第3話 ほぼ全員知っていた?
離婚宣言を受けてもう馬車でマルグ国へ向かっております。早すぎる展開に少し頭痛を感じますが、レンブラントとシュマイゼル様は楽しそうに外を眺めておしゃべりをしています。
いつの間にこんなに打ち解けたのでしょうか?
「シュマイゼル様。私はあまり外へ出してもらえなかったので、馬車はとても楽しいです」
「レンブラント殿、そこは父上と言ってくださって構いませんよ」
「では、私の事はレンでお願いします父上」
「分かりました、レン。所でレンの母上の好物は何ですか?」
「甘いプリンですね。こっそり夜中に二人で食べるのが醍醐味です。今度は父上もお招きしましょう」
「それは光栄です、ぜひお願いします」
何かしら? この外堀を埋められて行ってる感じは。わたくしはそこまでしていただくほどの人間ではありませんのに。思わずわたくしをのけ者に仲良くなる男性達から目を反らし窓の外をみると、追いついてくる馬の蹄の音が聞こえて来ました。
「陛下」
馬車と並走し始めた騎士の一人が外から声をかけてきます。まあ、なんと騎乗の腕もよろしい方なのですね。相当訓練を積んでいるのでしょう。
「ハイランド家にも色よい返事を頂けました。一族郎党全て我が国へ越してくるとのことです」
「なるほど、もう準備は出来ていたと言うわけか。流石ハイランド伯」
「他国を出し抜けて良かったですね!」
「ははは、10日も前から来ていて正解だったな!」
そういえばシュマイゼル様はやけに早くおつきでしたわね。騎士とのやり取りを聞いていたレンブラントはわたくしも聞きたかった事を聞いてくれました。
「父上。父上はこうなる事をご存じだったのですか?」
「建国祭の準備に忙しかったアイリーン様とナザールの城の者以外ほぼ全員こうなると思っていたと思うぞ」
「……もしかしてナザール国の国王エルファードの暗愚っぷりは有名なのですか……?」
「レンには申し訳ないが、この辺り一帯で知らぬ者はおらんなぁ……」
「うわあ……」
レンブラントが頭を抱えてしまいました……わたくしも色々頑張ったのですが、あの方を賢王とするのは無理の上に無理を重ねても無理でした。
わたくしと王太子エルファード様の婚約は私が10歳の時でございました。私にはこの国ではなく隣国に5歳の時から婚約者がいたのですが、どうしてもと前国王に脅しと圧力をかけられ、泣く泣くその方とは婚約解消し、5つ上のエルファード様と婚約をさせられたのでした。
ええ、エルファード様は15歳の時にやらかして小さな頃からの婚約者に捨てられたのです。
そして白羽の矢が当たってしまったのがわたくしというわけです。流石に住み暮らし、拝領している国の王から脅迫紛いの婚約承諾書が届いては首を縦に振るしかありません。
そこからわたくしはエルファード様の婚約者となり、王子妃教育並びに王妃教育、王配としての教育とさまざまな方に師事を仰ぐ日々でした。
ええ、最初から王配教育でしたわ。最初から国政は私が握るよう手配されておりました。
エルファード様はわたくしが2学年ほど飛び級で学園へ入学した際に1年間だけ同じ学舎へ通いましたが、王太子だから卒業を許されたレベルでございました。なるほど、わたくしが政治のすべてを取り仕切るように勉強をさせられたか、良く分かるような学園の成績だったのです。
なぜ同じ空気を吸っているのにこうもテストの点数が悪いのか理解できませんし、座学が壊滅的なら運動はおできになるの? と思うと晴天に隠れ損ねてそこら辺で干からびかけているカエルのように、良く運動場の床の上に伸びておりました。
「かエルファード殿下」
エルファード様のお耳には入った事がないようですが、倒れてひどい事になっている自国の王太子を見て、下級生達がよく呟く言葉でございました……。あの方が得意なものとはなんなのか、学園生活で見出すことはできませんでした。




