第一章 第一話 『絶大的な力』
文章力が足りない……!
「ところでお前、名を何という」
いきなりローブの男に名前を聞かれた。
「外庭神也だ」
やはりか、と男は呟いた。
ちなみに現在、俺は長い長いトンネルのような穴の中を歩いている。
暗すぎて前がほとんど見えない。
「お前の兄はクロトという名だろう?」
「…………ああ」
外庭黒斗───正真正銘、俺の兄だ。
何故、兄の名を知っている と問おうとしたが、すぐに問うまでもないことに気がつく。
兄貴は世界を破滅に導こうとしている人間だ。
悪名ぐらい知れ渡っていても不思議ではないだろう。
そんな事を考えていると強い憤りを覚えてきた。
────早く兄を止めないと。
「やめておけ。今のお前ではLv.1の勇者がいきなり魔王の城に乗り込んでいくようなものだ。この世界について何も分かっていないお前には兄まで辿り着く事は不可能だろう」
俺の心を見透かしたように男は言った。
確かにそうかもしれないがちょっと傷つくぞ。
「じゃあ、どうすればいいってんだよ」
「……本来なら、地道に経験を積んで頑張ってもらうところだが、我々も世界の命運が懸かっている。特例で世界の主からお前に力を授けるとのことだ」
「力?」
Lv.1からLv.99ぐらいまで一気に上げてくれるとかそんなものだろうか。
俺は少し期待してみる。
「絶大な攻撃力と絶対的な防御力……お前はどちらを選ぶ」
想像以上だった。
何これ、どっちを選んでもチート的な強さになるんじゃね?
どうしよう、すげー悩むんだけど。
相手に隙を与えずに攻撃力でねじ伏せるか、
相手の攻撃を無力化して、隙を突いて倒すか。
普通に考えれば絶対的な防御力の方が良いだろう。
実際、こちらがダメージを受けることはなさそうだしな。
しかし、相手にこちらの攻撃が通用しない場合は別だ。
防御力が高くても、負ける可能性が低くなるだけで、勝てる確率はそう高くならないと思える。
ならば、確実にダメージを与えられる絶大的な攻撃力の方が必要だ。
「絶大的な攻撃力で」
俺がそう言った瞬間。
右腕に何かが入り込むかのような違和感を覚えた。
この感覚は……ハマる! もう二度とこんな機会ないと思うけど。
違和感が治まったのを感じると俺は右腕に目を向ける。
……なんか右手の甲に紋章みたいなの浮かんでるんですけどー。
これが攻撃力の正体か? 何か力が湧いてきたって感じはしないんだが。
「今、お前の右手に浮かび上がった紋章は二つの効力をもたらした」
「効力?」
「1つは身体能力の大幅な底上げ。そしてもう1つは、お前に秘められていた能力の開放だ」
ほうほう、つまりは覚醒ね。
俺に秘められていた力の……って。
「そんなわけあるかあああ! 俺に秘められた力なんてあるはずないだろ!」
「あったものは仕方ないだろうが」
まぁ能力の開放については期待しないでおこう。
身体能力が大幅に上がっただけでも感謝するか。
それから少し歩いていくと目の前に光が見えてきた。
────出口だ。
「ここから先は我々の世界だ。改めて聞くが覚悟はいいな?」
意思の再確認。
どうせ、ここで帰りたいといっても聞いてくれないだろうがな。
無論、帰るつもりはサラサラないが。
「ああ、勿論だ」
俺は決意をこめて出口へと踏み出す。
ここから先は異世界だ。
兄貴を救い出す旅が、今始まった。
ちなみに作者もこういう場面なら絶大的な攻撃力を選びます。