久世ラボ小話 くらら燻らす
夜更けの久世ラボ。
遥はふと目を覚ました。
遥「……お腹すいたな。完全にぺこちゃんだ……。晩ご飯、ハンバーガー四十個食べたのに……なんでだろ」
寝ぼけながらキッチンへ向かった遥は、ふと足を止める。
遥「……ん? 匂い……」
ラボでは絶対に漂わないはずの香り。
――タバコの匂い。
遥「誰か……いる?」
警戒しながら匂いを辿ると、それは地上へ続く通路を抜けた先の、廃材置き場へと続いていた。
遥「侵入者……じゃないよね……?」
そっと扉を開け、覗き込む。
遥「――誰かいるの!?」
くらら「わっ!? ビックリした!」
遥「くららちゃん!?」
廃材に腰掛けたくららが、夜風に吹かれながらタバコを燻らせ、片手にはコーヒーを持っていた。
遥「くららちゃん……タバコ吸うの?」
くらら「うん、極々たまにね。気分転換みたいなもの」
遥「なんでこんな場所で……?」
くららは周囲に積まれたガラクタを指でつつきながら、小さく微笑む。
くらら「ここ、全部私の失敗作なんだよね。
もっと上手くできたんじゃないかって……たまに思うの」
遥「くららちゃん……」
くらら「まあ、成功しても爆破してたかもしれないけどね?」
くららがにこっと笑うと、遥は思わず苦笑した。
遥「……くららちゃん、私にも一本ちょうだい」
くらら「いいよ」
遥がタバコを咥えると、くららは静かに火を近づける。
カチッ。
ぽうっと灯った火が、二人の顔を淡く照らした。
遥「……(吸って)……げほっ!! マズッ!!」
くらら「ふふ、最初はそんなものだよ」
夜風にタバコの煙がふわりと消えていく。
くらら「……よし、戻ろ。揚げ物パーティーでもしよっか」
遥「賛成〜。深夜の揚げ物は正義〜」
立ち上がる前に、くららはもう一度廃材の山を振り返った。
くらら「……またね」
吸い終わったタバコを、まるで線香のようにそっと置く。
照らすのは静かな月の光。
失敗も成功も抱えたまま、二人はラボへ戻っていった。




