第一章 第十六話 『神? あぁ、俺の前で土下座してるよ』
新小説『僕は順位に流されない』を書き始めました。
こっちの方もよければ見てくれると嬉しいです。
では、タイトル通りで土下座な十六話をどうぞ。
「……く」
水神がゆっくりと起き上がる。
どうやら目を覚ましたみたいだった。
「よーす、神様。人間に負けた気持ちはどうだ?」
「…………主か」
神の象徴ともいえた翼は既に両翼とも根元から無くなっていた。
片翼は俺の兄貴の力で、もう片翼は自身の手で爆散させたからだ。
「そうか、私は負けたのだな」
「いやー。まだ負けたわけじゃないと思うぜ?」
「何故だ?」
それは、と俺が言おうとしたところでクオリナに横槍を入れられた。
「それは、カミヤがまだ土下座をさせていないからだよねー」
「……ッ!!」
まずはこの水神をひざまずかせてみるがいい。
水神が自分自身でいった言葉だ。
なんか大分動揺してるが……、戦闘中に見せた威勢はどうした。
「そういう訳だ。さぁ土下座をしてもらおうか」
俺は右手の紋章からバチバチと《神雷》を放出する。
どうやら俺は自在に能力を操れるようになったようだ。
「ま、まて。その前に1つだけ主に聞きたいことがある」
「何だ?」
「あの時、私が最後の一撃を放ったあの状況で……どうやって上空に逃れることができたんだ?」
「……あぁその事か」
俺は傍にいるクオリナに合図を送る。
まだ俺達はあまりパートナーとしての時間は立っていないが、事実上はもう以心伝心レベルの粋に達しているといえるだろう。
「ッ!?」
と、俺の立っていたその場所が上に持ち上がる。
────クオリナの氷の壁だ。
下から突き出すように現れる氷の壁は俺を乗せて5mぐらいの高さまで上がった。
これが答えだ。
「ま、簡単に言うとこういう事だ、つーかよくこんなのに気付かなかったな」
「……神っていっても案外馬鹿なんだね」
グサッ
何かが神の体を貫いたような気がした。
「……仕方あるまい。もともと私が言い出したことだしな」
神は両手を床に付き、ぐぐっと身を屈めると、頭を沈めた。
これはもう完全なる土下座だ、ははは、我ながら見てて爽快だ。
俺はクオリナを横目で見る。
さぞかし彼女も内心笑ってるんだろうなーとか思ってみたら、
クオリナは本当に嘲笑うかのような表情で笑っていた。
黒い……どす黒いぞ……。
「それで、望みは何なんだ……?」
そんなもの初めから決まっている。
兄貴を救うための力を得るためだ。
「この右手の能力を解放してほしい」
俺は未だにバチバチと音をたてる右腕を突き出す。
神はやはりか、といった様子で、
「ふむ……5重の鎖か。といっても最初の封印は解けているようだがな。……主よ、1つ聞くが、主は何のために力を得ようとするのだ。護るためか? それとも殺すためなのか?」
さりげなく神が俺に聞いてきた。
そんなもの初めから分かりきっているというのに。
「護るためでも殺すためでもない。救うためだ」
「……そうか」
神がそう呟いた瞬間、俺の右手が爆発したかのように雷鳴を轟かせた。
封印の解除が終わったのだ。
何秒かすると電撃は俺の右手にすんなりと収まる。
これでまた1歩、兄に近づいたんだよな……?
「……ところでこの土下座はいつまで続けていればいいんだ?」
「ってまだやってたのかよッ!?」
△▼△▼△▼△▼
とある町の裏路地。
誰も通らないような薄汚れた道に彼らの居住地へ繋がる入り口がある。
一応表にも玄関はあるのだが、襲撃される恐れがあるため裏道を使っているのだ。
ガチャ
裏玄関のドアノブが回される。
そのまま滑り込むようにして人が中に入っていた。
「おかえり、シグマ様ー」
帰宅直後のシグマに可愛らしい声が飛び込んでくる。
13,4ぐらいの少女が玄関に待ち受けていたのだ。
シグマは駆け寄ってこようとする少女を片手で押さえつけ、
「……糞野郎の弟に会ってきた」
「え? そ、それって禁止されてるはずじゃ……」
「別に破った所でどうってこともない」
シグマはポケットに突っ込んでいた紙を取り出し、切り捨てるように破く。
表面から見える文字を見るに、何かの契約書のようだった。
完全に元が見えなくなるぐらいに破いた後、シグマは吐き捨てるように言った。
「俺はあの糞野郎が気に食わねぇからな」
ここから新展開に……なるのかな?
あ、一応言っときますけどシグマは主要人物の1人です。
普通に物語に絡むんでよろしくー。