12 女魔術師
前線を二人の戦士が支えてくれる。
ここに後方からの攻撃が加わる事で、戦況を一気に作る事が出来る。
これを担ってるのが、魔術師だ。
この世界では珍しくはない魔術。
しかし、使いこなせる者はやはり多くはない。
マッチやライターのような小さな火を出せる者はいる。
豆電球程度の明かりをともせる者はいる。
しかし、殺傷力のある一撃を放てる者は少ない。
そこまで強力な能力を持つ者が魔術師と呼ばれる。
もちろん、これだけの能力があれば迷宮に入る必要は無い。
何かしら声がかかるものだ。
迷宮にやってくるのは、そこまで強くない者。
だからこそ強くなろうとしてる魔術師見習いがほとんどだ。
もしくは、何らかの事情がある者。
ヒロハルの所にやってきた魔術師もそんな一人だ。
とはいえ、理由は簡単。
魅力が低いからである。
応募してきた者達の中で最も小柄だった者。
彼女はセリナと共にやってきた。
もともとセリナの家の治めていた土地にいたという。
土着の魔術師の家だったのだと。
とはいえ、魔術師の家系というほど大げさなものではない。
地元で薬草を煎じたり、占いをしたり。
捜し物を見つけたりといった、日常的な事に魔術を使っていたものだ。
この世界では特に珍しくもない。
ちょっとした町なら一人はいる。
そんな存在だ。
そんな家に生まれ、子供の頃から魔術の手ほどきを受けた。
なので、生活に密着した魔術が使える。
ただ、家を継ぐほどではない。
彼女にも兄弟が居たので、そちらが家を継ぐ事になっていた。
劣ってるというわけではないが、能力が特に高かったわけでもない。
また、やはり魅力が低い。
おかげで家族からはどこか距離を置かれていた。
町の者達からも避けられていた。
疎まれるというほどではなくても、さほど目をかけられたわけでもない。
そんな境遇が似てるという事もあり、セリナが声をかけたのだ。
「一緒に迷宮に行こう」
魔術師は頷いて共に迷宮を訪れた。
【能力値】
園森 アヤメ
15歳
レベル 4
体力 7
敏捷 6
知恵 17
意思 14
魅力 7
【能力値】
魔術はおぼえるための知恵と、発動させるための意志が必要になる。
それをこれだけ高い数値で持ってるのはありがたい。
ただ、身体能力の低さは否めない。
前に出て戦うのは避けるしかない。
しかし、身につけた魔術の数はそれなりに多い。
威力もこのレベルでは高い方だ。
使い方も考えている。
突風や閃光で目を塞いだり。
走って迫る敵の足下に土の塊を発生させて転ばせたり。
大きな音を発生させて、相手の耳に衝撃を与えたり。
直接的な威力はないが、相手の動きを鈍らせていく。
こうする事で戦闘を有利にしていく。
殺傷能力のある魔術も使えるが、これだと敵一体にしか放てないらしい。
それも、確実に倒せる保障もないという。
だが、相手の動きを鈍らせるような使い方なら、一度に大勢を巻き込む事が出来るという。
ならば敵全体に妨害の魔術をかけた方が効率が良い。
その間にレグナとセリナが怪物を片付けてくれる。
また、支援としてレグナやセリナの武器の威力をあげる事も出来る。
霊気をまとった武器は、怪物を仕留めやすくなる。
これも直接殺傷するよりは簡単に出来るらしい。
もちろん、必要なら殺傷能力のある魔術も使う。
石つぶてを放ったり、炎で敵を焼いたり。
前衛の2人からこぼれた敵を狙ってくれる。
これだけの事が出来る人間いてくれるのはありがたい。
ただ魔術を使うだけではなく、効果的に使ってくれるのだから。
そんな才能を持ってる人間がいてくれるので、迷宮探索も快調である。
少なくとも敵との戦闘で困る事はない。
とはいえ、魔力は霊気を消費して用いるもの。
多用は出来ない。
使いどころは考えなければならない。
それでも、いてくれれば戦力は各段に上昇する。
「頼りにしてるよ」
小柄な魔術師に励ましと期待をかける。
そんな時、ヤアメというこの魔術師は小さく頷いて、
「……うん」
小さな声で返事をする。
口数が少ないというか無口というか。
表情も乏しいので、反応を読むのが難しい。
だが、ヒロハルには分かる。
彼女が照れながら喜んでる事を。
前世でいう陰キャというのだろう。
だが、悪い人間ではない。
するべき仕事をしっかりこなしてくれている。
それに、悪さをしようとはしない。
そんな態度や行動にヒロハルは高得点を付けている。
口だけで何もしない人間とは違うと。
「ありがたい」
だからヒロハルは仲間に入れたのだ。
頼れる存在として。
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