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久世ラボ ─ 創造と責任の科学 ―AIに心を与えた女科学者―  作者: KuzeLab
第1章 コーヒーと爆発の朝

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2/12

第1話 研究者、寝不足にて起床

久世くららの朝は、だいたい煙の匂いで始まる。

それがコーヒーの香りなら平和な日。

でも今日は――うん、金属が焦げる匂いだった。


「……おはようございます、くららさん。酸素濃度、推奨値を超えています」


無機質な声が、壁のスピーカーから響く。

机に突っ伏したまま、くららは片手を上げた。


「……大丈夫、ちょっと爆発しただけだから」


白衣の袖には焦げ跡。

髪は寝癖で跳ね、目の下には見事なクマ。

久世くらら、二十代後半。研究者であり発明家。

そして、たぶん今日も徹夜明け。


「コーヒー、ブラックで」

「昨日も三杯でしたが」

「昨日のは昨日。今日は今日」


ラボの自動コーヒーメーカーが唸る。

立ちのぼる香りに、くららの口角がわずかに上がる。


ズズッ、と一口。

――と、背後の装置が「ピッ」と鳴った。


ドォンッ!


爆風。煙。

くららは反射的にマグカップをかばう。


「っぶな! よし、成功」

「完全に爆発音でしたが」

「細かいこと言わないの。研究とは試行錯誤だよ」


天井の焦げ跡を確認し、さらりとメモを取る。


“反応パターンA-3 エネルギー過剰反応。再調整要。”


「ま、今日も実験日和ってことね」


白衣の裾を翻し、くららは新しいカップに手を伸ばす。

爆弾マーク入りのマグ。

彼女のトレードマークだ。


外ではAI管理の都市が動いている。

人とAIが共に働き、月では建設都市が進行中。

それでもこの研究所だけは、どこか時代から取り残されたように静かだった。


「……さて、資材の調達でも行くか」


寝不足の目をこすりながら、コートを羽織る。

くららはひとり、静かなラボを後にした。


誰もいないその背中を見つめるように、

モニターのAIアイコンが小さく瞬いた。


『――今日も、彼女が世界を少しだけ進める。』

寝不足でも爆発でも、久世くららは止まらない。

次回、第1章 第2話――「資材調達と、ひとつの偶然」。


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