしに俺が負けて、買ってやることになった。

「ったく、分かったよ」

 実を言うと俺も、あのクソ神父の不当な蓄えから、持てるだけの大金をガメていた。

 俺は俺の生計は、昨晩のカツアゲ犯から、あのクソ神父など、立ち寄った場所の先々で悪事を働く気に入らない悪党どもを懲らしめて、取り上げた金銭で立てていて、こうして旅を続けていられるのだった。

 だから、こんな指名手配犯にまでなるようなことをしても、外道なことは・・・・

 うん、必要最低限以外はしていなかった。

 そんな俺の振る舞いを、少し前に立ち寄った国の人間から、まるでオマエは、

"イシカワ・ゴエモン"のようだと言われたことがあったっけか、そのイシカワは義賊だったそうだが、俺はそんな者じゃない、善人ではないからだ。

 俺はリュックの中から財布を出して、ユニエルに2万ほど金を渡した。

「これ以上はしてやらんぞ」

 ユニエルは、ケラッと笑うと、会計へと向かった。

 その背中に一言、俺は付け加えた。

「釣りは返せよ」

 しかし戻ってきたユニエルが言うには、会計は、キッチリ2万だったそうだ。

リュックを買った後、俺は今度は休憩所へと、ユニエルに連行された。

 そこでユニエルは、俺をベンチに残して、トイレに行ってくるから待っていてというと、さっき買ったばかりのウサギリュックも抱えて行ってしまった。

 ちなみにその前に買った衣類は、俺に持たされたままである。

 俺はこの時、ここいらで、買った物を置いて、一人でさっさと行ってしまうべきだった。

 少しして、ユニエルがウサギリュックを抱えて戻ってきた。

 ベンチにウサギッリュックを置くと、今度は買った衣類を渡せと言ってきた。「あ? あぁ、ほらよ」

 袋に入った服を渡すと、ユニエルは袋から服を取り出して、値札やらタグを切り離すと、ウサギリュックにしまいこみ始めた。

 バカな俺は、やっとここで、何かが変なことに気付いた。

「おい、ショルダーバッグはどうした?」

 ユニエルの肩には、さっきまであったはずのバッグが無かった。

 ユニエルはウサギリュックの首元にあるチャックを閉じると、笑顔で言った。

「うん、さっき捨てた」

「捨てたってオマエ、金とかどうした?」

「中にあったのは全部この子の中に移したよ」

 ユニエルは、ウサギの腹部をポンポンと叩いて見せた。

 俺はやっと理解した。

 理解して、顔を上に向けて顔面に手を当てた。

「付いてくる気かよ」

 バカ娘がケラケラと笑った。

「半分正解、ブラック言ってたでしょ? 本当に楽しい時のために笑顔をとっておけって、だからあたしね、その"本当に楽しく思えるもの"を、探しに旅に出ようと思うの」

 そこまで言って、バカ娘は、少し間をあけた。

 間をあけて、もっとバカなことを言い出した。

「それに、ブラックすごく強いもの、あたし、ブラックのこと、大好き、だから付き合ったげる」

 呆れた。

 心底面倒なことになったぜ、どうやらこいつは、俺を、自分の旅の保護者にするつもりのようだ。

 俺は困惑して、大慌てで言い返してやった。

「やっぱバカだオマエ、冗談じゃないぜ、自分の力でやれ、大体家の方はどうすんだ?」

言ってから、ユニエルの方が反論が二手も三手も先を行っていた。

「家の方はブラックが寝てる間にいろいろとやっておいたよ、それにあたし一人じゃ絶対無理があるよ、多分、また誰かに利用されちゃうだろうし、それに、もしあたしが街に残るを選んでたらどうする気だったの? あたし、身寄りがないんだよ」

 俺は反論した。

「金がたんまりあるだろ? お嬢様?」

 この反論に、すぐに四手目が発動された。

「あたしが働けるようになるまでに、全部なくなっちゃうよぅ」

 そして間を入れずに、王手が来た。

「あたし、姓を変えようと思うの、新しい姓はね、"ユニエル・ワイツ"、これからはこれを使おうと思うの」

 "ワイツ"、"白"だとさ、いつかのは本気だったらしい、一応だが、俺は聞いてみた。

「本気だったのか、でも名前の方は何で変えないんだ?」

「ブラックが、私の名前を呼んでくれたからだよ」


 もう、げんなりだ。


「・・・・・もういい、好きにしろ、俺は知らん」

 真っ黒なコートの男が、がっくりと肩を落とした。

 白いワンピースの少女が、対照的に、バンザイをした。


 二人がデパートから出てから、物語の視点を、この街からズームアウトしてみよう、黒と白の二つの点が、街から離れて行くのが見える。

 世界とは、人間とは、まったくもって変なものである、でも彼らは、"彼らの普通"を歩き続ける。

 だが、もし、それが道を外すことがあれば、そこに"黒い点"が壁として表れて、元の道へとはじき返してくれるのかもしれない。

 今回のこの話は、そんな出来事たちの内の一つである。

 では物語は多くの謎を残して、今回はここいらで幕を閉じようか、もし、また出会う機会があれば、次の話をしてあげよう、では皆さん、さようなら。

 やっとあとがきに着手できました(笑)

 どうも初めましてZezeと申します、

 読者様各位、本編の方はどうだったでしょうか?

 私は、自分の作品ながら全然面白くないと思います、それは作者だから、ネタからオチまで全部知っているからです。


 ユニエルが旅に出て、その果てにどんな最期を迎えるのか。


 ブラックは、旅路の果てにどうなってしまうのか。


 本当の最後のオチまで分かっていますからね、だからおもしろくないんです。

 でも、今はまだ教えませんよ、それに、もしかしたら私の気まぐれでオチが変わってしまうこともあるかもしれませんからね。

 作品タイトルの"スプーキーズ"とは、英語の俗語で、"変人たち"という意味になります、なぜそんなタイトルなのかは、本編を呼んだ方たちなら分かるでしょう、未読の方はぜひ読んでみてください。

 ちなみにこの物語には、私が以前書いた試作の原作が存在します。

 って、盗作じゃないですよ? ちゃんとわたしが描いたんですから。

 内容的には、「切り裂きジャックの再来と呼ばれる男が(本編でいうブラックですね)、妙なことから少女(本編でいうユニエルです)のわがままに振り回された挙句、最後には号泣する」というお話です。

 なぜその男は号泣したのかは、都合上ここでは明かせません。

 でも、この現在の物語は、わたしの書く機会がある限りですが、続きます。

 機会がある限りは、ですね。

 え? 最後までちゃんと伏線を解けですって?

 それもやはり機会があれば、ですね。

 まだまだ未熟者な私ですが、もしまた、お会いするようなことがあれば、その時も、今回のようにお願いします。

 では皆さん、またの機会まで、ごきげんよう。

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