11 女剣士
前衛の、いわゆる盾役も頼もしいが。
もう一人の前衛も負けてはいない。
レグナが盾で敵を受け止めるなら、こちらは敵を切り裂く刃だ。
止まった敵の中に切り込み、剣を振り回して次々と敵を斬っていく。
その様は、剣士というべきだろう。
力ではなく速さで。
何より正確さで敵を倒して行く。
それはレグナとは違った強さだ。
なんでも、それなりに由緒ある武門の娘だとか。
なので子供のころより武術や武芸を仕込まれたという。
とはいえ、家を継ぐわけでもなし。
兄弟がいたので家は安泰。
そうなると女は外に嫁いでいくものだが。
魅力の低さ故にこの道は閉ざされている。
もっとも、それなりの家ならば見た目よりも家の繋がり重視。
結婚によって関係を保つので、見た目などあまり問題にはならない。
はずなのだが。
現実は甘くはない。
繋がりのために結婚はしても、関係は冷え切るのはよくある話。
嫁ぎ先での責め苦は枚挙に暇がない。
旦那に義理の父母に兄弟からの嫌みや嫌がらせ、冷淡な態度は当たり前。
更には家の家臣や家来、使用人まで蔑ろにするのも珍しくはない。
挙げ句に何かしら理由を付けての離縁。
帰るべき実家も、不祥事を起こしおってと言い訳を作って放逐。
魅力が低いとこうなるのだ。
そんな境遇を甘んじて受けるつもりは女剣士には無かった。
早々に見切りをつけて迷宮に向かい、探索者として身を立てる事にした。
というより、これしか道が無かったのである。
幸い、というのも何だが。
生まれた家のおかげで戦い方は身につけてきた。
単に武器の扱い方だけではない、戦術や戦略といった兵法も。
この知識を使える場所となれば、迷宮しかない。
とはいえ、魅力の低さでなかなか仲間にも恵まれず。
あちこちを転々としてヒロハルのもとへと流れついた。
【能力値】
石動 セリナ
16歳
レベル 5
体力 11
敏捷 16
知恵 11
意思 10
魅力 7
【能力値】
素早く動く女剣士は、レグナが敵の動きを止めてる隙に突撃する。
そして、敵の中を動き回って剣を閃かしていく。
その度に怪物は体を切り裂かれて絶命していく。
人間で言うなら首を狙われた怪物は、ほぼほぼ一太刀で倒れていく。
それを成し遂げる技と。
技を成り立たせる能力。
これがセリナの強さだ。
ただ速いだけではない。
流れるような動きには無駄がない。
実際、動きそのものが速いというわけではない。
ただ、止まらないのだ。
淀みのない動きは延々と続き、怪物を切り裂き続ける。
無駄をそぎ落としたその動きは、なるほど、肉体を最大限に効率化している。
「お見事」
そう言うしかない流麗な動き。
素直な賞賛の言葉が口をつく。
しかし、セリナも奢ることはなく。
「いえ、相手が弱いからです」
謙虚にこたえる。
実際、セリナからすれば相手は弱いのだろう。
そんな者相手に勝ったとしても自慢にもならない。
褒められれば恐縮してしまう。
「でも、ありがとうございます」
それでも賞賛の声には素直に礼を言う。
束ねた黒髪を揺らし、白い肌を幾分染めて。
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