7 魅力値に引き寄せられる探索者たち
「さて、どうなる事やら」
掲示板に人員募集の張り紙を出す。
どれだけ効果があるかは分からないが、やらないよりは良い。
ヒロハルの能力は低い。
迷宮を探索するなど夢のまた夢というほどに。
それでも食っていくためには迷宮に入らねばならない。
ならば、せめて同行者を募ろうということになる。
一人では危険でも、仲間がいれば安全を確保できるのだから。
これがゲームなら簡単に同行者を作れたのだが。
現実となるとそうはいかない。
仲間のNPCを作って、というわけにはいかないのだから。
既に探索者として活動してる者達を引き込まねばならない。
今までは募集をかけるどころではなかった。
そばにいるだけで殺されかねなかったのだから。
しかも、脅しでもなんでもなく、本当に殺されそうになっていた。
なので、仲間を募るどころではなかった。
もちろん、既に存在している探索者集団に入ることなど全く望めなかった。
なのだが。
今は違う。
全ては逆転した。
探索者が集まる酒場や宿屋。
募集はこういった場所にある掲示板に張り出すのだが。
ことわりを入れれば酒場や宿屋の従業員が、
「なら、俺達も声をかけておくよ」
「がんばってね、私も声をかけておくから」
と協力してくれる。
張り出すところを見ていた探索者がいれば、
「俺はどうだ?」
「私も参加していいかな」
と声をかけてくる。
「もし良かったら、うちに入らないか?」
既に探索者として活動してる集団からも、このように声がかかる。
今までは門前払いどころか、近づくだけで切っ先を向けてきた連中がだ。
態度の急変にヒロハルは驚くを通り越して呆れた。
今までは何だったのかと。
だが、人が集まってくるのはありがたい。
今までは選ばれる側だったのだが。
審査され、試験を受けさせられ、面接で圧迫と重圧をかけられ、威圧される側だった。
しかし、今はやってくる者達を選ぶ側である。
どいつを採用しようか、どこに入ってやろうか。
選ぶ権利がある。
手にした権利は最大限に使うもの。
声をかけてくれた探索者達の情報を吟味しながら、ヒロハルは考えていく。
誰をつれていくべきなのかを。
また、探索者集団に入るならどこが良いのかを。
さすがに高レベルの上位層や、大手探索者集団から声はかからない。
そういう者達とはまず接点がない。
前世でいう、トップエリートや大手企業のような存在なのだ。
底辺をさまよってるヒロハルでは、出会う機会がない。
それでも声をかけてくれる者はいる。
張り紙を見て応募してくる者もいる。
その中から自分の好きな者を選んでいく。
「なるべく、気の合う人間のほうがいいよな」
気をつけたのはこの点だ。
能力が高くても、性格が合わない事もある。
そういう人間との接点は出来るだけ避けることにした。
必ずどこかで問題が起こるからだ。
特に人間関係のいざこざが。
これが結構バカにならない。
それこそ性格の不一致で解散などという、音楽バンドのような事も珍しくない。
そうでなくても、人間関係でストレスがたまる事はある。
このせいで本来の能力を発揮できなくなる事もある。
なので、気の合わない人間は排除した。
ヒロハルの好みで人を選んでいった。
能力よりも、才能よりも、性格。
人格だけで採用を決めた。
普通なら問題になるだろう。
だが、ヒロハルの場合はこれでかまわない。
なにせ、誰を選んでもヒロハルより能力が優れてるのは確かだ。
普通の人間ならレベル1でも、能力地は全て10点前後である。
これはヒロハルよりもはるかに高い能力だ。
そんな人間が集まってるのだ。
能力で選ぶ必要はない。
この結果。
探索仲間は女だけとなった。
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