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第一章 第十一話 『灰色の傍観者』

やっと物語が始まってきたような気がします。

土下座はいつになるのかねぇ……。

 俺は今、治癒魔法とやらで治療してもらっている。

 焼けた左肩が再生していくのが目に見えて分かった。

 横たわる俺の視線の直線上にはかろうじて顔の形を保っているデュアラの姿があった。

 もちろん俺がやった事だ。

 あちらの方も一応治療はされているみたいだが生きているかはよく分からない。


「痛ぅ……」


 痛みの広がる左腕を極力使わないように右腕で起き上がる。

 横にいるクオリナが動かないでと、言ってきたが俺はそんな事は聞いていなかった。

 誰かがこちらに歩いてくる。

 治療を行ってくれている人の制止を無視し、俺は引き付けられるようにそいつの前に立った。

 灰色の髪に翡翠色の目。

 身長は同じぐらい、年齢は俺より少し上かもしかしたら同じかもしれない。


「何のようだ」

「別になんてことはねぇよ、ここら一帯を占める賊を殴り潰した新人がいるってもんで見に来ただけだが?」

「嘘だな」

「何故そう思う」

「だってお前、店の外から観戦してたじゃん」


 チッ、見られてたか、とそいつは舌打ちする。

 実際、パフェを食べている途中にたまたま目に入っただけなので合っているという確証は無かったがどうやら合っていたらしい。


「で、何のようなの?」

「まぁそう焦るな。俺は何つーか裏で動く便利屋とでもやっててな、上の命令でテメェを監視してんだ」

「よーするように?」

「テメェの兄からの遣いだよ、あの糞野郎のな」


 吐き出すようにそいつは言った。

 というかこいついきなり重大発言をしてきたような気がするぞ。

 兄貴? あの兄貴からの遣い……?


「つーことは、兄貴は俺がこの世界に来たことを知っているのか」

「当たり前だろーが」

「それじゃ、お前は俺を始末しにきたのか? どうせ兄貴は俺が止めようとしていることぐらい分かってるんだろ?」

「だから監視してるだけだっつってんだろーが。……奴はテメェに早く会いたがってるそうだがな


 パシッ

 俺に向けて何かが投げられた。

 それは比較的小さなカードだった。


「これは?」

「《神の塔》に入るための資格を示すカードだ。通常、一定の成果やB級以上の依頼をこなさないともらえないものだが特別にテメェにくれてやる。」


「……《神の塔》ね」

「ま、精々頑張ることだな」


 それを言い終わるとそいつは周囲の人混みに紛れて消え去ってしまった。

 しかし、何だかよく分からないが結構大変な事になってるようだ。

 特にもう兄貴に俺の存在がばれてるってことが。

 これは……急いだほうがいいかもしれない。


 いつの間にかクオリナが俺の傍に移動していた。

 どうやら俺の近くにいないと安心できないようだ……。

 とはいえ、むしろ来てくれたのは好都合だったので俺は彼女の頭に手を乗せると、


「行くぞクオリナ。俺の為に協力してくれ」

「え、でもまだ肩が……」

「こんくらいもう大丈夫だ。もうほとんど治ってるさ」


 それを証明するために左肩を大きく振ってみる。

 あ、やべっメチャクチャ痛ぇ。

 自然と顔が苦痛に歪む。

 俺はどう見ても痛がっているようにしか見えない顔を無理やり笑みに変えたが、もちろん彼女は気付いていたようで、


「やっぱ治療、続けてもらおうよ」

「……そうする」


 《神の塔》に行けるのはいつなんだろう……と、俺はため息をついた。



△▼△▼△▼△▼



「どうだ、弟の様子は?」


 無機質な声が室内に響き渡る。

 広い広い部屋の中、外庭黒斗そとにわくろとは何かに語りかけた。

 少なくとも人ではない何か。

 そして人ではない何かは応答する。


「現在、〔リグリス〕に滞在中。行動、所持しテイるカードから察すルに西の《神の塔》ニ向かう様子デす」

「それだけ分かれば十分だ」


 そして黒斗は笑う。

 自らの弟を嘲笑う。


「俺を止められるもんなら止めてみろ。てめぇみたいな出来損ないの愚弟じゃ一生俺に辿り着けないだろうがなぁ!」


 当然、神也にその声が聞こえるはずは無いのだが、彼は構わず叫んだ。

 やがてその声は静まり、再び室内は沈黙に染まる。

 彼の計画はまだ、始まったばかりだ。





黒斗が初登場ですね!

人ではない何かって何なんでしょうね?

ま、適当に予想しておいて下さい。

恐らく答えが出るのはだいぶ先ですが……。

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