2 低い能力値
このRPG風異世界では、一人一人にレベルがあって能力値がある。
これを成長させる事で、人は厳しいこの世界を生き抜く事ができる。
怪物と隣り合わせの世界において、これはありがたい。
しかし、能力値が分かって自分の得意と苦手が分かるのは良いが。
場合によってはこれがなんの慰めにもならない事もある。
ヒロハルの場合がまさにこれだった。
能力値がどれも低すぎて話にならないのだ。
ゲームを基にするならば、この世界のレベル1の基準は10。
どの能力値も10点を基本にして多少の上下がある。
これがキャラクターの個性になる。
体力が高い代わりに知恵や意思が低かったり。
知恵や意思が高い代わりに敏捷が低いとか。
こうした違いがキャラクターごとに存在する。
場合によっては、最初からすべての能力値が11以上になる場合もある。
この逆に10を下回る能力値しかない場合もある。
キャラクター作成の段階で、この数値は決定される。
プレイヤーがどうにかできる部分はほとんどない。
せいぜい、出てきた能力値に、自分で好きに割り振れる1点をどう使うかを考えるだけだ。
なので、キャラクター作成の段階で、よりよい能力値が出るまでやり直す。
せめて10を下回る能力がないように。
ゲームだったらこれができた。
だが、現実では不可能だ。
能力値が低いといっても、やり直すことはできない。
自殺してもう一度生まれなおすなんてできないのだから。
そんなヒロハルが持って生まれた能力は次のようなものだった。
【能力値】
五月原ヒロハル
レベル 1
体力 5
敏捷 5
知恵 5
意思 5
魅力 5
【能力値】
全ての能力値が10点未満。
しかも、最低値である5だけ。
ゲームにおいても滅多にみれない最低の能力値だった。
なお、キャラクター作成時における能力値の最高は15点である。
ヒロハルは何の才能もない存在としてこの世に生まれてしまった。
この数値を見た瞬間、ヒロハルは全てが終わったと思った。
あまりにも能力が低すぎて何をやっても上手くいかない。
これが確定してるからだ。
しかも、喫緊の問題として、命に関わってくる。
能力の低さもさることながら、周囲の人間がとかくヒロハルに冷淡なのだ。
薄情とか酷薄というのも生ぬるいほど。
はっきりと言えば、常に命を狙われる、それほど疎まれ憎まれている。
魅力が低い。
これが理由である。
魅力が低いから他人から疎まれる。
それどころか、憎まれる。
理由などない、ただただ憎いという感情が生まれる。
そうなってしまう程に魅力の値が低いのだ。
なので、自由に割り振れる能力値を泣く泣く魅力に割り振る事になった。
下手すると殺されかねないほど周りの人間に疎まれている。
そんな状況を少しでも緩和するために。
【能力値】
五月原ヒロハル
レベル 1
体力 5
敏捷 5
知恵 5
意思 5
魅力 5 +1
【能力値】
できれば他の能力値を底上げしたかったが。
それは諦めるしかなかった。
まずは周りの人間に殺されない事、これが最優先だったのだから。