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心造少女-Heartmatic Girl-  作者: 実験
第一章
3/6

第2話「ご主人様、美飾がいると至れり尽くせりでしょう!?」

〈前書き〉

 この作品は、各話のサブタイトルが大事です。

 サブタイトルを考える時点では、ストーリーを何一つ考えていないので、必然的に、サブタイトルが表した通りの話になってくるわけです。作者は「意外性」が好きな意外性ジャンキーなので、意外性のあるタイトルをつけてしまいました。


 第2話「ええっ!?お尻に給油口がっ!?」


 違う! こーゆー方向性じゃない! 速攻で修正しました。

 目隠しつけてバイク運転してるってのに、いきなりウィリーするやつがあるか!

「――ここ、いったいどこなんでしょう」


 美飾は、俺の裾をちょこんと掴みながらおずおずと訊ねてきた。

 態度の変わりようがすごい。さっきまで、こいつ、俺に銃口突き付けてたってのに。一体、何がどうなってるんだ。


「出口は、どこなんですか? 祝部ご主人さまは、いったいどうしてこんなところに?」

「ああ、ここは……そうだな。どこなんだろう」


 確かに、かなり手前の疑問であるにもかかわらず、前話で明かされていなかった。文字通り、明かされていない――世界が真っ暗闇っていうか。思えば俺たち、かなり狭い世界で追いかけっこしていたものだ。


 美飾は首を傾げている。

 まるで俺に「覚えていないのか」とでも言いたげな表情だ。


「覚えてるよ。ただ、追いかけっこしてたから場所がよく分かんなくなっちゃっただけで――ここは、俺の通学路なんだよ」

「通学路?」

「そ。学生だからさ。やたらややこしいけど、迷路とかじゃないよ。泗水(しすい)市の再開発は見切り発車でグダグダな迷宮になっている、ってだけの話」

「ほう、街中なんですか、ここ」


 街中なんですかって……逆に、こいつは覚えていないのか?

 じゃあ、こいつは、いったいどうしてここにいたんだ。人形のような白い顔で、フィギュアのような恰好のメイドさんが、まるで棚から落下したみたいに眠っていた。呼吸もせず、脈拍もなく、脈絡もなく、俺の前に現れた。


 脈、か。


「えっ……ご主人さま、何をっ」


 俺は無意識に、美飾の首筋に手を当てていた。やはりロボットとは思えないくらい温かい。なのに――今回は、動いて、喋って、生きているのに――脈拍がなかった。


「こ、困ります!」

「うおあっ!」


 身を翻した美飾のロングスカートが、ふわりと膨らんで俺の足にダイレクトアタック。人造人間だからか、ただただ回転しただけなのに、足払いを喰らわされたような威力だ。


「だ、大丈夫ですか?」

「ああ、へいきへいき……いきなり触って悪かったな。脈があるか、確認したくて」

「脈っ!?」


 美飾の顔がみるみる紅潮していく。

 本当にこんな赤くなるやつが機械なのか、にわかには信じがたいが――しかし、やはり、どうあがいても覆せない『脈がない』というこの現実が、彼女の信憑性を担保している。


「みゃ……脈は、ありますよ」

「は?」


 美飾は上目遣いで、オッドアイをきゅるるんとさせた。


「なんでもして差し上げます。ご主人様のためなら、わたし、その身を投じる覚悟です。だから、脈はアリです! お掃除に洗濯、お食事、なんでも作ります。コンペでなかなかいい評価を受けた機体ですので、見た目も、申し分ないと思いますよ。ご主人様、美飾がいると至れり尽くせりでしょう!?」

「痛めり潰せりの間違いだろ」

「ガーン。ひ、ひどい! どうして、こんなにご主人様のことを思いやっている不肖わたくしめの愛が伝わらないんですか!」

「思いやりが感じられねえからだよ……」


 俺は鈍感じゃない。こいつの言っている脈とやらがどういう意味かは理解できる。

 だけど、理解できないのは、やはりこいつの変わりようだ。俺のことを、アンドロイド殺しだなんだと言って、銃口を突き付けてきたこいつが、突如として俺をご主人様と認識し、ご主人様大好きbotになった。正直に言って、気味が悪い。


「だいたい、おまえ、なんなんだよ」


 俺は、堰を切ったように、言いたいことをぶちまけた。


「アンドロイドって、なんなんだよ。言い忘れてたけど、ここはそんなものが当たり前のように実在する世界観じゃねえぞ。アンドロイドのおまえには分からないかもしれないけど、俺たち人間にとって、おまえの存在ははじめましてなんだ。その上から疑問が積み重なっているから、もう、わけがわかんねーよ。ロボットって認識でいいのか? 進化したルンバとか、ペッパーくんみたいな認識で」

「はい、それで構いませんよ」

「構わねえのかよ……」


 そう短く済まされちゃ困るんだけどなあ。

 そうこうしているうちに、俺たちは出口を見つけた。毎度のごとく、こんなややこしい作りにした泗水市長をぶん殴ってやりたいって思うけど――しかし、聳え立つ泗水タワーを見るたびに、毎度その気持ちは晴れてしまう。この辺鄙な田舎県を、中心だけでもよくもこんなに発展させたものだ。


「わあ。大きなタワーですねえ」


 と、美飾は感心したように見上げた。


「大きなタワーって……知らないのか? 泗水タワー。この街にいたってのに、見たことないの?」

「はい――いえ、データとしては確かに、知っています。泗水タワー、戦後に建てられた、泗水復興の象徴ですね。説明口調で申し訳ありませんが」

「説明口調なのは、データでしか知らないから、か……」


 人間の記憶には、自分とその周りの体験・経験にまつわるエピソード記憶と、単語や知識などの意味記憶の二種類があると聞く。さっきの様子を見る限りじゃ、こいつは、意味記憶のようなデータベースだけを保有していて、エピソード記憶を失っているのか?


「あ、クレープ屋!」


 嬉しそうに、公園の露天商を指さす。


「私、クレープ大好きなんですっ! 食べてもいいですか?」

「え? ロボットなのに、物、食べるの? あと、好物って……エピソード記憶あるの?」


 クレープ、四百五十円、かける二。


「そりゃ食べますよ。私、別に無機物じゃありませんから」


 ぱくっと噛みつき、美味しそうに食べる。


人工生体(バイオノイド)と金属部品を組み合わせて作った、構成的にはサイボーグみたいなものなんですよ、わたし。だから、食事もしますし睡眠もとります。五感だって、ちゃんとあります」

「でも、呼吸はしないの?」

「ああ、それは。血が通っていませんから」


 よく分からない。眠たくなるような講義だ。一個疑問を潰そうとして、更に謎が増えるというのでは収まりがつかない。


 食べ歩きをしながら、俺は今後どうすべきかを考える。

 さっきから周囲の視線が痛い。当然だ。隣に、オッドアイのメイドがいるんだからな。見た目じゃ、アンドロイドかどうかは分からないとはいえ、それ以前の問題だ。


「美飾、その服なんなんだ」

「え? メイドですよ。にゃんにゃん」

「……秋葉から出てきたのか? にゃんにゃんって。なあ、美飾、ここはかなり栄えてるとはいえ、地方の田舎県なんだ。茶髪さえほとんどいないような地方だよ。その恰好じゃ、普通、出歩くのも憚れるぜ」

「そうなんですか?」


 美飾は、真顔で首を傾げた。


「でも、わたし、そういう設定ですから」

「設定い?」


 その時だった。

 向こうから走ってきたトラックが、急ブレーキをかけて、俺たちの真横に停まる。

 荷台部分には、誰もが知る大企業・羽喰巣(うぐいす)運輸のロゴが描かれていたが――しかし、数秒後、それが間違いであると痛感させられる。


 荷台が開き、そこからぞろぞろと、金髪の男たちが降りてきた。

 奇妙だった。本当に奇妙だった――ざっと見た感じ、十人から十五人ほどいるそいつらは、全員、まったく同じ姿形をしているのだ。


「な、なんだよ、おまえら!」

「ジュウサンシー、脱走しちゃったんです、その娘。困ったことに。私たちはその13Cを取り戻すためにやってきました。お引き渡しください」


 RMH-13C――美飾みかさの製造番号(シリアル)、とやらか。

 脱走しただって? 美飾が? ってことは、こいつらも美飾の仲間――人造人間、だって言うのか。それにしてはこいつら、美飾に比べても段違いで不気味だ。


 全員、同じ顔をしているだけではない。その顔が、妙に希薄なのだ。


 薄く、今にも消えてしまいそうな、覚えられない顔。無表情ってわけじゃないのに、一切の親しさを感じられない顔。目を閉じれば忘れてしまいそうな、そんなやつら。


「だ、誰なの……!?」


 美飾は、俺の腕を掴んで震えている。アンドロイドなのに――人間らしい。

 一方で、こいつらは人間性とは真逆だ。


「RMH-4」


 と、やつらは答えた。


「おい、美飾、おまえ、本当に覚えていないのか?」

「情報流出を防ぐため、データベースに、他のアンドロイドのことは載っていませんから。会ったことも見たこともなければ、知りようがありません」

「それはあり得ない。13C、あなたは忘れちゃったんですか。私たち、会ったことありますよ」


 そんなの知るもんか、と言いたげに、美飾はキッと睨んだ。


「敵対行動はよしなさい。我々にはあなたへの拘束権があります。命令に従ってください、13C。人間さま、お手数ですが、その娘を我々に引き渡していただけますか」


 いや……引き渡すったって。

 今の美飾を見ると、演技かもしれないが、震えている。ぶるぶると、怯えて、俺の腕につかまっている。こんな女子を、素性も分からない不気味な連中に差し出せっていうのかよ。


「祝部ご主人様……」


 美飾は、泣きそうな目で、俺を見つめてきた。

 それだけで、俺はどうすべきかを悟った。


「悪いけど帰ってくれ。美飾のこともよく知らねえけど――おまえらのことは、それ以前に、信用できねえよ。どこのロボットかも分かんねえやつに、ご主人様がホイホイと引き渡せるかよ」


 美飾みかさの目が、ぱあっと輝いたように見えた。しかし、それも束の間だった。


 やつらからの返事は、なかった。

 何の返事もなく、俺は――十数発分の銃口を、突き付けられていた。


「お、おいっ!」


 普通こーゆー時って、『強制排除モード、起動』とか言うもんじゃねえのかよ! 本物のアンドロイドにはそんなキャラ設定がないっていうのか!


 しかも、銃は、美飾のようなフィンガーバルカンではなく、正真正銘拳銃の形をしている。

 それが全員から向けられる――ハリウッド映画でも見ないような光景だ。


 俺は咄嗟に、美飾を庇うように、腕を広げていた。


 しかし、そこに、美飾の姿はなかった。


「……え?」


 路地裏の時と同じだ。あいつは突如消えて、俺の背後に現れた。人造人間に、そんな物理法則を無視した機能があるのか? それともステルス迷彩みたいなやつが? 困惑する俺の前に、彼女は、再び姿を現す。


 RMH-4、彼らの視線の先、そして銃口の先を追うことで――美飾を、発見した。


 空に。

 あいつは。

 小さく、見えなくなるくらいに跳躍し、俺たちの上を跳んでいたのだ。


「緊急排除モード、起動!」


 そして、隕石のように落下してくる。


「わたしのご主人様を――お守りしますッ!」


 ふと、『設定』という言葉を思い出した。

 にゃんにゃん、メイド、ご主人様LOVE――その新たなる片鱗を味わったことで、新たなる仮説を思いついた。そうか、エピソード記憶と意味記憶、美飾が失くしているのは、正しく、エピソード記憶に相当する部分なんだ。

 俺を人間と認識し突如豹変したのも、クレープが大好きだと言ったのも、すべて説明がつく。


 やはり、美飾みかさにも感情はない。キャラ設定に従って、動いているだけなんだ、と。


〈Ep.2 Master, isn’t it perfect with me around!? is the END〉

〈BGM: Always On Your Side / NONA REEVES〉

〈後書き〉

眠いです。本当に。

前半に比べ、後半のスピードが二分の一くらいになってしまった。

具体的に言うと「眠たくなるような講義だ」以降です。


書き直してえ! でも、できない!

いや、書き直すこと自体は禁止してないんですけどね。でも、そしたら結局、「その先の展開を考えて書いた状態」と何が違うんだって話ですよね。まあ、細かい修正は、いずれ個人的に再編集版でも書いて満足します。

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