13 女僧侶
3人の攻撃担当のおかげで、怪物は簡単に蹴散らす事が出来る。
おかげで探索は順調。
怪物退治は滞りなく進んでいく。
以前ではありえない事だった。
ただ、無傷というわけにはいかない。
戦うのだから攻撃を受ける事もある。
前衛に立つ者は避けられない。
それでも、レグナとセリナが傷を負うことはほとんどない。
弱い怪物を狙ってるのと、戦士と魔術師の3人が強いからだ。
それでも、避けられない負担がある。
「そろそろだろ」
盾を持つレグナの様子を見て、ヒロハルが指示を出す。
「頼む」
「はい」
頷いた銀髪の女僧侶がレグナへと近づく。
それを見たレグナが盾を置く。
僧侶はその腕に手をかざしていく。
攻撃を受ける盾役は、常に盾から衝撃を受ける。
それを握る腕も、衝撃を受ける体も何かしらの損害を受ける。
傷や打撲といったわかりやすさ無い。
だが、衝撃は体を揺さぶる。
震動となって全身に伝わる。
それに盾を持つ腕の負担は大きい。
盾の重量はそれなりにある。
持ってるだけで腕が疲れる。
更に敵を攻撃を受けるのだ。
戦闘を重ねる度に腕から感覚がなくなっていく。
疲労の蓄積。
これが体を蝕んでいく。
細胞が疲弊するといった方が良いだろうか。
長く続けば、いずれ体をこわす。
前世の知識と自身の体験から、ヒロハルはこの危険に気付いていた。
日常的なストレスが精神を破壊するように。
精神が肉体の能力にも影響を与えるように。
疲労も同じだ。
小さな積み重ねがだんだんと体の不調になる。
取り除ければいいが、そうもいかない。
最善の状態というのは、意外と保つのが難しい。
だから、怪我が無くても治療や回復を行っていく。
戦闘による負担は傷ではなくても体を損なってるのだから。
この治療が出来る者がいるだけで、迷宮での生存率は上がる。
とはいえ、怪我を即座に治療出来るほどの者は少ない。
魔術による治療は確かにあるが、効果は意外と限定敵だ。
薬の効能を上げたり、怪我の治りを早めたり。
即座に傷をなおせる者となると、数はかなり減る。
それが出来る者も応募してきたのはありがたかった。
もっとも、これはこれで問題だ。
傷を治せるという、どこでも求められる能力。
それがどこにも囲われてないのだから。
これやはり、魅力の低さ故だった。
「勿体ない」
ヒロハルとしては呆れるしかない。
しかも、ユミナというこの女僧侶。
迷宮での仲間だけでなく、所属してる教会でも同じ目にあってきたという。
なんでも、どの教会でも疎まれて放逐されて。
流れ流れて迷宮にやってきたとか。
もうここにしか居場所がないという。
では無能かというとそうではなく。
【能力値】
ユミナ・レムル
16歳
レベル 5
体力 8
敏捷 9
知恵 11
意思 18
魅力 9
【能力値】
決して低い能力値ではない。
たしかに平均的な10を下回ってるものは多いが。
魔術に必要な知恵や意志は高い。
特に意志は群を抜いており、傷や怪我の回復力を大きくしている。
その分、使える魔術は少ないが、これは問題にならない。
怪我の治療、この一点が優れてるだけで助かるのだから。
おかげで前衛の戦士の疲労はほとんどない。
好調を保ったまま戦闘を続けていける。
ゲームで言うHPだけが負傷だけではない。
ゲームではなくなった異世界だからこそ、怪我や傷以外の負担もある。
損害は必ず何かしら発生する。
これらを大きくしないうちに解決する。
それをこなしてくれるユミナは得難い人材だった。
また、ヒロハルや他の者が何か言う前に治療をする事もある。
他の者が気付かない疲れや負担を察知して。
職業柄というのもなんだが、治療担当としての視点がある。
機転が利くともいうのだろう。
先んじて問題を見つけて解消していく。
これが出来るのもありがたい。
「仕事ですから」
褒めたり感謝をすると、ユミナはこう応える。
「でも、助かるよ」
「ありがとうございます」
それでも有り難いものはありがたい。
そんなユミナもまた感謝を返してくる。
こういう所にヒロハルは好感を持った。
だから仲間にした。
その判断は間違ってないと今は言えた。
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