激突南の神官
リリーとジークは、小高い丘の草むらに潜んでいた。
「ホントにここに来るの?」
リリーは疑いの目でジークを睨んだ。
ジークは、地面に耳を当て、
「来た!15分後に毒霧と腐食ガスを、撒け。」
「命令すんな!」
リリーはイライラしながら腐食ガス散布の準備に入っていた。
南の神官の軍勢が近づいてきた。
南の神官の姿が、見えたタイミングでリリーが毒霧と腐食ガスの散布を開始した。
たちまち軍勢の列が乱れ、南の神官も落馬した。
「や、やられた!」
「態勢を立て直せ。」
南の神官の掛け声で進軍が停止し、態勢の立て直しを図ったが毒霧により多数の兵が動けなくなり、兵糧は腐食ガスで使い物にならなくなっていた。
「神官、退却しますか?」
神官は歯ぎしりをし、首を横に振り
「退却は出来ないがこれ以上の犠牲は意味がない、ここからは、私1人で行く。お前らは大神官の元へ行け。」
ジークとリリーは顔を見合わせ、
「結果的には失敗ということ?」
リリーはウッドタウンに報告の為その場を離れ、ジークは更なる足止めをすることにした。
ウッドタウンに着いたリリーは、もふもふ達のところまで走っている最中に、後方から雷鳴が響いた。
「あいつ、無茶しなきゃいいけど。」
と呟いて、もふもふ達の所に急いだ。
僕とウィルは、リリーの報告を聞いていたが、
「リリー、無理はしなくても良かったんだよ。」
と僕は苦笑いで言った。
ウィルは頷いて、
「まぁ、成功と言って、いいんじゃないか?ま、あえて言うなら2人で戻って欲しかったがね。」
「どうして?」
リリーが聞くと、ウィルが
「あいつ、どうせ非戦闘員だから役に立たたないっていうからね、どれだけ助かっているかわからないのにね。」
と、呆れ顔で言った。
僕は、
「ジークが無茶しない様に早くジークの所へ行かないと。」
と言って、ウッドタウンをメグとマークを残して出発した。
ジークが、南の神官と対峙していた。
「ほう、魔族の魔力のようだが?魔族の侵入を許してしまったということか。」
ジークは苦笑いして、
「ちょっと違うんだけどな。」
「魔族は人の言葉を操り人心を惑わす、神官として基本中の基本だ。」
暗黒魔導師がジークの周囲に展開する。
空間がねじ曲がる、暗黒魔法の一斉放射がジークに襲い掛かる。
「そら、馬脚を現したな。下級魔族、半身は暗黒竜か。」
更に、暗黒魔法の連射が続く。
ジークは、地面に叩きつけられ身動きが取れなくなっていた。
「おかしいな。魔族はこんなものではないだろう、本性を表せ、人を喰らい、魂を食らうのが魔族だろう。」
神官は、ジークの頭を蹴飛ばし、唾を吐き捨てた。
ジークは、仰向けになり、ニヤと笑った。
その瞬間、神官がグラつき、ジークを睨みつけた。
「魔族!何をした?」
神官が跪き、動けなくなった。
「魔族の話は、聞かないんじゃなかったか?」
ジークは、そう言うと、その場にたおれた。
数時間後、もふもふとウィルとリリーが、やって来た。
「相打ち?結構やるわね。」
と、リリーが関心していた。
ウィルは、神官とジークの様子を見て、穴を掘り始めた。
リリーが不思議そうに、
「え?何してるの?」
「動かない様に埋める。」
僕が穴の深さを見て、
「生き埋めにするの?(汗)」
「いや、首までかな。」
と、苦笑い。
神官を首まで埋めたところで、リリーから疑問が、出た。
「埋めるだけでいいの?」
「いや、封印だ。」
リリーと僕に別々に耳打ちして、リリーが無理やり何らかの薬を飲ませ、その上でなんらかの毒薬であろうか、薬品を頭上から振りかけそこに僕が物理結界と魔法結界を施し封印を行った。
その上に、大量に土砂を被せ、ウィルが大量のナイフを突き刺し何かの術を施していた。
「厳重だね。」
僕は、ちょっとやりすぎかなと思いながら見ていた。
「ま、1ヶ月は持つだろう。」
これだけ、やって1ヶ月後に出てくるってどんだけバケモノみたいに強いんだ。
僕達は、ジークを連れてウッドタウンに帰った。
ウッドタウンに帰ったら、メグが待っていた。
「どうだった?」
「どうと聞かれると困るけど…。」
代わりにリリーが答えてくれた。
「平たく言うと、埋めてきたのよ。」
「埋め…、平気なの?」
メグは不安そうに言ったが、
「ま、1ヶ月くらいは持つんじゃないかってウィルが言ってた。」
と僕が答えると、
「倒すことは出来なかったのね。」
そうか、倒す…。あまり疑問に思わなかったがウィルはなんで倒すことを考えなかったんだろう。
大神殿では、大騒ぎになっていた。
大神官が頭を抱えていた。
「もう一度言え!」
「南の神官様の生命反応が微弱になりました…このままでは反応が消えます。」
パァーン。
報告をした側近を横殴りした。
「そんな、馬鹿なわけあるか!神殿一の暗黒魔導師使いの南の神官が敗れるわけがない…、馬鹿がサッサと洗礼を受ければこんなことにならなかったものを!」
大神官の眼の前に、突然男が、現れた。
「ほう。洗礼とは、神官の洗礼以外は魔族しかないのでは?」
大神官の前に現れたのはギルド本部長だった。
「お前は、ギルドの長か、何をしにきた!」
ギルド本部長は、大神官に顔を近づけて、
「わたしはね、魔王の側近の魔族四天王に繋がる不届き者を処分しに来たのですよ。あなたですね。」
それは、瞬間だった。
床に大神官の首が転がった。
ギルド本部長は近くにいた側近に話かけた。
「大神官は崩御なされた。新しい大神官を探さないと、地下牢に案内して下さい。」
怯えた様子の側近が、ギルド本部長を地下牢の前まで案内した。
「誰だ。」
「ギルドの者です。」
西の神官は、怪訝な表情を浮かべ、
「ギルドの長がなぜこんなところに?」
「禁忌に関する案件が発生しましたのて、その調査に来たのですが、その際大神官殿が崩御なされましたのでその御報告でございます。」
とギルド本部長は静かに応えた。
西の神官は事態を把握し、
「死んだ?」
半笑いで、
「殺したんだろ。それで、俺に報告?なんのために?」
「南の神官様が生死不明でございますので、大神官様の後継はあなたしかおりません。」
「大神官がいないとギルドも困るということか。」
ギルド本部長は側近から鍵を受け取ると、西の神官の鍵を開けた。
西の神官は地下牢から出ると、ギルド本部長に連れられて、地下牢を出た。
「禁忌とは、何をやったんだ。」
「言えないから、禁忌です。」
ギルド本部長は、一礼すると大神殿から出ていった。
西の神官が大神官の姿を見て、
「隠そうとは、しないんだな。それとも脅しか、いつでも殺れると?」
自虐的に、失笑した。
封印を施された南の神官は、以前動きがない様に見えたが、地下では、
「ずいぶん、舐められたもんだ。神官クラスがそう簡単に封印されると想うなよ。」
封印自体は、解除成功したみたいだが結界の解除に難航しているようだ。
「なんなんだ、この奇妙な結界は、力ずくで行くしかないか。」
神官が魔力を集中させ、魔力量が増大していくとウィルが仕掛けた術が発動した。
神官が結界を大破させるのと同時に大量のナイフがまるで生き物の様に神官の内臓を抉り取り、神官は瞬時に意識をなくした。
さらにナイフは、神官の魔力を吸収し、外界へ放出した。
ウッドタウンでは、ウィルが冷や汗をかいていた。
冗談キツイな、まだ死なないのか?
僕は、ウィルの顔が青ざめていたのに気がつき声を掛けた。
「なにかあった?」
「神官が結界を破った…。」
僕は耳を疑った。
「え?まだ1週間だけど…。」
「しかも、私の最高呪術をまともに受けてもまだ生きてる。」
ウィルが焦りながら、
「早くトドメを刺さないとこっちがやられる。」
僕は、ちょっと考えて、
「メグに相談してみる。」
後は、発動するかどうかわからない僕の力かメグの力にたよるしかない。
どうかんがえても、いまは後者しかない。
僕は、メグの部屋まで走って行った。
「ゴメン、メグ。神官が結界を破った、今、トドメを刺さないと危険なんだ、一緒に来て欲しい。」
メグは少し考えて、
「ケルベロスは出せないよ、あと強めの精霊か…ベルゼブブは無理だよ。あれは、年1回ぐらいしかだせないから。後は、守護精霊のシルフくらいかな?で大丈夫?」
僕は笑顔で頷いた。
本来であれば、全員で神官と対峙したいところではあるが…。
僕は、ジークの部屋に入った。
「あっ、もふもふ。ジークはまだ目が覚めないんだ。」
「ジークが目が覚めても無理しない様に言っておいて、僕等は神官が封印を破ったので行かないと行けないけど、マークはジークについていて欲しい。」
マークは頷いて、
「師匠に無理しない様に言っておいて。」
僕は、苦笑いして
「言うこと聞いてくれればいいけどね。」
ウッドタウンの入口で、ウィルとリリーが口論している。
毎度毎度、よくやるよな。
僕とメグが行くと、リリーが
「ちょっと聞いてよ。私を連れて行かないって言ってるんだよ。足手まといだって。」
ウィル…言い方…どうにかならん?
「リリー、回復薬と攻撃用の毒薬って不足気味だよね、必要かもしれないから準備してもらっていいかな?遅れて参戦になる形でもいいからそうしたい。」
リリーは、納得したみたいで、
「そう言えばいいんだよ。ウィル。なんだよ、照れくさいの?」
リリーは、ウィルの背中をパンパン叩いて自分のラボへと戻って行った。
と、いうことで、ウィルと僕とメグで、取り敢えず神官に挑むことにした。
ウッドタウンを出ると、ウィルがすかさずメグに、「ケルベロスは出せそうか?」
と聞いたが、
「無理。」
と即答。
「ベルゼブブは?」
「無理。」
こちらも即答。
ウィルは、僕の方を睨んで
「どういうことだ。」
「う〜ん。でも、戦力的にはメグしかないかなと思うけど。」
と、僕は苦笑いで応えた。
「えっ!迷惑ってこと?」
キタキタキタ、面倒くさいパターン。
目を瞑って聞こえない、聞こえない。
ウィルは、僕を睨んで、
「チッ、いくぞ。」
神官の場所に着くまで、メグの面倒くさい攻撃がウィルに続いたのは言うまでもない。
神官を封印した場所に着くと、封印は破られたみたいだが、神官はウィルが仕掛けた術により虫の息だ。
しかし、容易には近づけない、神官は虫の息だが、魔力が増大している、相当危険なレベルだ。
ウィルがしかめた表情で、
「おかしい、暗黒魔法は使えないように全て排出するようにしたはず。」
メグは、首を横に振り
「それじゃ魔力の行き先は何処?行き先のない魔力がここに溜まってるとしたら?しかも、神官クラスなら体内になくても近くにある魔力なら、制御可能かもしれない。…逃げた方がいい。」
メグは後方に飛んで素早く暗黒魔法の魔手をかわしたが、僕と、ウィルは呆気なく捕まってしまった。
生気のない顔で、神官は立ち上がり
「この身滅びても、魔族の手先だけは葬る。」
「それって僕達じゃなく神官の方だね」
僕は、きっぱり言った。
「戯れ事を。お前らの仲間が使った術は魔族のみが使える魔術、魔族の者ということだ。」
ま、ちょっと気になるところはあるけど。
「北と東の神官は間違いなく魔族の隷属になってたけど…そこまで追い込まれても変化にしないってことはあなたは洗礼は受けてないんですね。」
と僕は切り替えした。
となりで、ウィルが悶え始めた。
ウィルは暗黒魔法に耐性がないため暗黒魔法に晒されるといしきを保つのが難しい。
早いところどうにかしないと。
ふとみると、メグは遥か向こうまで移動している。
「あれ?おい、お〜い。ピンチなんだよ〜。」
メグは、なぜか手を振ってる。
なんか言ってるな。獣人だから聞こえるんだ、なになに。
『みんな捕まったら、全滅するからここで見てる?』
ま、マジか。
ジークから貰ったこの盾でどこまでできるか分からんがやってみるか。
もふもふは、盾に全神経を集中させた。
リリーは、ウッドタウンをウキウキしながら出発した。
ウキウキしすぎて、スキップしながらあるいていたら、ドスっと鈍い音がした。
「あぅっ」
「えっ。」
反対側から来た少女の腹部にリリーの膝が突き刺さった。
「だ、大丈夫?」
リリーが少女に慌てて駆け寄った。
「ゲホ、ゲホ。だ、大丈夫です。」
とても、大丈夫な様子ではなかったが少女は平静を装っていた。
「でも、どこに向かってたの?この先はウッドタウンくらいしかないけど、あなたヒューマンよね、ヒューマンはあまりいなかったと思うけど。」
「え?通りすぎたということですか?南の神殿から来たんですけど、父が1人で蛮族戸闘っていると聞いて助太刀に来ました。」
ん?蛮族って私達のこと?
「え〜と。蛮族って強いんじゃないの。あなた大丈夫なの?」
少女は自信満々に、
「大丈夫です。既に私の魔力は父と同等で後は制御だけです。」
つまり、制御が効かないアブナイ奴ってことね。
「じゃ、気をつけてね。」
その場を何もなかった様に去ろうとしたリリーの腕を掴んで、
「何か御存知ですよね?」
「何を証拠に?」
「申し訳ありません。魔法で心読ませていただきました。」
こ、こいつヤバい奴だ。
「父と闘っている方のお仲間ですね。案内して頂けませんか?」
「でもさ。普通、敵の援軍の道案内する馬鹿いないでしょ。しかも、そういうことするとすごい怒る奴いるのよ。ゴメンね。」
リリーが難色を示していると、
「分かりました。私は分からない様について行きます。」
え?何言ってるのこいつ。
リリーは、小瓶を取り出し、
「これを呑んだら連れて行って、あげるわ。」
魔導師であれば魔法封じの薬であることはすぐわかるものであった。
これで、諦めてくれるかな。
グビグビ。
「え?」
「飲みました。」
マジか。ま、魔法使えないならいいか。
「仕方ないわね。じゃ行くわよ。あなた、名前は?」
「ミリーナと申します。よろしくお願いします。」
「私は、リリー。よろしくね。」
ミリーナとリリーは、神官のいる森の深部へと歩いて行った。
もふもふは、集中力を高め魔力を盾に集中させていった。
周囲を覆っていた暗黒魔法の魔力を吸い取り始めた。
しばらくすると、完全に暗黒魔法の魔力はなくなっていた。
神官はふらふらな状態で立ち上がり、それを見て、苦笑いをした。
「完全に魔法切れで助かったか、でなければいつかの魔導士同様にミイラになってたな。」
ウィルともふもふを捕らえていた暗黒魔法の魔手は暗黒魔法の魔力がなくなるといつの間にか消えていた。
ウィルは、意識をなくしたまま、その場に倒れたままだ。
「どうする、勇者よ、私を殺すか!魔族に魂を売り渡した勇者が私を倒せるのか?」
いつの間にか、メグが僕の隣に来ていて、
「へ〜、あんたって悪い奴なんだね。」
いやいや、お前。話聞いてた?
「いいから。黙ってて。」
どうする、僕は攻撃できないし、攻撃出来るウィルは意識を失ってる。
何か突破口はないのか。
『もふもふ、盾に溜まっている魔力を神官に一気にぶつけろ!』
ジーク?
よく分からんけど、やってみるか。
「メグ!ウィルを、連れて退避しろ!」
「え?わかった。」
僕は、盾に意識を集中すると暗黒魔法の魔力を一気に放出した。
放出した、暗黒魔法の魔力は神官の頭から体内に入っていった。
「ぐぁ〜!!」
神官が断末魔の様な叫び声を発して悶絶している。
「これって…、もう一回魔力を吸い込むということかな?」
ま、僕にはそれしか出来ないから仕方ないけど。
神官は、既に自我が崩壊している様に見える。
そんな時、背後から能天気な声が聞こえてきた。
「ヤッホー。もふもふ、ようやく合流できたよ。」
「ば、バカ。来るな。」
このタイミングは不味い。
暴走した神官が、暗黒魔法の魔手が2人を捕らえようとした時、動きが止まった。
「え?どうした?」
信じられないが、神官が一時的に正気を取り戻した。
「お父さん…。」
「なぜ来た…お前には役目があるだろう!」
「助けに来たの。でも、この人達は悪い人じゃないわ。戦う必要はないわ。」
神官は、膝をつき僕を睨みつけた。
「そういうことか。」
「え?僕等は君の娘を誑かしたりしてないぞ…たぶん。」
「私はな、娘の心が読めるのだよ。」
「はぁ…。」
リリーの奴なにをしたんだろう。
神官の体が大きく震えてきた。
「ぐぐ。限界の様だな。頼みがある、私にこの後すぐにトドメを刺せ、あと娘を頼む…勇者パーティーに入りたいらしい。」
と、言い残しその場に倒れた。
「お父さん!」
ミリーナの叫びと同時くらいに神官から暗黒魔法の魔手が伸びてきた。
僕は、全力で盾に意識を集中して、暗黒魔法を吸収し、神官の魔力ごと生気を全て吸い取り、神官はミイラとなりやがて崩れ去った。
「なんで…。殺さなくてもいいじゃない!!」
ミリーナは僕を睨み、叫んだ。
リリーが、ミリーナを連れて行った。
僕は、ウィルとメグのところへ行った。
「ウィルは…、起きないね。仕方ない、僕が背負っていくよ。ウッドタウンへ戻ろう。ジークもね。そこにいるんだろう。あとで、いろいろ聞くからね。」
と、虚空を睨んで言った。
森の中を移動しながら、ジークに話しかけた。
「ジーク、一体何をしてたの?」
『…』
「もふもふ、魔力の使い過ぎで頭どうかしたんじゃない?ジークの気配とかしないけど。」
「ジーク!」
『悪かった…、精神魔法で少しは押さえてたんだけど…。封印後は俺の魔力もほとんど無くて役に立たたなかった。』
ジークが吐露すると、メグが青ざめて
「ジークって、ひょっとして…私達が留守のうちに死んだ…?」
少し遅れてついてきた、リリーが興味深そうに、
「う〜ん、生霊?それとも肉体から出て戻れなくなった?あはははは。」
『何日経った?』
「え?ジークが神官と戦ってから?2、3日ぐらいじゃないの?」
なんとなく、ジークから焦りみたいものを感じたがひょっとして戻れなくなる。
『3日以上経つと、戻れる可能生が限りなく0になる』
一同、青ざめて、
「急がなきゃ〜!!」
全員フルスピードで、ウッドタウンを目指して走って行った。
「はぁ、はぁ。」
「メグってズルいよ。なんで、飛べるの?」
実は、走ってる途中から、
「私、ウィルと先に行くね。あ、ジークも先行こう。急ぐんでしょ。」
で、走ったのは、結局僕とリリーとミリーナの3人だったという理由だった。
マークが僕らのところに来て、
「ジークがめざめました。」
と、喜んで言って、いたが中身空っぽの奴をずっと看病させてたかと思うと申し訳ないとしか言いようがない。
僕は、ジークに聞かないといけないことがある。
マークについていき、ジークを問い正さないといけない。
「ジーク、もふもふを連れてきたよ。」
「ジーク、もう大丈夫なのか?」
ジークは、照れくさそうに、
「ああ、問題ない。」
と言った。
僕は、真剣な表情で、
「ジーク、僕等に言わないといけないことがあるんじゃないか?」
「というと?」
「君は本当にハイブリッド魔族なのか?
違うだろ。」
ジークは頷き、
「ギルドにそのようにしておけと言われたが、能力的にはハイブリッドとは言えない。母は魔族の隷属なので魔族としての能力を継承している。」
と、バツが悪そうに言った。
「あいつか。」
後から声が聞こえた。
「奴ならやりそうだが、それほどヤバいことをやらせようとしているということだ。」
「ウィル!」
「すまなかった。何の役にも立たなくて。」
ウィルは神官の戦いでの自らの不甲斐無さにただただ頭を下げていた。
リリーがひょこっと顔を出して、
「ちょっとお話が…。」
「大丈夫だけど何?」
リリーがミリーナを部屋に入る様に促して、
「申し訳ありませんでした。父の件での失礼な発言をお許し下さい。」
僕は笑顔で、
「いやいや、肉親が目の前であ〜なったら仕方ないよ。」
ミリーナは頭を下げたまま、
「私は大神殿の父の部下の皆様の方に行きたいと思います。」
と言って、部屋を出ようとしたところで、僕が慌てて止めた。
「あ、ちょっと待って。実は君のお父さんの遺言があって…。」
「は?いつですか?」
「君達が現れてから、すぐに一時的に正気になった時に、娘を勇者パーティーに入れてくれ、娘を頼むとは言われたんだけど、本人の意思を確認しないと思ったんだけど。」
ミリーナが、涙を流して、
「父がそんなことを…。」
「でもね。僕はある意味仇みたいなものだし、ギルドに頼めば、他のパーティーにも入れてもらえると思うしね。」
ミリーナは、キリッとした眼光で僕を見て
「是非、もふもふさんのパーティーに入れて下さい、父の遺言もありますし、リリーさんとも仲良くなりましたので是非お願いしたいです。」
「あ、そう。よろしくね」
突然、メグがミリーナに掴みかかり、
「もふもふは私のものなんだから、手を出したら殺すわよ!」
頭が痛い…。
リリーが間に入って、
「大丈夫、大丈夫。ミリーナはまだそういう感じじゃないから落ち着いて。」
「だって、すぐこのパーティーに女が入って来るんだよ。おかしいでしょ」
いやいや、おかしいのはお前だ。
お前の後はミリーナが初だからな。
これからが、思いやられるな。




