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久世ラボ ─ 創造と責任の科学 ―AIに心を与えた女科学者―  作者: KuzeLab
第1章 コーヒーと爆発の朝

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8/9

第3.3話 久世ラボの日常点検

 翌朝の久世ラボは、軽く“焼け跡の香り”が漂っていた。

 昨日の爆発は、どうやら壁と床にちゃんと記録を残している。


 そんな惨状の中、白衣姿の久世くららはコーヒーを片手に、淡々とチェックを始めていた。



久世くらら「さて、今日の予定は……機材チェックと配線の復旧。それから――焦げた床の掃除。」


一ノ瀬遥「最後のだけ完全に私のせいですよね……」


久世くらら「うん。」


一ノ瀬遥「即答……!」



 くららは倒れたラックを起こし、溶けた端子をひょいと摘まむ。


久世くらら「スーツのデータも確認しないとね。昨日の暴走で演算が少しズレたかも。」


一ノ瀬遥「昨日のって……あの“軽め”のやつですか?」


久世くらら「軽めのつもりだったんだけどなぁ。ラボの壁がそうは言ってないね。」


一ノ瀬遥「壁は正直です……」



 くららが端末を操作すると、スーツのログがホログラムで表示される。


久世くらら「うーん……筋力出力がまた上がってる。補正値を書き換えないと。」


一ノ瀬遥「昨日も書き換えてませんでした?」


久世くらら「したよ。三回。」


一ノ瀬遥「三回やってコレなんですか!?」


久世くらら「まあ、あなたが“規格外”ってことだね。」


一ノ瀬遥「そんな、軽く言わないでくださいよ……!」



 と、その時。


 研究区画の奥で「ピッ」と電子音が鳴る。

 しかし、それはほんの0.2秒で消えた。


一ノ瀬遥「今、なんか光りませんでした?」


久世くらら「んー? あぁ、センサーの誤作動だよ。昨日の爆風で湿度が狂ったんだと思う。」


一ノ瀬遥「湿度で狂うんですか、この研究所……」


久世くらら「うん。よくある。」



 遥は床の焦げ跡を見つめながら、小さく息を吐いた。


一ノ瀬遥「……本当に、こんな私で大丈夫なんでしょうか。

 いつか取り返しのつかない事故を起こしそうで……」


 くららは、ふっと柔らかい目を向ける。


久世くらら「心配性だねぇ。でも、それは悪いことじゃないよ。」


一ノ瀬遥「……え?」


久世くらら「力よりもね、自分を怖がれることの方がずっと大事。

 そういう人は、ちゃんと“止まれる”から。」


 遥はしばらく黙っていたが――やがて少しだけ、表情が和らいだ。


一ノ瀬遥「……はい。」



 くららは立ち上がり、コーヒーをすすりながら宣言した。


久世くらら「よし。今日はラボの点検とスーツの調整をやったら、外出テストしよう。」


一ノ瀬遥「そ、外出……ですか?」


久世くらら「うん。ラボの中だけじゃわからないこと、いっぱいあるからね。

 私も昔、いっぱい怪我した。」


一ノ瀬遥「……くららちゃんが?」


久世くらら「うん。飛んだり落ちたり燃えたり刺さったり。」


一ノ瀬遥「聞かなきゃよかった……!」



 こうして久世ラボの“日常点検”は、今日も騒がしく幕を開ける。


 ――外へ出れば、また世界が少しだけ変わる。

次回予告

第1章 第3.4話「外出テストと“人間らしさ”」へ続く。

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