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お飾りではなかった王妃の実力  作者: 鏑木うりこ


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第48話 順風と言う日々

「熊に知性の光が」

「うっさい」

「キャロライン」

「うるさいでございますわよ! お兄様っ」

「やり直し」

「うぐぐ」

「それからフレジット、貴方もマナーを学び直しますか?」

「藪蛇っ! 執務室へ行ってまーす」


 キャロラインはみるみるうちに令嬢らしくなっていった。


「体がカチコチでしたので柔軟運動が良かったようです」

「食べ物も改善しました」

「地頭は悪くないようですね」

「夜更かしは禁止にしています」


 アイーダの指示の下、メイド達に厳しく管理されたキャロラインは変わって行く。若干ふくよか過ぎた体はスラリとし、傷んだ髪は枝毛もなくなり艶々と輝きを放つようにになる。

 肌のごわついた古い皮膚が新しいものに入れ替わる頃、黙って立っていれば公爵令嬢と呼んでも遜色ない程度になるだろう。


「あ、あれがキャロラインか……?」

「まだまだですが見た目はましになりましたね」


 にこにこと笑うアイーダの手腕にレイクリフ公は舌を巻くしか無かった。


「失礼なフレジットは罰として街のぬいぐるみ店へいって一番大きくて高い熊のぬいぐるみを買ってキャロラインにプレゼントなさい。当然あなたの小遣いからです」

「な、なんでですか?! 母上!」

「この母に口ごたえするとは、やはりマナーを最初から……」

「喜んで買わせて頂きます!!」


 そうやって無理矢理買わされたフレジットからのプレゼントということで、キャロラインの元へ大きな熊のぬいぐるみはやって来た。

 二人とも悪態をついていたが、キャロラインがぬいぐるみにこっそり抱きついてにこにことしているのを見かけたり、()()()()熊の色がフレジットの髪の色と全く一緒だったり、()()()()目の色も一緒だったりしたものでちょっとした親近感が湧いたりして、フレジットとキャロラインは微妙な歩み寄りを見せたりしていた。


 そして王城ではアイリーンもこのまま城に残ってくれと懇願され、婚約者(確定)候補として緩やかに活動を始めていた。


「い、要りません! 要りません!!」

「駄目だ、ワシがつけたくて付けるのだからレンブラントがいくら否定しても許さん」

「いえでも! あの……」


 王宮の庭には前王夫妻の命でブランコが設置され、恐る恐る遠慮気味にレンブラントは毎日乗っている。


「子供のようで恥ずかしいです……」

「ふふ、そうかしら? これは大人が乗っても楽しいわよ?」


 前王夫妻も一緒に乗っている姿も見られ、和やかに城の皆に見守られていた。


「流石に王位にある私の婚約、結婚ともなると議会にも通さなければならないし、すぐにともいかないのがもどかしい」

「当たり前ですわ。国を導く者が愚かでは、国民は不幸になりますもの」

「見てきた者の言葉は重いなぁ! でも議会の承認は終わっていて、権威のために日を開けろという事なんだよなあ」


 面倒だな、とため息をつくシュマイゼル、隣で心の底から笑うアイリーン。

 先日、隣国の王や代表などが大量に押し寄せたが、誰もが満足して帰途に着いた。

 たくさんの商談をまとめて、ダイヤなどの特産品を売り込み、石炭の販路も広がり……マルグ国はかなりの利益を長期間得る事になるだろう。

 急拵えとは思えぬお土産も渡し、すべての客を見送った後は流石に城の使用人はメイドに至るまで皆、ぐったりと疲れ切っていた。

 しかし、それに輪をかけてマルグ国内は騒がしかった。新しく越してきた商会が新店を次々と開いたり、凄腕の賞金稼ぎが犯罪者をどんどん捕まえたりして、ギルドもてんやわんやで、元々悪くなかった治安もどんどん良くなっていく。

 そうやって新しく越してきた住民誰もがアイリーンの事を好意的に口にするので、マルグ国民も国王の婚約者に尊敬の念を抱き始めていた。


「やっと王様が見つけてきたアイリーン様は凄い人!」


 そんな噂話が街のあちこちで聞こえ始め、その声はどんどん大きくなっていった。



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