3 暴言と暴行にまみれた半生 1
実際、ひどい扱いだった。
両親からは疎まれ、兄弟にも蔑まれ。
飯抜き、暴言暴行は当たり前。
何か問題を起こしたら殴られ、何もしてなくても殴られ。
それでいて、家の仕事は物心つく前から強制されていた。
同じ村の者たちも同じ。
目に見えて蔑んでくるくらいならかわいい方で。
親兄弟と同じように暴行を振りかざすのも当たり前。
罪の擦り付けも当然起こる。
何か問題があれば、全てヒロハルのせいになった。
明確な犯人が実際にいてもだ。
こんな状況でよくぞ生きていたものだ。
振り返るたびにヒロハルは驚く。
自分の運の良さに。
死なずに生き延びる事が出来た幸運に。
とはいえ、そんな環境だったから、村で生きていくことは難しかった。
一応は長男だったのだが。
家は次男に継がせると早々に言われていた。
なので、別の道を模索するしかなかった。
となれば、迷宮に挑む探索者になる以外に道はない。
年齢経歴一切問わない仕事。
そんなもの、この世界では迷宮に挑む者しかない。
探索者と呼ばれるこの仕事は、それまでの人生など一切考慮されない。
技術や知識が無くてもなる事ができる。
ただし、成功できる保証は一切ない。
怪物と命がけの殺しあいをするのが仕事だ。
しくじればすぐに死ぬ。
死なないまでも再起不能の重傷を負うかもしれない。
そうなれば、どのみち人生は終わりだ。
好んでやるような仕事ではないだろう。
だが、他に選択肢がない。
14歳になると村を出て、というより逃げだして。
はるばる迷宮を目指す事になる。
旅費や路銀などあるわけもないが、それでもかまわず飛び出した。
いい加減、周囲からの殺意が実際の殺人に発展しそうだったからだ。
そんな村から迷宮に向かって進み。
命からがらどうにかたどり着く事が出来た。
途中で野垂れ死にしなかったのは奇跡である。
もっとも、迷宮にたどり着いてからも生死の境目をさまよう事になったが。