第3話「やーん!ぬっちょぬちょ!ぬっちょぬちょです~!」
〈前書き〉
全体的に00年代っぽいノリでやってる感じですかね。エロゲ原作かも。
今のところ、あんまりおもしろくないですね。完全無志向型連載小説にも、独自の方法論とやらがあるのでしょうが、まだ確立できていません。長期で組み立てられない分、どんどん小技を鏤めていくのがいいのかも。
「緊急排除モード、起動!」
上空十数メートルから、美飾の声が響き渡る。
彗星のように、RMH-4の群れに落下していく美飾――それも、ただの自由落下ではない。推進装置で急加速したかのような、まさに隕石。
一瞬だが、俺にははっきりと見えた。
いや、見えてしまった、と言うべきかもしれない。あまりにショックな、人造人間のありのままを。
急降下からの体当たりにより、まず、一体をトラックに叩きつける。トラックの荷台が凹むほどのとんでもない威力だが――目を惹いた隙に、他の四体の頭部が突如破損した。何が起きているのか、理解するのにさほど時間はかからなかった。上空での美飾、展開されていた左腕のフィンガーバルカン。上空の時点で、既に撃っていたのだろう。
展開されているのは、何も左腕だけではない。
背部、人間でいうところの両肩甲骨にあたる装甲が、ガッと、カブト虫の羽のように開いて、そこから何発かの小型ミサイルが発射される。二体のRMH-4に命中し、火花を散らして大破。他の数体は跳躍し、間一髪でそれを躱した。
大破したRMH-4は、バチバチと電撃を発しながら地面に倒れ込む。
動くことはない。人造人間とはいえ、アンドロイドとはいえ、人間における「死」が、目の前で起こっている――その事実に、俺は愕然とする。
美飾は、追撃のために振り向いた。
その、振り向いた顔が、たまらなく恐ろしかった。
RMH-4のような希薄さとも違う、露骨なまでの恐ろしさ。あの路地裏で、俺に向けていた殺意はなんてことなかったんじゃと思うくらい、それは、何かを破壊するための相貌。
「ご主人様! お下がりください! お守りします!」
両肩、メイド服が引き裂かれ、肩パッドのようなものが展開する。それと足裏、計四ヵ所のスラスターを繰り、空を舞うように攻撃する。右腕の手首は、自らの前腕を握るように折りたたまれており、そこから鋭い刃が顔を見せていた。
スラスターで加速し、刃で、敵の頭部を捉える。
一刀両断だった。
死。死。死体。殺し合い。
俺にとっちゃあまりにもショックで――長く、とても長く、悠久にも感じられたが、その実、美飾が緊急排除モードを宣言してから、ここまで実に十秒も経っていない。それほどまでに美飾の動きは素早く、人間業ではなかった。
「やれ!」と叫び、RMH-4が一斉に銃弾を掃射する。
しかし美飾は、完璧に弾道を捉えているかのような動きで平行に避け、そして、胸部を展開させる――そこには、巨大なミサイルのようなものが埋まっていた。
え? 胸部にミサイル?
おいおい、シリアスなシーンじゃあるが、さすがに声が出てしまった。
「おっぱいミサイル!? おまえ、アフロダイなの!?」
美飾は、笑わなかった。
やはりあの路地裏の時とは違う――防衛どころか、殺戮以外のことを考えていないような眼で、ミサイルを発射する。RMH-4は、今までの動きを視る限り機動性に関してはあまり優れていない。もろにミサイルを喰らい、爆発。
爆風の中、端にいた一体をのぞき、すべての個体が大破した。
「おい、人間……」
生きのこった一体――右腕を破損し、頭部も焼け、ターミネーターのような内骨格が右半分露出した個体が、俺にそう告げた。火花を散らし、壊れそうになりながら、「おい、人間」だなんて――感情を欠いていた、他のRMH-4とは違った台詞で。
「俺に13Cを引き渡せ。でないとおまえは、今に後悔することになるぞ」
「今に、後悔?」
その真意を計りかねていると――美飾が、やつに向かって驀進した。
「ご主人様を、傷つけるなッ!」
そう叫びながら、突進をしようとする。
しかし、何か、違和感がある。
違和感というか、なんというか。
目の前で起きているこの光景は、俺のためとはいえ、やつらが攻撃してきたからとはいえ、一方的な虐殺に近い。それも、圧倒的な破壊兵器の前で、なすすべもなく散っていった、まさに特攻のような残虐性だ。
「やめろ」
思わず、口から出ていた。
「やめろ、やめてくれよ、美飾!」
「……え?」
美飾が、振り返る。
俺は、何の意思もない、無責任な言葉だったと、すぐに後悔することになる。敵は攻撃をしているのだから、美飾が反撃をすることは至極当然であり――和平を結ぶにも、こんな、銃を向けられているような状況を選ぶのはナンセンスの極みだった。
RMH-4が、発砲をした。
美飾は、反応に遅れた。
「うぎゃぁ~~~~~~~っ!?」
弾は弾でも、弾丸ではなかった。
人間のような感情が蘇り、胸部のミサイルも肩部のスラスターも背部のポッドも両腕の兵装もすべて収めた美飾に――そして、その結果、メイド服はボロボロに破損し、結果的にすっ裸になってしまった美飾に浴びせられたのは、弾丸ではなくペイント弾、それも、スライムのようなべたべたした弾だった。
「な、なにこれ!? 何!? わたし、どうなっちゃってますかぁ!?」
「あ……え……」
開いた口が塞がらない。
丸裸の美飾みかさが、べたべたのスライムにまとわりつかれている。
「やだっ! 身動きが取れません! ぬっちょぬちょ! ぬっちょぬちょです~!」
そ、そうか。
RMH-4は、あくまでも美飾を捉えるためにやってきた。だから、破壊するためではなく、捕縛するためのスライム弾を装備していたのか! 何たる誤解! まさか、美飾が全裸のままぬっちょぬちょになってしまうだなんて!
「よし……捕獲完了」
RMH-4は半壊状態ながらも、何事もなかったかのようにこちらへ歩いてくる。
ロボットだから、オンとオフしかないのだろうか。顔が焼けていても、内骨格さえ無事なら正常に動き続ける、みたいなことか?
「おい、おまえ、どうする気だよ」
「連れて帰る。世界最高粘度を持つアーヴィング吸着液だからな。さすがの13Cでも身動きは取れまい。迷惑かけて悪かったな、人間」
連れて帰る?
連れて帰る、だって?
こんな、全裸で全身ぬっちょぬちょのメイドロボットを? お持ち帰りだとぉ~?
「……犯罪だろ、それ」
「はっ!?」
ご主人様、そいつを止めてください――美飾の悲鳴が轟くと同時に、俺は、やつから銃を奪い取っていた。13C、美飾相手にゃ俺みたいな一般人が立ち向かいようもないが、4、それも半壊状態のこいつなら、俺だってなんとか立ち向かえる。
「もうよっくわかんねーけどさあ!」
俺は、その照準を、RMH-4に向けた。
「人様のメイドを、何ぬっちょぬちょにしてくれとんじゃボケーーーーッ!」
「え!? おい! 待て、待て待て!」
バーン。
なんちゃら吸着液とやらが発射され、やつの全身に降り注ぐ。
「ちょ、ちょちょちょっと! ちょっと待ってくれ! 嘘だろ!? 俺、俺も! ぬっちょぬちょ! ぬっちょぬちょになってる! 助けてくれ! ぬっちょぬちょで動けねえ!」
「やーん! ぬっちょぬちょ! ぬっちょぬちょです~! ご主人様! 助けてくださ~い~!」
「おい! 人間! これ、どうにかしてくれ! いや、どうにかできないのは知ってるけど! 助けて! 助けてくれえ! 俺こんなぬっちょぬちょ嫌だよ~~~!」
「ご主人様! 祝部ご主人様! 早く拭いてくださ~~~い~~~!」
ああ、これはこれで。
荘厳ってやつかもしれないな。
〈Ep.3 Eeeek! So Slippery! Slippery Goo~! is END〉
〈BGM: ジェフ / NONA REEVES〉
〈後書き〉
いいかも。もう、こーゆー路線で。
完全無志向型連載小説の方法論ですね、これが。




