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久世ラボ ─ 創造と責任の科学 ―AIに心を与えた女科学者―  作者: KuzeLab
第1章 コーヒーと爆発の朝

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7/8

第3.2話 暴走と、コーヒーブレイク

 久世ラボの朝は、やけに騒がしい。

 実験装置が唸り、コーヒーの香りが漂い、そして――何かが爆発する。



久世くらら「さて、今日は出力試験だ。軽めにね。」

一ノ瀬遥「昨日も“軽め”で机が吹き飛びましたけど?」

久世くらら「学習済み。今日は“もっと軽め”にするから。」

一ノ瀬遥「その言葉、信じていいのかなぁ……」



 制御スーツの光が走る。

 遥が拳を構え、床に軽く力を込める――バシュン!

 空気が震え、金属ラックがガタガタと揺れた。


久世くらら「ストップストップ! いきなり全力出さないの!」

一ノ瀬遥「い、いや、出してないですって!」

久世くらら「……ふむ。筋力出力比が設定の十五倍。誤差の範囲外だね。」

一ノ瀬遥「それ誤差って言いません!」



 計測モニターが赤く点滅し、くららの端末が高速で数値を吐き出す。

 遥は不安そうにくららを見る。


一ノ瀬遥「……私、壊れてるんですか?」

久世くらら「壊れてないよ。ちょっと“調子が良すぎる”だけ。」

一ノ瀬遥「そんなポジティブな言い換えあります?」

久世くらら「ある。研究者は前向きじゃないと死ぬから。」



 次の瞬間、警告灯が点滅。

 装置の一部が“ボンッ”と煙を上げ、ラボ中に焦げた匂いが広がる。


久世くらら「あー……またやったね。」

一ノ瀬遥「私のせいですか!?」

久世くらら「うん。でも大丈夫。これくらい日常茶飯事。」

一ノ瀬遥「それが一番怖いんですけど!!」



 くららは煙の中でマグカップを掲げた。


久世くらら「よし、コーヒーブレイク!」

一ノ瀬遥「え、今!?」

久世くらら「“焦げ臭い朝”にはコーヒーがよく合う。」



 二人は爆発跡のそばで座り込み、湯気の立つマグを手にした。

 遥は静かに呟く。


一ノ瀬遥「……私、やっぱり怖いです。

 体のことも、力のことも、全部。」


 くららは少し間を置いてから、穏やかに笑った。


久世くらら「怖いって感じられるなら、まだ人間だよ。」

一ノ瀬遥「……人間。」

久世くらら「そう。科学で作れないもの、それが“心”。」



 沈黙の中、計測器が「ピッ」と一瞬だけ音を立てた。

 くららはそちらを見て、首をかしげる。


久世くらら「……ん? またセンサー誤作動か。昨日も光ってたな。」

一ノ瀬遥「壊れてるんですか?」

久世くらら「このラボはね、よく“息してる”の。

 まあ、そのうち直すよ。」



 くららはコーヒーをすすり、微笑んだ。

 その姿を見て、遥はようやく笑顔を返す。


 ――久世ラボの朝は、やっぱり今日も爆発とカフェインでできている。

次回予告

翌朝。修理される機材、点検される研究区画。

そして、ラボの片隅で動き出す“声”――。


第1章 第3.3話「久世ラボの日常点検」へ続く。


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