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『ドラゴンズ・ディザイア』:龍の友人は龍を殺し涙する  作者: わじゅ
最終章 愚かなる張りぼての王
39/43

39話 我こそは、龍の王にして亜龍を統べる者。世界を闇に包みし混沌、ケイオス!

  

 ◇  ◇  ◇


 嘗て、人々を襲い世界を蹂躙した異形の化け物達が居た。

 

 それこそが、今〝亜龍〟と呼ばれている者達だ。奴らは狡猾で、残忍、そして何より人智を超えた力を宿していて一体一体が厄介な人類の天敵だった。

 

 ハオやハオの仲間は、そんな亜龍達から人間を守るべく戦う組織の一員だった。


「俺は、気がついた時には真っ白な玉座に据えられていた。そして俺を養育する者から〝お前は王になるために生まれたのだ〟〝我らを導き、亜龍を滅ぼすのだ〟と教えられた」


 亜龍の持つ特異な力に対抗する為に、その力を奪い取り自らのモノとして渡り合う。そうやってなんとか人々を守っていた組織だったが……。


「所詮は、猿真似の劣化コピーだ。質は大きく劣り、戦況は不利になる一方。それでも人々を護る為に俺達は戦った。そして俺の身体が成熟した時、俺は正式に王として部下達を支配した」


 その後暫くはずっと戦いが続いた。亜龍達は日に日に数を増し、逆にハオの軍勢は少しずつ倒れていく。ジリ貧の消耗戦が延々と続き、けれど打開策を見つけられずに長い年月が経った。


「もう、これ以上は耐えられない。そんな見通しが現実味を帯びて来た時。俺は起死回生の一手として『真龍計画』を開始した」


 それは、残り少ない軍勢の力を、限られた極一部の精鋭に集中させ亜龍達の力を大きく上回る龍を作り出す計画だった。そうして生み出されたのが、四体の龍。嘗ては呼び名も違ったが、それは今ではもう関係の無い話だ。 


「こうして、実力では優位に立つことが出来た俺達だったが戦力を集中させた結果手数が減り、個々の戦いでは勝利出来ても全体的な戦況では劣勢を覆す事ができなかった」

 

 かといってあのまま消耗戦を続けていればいずれ軍勢は尽き果て人類は滅びていた所だ。何が正解だったのかは未だに答えが見えない。


「が。〝真龍計画〟すら上手くいかなかった事に焦った俺は――まず間違い無く、確実に。最大にして最低の〝失敗〟だったと言える作戦を行う」


 真龍、魂沌の龍(ケイオス)の本来の力。それは、人の心と心、魂と魂を繋ぎ合わせるモノだ。相手の心を無理矢理自分の心に接続してその心を支配し、操ることも出来る。 


「俺は、敵との戦力差を埋める手段として、〝亜龍達の心を自身の心に繋いでいった〟」


 敵兵を手中に収め、数の問題を一挙に解決する。真龍の力さえあれば支配など容易だという驕りが、全てを狂わせた。


「最初は上手くいっていた。だが、支配した亜龍の数がある数に達した時――」


 ハオは、無数の感情。悪意の海に飲み込まれて。数多の絵の具を全て混ぜ合わせると漆黒に染まってしまう様に。ハオはその心を深い闇に囚われその自我を喪失した。


「その後の事は最早詳しく語る必要も無いだろう。自我を失った俺は敵味方問わず心を接続してゆき、その闇を増大させてゆき、俺の心と繋がっていた残りの真龍達も正気を奪われどこか歪んだ〝切望〟に支配された」


 狂気を宿したハオに取り込まれた亜龍達もまた、結果として自我を失い……世界は崩壊し、今この現状ができあがったのだ。


  ◇  ◇  ◇


「それが……龍の真実……」


 過去を語り終えたハオは自身の身体に目を落とし、更に続ける。


「……思えば、俺は余りにも幼すぎた。言われるがままに王となり、皆を導いているつもりだった。だけどそこには〝俺の意志〟など何処にもなく。己の人生でありながら、自分自身の足で歩こうとした事も無かった。そんな俺が、多くの仲間を導くなんて出来る筈も無かったんだ。王だなんて形だけの虚構――俺は、愚かな張りぼての王に過ぎなかった」


 そのことに気付けたのは、闇に囚われ何百年も夢と現の境目を彷徨い続けて漸くだった。


「与えられた使命に何の疑問も無く。渡された資料を鵜呑みにし、敷かれたレールを歩き続けていた、愚かな子供。それが、俺の本質だったんだ」


 だからこそ。自らの人生、生き方を探し、見つけ、一歩一歩踏みしめていくキョウカの姿が羨ましく、眩しいモノだった。ハオには見つける事の出来なかった心だったから。 


「真龍・魂沌の龍(ケイオス)とは、無数の亜龍達と本体たる俺の集合思念体。混沌たる魂の塊だ。今までは、暴走しつつも亜龍達をつなぎ止め、己自身と共にその自我を奪って支配を続けてきた」


 けれど。三体の真龍が消滅したことで、ハオの力が弱まった。結果として近づくだけで精神を撹乱する程の影響力を失ったが――。


「心への干渉力が弱まったと言うことはつまり、〝亜龍達の拘束が弱まった〟という事だ。今はまだ、ギリギリ押さえ込めているがいつこの戒めが決壊するかも判らない」


 もしそうなれば、亜龍達は知能を取り戻し今一度人間を襲い始めるだろう。真龍が居なくなった今、壊れた世界に疲弊しきった人々は亜龍達の攻撃にどれ程耐えられるだろうか。


 故にそうなる前に、魂沌の龍(ケイオス)を倒さねばならないとキョウカは悟る。


「改めて、名乗りを上げよう」


 ハオは己の身の丈程もある愛刀を抜き、片腕で天へ掲げる。


「我こそは、龍の王にして亜龍を統べる者。世界を闇に包みし混沌、ケイオス!」


 空の黒い淀みが、滴のように墜ちて来る。ポツポツと大地に落ちた闇の滴は徐々にその姿を変えてゆき、やがては流体状の真っ黒な異形の化け物の姿を取る。


「始まったら、加減はできない。キョウカ――戦ってくれるか?」


 ハオの背後に集積し、膨張していく闇の龍。キョウカは、二人を見据えてキョウカは剣を取って突きつけた。


「それが貴方の……かけがえの無い友の望みなら――私は貴方を倒します!!」


 キョウカの勇ましい姿に微笑みを浮かべ、ハオは背後の闇に引きずり込まれていった。


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