トライアングルレッスン:M ~夕暮れ逆上がり事件~
小説家になろうラジオでの企画「トライアングルレッスン:M」への投稿作品です。
本来のゆいこたちの年齢より、かなり若返らせてもらって、ゆいこもたくみもひろしも
そして、今回特別ゲストのむっくんも小学生です。
策士のむっくんをお楽しみください。
日が傾き始めた頃、塾からの帰り道ゆいこ、ひろし、たくみの3人が
賑やかに公園横の小道を歩いていると
「あ、ゆいこちゃーん。」
とゆいこを呼び止める声がする。振り返ると鉄棒のあたりから手を振る人影。
ん…?3人が目をこらす。
「なんだ、むっくんか。なにしてんの?こんな時間に一人?かなちゃんは?」
「たくみ、うるさい。質問多い。」
「なっ!?」
生意気な返事にたくみがむっとする。
「はい。たくみ、怒らない。」
ひろしはたくみをなだめてから、むっくんの視線に合わせた。
「たくみは大事な従弟が心配なんだよ。
もう、暗くなってきてるから。分かるでしょ?」
「うん…。ひろしくん大人!たくみも見習ってよ。」
「お、お前な!」
ヒートアップしそうなたくみをゆいこが遮る。
「むっくん、もしかして、逆上がりの練習?」
「…、うん、そう。」
少し目が泳ぎながらむっくんが答えた。
「え、逆上がり、出来ねぇの?だっせ~。」
「たくみっ!」
茶化すたくみをゆいこが睨み付けた。
「ちょっと、手伝おうか?」
ひろしの提案に一瞬複雑そうな顔をしてからむっくんが肯いた。
「蹴って!腕を曲げる!惜しいっ!」
タイミングを教えたり、お尻を支えたりして
惜しいところまでいくけれど、あと一歩が出来きれない。
「身体の使い方上手だから、出来そうなのになぁ。」
ゆいこが呟くと、またもむっくんの目が泳ぐ。
「ゆいこちゃん、手ぇ痛くなっちゃった。」
「えっ、見せて?あ~豆になりかけてる。今日は終わりにしよっか。」
その言葉にむっくんがうなだれた。
「大丈夫、すぐ出来るようになるよ!
ごめん、私ちょっとトイレ行ってくるね。」
むっくんの頭を撫でて、ゆいこはトイレへと駆けていった。
「うん。いっぺんにやってもね。」
ひろしがむっくんにそう言うと、むっくんは一瞬だけ目を伏せ、それからすっと目を細めた。
鉄棒に手を掛け、トンと地面を蹴ると、易々と逆上がりをやってのけた。
それどころか、そのまま鉄棒から降りることなく、くるりくるりと
後方回転を決めたのだ。
ひろしとたくみは驚きで目を見開いた。
「ごめ~ん、お待たせ。帰ろうか。ん?どうかした…の?」
心配げなゆいこの声に
「見て見て!ゆいこちゃんがトイレ行ってる間に
出来るようになったよ。褒めて褒めて。」
可愛い明るい声で言うと、難なく逆上がりを披露した。
「え~、むっくん凄い!」
抱き合って喜ぶ2人を見て納得がいかないあとの2人。
「出来ねぇなんて噓じゃん…。」
「ゆいこがいないときだけ…ね。やるじゃん…。」




