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24話 絶対に、後悔はさせません

 ナイトメアの毒は、常にキョウカの身体を蝕んでいる。そして、毒で崩壊していく身体を補う為に複製の力を使っている為、戦いの為に力を回す余裕が無い。

 

 故に、導き出される結論はただ一つ。

 

 一撃必殺。


 ストライフの力を借りるのは、一度きりだ。

 その1回で全ての力を解放する。

 

 キョウカは呼吸を正し、目を細め、その瞬間を待ち続ける。


「どうしたっ! 威勢が良いのは口だけか!?」

 大剣と大斧を交互に振り下ろし、ナイトメアが叫ぶ。

 苛烈な攻撃だが、癖が無く見切るに容易い。大振りで後隙が多くストライフ程洗練されていない。


「ここですっ!」

 攻撃の隙を穿つ針のような反撃。

 

 だが。


「効かねぇよ!」

 剣の切っ先は鋼鉄の鎧に容易く弾かれてしまう。


 キョウカにとっての大きな問題は攻撃の方法だった。 

 大剣も大斧も、キョウカに迫り来る研ぎ澄まされた刃であるが、同時にキョウカが攻撃したときナイトメアの身体を守る盾でもある。


 半端な攻撃はその二重の防壁に妨げられてしまう。更に、よしんばその守りをかいくぐってもその先のナイトメアは全身を鋼鉄の鎧で覆い隠している。

 

 ナイトメアの生への執着と、心の防壁を象徴しているような武装だ。

 

 高くそびえる、強固な壁を乗り越えなくてはならない。


 キョウカはナイトメアの大剣を金剛石の剣で受け止めた。

「貴方も見せて下さい。貴方の全てを!」

 かかとが地面に食い込む程の剣圧だが、キョウカは真っ向から立ち向かう。


「上等だッ! なら存分に味わえ!!」

 ナイトメアが繰り出した大剣は、右腕のみで振るわれていた。

 鍔迫り合いをする大剣の背に、新たに大斧が打ち付けられる。


「っ!!」

 巨岩に押し潰されそようとしていると錯覚する程の重み。

 ナイトメアが背負う命と想いの圧力。


「受け止められるモノならば受けてみろ! 背負えるモノならば背負ってみろ!」

 ナイトメアは二つの武器を振り上げた。


 重圧から解放されたキョウカだが、次の攻撃を待ち受けるのみだ。

 大剣と大斧の腹同士を接着させるナイトメア。二つの武器は一つの巨大な刃と化す。


「これがオレの全てだッ!!」

 ナイトメアの刃が金剛石の剣に食い込んだ。

 琥珀色の刀身にビキビキと亀裂が走る。


 あまりにも重たい一撃。その威力は今までの比ではなく、受け止める事も出来ない。

 剣は砕け散り、黄金色の破片と共にキョウカは吹き飛ばされた。


「所詮この程度かよ……」

 ナイトメアの落胆した声が聞こえる。


 ――まだだ……でも、もう力が……!

 宙を舞うキョウカだがその闘志は最早消える事など無い。


 けれど状況は悪い。一撃で、あの堅固な守りを突破しなければならないのだ。

 身体を捻り、受け身の体勢をとる。


 数秒後、地面に何度か打ち付けられたが即座に起き上がった。

 龍殻との戦い、そしてナイトメアの剣を交えた対話によってキョウカの体力自体が限界に近づいている。ふらついた足が、ジャリっと何かを踏み付けた。


 ――痛ッ……?

 ピリっと小さな痛みが走る。見ると、ナイトメアによって砕かれた金剛石の剣の破片を踏み付けていたようだ。


 ――!!

 その破片が、キョウカの記憶を呼び覚ました。

 吹き飛ばされたお陰で距離も十分に離れて居る。


 折れた剣をナイトメアにもう一度差し向ける。


「失望などさせません!!」


 そして、残された刃に手をかけ――砕き落とす。


 キョウカの得物は刃が完全に無くなり、最早『剣』という体裁すら無くなった。 


 先端に宝玉が取り付けられた柄……棒切れだ。


「私の全てを、この一撃に……ッ!」

 宝玉に手をかざし、力をためて手を離すと同時にふわりと両腕を広げる。

 すると柄の先端からジャラジャラと長い鎖の鞭が精製された。


 一連の鎖をしならせ、大きく振りかぶって頭上で回転させる。

 鎖は勢いを増すと共に少しずつ伸張していく。そしてキョウカより二回りほどの長さまで達したところで先端に人の頭程の鉄球が現れた。


「なっ、それは――」

 ナイトメアは、その構え、武器を数回だけ見た事がある。


「勝負ですッナイトメア!! これが私が背負う、友との絆だッ!!」

 上体を反らして柄を振り下ろす。


 鎖は波を打ってナイトメアに伸びていく。


「受けて立つッ!!」

 ナイトメアもまた剣と斧が融合した刃を今一度振りかぶった。

 鎖に繋がれた球体は膨大な威力を貯め込んでナイトメアの刃に迫る。


 鉄球と刃の大きさの差は歴然だった。いくら遠心力で威力を補おうと、あの分厚い刃を傷つける事は出来ても壊すまでには至らないだろう。


 ――本来ならば。

 

 ――ストライフッ私に、力を!!

 刃と鉄球が衝突したその瞬間。キョウカは複製の力を最大限に解放した。

 

 身体の保護が無くなり、紫毒の影響で全身が少しずつ黒ずんでさらさらと朽ちていく。

 

 それでも、一切力は緩めない。

 

 鉄塊が生み出した特大の衝撃を複製し、何十倍にも膨れあがらせる。

 


 それはまさしくストライフの奥義――〝龍の尾撃〟



 火薬が爆裂したような衝撃を伴ってナイトメアの刃は弾け飛び、隕石の如き鉄塊は鋼鉄の鎧の胸部までめり込んで破壊した。


「ぅ、があああああ!!!」

 

 ――届い……た……。


  ◇  ◇  ◇


 ナイトメアの鎧が打ち砕かれると同時に、龍殻にも異変が起きていた。

 鎧に包まれた天馬の如き姿をしていた龍殻が嘶き、天を仰いで消えていく。

 

 元よりナイトメアの龍殻は幻影のようなモノ。紫毒の中心である自身に他の生命が悪戯に近寄らぬ様にと警告の意味を込めて生み出した〝龍の形をした夢〟だ。

 

 戦いに敗れ力が弱まった事により、龍殻を維持出来なくなったようだ。

 紫毒の範囲も少しだけ狭くなっている。

 

龍殻が消滅した事で、ナイトメアとキョウカが居た亜空間のような景色も消え去り、淀んだ空とひび割れた大地だけが残った。


  ◇  ◇  ◇

 

 キョウカは掠れ行く意識を必死につなぎ止め、片足を引きずりながら倒れているナイトメアに歩み寄る。

 

 鎧にはぽっかりと大穴が空き、血が滲んだ素肌が僅かに覗く。


 ナイトメアは身体を大の字にしてぼぅっと淀んだ空を見上げていた。

「……みんな、コイツに賭けてみていいか?」

 ぼそり、とここには居ない誰かに問いかけるような囁き。


 そんなナイトメアにキョウカは手を差し伸べ、何とか笑顔を作った。

「絶対に、後悔はさせません」


「……信じるぞ、その言葉」

 ナイトメアはその手を掴み、上体を起こす。が、


「って、おい!?」

 緊張の糸が切れたのか、助け起こそうとしていた筈のキョウカの方が遂に力尽きてしまい、そのままナイトメアの方へ倒れこんでしまった。


「ちょ、おま、カドに刺さるぞ!? おいって!」

 砕けたせいで鋭利になっている鎧の傷口に触れぬように気を遣い、なんとかキョウカを受け止め地面に寝せるナイトメア。


「……ったく、頼りねえ希望だなぁ」

 あどけない寝顔を見せるキョウカをみて、呆れた様に笑う。


「ま、ちょっとだけ――サービスしてやるか」 

 そう言うと背中の、白く美しい方の翼に手を伸ばしぷちりと羽根を一つ引き抜いた。

 そして眠るキョウカの額にその羽根をそっと触れさせる。

 羽根は空気に溶けるようにふわりと消えて無くなった。


「良い夢みろよ」

 こうして、第二の龍との戦いは終幕した。


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