ギルドと幼馴染
リリーとウィルと僕の三人の旅が始まったのだが、
早速不協和音が鳴り響いている。
「だいたい、なんで私だけテントのそとなんですか?」
リリーがウィルに噛みついている。
「何回も言っているだろう、もふもふを外寝かせるのは危険で、私はもふもふの護衛だから一緒にねるんだ。だいたい、居候のくせに態度がでかいんだよ。」
ま、終始こんな感じで、イザコザは収まりそうにない。
「もふもふさん、ところでどこに向かっているんですか?」
もふもふさん?いつから、僕はもふもふという名前になったんだ。
そのうちに、訂正しておかないといけないな。
この判断があやまりだった、即座に訂正しなかったことで未来永劫もふもふと呼ばれることになるとは、この時は思ってもいなかった。
「あ〜。ウィルから、冒険者なら、ギルドに登録しておいた方がいいって言われたのでギルドに向かってます。」
「でも、なんて登録するの?役割は?」
リリーの話によると、パーティーの役割は決めてないとパーティー登録は出来ないらしい、そもそもパーティーは最低3人からなので、リリーがいなかったらパーティー登録すら出来なかったらしい。
「ウィル、役割ってどうするの?」
「もふもふはタンク、私はアタッカー、毒女はヒーラーでいいんじゃないか?」
タンク?タンクってなんだろう?
「ウィル、ゴメンね。タンクって?」
「タンクとは、パーティーの先頭に立ち、味方全員を敵から守り、パーティーの盾となりのが役目だ。」
ん?先頭?盾?
いや、それって、めちゃくちゃ怖い気がする。
「むっ無理じゃないかな?」
ウィルは、頸を横に振った。
「お前程適任はない。守るだけでいい。いや、むしろ攻撃しないでくれ」
「でも、怖いけど。」
「大丈夫だ。私が保証する。」
え〜。どうしてもやらなきゃだめかな?
いざとなれば、逃げればいいか。
「言っておくが、逃げるのは無しだ。ま、私が後ろにいるから無理だかな。」
え〜、逃げ道塞いじゃうんだ。
僕が、ガックリ肩を落としている間に、屋台ギルドに着いた。
街があまりない地域の為や街に寄れない事情がある人の為に街道沿いに屋台ギルドというものがあるらしい。
ウィルがちょっと行ってくるからという感じで、屋台ギルドに小走で行ったが大丈夫だろうか?
会話は聞こえないが、ギルドの店員が青ざめ、ウィルが、怒りの形相になり店員に掴みかかったので急いでリリーとウィルを止めに入った。
「ちょっと待って!冷静に話し合おう。」
ウィルの怒りは収まりそうにないので、リリーに遠くに連れて行って貰った。
「で?何があったんでしょうか?」
店員は震えながら、
「規則なんですが、身分を証明するものか、神官様の推薦状が必要なんです。」
あ~、僕のせいでウィルは怒ってくれたんだ。
「僕、転生者なんです。それと、神官に命狙われているんです。なので、ちょっと条件が…。」
店員は、僕をジロジロみながら、
「ま、そういうこともありますよね。では、テストを受けて頂きます。ギルドとしても冒険者不適格者を冒険者にするわけにはいかないので。」
「テストは、全員ですか?」
「いや、身分証があなた以外はある様なので、あなただけで大丈夫です。」
僕は、それを聞いてリリーに、合図を送って2人の所へ行った。
2人に事情を話し、テストを受ける話をした。
ウィルは、腕組みをしたまま、
「それは、ダメだ。」
「え?どうして?」
「不公平だ。お前だけ、苦しみを受けるわけにはいかない、私達も受ける。」
あ、みんなで受けるってことか。
それじゃ、いいかな。
と、思ったが、リリーが僕の袖を掴んで、
「無理〜、1人で戦うとか勘弁して。」
ギルドの店員が難しい顔をして、僕を見る。
そんな、顔するなよ。無理なんだろうけどさ、ウィルは、一度決めたら無理なんだよ。
「規則では、ギルド加入要件を満たさず止む得ない事情があるもののみ、なんですけどね…皆さんで受けたいんですね。」
ギルド店員は、ため息をついて店の奥へ入って行った。
数分後に、肩を落としながら出てきた。
「同じ条件ではできないので、お二人はランクアップ試験ということにしますがよろしいですか?」
ここで揉めても、面倒なので僕は即答した。
「それでお願いします。」
「ランク判定しますので、ウィルさんここに立って下さい。」
珍しく、ウィルが素直に従って計測してもらった。
「A-Lowですね。」
ウィルが突然激昂して、
「はぁ?!なんでA-Lowなんだ!S-Highの間違いだろ!!」
あー、ランクで怒ったのかびっくりした。
だいたいなんだろうね。AとかSって?
「A-Lowでも充分凄いですよ。私はAランクは初めて見ましたから。だいたいSランクなんかでたら伝説の勇者レベルですよ、だいたいこの計測機じゃ測れません。」
リリーに小声で聞いたところ、冒険者にはランクがあってS〜Gまであるらしい。
だから、ウィルは、相当強いことがわかる。
次は、リリーが計測した。
「C-Highですね。」
リリーは、まっこんなもんですよ、みたいな顔をしていたがこっそりニヤけていたから内心満足しているみたいだ。
「では、試験を開始しますが誰からいきますか?」
3人とも顔を見合わせ、リリーが第一声、
「わたしは、やだよ。何がでてくるかわからないんでしょ?」
「じゃ、私から行く。」
ウィルが、手を上げ、ギルドの奥の戦闘場へと歩いていった。
リリーは、ホッとした様子で、
「もうやめる、とか言ってくんないかな、迷惑だよ。」
戦闘場に上がった、ウィルは、夥しい数の敵がいることを感じた。
「ほぅ。ギルドってえげつねぇな。」
試験開始の鐘がなった。
ウィルは、すぐにシールドを張り魔法防御をしたが、物理攻撃部隊に急襲された。
「うっ!まじか?」
ウィルの目つきが変わった。
ウィルが倒されたと思ったその時、赤い血飛沫が大量に飛び散った。
その光景をモニターで見ていた僕達は、声を失った。
これって試験だよね、試験で人殺すの?
血飛沫の中でうごめく人影があった。
離れていた魔法部隊が次々と倒れていく。
しかも、倒れ方が変だ、倒れるというよりは崩れていると言ったほうが良さそうだ。
血の海から出てきたのはウィルだった。
これが、ウィルの本来の力らしい。
ウィルは、戦闘場から降りてくるとギルド店員に掴みかかり、
「お前、そんなに死にてえなら今ここで殺すぞ!」
ウィルの目がいってしまっている。
リリーが、
「しかたないな、おやすみ。」
と言ってなにやら粉をふりかけた。
ウィルがその場で倒れた。
「リリー!?」
僕は、リリーがなにやらやらかしたと思って詰め寄ったが、
「違う、違う。眠らせただけ、ちょっと強力なやつで。じゃないと、こいつ殺しちゃったよ、それだけじゃ済まなかったかも。」
よくみると、無邪気な寝顔ですやすや寝ていた。
心底ホッとした。
「ちょっとやりすぎなんじゃない?!」
怒りを込めてギルド店員に詰め寄った。
「すっすみません。本部の指示で、全力で抹殺しろと、それでもダメなら許可してもかまわないがその後は本部が引き継ぐって言われたんです。末端の僕等では仕方ないんです。」
ウィルっていろんなところで恨みかってそうだな。
リリーを見て、
「次、どうする?」
と言ったところ、目を丸くしてこの状況で続けるの?みたいな顔をしたので、
「じゃ、次は僕がいくよ。」
リリーが僕の腕を掴んで、
「その手には乗らないよ、僕が戦っている間に置いていく気でしょ。」
全然信用されてない様子だ。もう苦笑いするしかない。
「行きますよ。行けばいいんでしょ。」
半分やけになりながら、戦闘場へと歩いていった。
戦闘場に上がると、
「私は戦闘員ではないんで、手加減して下さい」
と懇願していた。
戦闘開始の鐘がなった。
突然、戦闘員が現れ、リリーを強襲した。
「御生憎様。」
強襲したところにリリーはいなかった。
「こっち、こっち。」
リリーは半笑いで手招きしてる。
戦闘員に動揺が走る。
「作戦β発動。」
ガスマスクを取り出して装着したかと思うと、背後のタンクからドス黒い気体が放出された。
僕は、咄嗟に声が出た、
「まさか、毒ガス?」
マスクの装着の遅れた戦闘員が痙攣して、その後動かなくなった。
「リリー!!」
毒ガスの中から、マスクしない人影が現れ、
「まさかね?私に毒ガスって頭おかしいのかしら?」
マスク装着の遅れた戦闘員になにやら液体を垂らした。
「しかも、即死系のガスだし、素人は困るよね。」
上空に粉をまいたかと思うとドス黒いガスが消えた。
「毒ガスって、こうやって使うのよ。」
といって、粉をまくと戦闘員にまきつくように白い気体が発生したかと思うとバタバタ倒れ始めた。
リリーは戦闘場から降りてくると、
「あー、疲れた。これってわたしの勝ちでいいのよね。」
ギルド店員に喋りかけた。
「はっ、はい。あの?平気なんですか?」
「あっ、毒ガス?現在、ある全ての毒は私には効かないわよ。全部実験して、対処済みだから。オーホッホ。」
リリーの高笑いが響く。
リリーってやっぱり性格悪そう。
「では、よろしいですか?」
ギルド店員が、肩を落として僕に戦闘場に行くように促した。
「あっ、はい。わかりました。」
2人は、普通に戦闘場に向かってたけど、なんか緊張するな、今までは勝手に戦闘が始まってたけど、
戦闘がわかってて戦闘するって緊張するな。
本当、あの2人ってすごいと思う。
いざ、戦闘場に立つとやばい。足がガタガタする。
どんな、相手なんだろう。
初心者に、2人みたいな強敵ぶつけてこないよね。
現れたのは2人、魔導師と戦闘員の様だ。
戦闘開始の鐘が鳴り響いた。
ギルド店員がリリーに話しかけた。
「あの子、本当にタンクで行くんですか?」
「なんで?」
「あんな、小さなタンク見たことないですよ」
リリーは、熟睡するウィルを見て、
「私も戦うの初めて見るけど、このウィルが自信を持って推すんだから間違いないよ。」
鐘がなると同時に魔導師の火炎魔法が無数に飛んできた。
僕は前の戦いと同じ様に、楯で防御を展開した。
「魔法防御結界ですか、初心者なんですか?本当に?」
ギルド店員は戦いを見ながら頸を傾げていた.。
魔法がきかないと見ると戦闘員が僕に斬りかかろうとしたが、直前で動きが停止した。
「物理防御結界?」
ギルド店員が驚愕する。
「二重で結界張るなんて、できるの?」
ここまでは、うまくいったね。
だけど、ここからどうしよう?
う〜ん、魔導師の様子は、ちょっと疲れてるみたい。
戦闘員は、すごい顔で睨んでる。
少し、防御の仕方を変えてみるか。
その時、魔導師に魔法が直撃した。
「反射結界にかえた?」
ギルド店員はリリーに、
「本当に初心者ですか?」
「知らないって、最近あったばかりなんだから。」
ふぅ。これで魔導師は倒したか。
あとは、やる気満々戦闘員か。
面倒だな。
あっ、反射の逆をやってみるか?
戦闘員は突然動ける様になって切りかかった。
効果はないみたいだ。
戦闘員は、続けて切りつけていたが、だんだん力が弱くなっていって、最後はその場に倒れた。
「あー、やっと終わった。」
僕が戦闘場を降りてくると、ウィルは目を覚ましてた。
「終わったみたいだな。わかっただろ、タンク出来るって。」
「あれで、良ければなんとかなるかな?」
僕が、戦闘している間に、手続きは終わったみたいだ。
ランクはウィルがA-High、リリーがB- Low、僕がD-Lowだ。
「なんで、Dですか?最低のGかと思いました。」
ギルド店員は、うつむきながら考え込んで返答に窮している様だ。
「いや、リリーの下はねえな。悪くてもB-highだ。」
ウィルは寧ろ、低過ぎると、抗議した。
「初心者をB-highなんかに出来るわけないでしょ!
通常は、Gなんです。これでも、最大限の評価です。これから、本部に報告しますので、なにか連絡あると思いますので、ギルドには小まめよってください。あと、これが最初の依頼です。お願いします。」
ギルドを後にしながら、依頼の封筒を開けた。
封筒の中には依頼書が入っていたようだ。
まだ、こっちの世界の文字はわからないのでウィルに読んで貰った。
内容はこんな感じだった。
『ここ数ヶ月、入り浸っている冒険者のエルフが毎日酒場で大暴れして困っている。
エルフは森の神の使いなので討伐するわけにもいかず困っている、エルフを森に戻してほしい。』
と、言った内容だった。
「胡散臭いな。」
ウィルは半笑いで、リリーを見た。
「やだよ。私に行って来いとか言うんでしょ。」
「ウィル、なんで、胡散臭いの?」
僕は、胡散臭い理由がよく分からなかった。
「第一に、エルフが冒険者になることはない。
第二にエルフが人前に出ることがほぼない。
第三に数ヶ月放置するわけないので依頼は複数回失敗している可能性が高い。
と、言った感じかな?」
「そして、そのエルフは恐らく、もふもふと同じ異世界人。」
なるほど、確かに異世界人なら、通常のエルフと違う動きするのは説得力があるな。
「で、どうする?」
「ま、いくしかないけど今日は、ここで、野宿だな。」
今日も、大変な一日だったな。
隣では、ウィルが僕の尻尾を抱きしめながら、すやすや寝ている。
「もふもふ。」
最近、エスカレートしてないか?
まぁいいか。
明日は、平和な日が訪れますように。
次の日、やっぱり平和な日って遠いのかなって思った。
「違うって言ってんだろう!!」
「ムキになるところがあやしい。」
とりあえず、二人の間に入って揉め事の原因を聞いた。
内容としては、リリーが朝起きて、僕等を呼びに来たところウィルが僕の下半身に抱いついていた、というよりは、完全に抱き合っていたと言うのだ。
まぁ、僕は、抱き枕的な存在だからネ。
「リリー、仕方無いよ。ウィルにとって僕はぬいぐるみだから。」
「ぬいぐるみかぁ。乙女ですね。ははっ!」
「てめぇ、朝飯になりたいのか?」
再び、二人の間に入って揉め合いながら朝食を済ませた。
「とりあえず、今日は現場に行って本人に話を聞いてみよう。」
ウィルが、僕を睨みつけて、
「話合いに、なればな。」
「そうだね。転生者のエルフだからね。召喚術ぐらい使うかも。」
二人の目線に怯えながらも、
「とりあえず、行ってみようよ。依頼なんだしさ。」
「行くだけ行くか。」
なんとか、ウィルとリリーも重い腰を上げて行くことを承諾してくれた。
酒場自体は、それ程遠い場所ではなく昼過ぎには到着した。
酒場に着くまでの間、昨日のギルドでの戦いで、僕が戦っている最中の出来事を二人は話してくれた。
「本来なら、あの分量なら朝までグッスリのはずなのに、化け物だね、ウィルって。」
「あの程度、アサシンマスターだったら当たり前だ。」
僕は、ちょっと疑問に思ったので聞いてみた。
「よく、ギルド店員さんに襲いかからなかったね。」
リリーが、笑いを堪えながら僕の肩を叩きながら言った。
「あれね、違くて。ギルド店員への八つ当りなのよ。ウィルってアサシンでしょ。そりゃ、不意打ちなんて日常的風景なのよ。自分の不甲斐無さの当たりどこがなくて、ギルド店員に当たってただけ。
こどもでしょ。はっはっー。うける。」
「それ以上言うと、明日の朝陽を拝めないようにするぞ!!」
ウィルはちょっとはずかしそうに、
「最近、平和過ぎて平和ボケしていたようだ。以後このようなことがないようにする。」
それを聞いて、ウィルの人間らしい一面に少し嬉しい気持ちになった。
酒場は外から見る感じだと一見静かな感じで、
依頼にあることは無さそうに見える。
僕は意を決して、酒場の扉を開けた。
酒場の店主らしい者が小走で、駆け寄ってきた。
「すみません。まだ、準備中で。」
「あっ。ギルドからの依頼できました。」
店主はびっくりした様子で、
「ギルドからですか。あきらめられたと思ってましたよ。」
「でも、失礼ですが。大丈夫でしょうか?」
後からウィルが睨みを利かせ、小声で
「大丈夫だ。」
その後からリリーが手を振っている。
「どもー。」
三人で店内に入ると中央で奇声を発している人物がいる。
女性のようだ。なんだか、嫌な予感しかしない。
とりあえず店主に聞いてみることにした。
「あの人ですよね。」
「そうです。あんな感じで、トイレ以外はあそこにずっといます。」
ちょっと観察してみたが、ただの酔っ払いにしか見えない。
「酔っ払いにしか見えませんね。」
「私も、最初そう思って話を聞いたんですけど、
とある人物とじゃないと話はしないっていうんです。その人が必ず助けに来るっていうんですけど。あの人、異世界からの転生みたいで。難しいんじゃないか?というと大暴れしまして、泣きながら絶対に来るっていうんですよ。」
ウィルは、やっぱりみたいな顔で、
「やっぱり異世界から来たか。」
リリーが横から要らないことを言い始めた。
「でも、この人も異世界から来たから案外知り合いかも。」
余計な、ことをペラペラとこいつは。
「リリー、初対面なら攻撃性はないらしいから、なんか聞いてきたら。」
「そだね。聞いてくるよ。」
軽いノリで、リリーがエルフに近づいて行った。
「どーも。」
「何か用か?」
「あの〜。なんか悩んでるって聞いたんで話聞いてみようかなって。」
「悩み。というより願い、祈りに近いかな。もう。」
すぐ帰ってくると思ったが、小一時間話込んでいる。
どうしたんだろう。なんか、意気投合している感じにも見える。
ニコニコしながら、リリーが戻ってくる、悪い予感がどんどん増大していく。
「どうだった。」
「いや〜、青春ですな。なんでも、鋼 鋼一郎って人を待ってるんだって。」
あ〜あ。なんてこった。
やっぱり、こっちでも人生詰んだ。
「あれ?もふもふ。元気ないよ。どうしたの?」
お前のせーだ。とは言えず、頭を抱えてた。
そんな、僕を見かねたのか、ウィルが僕の肩を叩き、
「行くぞ。」
ひょっとして、代わりに話をつけてくれるのかな?
それだったら嬉しいけど。
エルフの前に行くと、ウィルは僕をエルフの前に差し出した。
人生、そんなに甘くない。自分で道は切り開かないと。
「やぁ。元気?」
エルフは怪訝そうな顔をすると、
「お前、どこかであったか?」
「会ってるような、会ってないような。」
多分、誤魔化せてない。
あ、多分ウィルは気がついた。
「あなた、異世界人?」
来た〜。お得意の尋問攻撃。
ウィルが代わりに答えてしまった。
「そうだ。」
「どの国から来たの?」
もう、どうにでもなれ。
「日本。西東京市だ。」
ぶっきらぼうに答えた。
「え?同じだ。まってちょっと、コウちゃんでしょ!?」
「やっとかよ。早く分かれよ。恵」
涙を目一杯貯めて俺に抱きついてきた。
「やっぱりコウちゃんだ。」
「なんだ、もふもふ。知り合いだったのか?」
僕は目を閉じたまま頷いた。
ここから、どうすればいいんだ。
可能であればここから逃げ出したい。
「そんな、恰好してたら、わからないよ。」
「好きでしてるわけじゃない。勝手にこうなってる。」
ようやく泣き止んだ、恵は、我に返って僕の隣に立つウィルを見る。
「こちらは?」
やっぱり、そう来るよね。
「パーティーを組んでる仲間のウィルだ。転生した、次の日からお世話になってる。」
ま、隠してもしょうがないし、このくらいはね。
「は?なんなの?なんで、女とパーティー組んで楽しんでんの?私が孤独で泣いている時に?!」
あ〜あ、やっぱきた。
火に油を注ぎ込む奴がやってきた。
「あれ?みんな楽しそうだね。」
リリー、お前の目は節穴か?それともや頭がおかしいのか?
「しかも、二人。両手に花ですか?」
怒りのボルテージがどんどん上がって行くのが目に見える。
「私は、ただの居候だから気にしないで恵さん。」
ウィルは、
「私とウィルは、契約関係だ。お前はなんだ?」
えー。ウィルそこは、自己紹介程度に留めておこうよ。
「契約って何の契約かしら?」
「もふもふを自由にする契約だ。」
「意味はよくわかないけど、私は、コウの許嫁。婚約者です。」
嘘ですねー。最大限まで、拡張解釈した悪質な嘘ですね。
みんなに洗いざらい打ち明けた。
僕が恵と幼馴染で5歳の時に確か、何かあったら絶対に助けに行くと約束したり、将来結婚しようとか言ったのは。
でも、5歳のこどもが言ったことだよ誰も信用しないよね。
だから、幼馴染ではあるが、婚約者ではない。
「どちらかと言うと、もふもふさんが悪いですよね。」
「そうだな、その気がないなら否定すべきだ。」
あー、全滅。
とりあえず、酒場には迷惑かけたので皆で謝ってとりあえず許して貰った。
ギルドに寄って報酬を貰った。
その後は、生き地獄のだった。
「はっ?一緒に寝る?」
ウィルは平然と、
「それが契約だからな。」
すごい目で僕を睨む、そんなに睨んだら石になってしまう。
「それじゃ私も一緒に寝ます、婚約者ですから。」
えー、これからそんな生活。
リリーが、にやりと笑って、
「もう少し大きいテントにしないとね。」