夜雨
化物草紙 実話怪談短編集用に作っていた話です。
時間が経ったらそちらに加えます。
山梨県に住むNさんから聞いた話だ。
Nさんはその日も仕事から帰り、0時過ぎには布団に入った。
しばらくすると外から雨の音が聞こえてきた。
ザーッ―――。
音を聞く限り、かなり強い降り方をしている。
周囲一帯に強い雨が降っているような音だった。
(予報では今夜は晴れのはずだけど……そういえば、洗濯物とかって入れたっけ…?)
そんなことを思い、窓の外を見る。
道路は乾いていた。街灯の下も濡れていない。
なんだか騙されたような気分になりながら、再び布団に入る。
するとまた、
ザーッ―――。
慌てて窓を開けた。
音は消えた。
風もない。
虫の声しか聞こえない。
そんなことが一夜に何度も続いた。
雨音は聞こえる。
だが窓を開けると消える。
そして外はずっと乾いたままだった。
結局、その夜は眠れなかった。
翌朝、出勤前に外へ出ると、近所の人が立ち話をしていた。
1人が言った。
「昨日の夜、雨すごかったですね」
Nさんは思わず聞き返した。
「降ってました?」
すると相手も妙な顔をした。
「いや、見てはないけど……音が聞こえたから」
話を聞くと、その近辺の何軒かで同じ音を聞いていたらしい。
だが誰も雨は見ていない。
結局、
「誰かが外でスピーカーで雨音を流していたんじゃないか」
という話で落ち着いたそうだ。
ただ、その音が聞こえたという家は何軒もあったのに、誰もその音源を見た者はいなかった。
Nさんは言っていた。
「天気雨のことを狐の嫁入りって言うけど……これもその仲間なのかね?」




