快進撃
僕等が魔族領に入ると、入口近くで大神殿の前で僕にパーティーが全滅するから行くのを辞めろと言っていた冒険者が立っていた。
「来るなって言ったのに来たんだな。せいぜい、足だけは引っ張らない様にな。俺達は自分のことで精一杯だ。お前等のことは助けるつもりはないからな。」
僕はニコッと笑って、
「必要ありません」
と、返した。
「チッ。」
男は僕を、睨みつけて去って行った。
「ウィル、何か情報はある?」
「四天王の3人の内の中央の守りをやってた奴が魔王城の守護に異動した。それ以外は何も変わらず東半分と西半分を残りの四天王が守護してる。」
「それは、魔族側の話でしょ。こっちは?」
ウィルが、ため息をつきながら
「ミライが魔王城に突入したかどうかは不明、あとは四天王にもたどり着けてないのが現状だ。」
と、言った途端
「どういうこと、早くミライさんに援軍を出さないと挟み撃ちじゃない。」
とリリーが激怒した。
「こっちは、その程度のレベルなんだ。」
ウィルは、ちょっと苛立ってリリーに答えた。
恐らく、ウィル自身も思いはリリーと同じだろうが、敵はそれだけ強いということだろう。
「こっちの勇者パーティーの配置は?」
「ギルド本部長の話だとコーナーに追い詰められて身動きできないとか言ってた。」
ウィルがうんざりした顔で答えてくれた。
「全パーティーが?」
「だ、そうだ。」
どういうことだろう。
そこまで本当に、四天王の配下が強いのか見極める必要がありそうだ。
久々に、ギルド本部長がギルド本部に帰ってきた。
「本部長、仕事溜まっているので、遊んでないでやって下さいね」
書類の山から顔を出して手を上げてる本部長がみえた。
「でも、もふもふさん達大丈夫ですかね。」
ギルド本部長は、欠伸しながら
「当面は平気じゃないの?」
と、眠そうに言った。
「でも、他のパーティーは全部Sランク以上なんですよね?」
ギルド本部長はニヤと笑って、
「あんなのインチキだからね。まぁ、彼らも常識レベルでは十分強いけど…それじゃね〜、魔族にはかてないよね。」
コポコポ。
ギルド職員は、ギルド本部長のカップにコーヒーを注ぎながら、
「もふもふさん達は非常識なんですか?」
ギルド本部長は頷きながら、
「あんなパーティーないでしょ…だって剣士がいないし、非戦闘員が多すぎなのに強い。非常識だよね。」
ギルド本部長は、コーヒーを飲み干しながら
「まぁ味方同士喧嘩しないことを祈るよ」
僕達は、入口を真西に向かって、勇者パーティーが
追い詰められているという場所を目指すことにした。
ぶ〜らん、ぶ〜らん。
う〜ん、生首が吊るされてるな。
「ひっ!くっ首!」
後では大騒ぎになっているようだ。
「ウィル。あれって。」
「勇者パーティーのものではない。ギルドの偵察部隊だな、ムダというか酷い命令を出すものだな。」
やっぱりそうか。
あんなやられ方するようだったら、相手にされてないとしか思えない。
5つの丸太の上に冒険者達の遺体がバラバラに晒されていた。
「こっこれは。」
「勇者パーティーだな。」
ウィルがアイテムボックスからシャベルを人数分取り出した。
みんなで遺体を埋葬して、沈痛な面持ちとなった。
「他のパーティーは埋葬もできないのかな?」
僕は少し腹立たしさを感じてしまった。
「ま、これが戦場だ。」
ウィルは、落ち着いて前に進んだ。
少し行くと、入口で僕を睨んだ冒険者のパーティーを見つけた。
みんなと相談し、影から動きを見ることにした。
パーティーの構成は5人で、剣士、魔導師2、ヒーラー、神官というようにみえた、全て人種はヒューマンの様だ。
オーソドックスな構成だ、これが普通なのかもしれない。
「ウィル、どうみる?」
「攻撃力不足、防御力不足、人種の偏りで暗黒魔法系に弱い。話にならん。」
そうなんだ。ウィルは凄いな。
確かに攻撃は弱そう、防御は個々にお任せなのかな?
瘴気が漂い始めた、木々の間から明らかに魔族とわかる魔力を発した者達が出現した。
勇者パーティー達はようやく存在を認識した様子で神官が詠唱を始めた。
僕は、それを見て目を覆うしか無かった。
恐らく、物理防御陣だとは思うが、遅いし的外れだ。
案の定、神官を攻撃され暗黒魔導士と剣士が慌てて攻撃するが、バラバラに、攻撃していて効果もないし、補助魔法を使うべき白魔道士、神官、ヒーラーが瀕死だ。
このままじゃ、あの勇者パーティーと同じ目に合ってしまう。
「ウィル…。」
「見捨てるわけにも行かないな。」
僕は瞬時に、10連物理魔法結界を発動し、中にミリーナを送り込んだ。
ミリーナは突入と同時に蘇生魔法を発した。
魔族は分が悪いとみたのか一旦退散した。
僕達は、魔族が引き上げたのと同時に勇者パーティーの元に行った。
「大丈夫でしたか?」
剣士の肩が小刻みに震えてる。
入口で僕を睨みつけたやつに間違いないが、多分怒るんだろうな、これから魔族を倒すところだったとか言って…。
「勝手なことをするんじゃねー!」
と、僕に罵声を浴びせてきた。
やっぱりね、思った通りだよ。
「行くぞ!」
剣士は、その場から立ち去ろうとしたが、ウィルに止められた。
「仲間を放置していくのか?あんた!3人は瀕死1人はケガ、通常であれば撤退をするんじゃないのか?」
「我々を見くびるな、低ランク風情が!」
とりあえず僕が間に入って、僕等が居なくなることで一先ず、喧嘩にならずにすんだ。
しかし、あのままでは心配なのでしばらく影から見守ることにした。
『リーダー、あの子達ですか?神官長達を倒したのって?』
『ああ、そうだ。』
『本当にAランク以下なんですかね?ミライさんレベルなんじゃないかと思いましたよ…あの術。』
リーダーと呼ばれていた男は、急にブチキレて、
『ミライはSSだぞ!あんな寄せ集めども足元にも及ばんわ!』
『申し訳ありません。でも、あんな術無詠唱でいけるなんて見たことないです。』
僕等は、勇者パーティーの会話はあまり気にせずに魔族の動向を注視していた。
「予想通りだ、もふもふ。増援で挟み撃ちに合う。」
早目に気づいてくれれば、逃がすてはあるが、…気づかないだろうな。
「どうする?もふもふ。」
メグを見て、両手を合わせて
「お願い!シルフであいつらに危険を教えて。」
メグは凄い嫌そうな顔をしていたが、嫌々対応してくれた。
『リーダー!挟まれてるみたいですけど。』
『西には他のパーティーがいるからそっちに行くぞ!』
勇者パーティーは、西の方向に全力で移動した。
勿論、魔族はお見通しで東西からはさみ撃ち&北側にも配置しているみたいなので、そのままだと袋のネズミ状態だ。
先ずは、勇者パーティーは後方が全く戦力皆無なので後方に結界を張る。
これで、体力回復や、援護魔法が効いてくるはずだがタイミングか…、
「メグ…ゴメン、シルフを…。」
「いいけど、一りり生お守りするわけにいかないでしょ、どうするの?」
と、言いながりら対応してくれたメグに感謝。
このまま、突破してくれればいいが相手もそう甘くはないだろう。
勇者パーティーの前に魔族が現れた。
剣士が、魔族に剣を振り降ろしたが、魔族に掴まれどうにも出来ない状態に…、仕方ない。
「ウィル、いくよ!」
僕はそう言って勇者パーティーの剣士と魔族の間に入った。
暗黒魔法と同じ要領でやればいい、落ち着け。
僕は僕自身に暗示をかけ、魔族の魔力を吸い取り始めた。
魔族は、最初は激しき抵抗したが最期は、干からびて、ミイラのような状態になった。
「早く、先にいけ!」
勇者パーティーのメンバーはみんながみんな腰を抜かしていたので、僕は、大声で先にいくように促した。
後続の魔族はこちらの魔族が倒れたと同時に逃亡したらしい、北側に配置の魔族度も同様に姿を消した。
みんな、ミイラの前に呼ばれた。
誰かと言われれば、リリーにである。
大体予想はつく、誰がここまでやったのかということだろう、ここまでやらなくても無力化はできたんじゃないかっていいたいんだろう、きっと。
「言うまでもないけど、なんなの!こんなのサンブルになるとでも思ってるの?」
みんなの視線が痛い。
「次から気をつけます。」
僕は深々と頭下げた。
その頭に肘を置きながらメグが、
「細胞から培養とかってできないの?」
「それは、やるんだけど…面倒でしょ。」
メグが僕の頭をグリグリやりながら、
「だって、良かったね。」
「そりゃ、どうも。」
僕等は、その後勇者パーティーの後を追って西に向かった。
そこは、魔族領の西の端らしく、いくつかの勇者パーティーが、拠点にしている様だった。
勿論、助けたパーティーもそこに来ていたみたいで
到着早々、凄い目つきで睨まれた。
僕等がキョロキョロしていると、別のパーティーのリーダーらしき人物に声を掛けられた。
「君等が、新しいパーティー?」
「あ、はい。」
僕等を見て、
「悪いことは言わない、帰った方がいい。」
やっぱり、この人も同じか。
そういう人達の集まりなんだ、ここは。
僕等がいる場所じゃない。
僕は笑顔で、
「そういうことは、あのパーティーの人達に言った方がいいですよ。」
と言って、睨み返した。
首を横に振り、
「なに言ってるの?あいつらはここでも中堅クラスだよ。」
ウィルがたまらなく間に入って、
「中堅クラスで魔族の下っ端に逃げ帰るなら、お前等全員サッサ帰れ!」
あ〜あ。
言っちゃったね。
どうするの?この空気。
さっき助けたパーティーのヒーラーがこっちに歩いてきて、
「あの?さっきの魔族は?」
リリーが
「こいつがミイラにしちゃった。」
と僕を指差す。
「だから、謝ったでしょ。」
更に、これで空気感が最悪になった。
「君等は魔族に勝てるのか?」
青い顔色で僕等に聞いてきた。
僕が応えようと思ったが、リリーが割り込んできて、
「もちのろん。我々には更なる秘密兵器がある。」
完全なるドヤ顔で圧倒した。
「君等に出来るかわからんが、西の端を壁面沿いに行けば、中央の壁を越えられる。それ以外は中央の扉しかないが、そこには四天王が待ち構えている。」
西の中央の扉の前に腕組みをした一際強いオーラを放った西の四天王が9人の魔族の前で、全員を問い詰めている。
「困りましたね、私は残り1人は何処にいるときいてるだけですよ。そんなに言いたくないなら、全員消滅させるだけですけど本当にいいのですか?」
魔族の一人が、
「申し訳ありません。盾を持つ獣人にやられました。」
「やられたとは?」
「魔力、生気を吸い取られミイラ化されバラバラに解体されました。」
それを聞いた西の四天王は、大笑いしながら、
「魔族以上に魔族っぽいことしますね。君達、その者をここに連れてきなさい、次はないですよ」
魔族たちは散り散りに森の中に走っていった。
そのころ、僕達は西の端の塀際を全速力で走っていた。
あと、100mで壁に到達と言うところで魔族に見つかってしまった。
現れた魔族は計5人、前は1対1で相手の油断もあったが、今回はどうする。
先手は向こうからだった。
上空、正面からの2方向からの攻撃だが、瞬時に5重物理結界で魔族たちを弾き飛ばした。
「無詠唱?」
どうも、魔族たちの常識では我々は詠唱がないと魔法が使えないと思い込んでいるようだが、「無詠唱」を知っていると言うことは例外もいるということも知っているようだ。
魔族達は、僕から距離を取っている様に見える。
魔力を吸い取られる恐怖感があるようだ。
この間に、魔法結界もこっそりと内部に作っておいた。
魔族達は、魔法を距離をおいたところから発動させ攻撃してきた。
魔法なので物理結界は素通りし、魔法結界に反射し、内部で爆発し、物理結界を破壊した。
知能が低い魔族であればこの罠にかかるかなと思い、仕掛け見たが以外にも3人も引っかかった。
穴の空いた物理結界を通過した時点で物理結界が魔族を覆いさらに魔法結界が物理結界を覆う。
魔法結界の特性上内部の魔力が強ければ強固になる、今回の魔法結界は反転魔法結界なので、内部からの破壊は難しい仕掛けになっている。
「これであと、2人だね。」
「残りは、少しは賢いかもしれないな。」
ウィルと僕はそう言葉を交わすと2体への攻撃を開始した。
僕は後に控えてた、魔族を狙い、ウィルは先頭に立ち攻撃をしている魔族を狙った。
後に控えてた魔族は案の定、回復系や支援系魔法を得意にしていた様で先頭に立って戦っていた魔族が酷く動揺しているようだった。
「お前の相手はこっちだ。」
ウィルが相手の顎を掴んで正面を向かせて、眉間にリリー特性の銃弾を押し込んだ。魔族は、拒否反応でしばらく暴れていたが、しばらくすると足先から壊死が始まると今度は断末魔の叫び声を上げると、あとは灰になって、消えた。
僕の方は、大した反撃を受けることもなく、瀕死の状態を維持させ、生け捕りに成功した。
僕は周囲を確認すると、
「塀を超える。急げ!」
僕等はまた全速力て、塀を超え、塀の向こうへと走り出した。
塀の向こう側は、森はなく砂漠の様な砂地で身を隠す場所は存在していない。
見つかったら即戦闘になる、こっち側には四天王の1人中央の四天王がいるはずだ。
西の端の勇者パーティーの拠点では魔族たちが、勇者パーティーをほぼ全滅させ、各メンバーの顔をチェックしてまわっている。
「みんな、ヒューマンですね。獣人がいません。」
「どういうことだ?」
『どういうこと?こっちが聞きたいですね。みなさん。』
西の四天王が現れ、怒り心頭の表情だ。
「4人倒され、1人は生け捕り…。あり得ないですよ!」
「私は中央の四天王に謝りに行かないといけませんので、これ以上、向こう側に侵入者を許さないようにお願いしますよ。もう失態は許しませんよ。」
西の四天王はそう言うとその場を立ち去った。
中央の四天王が魔王城の前で眉間に皺を寄せた。
「ま…さか。また突破された?やれやれ。」
「東…聞こえますか?」
「は。」
「西が突破されました。侵入者を処分しなさい。」
「了。」
東の四天王がドアを通って、鼻をくんくんいわせて、
「こっちか。」
そう呟くと疾風の如く、走り去った。
僕等は、身を隠す場所がないので、茂みに穴を掘り
身を隠せる場所を確保した。
穴の上蓋をすると地下に入り、生け捕りした魔族を訊問することにした。
訊問の前にリリーが魔族から血を抜く。
その時は激しく暴れたがその後落ち着いた。
灰になった魔族と同じ目に遭わされると思ったのだろう。
「まず、ミライについて知っていることを話して貰おう。」
沈黙の時間が少し流れたが、
「ミライは魔王さまと消えた。だから今、四天王の再生ができない。だから四天王は焦っている。」
そっか〜、死んでなきゃまだいいか。
「他に知っていることは?」
「ミライはバケモノだ。アイツに魔族はほとんど駆逐された。魔族の再生ももう出来ない。四天王が再生される度にアイツに全てやられる。」
ウィルが魔族の髪を掴んで引っ張り上げて、
「それで、あんたは悔しいのかい?恨むのかい?」
「どうして?」
魔族の娘はキョトンとした表情でいった。
「そうだろうね。魔族ってそう言うやつらだよ。」
僕は首を横に振り、
「じゃあ僕等になんでそんなことを言う?」
「だって捕まったらそう言えって言われたから。」
リリーはニヤと笑い、
「でも、死ぬのは怖いのね?」
といって、注射器に液体をいれて魔族の娘に注入する。
「や、やめろ、やめてくれ!!」
パタ。気を失ったみたいだ。
「リリー、なにしたの?」
「少し、体力回復を。少し栄養とらないと死んじゃうからね。」
ウィルは魔族の娘をチラッと見て、
「これ以上、情報は得られないと思うがどうする?」
リリーが手を挙げて、
「私はここでジークと情報を収集する。」
僕は、ここでなんの情報が得られるのか疑問に思ったので、リリーに聞いた。
「ここで何の情報を得るの?」
「こいつを使う。」
魔族の娘を叩いて、言った。
僕等は、リリーとジークをおいて先に進んだ。
中央の四天王が土下座する、西の四天王を蔑むように、
「なんのためにココに来た?」
「失態を陳謝致すために来ました。」
中央の四天王は首を横に振り、
「時間の無駄だ。早急に戻り、東の四天王の指示を仰げ!」
「東…の下につけと。」
「嫌なら、自分のケツは自分で拭きなよ。いじょうだ。帰れ!」
中央の四天王は西の四天王に蹴りを入れて数メートル弾き飛ばした。
西の四天王は口に入った泥を吐き捨てて来た道を戻って行った。
「東…。止まれ。西に責任を取らせる。」
「了。」
一方、リリーとジークが魔族の娘を穴から出して、
四天王を探す様に指令を出した。
西の四天王が分かり易く、砂漠のど真ん中を歩いているので魔族の娘はすぐに、気がついて西の四天王の元に飛んで行った。
「お、お前は生け捕りになったのではないのか?」
「はっ。申し訳ありません。隙をついて逃げ出して来ました。」
リリーは、内心…、この大根役者めっと、舌打ちをした。
「で、敵はどこだ。」
え?信用した?うそでしょ。
「こちらに。」
魔族の娘に連れられて西の四天王は、ノコノコとついてきた。
「ジーク、周囲の状況は?」
「2方向からモニターされている。」
リリーは、頷いて
「予定通りね。あとはねずみ野郎がちゃんと動くかね。」
がさがさ。
ねずみに擬態した奇妙な生き物が東の塀を越えて、東の勇者パーティーに向かっている。
東の勇者パーティーは塀の近くまで来ていたが、塀を越すかどうか躊躇っていた。
そこに、ねずみに擬態した奇妙な生き物から手紙を受けとった。
手紙にはこう書いてあった。
「東の四天王は、塀の向こうへ移動し、上空から監視中、塀の内側の監視はがら空き、地下からの侵入は可能、現在こちらの本体は魔王城へ移動中。」
東の勇者パーティーの全体を纏めるリーダーが、
「良し、分かった。我々はこれから地下から塀の向こうに向かう。皆、地下道をいくぞ!」
リリーは、ニヤと笑い
「どこまで耐えられるかな?レベル1発動。」
魔族の娘が通過後、数千本の微細な針が西の四天王を貫く。
「うっ!」
西の四天王の表情が苦悶の表情へと変わる。
「どうかしましたか?」
ジークは、リリーの顔を見て
「あれは何したの?」
「運動神経の麻痺。物理攻撃は一切できないわ。ひっひっひっ。あ〜、くるしい。」
こいつ、凄い笑ってる。なにが楽しいんだろう。
「は〜い。次。」
「こちらです。」
西の四天王が苦悶の表情を浮かべながら歩みを止めなかった。
「は?歩けるんだ。バケモノだね。」
今度は手のひらに針が刺さり、さすがに耐えられなかった様で、片膝を地面についた。
「キサマ!グルか?」
「はい!これで終わり。」
西の四天王に、弓矢の矢が突き刺さりそこから、体の壊死が始まった。
「ぐぁ、ぐァァァ〜!」
全身から壊死した途端、灰になって消えた。
魔族の娘はキョトンとして、
「あれ?四天王様どこにいかれましたか?」
キョロキョロ探したが当然見つからない。
「先に森の方へ戻ったのかしら?」
魔族の娘の前に、東の四天王が現れ、
「これからは、私の部下となるといい。私を敵の元に案内してくれ。」
「あ、はい。」
リリーはジークを見て、
「まだなの?」
「そろそろのハズだが。」
東の四天王が、顔を顰めた。
「スマンが、ねずみの始末を先にする。ついてこい。」
東の四天王と魔族の娘はそこから立ち去った。
「いや〜、アブナイアブナイ。助かったね。」